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第百六十七話 吹っ切れた思い
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「こちらは、スケさんと、カクさんです」
な、なにーーっ。
スケさんとカクさんだとー。
マッチョないい男がスケさん。
シュッとした上杉謙信にも似た男がカクさん。
スーツ姿でSPのように見える。
「ス、スケさんとカクさん」
「はい、スケさん見せてあげて下さい」
「はっ」
そう言うとスケさんは、ジャケットの前を広げた。
白いカッターシャツの胸にうっすら、黒い丸い物が二つ透けている。
こ、濃いのか。
「うふふ、透けているでしょ。だから透けさん」
な、なにーーーっ!!
透けているからスケさんだとーーー!!!!
「カ、カクさんは?」
「はい、カクさんは字を書くのが上手なので書くさん」
書くのが上手だからカクさんかー。
「スケさんとカクさんは、二人とも男の人が好きなの」
「えっ!?」
二人の顔が悲しそうな笑顔になった。
まっ、まじな奴だ。
笑ってはいけない。
そうか美女二人の護衛に男二人はあかんだろうと思ったが、そう言うことなのか。
一見男女に見えるが、女四人と言う事か。納得。
「二人とも同じなら、二人で付き合えば良いじゃないか。俺から見ても二人ともいい男じゃねえか。お似合いだぜ」
「……」
二人は首を振った。
「ふたりは、男が好きな男は嫌なの。女の人が好きな普通な男の人が好きなの」
「なっ、それじゃあ、自分を好きになる男は、全員駄目じゃねえか。恋愛が成立しねえ」
「……」
二人が目を閉じてうつむいた。
「なるほどなー……」
人の悩みというのは、想像の上を行くと、しみじみ思った。
考えてみれば、俺よりはるかに恵まれていると思える芸能人が、よく自殺している。
きっと、俺では想像出来ない悩みがあるのだろうなーと思う。
そう言えば、これまで何度も死にたいと思ったよなー。
あれ、何で思いとどまれたんだ。
そうだ、恐かったんだ。
死にたいとは思ったが、恐くて死のうとはしなかった。それだけのことだ。
ただそれだけのことだ。簡単に楽に死ねるのなら俺も死んでいただろう。
俺は自殺も出来ねえふぬけ野郎だ。なさけねえ。
「楽に死ねないのは嫌だなあ」
これからの自分の運命を考えると、楽に死ねないのだと感じている。
ひょっとすると、ハルラに両手をつかまれて、生きたまま半分に裂かれるのかもしれない。
痛いだろうし、苦しいだろう。
俺の言葉に、四人の表情が変わった。
「あのー、あなた様は何故死ぬ覚悟を」
「そうだね。四人には言っても良いかな。聞いてくれるかい?」
「は、はい。是非」
「うん、俺は伊勢に行くというのは嘘だ。大阪へ行く。そこには巨大な悪がいる。日本人全員でかかっていっても勝てないかもしれない。それほど恐ろしい相手だ。でも、そいつがいる限り日本に明日はない。そんな相手と戦うのが恐くてね。本当は逃げて生きていたいと思っていたのさ。情けないだろう」
「それが、何故、死ぬ覚悟を?」
「ふふふ、簡単な事さ。娘を守りたいと思ったのさ。日本国の為でも全日本人の為でも無い、たった一人の大好きで大事な女の子の未来の為に戦おうとしているのさ。でも大事な事だろう。大事な一人を守る為に必死で戦おうとする事も」
「……」
四人は黙ってしまった。
「あのー、お名前をお聞かせ下さい」
沈黙を破ったのはじっと黙っていたカノンちゃんだ。
「俺は……、トダシュウだ」
一瞬、この名前で良いのだろうかと思ったが、この名前にした。
「シュウ様はその子から愛されているのですか」
「ふふ、だからさ、愛されている……と言っても父としてだけどな、愛されている。だからこそ戦う覚悟が出来たのさ」
「あの、聞いて貰ってもいいですか」
「うん」
「私の旦那様は大きかったのです」
「はっ??」
何がー!!
俺が響子さんの顔を見たら真っ赤になっている。
スケさんもカクさんも赤くなっている。
あれかーー!!!
「輿入れをして、初夜、旦那様がいらっしゃって、私は、絶叫しました。気絶しそうなほど痛くて。その後も何度かいらっしゃいましたが、私の絶叫で、あきらめて、全身をなめるだけで帰って行きました。家中では私のこの絶叫をカノン砲と言って笑っていました。私はけがれた駄目な笑いものの女です。生きる価値がありません」
この子の悩みはこれなのか。
俺みたいな豚顔のデブなオタクによく話してくれたなー。
恥ずかしかっただろうになー。
「俺はね、女の人がけがれるなんて事はねえと思っているよ。それに一番けがれちゃいけねえのは、心さ、心がけがれなければ他はどうでもいいのさ」
カノンちゃんが目を見開いて俺を見ている。
スケさんもカクさんも同じ表情で俺を見ている。
「あのー私も連れて行って下さいませんか? はしためとしてでかまいません。もし、敵に捕まったら見捨てて下さい。もともと死ぬつもりの者です。使い捨てにして下さい」
「ははは、申し出はありがたいが、自殺をするなら、楽で苦しまない方法がいい。俺と一緒に来れば自殺をした方が良かったと後悔することになる」
「お、お願いします」
「我らもお願いします」
響子さんもスケさんもカクさんも同調している。
うーーん、どうせ死ぬ命なら預けてもらってもいいのかなあ。
「断っても、勝手について行きます!!!!」
四人は俺が悩んでいるのを見てたたみかけてきた。
まあ、悩んだ段階で俺の負けかーー。
「しゃーねーなー。後悔しねーでくれよ」
「はい!!!!」
いい返事だなー。
四人の顔から死相が消えている。
そんな気がした。
な、なにーーっ。
スケさんとカクさんだとー。
マッチョないい男がスケさん。
シュッとした上杉謙信にも似た男がカクさん。
スーツ姿でSPのように見える。
「ス、スケさんとカクさん」
「はい、スケさん見せてあげて下さい」
「はっ」
そう言うとスケさんは、ジャケットの前を広げた。
白いカッターシャツの胸にうっすら、黒い丸い物が二つ透けている。
こ、濃いのか。
「うふふ、透けているでしょ。だから透けさん」
な、なにーーーっ!!
透けているからスケさんだとーーー!!!!
「カ、カクさんは?」
「はい、カクさんは字を書くのが上手なので書くさん」
書くのが上手だからカクさんかー。
「スケさんとカクさんは、二人とも男の人が好きなの」
「えっ!?」
二人の顔が悲しそうな笑顔になった。
まっ、まじな奴だ。
笑ってはいけない。
そうか美女二人の護衛に男二人はあかんだろうと思ったが、そう言うことなのか。
一見男女に見えるが、女四人と言う事か。納得。
「二人とも同じなら、二人で付き合えば良いじゃないか。俺から見ても二人ともいい男じゃねえか。お似合いだぜ」
「……」
二人は首を振った。
「ふたりは、男が好きな男は嫌なの。女の人が好きな普通な男の人が好きなの」
「なっ、それじゃあ、自分を好きになる男は、全員駄目じゃねえか。恋愛が成立しねえ」
「……」
二人が目を閉じてうつむいた。
「なるほどなー……」
人の悩みというのは、想像の上を行くと、しみじみ思った。
考えてみれば、俺よりはるかに恵まれていると思える芸能人が、よく自殺している。
きっと、俺では想像出来ない悩みがあるのだろうなーと思う。
そう言えば、これまで何度も死にたいと思ったよなー。
あれ、何で思いとどまれたんだ。
そうだ、恐かったんだ。
死にたいとは思ったが、恐くて死のうとはしなかった。それだけのことだ。
ただそれだけのことだ。簡単に楽に死ねるのなら俺も死んでいただろう。
俺は自殺も出来ねえふぬけ野郎だ。なさけねえ。
「楽に死ねないのは嫌だなあ」
これからの自分の運命を考えると、楽に死ねないのだと感じている。
ひょっとすると、ハルラに両手をつかまれて、生きたまま半分に裂かれるのかもしれない。
痛いだろうし、苦しいだろう。
俺の言葉に、四人の表情が変わった。
「あのー、あなた様は何故死ぬ覚悟を」
「そうだね。四人には言っても良いかな。聞いてくれるかい?」
「は、はい。是非」
「うん、俺は伊勢に行くというのは嘘だ。大阪へ行く。そこには巨大な悪がいる。日本人全員でかかっていっても勝てないかもしれない。それほど恐ろしい相手だ。でも、そいつがいる限り日本に明日はない。そんな相手と戦うのが恐くてね。本当は逃げて生きていたいと思っていたのさ。情けないだろう」
「それが、何故、死ぬ覚悟を?」
「ふふふ、簡単な事さ。娘を守りたいと思ったのさ。日本国の為でも全日本人の為でも無い、たった一人の大好きで大事な女の子の未来の為に戦おうとしているのさ。でも大事な事だろう。大事な一人を守る為に必死で戦おうとする事も」
「……」
四人は黙ってしまった。
「あのー、お名前をお聞かせ下さい」
沈黙を破ったのはじっと黙っていたカノンちゃんだ。
「俺は……、トダシュウだ」
一瞬、この名前で良いのだろうかと思ったが、この名前にした。
「シュウ様はその子から愛されているのですか」
「ふふ、だからさ、愛されている……と言っても父としてだけどな、愛されている。だからこそ戦う覚悟が出来たのさ」
「あの、聞いて貰ってもいいですか」
「うん」
「私の旦那様は大きかったのです」
「はっ??」
何がー!!
俺が響子さんの顔を見たら真っ赤になっている。
スケさんもカクさんも赤くなっている。
あれかーー!!!
「輿入れをして、初夜、旦那様がいらっしゃって、私は、絶叫しました。気絶しそうなほど痛くて。その後も何度かいらっしゃいましたが、私の絶叫で、あきらめて、全身をなめるだけで帰って行きました。家中では私のこの絶叫をカノン砲と言って笑っていました。私はけがれた駄目な笑いものの女です。生きる価値がありません」
この子の悩みはこれなのか。
俺みたいな豚顔のデブなオタクによく話してくれたなー。
恥ずかしかっただろうになー。
「俺はね、女の人がけがれるなんて事はねえと思っているよ。それに一番けがれちゃいけねえのは、心さ、心がけがれなければ他はどうでもいいのさ」
カノンちゃんが目を見開いて俺を見ている。
スケさんもカクさんも同じ表情で俺を見ている。
「あのー私も連れて行って下さいませんか? はしためとしてでかまいません。もし、敵に捕まったら見捨てて下さい。もともと死ぬつもりの者です。使い捨てにして下さい」
「ははは、申し出はありがたいが、自殺をするなら、楽で苦しまない方法がいい。俺と一緒に来れば自殺をした方が良かったと後悔することになる」
「お、お願いします」
「我らもお願いします」
響子さんもスケさんもカクさんも同調している。
うーーん、どうせ死ぬ命なら預けてもらってもいいのかなあ。
「断っても、勝手について行きます!!!!」
四人は俺が悩んでいるのを見てたたみかけてきた。
まあ、悩んだ段階で俺の負けかーー。
「しゃーねーなー。後悔しねーでくれよ」
「はい!!!!」
いい返事だなー。
四人の顔から死相が消えている。
そんな気がした。
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