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第百九十二話 お別れ

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 UFOの室内は広い。だが、二人は俺の腕に抱きついたまま離れない。
 広い室内に三人がギュッとくっついたまま座っている。
 大阪に到着し、UFOから降りる時も二人は離れなかった。

「うわっ!」

 俺達がUFOから出てくるとノブが驚いた。
 UFOを透明状態にしていたので、何も無い所から突然三人の人間が現れたように見えて驚いたようだ。

「ノブ、待たせたな。こいつは、ここの子供達のリーダーのノブだ」

 俺は、ノブをエマとライに紹介した。

「……」

 ノブは返事を忘れて、俺の腕につかまる二人を交互に見ている。
 二人の見た事も無いような美少女を見て、驚いているようだ。

「この二人は、大和解放軍の子供達のリーダーだ。左がエマで右がライだ」

「ちっ、エマとライ! シュウさんが邪魔そうにしているだろ! 離れないか馬鹿!」

 おーーい。ノブー。初対面でそのあいさつは、全然駄目だー。

 ――!?

 まさか、ノブの奴、嫉妬をしているのか。
 俺は、また大変な間違いをしてしまったのだろうか。
 ノブを少年と思っていたが、本当は女の子ではないのか?
 名前は、そうか、のぶ子なのかもしれない。
 見た目が、汚れた顔に、ボサボサの髪、ボロボロの服、男の子にしか見えないが、これはエマとライの初対面の時と全く同じだ。
 お風呂に入った二人は、美形の少女だった。まさか、ノブも美少女なのか?

 だが、安心しろ。嫉妬の必要は無い。この二人には、すでにお嫁さんになりたい人がいる。
 俺なんかは眼中にない。ただ、なついてくれているだけだ。

「おい! ガキ! エマ姉を馬鹿にしたな! ゆるさねえ!」

 おーーい。
 そんで、ライ。お前、男に戻っているぞー。
 ライは、ロリコンの男にいたずらをされないように、少し前まで男のフリをしていた。吊り目の、漆黒の髪の美少女だが、時々男に戻ってしまうようだ。

「とうさん! こいつにどっちが上か教えて上げたいと思います。許可をいただけませんか?」

 さすがはエマ姉だ、ちゃんと丁寧に話せるようになっている。
 最初は、口の悪い糞ガキだったのになあ。

「わかった。良いだろう」

「ライ、とうさんの許可は降りたわ。ノブ君にあなたの実力を教えて上げなさい」

 エマ姉、ノブ君じゃねえ。ノブちゃんだぞ。
 まあ、後で教えてやろう。

「おもしれえじゃねえか! 俺は大人を何人も殺している。どんな大人でも俺の素早さにはかなわなかった。てめーごとき女に負ける訳はねえ。吠え面をかくなよ」

「そっちこそ、負けて言い訳などするなよ」

 ライ、少女のお前じゃあ勝てないぞ、大丈夫か?
 二人は、少し広い場所に移動して向き合った。

「オイサスト! シュヴァイン!」

 えっ、ライお前、変身しちゃったら反則じゃないかな。

「なっ! 変身するのか。こけおどしはやめろ! いくぞーー!!」

 ノブは変身に少し驚いたようだが、こけおどしで実力には影響が無いと考えたようだ。
 そして、自慢の素早さを生かすために先制攻撃を仕掛けた。
 少し不意打ち気味で汚い気がするが、ライはもっと反則気味なのでまあ良いだろう。

「きゃっ!」

 ライの悲鳴だ。
 ノブの拳がライの腹に、見事にくい込んでいる。
 ライの奴、悲鳴はかわいいなー。完全に女の子だ。大丈夫か?
 ライはヒザをつき、パンチは完全に効いている。

「ふふ、大口を叩いてこの程度かよ。ガッカリだぜ」

 なーーっ。
 ノブの奴「ガッカリだぜ」って言いやがったー。

「ふふふ。その言葉、そっくり、そのままお返しするわ」

 ライは笑いながら立ち上がった。
 全く効いていないようだ。
 そりゃあそうだ。ビックリした。
 演技がうますぎだ。完全に効いていると思ったぜ。

「なっ!? 手応え充分だったはずだ」

 ノブの拳から少し血が出ている。
 おいっ! ノブ! 人を自分の拳から血が出るほど叩いちゃいけないぜ。

「今度はこっちの番ね」

「げぼっ」

 ライの拳はノブの腹に決まった。
 ノブは後ろに数メートル吹き飛んだ。

「うげーーーーっ」

 ああっ、折角沢山食べたのだろう、ノブのおなかのご飯は全部出てしまったようだ。
 可哀想に女の子が皆の前でリバースしてしまった。

「ひいいーーー、ごめんなさーーい」

 ライが、ノブの胸ぐらをつかんで頭の上で拳を構え、今にも殴りそうにしている。
 ノブが頭に手を置きあやまった。
 勝負有りだ。

「どお、私の強さがわかって頂けたかしら」

 ライが少女にもどった。

「はいー! ライ様。俺の負けです」

 これで、ノブの仲間の子供達もライとエマの事を認めることだろう。
 しかしライの奴、コスチュームの力を使いこなしている。
 だいぶ手加減して、たたいたはずだ。手加減しなければあの程度では済まない。

「ノブ子。大丈夫か?」

「はっ!?」

 ノブが、驚いた顔をしている。

「ち、ちがったか。ノブ美かな?」

「シュウさん、何を言っているのさ」

「えっ! だってノブは女の子だろ」

「どこを、どう見たら女の子に見えるのさ。僕は鶴見信秀、男だよ」

「つるみのぶひで。男なの?」

「そうそう、正真正銘の男。ほら」

 ノブはズボンの前をつかんで前に出し、中が見えるようにした。

「ぎゃーっ、俺のよりでかいのがついているーー」

 くそーっ! 俺のは、すでに使わなさすぎて、すっかり退化してしまったのだろう。
 こんな子供のものより小さくなっている。

「ぎゃははははー」

 まわりの子供達が大笑いをしている。
 だが、エマとライ、カクさんと響子さん、カノンちゃんの五人は耳まで真っ赤になっている

「あのー、シュウ様はノブ君を女だと思ったのですか?」

 響子さんが聞いて来た。

「う、うう、思っていました」

「はぁーーっ」

 響子さんに思い切りため息をつかれてしまった。
 しかし、俺は、まじでわかんねー。
 悟空が、股をパンパンして確認した意味がわかった。
 大体、響子さんもカノンちゃんも男装している。
 それを知っていなければ、完全に美形の男としか思わねえ。

「俺も、これから初対面の人は、股をパンパンするかなー」

「はぁーーっ!!」

 今度は、響子さんだけじゃ無くて、この場にいる全員にあきれられた。

「ノブ、腹は大丈夫か?」

「あーーっ、大変です!」

「ど、どうした?」

「おなかが空きました」

 どうやら、腹の物が全部出てしまったので、ふたたびお腹が空いてしまったようだ。
 ノブとエマとライに、食事を出してしばらく子供達と楽しい時間を過ごした。



 そして、お別れの時間が来た。
 子供達をUFOに全員乗せた。

「あのー、とうさんは来ないのですか?」

 エマは、不安そうな顔をする。

「ああ」

「私達だけでは、帰ることが出来ないと思います」

「大丈夫だ。このUFOは、AIがついている。来た道はそのまま帰ることが出来る。UFOに任せておけば操縦しなくても自動で帰ることができるのさ」

 俺は、ゴーレムだからとは言わずにAIと言って誤魔化した。
 その方が理解しやすいと思ったからだ。

「じゃあな、エマ、ライ、ノブ仲良くな。助け合って子供達の面倒をみてやってくれ。頼んだぞ」

「はい、シュウさんこのノブにお任せ下さい。俺が全員をお守りします」

「わかった。任せたぞ」

「はい」

 ハッチが閉まると、UFOはその瞬間に見えなくなった。
 UFOの中からはこっちの姿が見えるので、笑顔で手を振り続けた。
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