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第百九十三話 あやしく光る遊郭
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「さっ、そろそろ行きましょうか」
「えっ!?」
俺が、手を振るのをやめて言った言葉に、カクさんも響子さんもカノンちゃんも驚いた。
「帰ろっか、ではないのですか?」
三人はそう言うと思っていたようだ。響子さんが代表して質問をした。
「ええ、違います。今から遊郭へ行きます」
「……」
三人の顔が曇り、俺の言葉への返事は無かった。
あたりは薄暗くなり、大阪城の北側が一カ所明るくなっている。
太陽光発電で貯めた電気でも使っているのだろうか、高層ビル群の一角があやしくひかり、浮き上がっている。
俺は、三人の反応に気が付いていたが無視をした。
「じゃあ、行きますよ」
「……」
返事は無かったけど、あやしい光を目指して走り出した。
不服ではあるようですが、三人は黙ってついて来ているようだ。
遊郭は寝屋川と第二寝屋川に挟まれた、三角州のような場所にあり、第二寝屋川の南に大阪城が有る。そこには、東側からしか入れないようにバリケードが張られている。
バリケードには検問所が有り、出入りが出来るのはここだけのようだ。厳しいチェックをしている。
銃を装備した、衛兵が巡回していて、あやしい者は即銃殺されるのだろう。
「見せてみろ、ウィヒッ」
衛兵が、すげースケベそうな顔をして、ニヤニヤ笑いながら身分証をチェックする。
まるで、あの大物コメディアンのようだ。
「すきだねーー。おー!」
横から、もう一人の衛兵が、別のはげずらのコメディアンのような顔をして俺の顔を見た。
もうすでに帰りたくなるくらい恥ずかしい。
「まあ、良いだろう。通ってよし」
俺達は、身分証のおかげで通行を許可された。
元はホテルだったのだろうか、巨大な建物にあやしい赤い光りがともされている。
太い道路の歩道に、年増の女性がふてくされたような顔をして、ポツンポツンと間隔を開けて立っている。
前を通りすぎたが、向こうからは声をかけてこなかった。
「あれが、やり手ばばか。初めて見る」
風俗の店にはもちろん行った事が無い。
何より、行くのが恥ずかしかった。
ここにいること自体も恥ずかしい。
「さて、おっぱじめますか」
「はーーっ、ここでですか?」
カクさんが驚いていた。
「そうですよ。ここの女性達を救えるように、おまじないをします」
「おまじない?」
今度は響子さんが、不思議そうな顔をしてつぶやいた。
「本当は、今すぐここの女性を全員助け出したいのですが、それは無理です。だから、俺の超能力で、ここの女性達の病気や栄養失調を治します。それで、みんな半年位は生き長らえる事が出来るでしょう。その間に何とか助け出せるよう努力します。本当は、一人一人の間近で、力を使わないと効き目が出るかわかりませんが、少し強めに全体に治癒と回復の力を使います」
本当は魔法なのですが、それを言うと嘘っぽくなりますので、超能力と言っておきました。
「あの、シュウ様は、あの……女性を自由にするために来たのでは無かったのですね」
「すみません。俺はもう、女性の事はすべてあきらめています。こんな醜い、底辺おじさんは女の人の相手にされないことはもう分かっています。まあ、生まれ変わったら、絶世の美女になりますよ。ふふふ、だから今回の人生は捨てました。せめて、日本人の役に立つ為に使います」
「シュウ様……」
全員の目に涙が溜まりました。
涙がこぼれそうです。
あー、しまった。情けないことを言い過ぎて、かえって悲しませてしまったようです。
「私は……」
「わたくしは……」
「わたしは……」
「とうに好きになっています」
「そんなあなたをおしたいしています」
「大好きです」
三人がそれぞれのことを一度に言ったから、シュウ様の所以外は聞き取れませんでした。
「はーーっ? なんてーー?」
しまった。俺は、耳に手を当てて聞き直してしまいました。
まるで、テレビで良く見る憎たらしい奴の仕草です。
「はわわ、す、済みません。何でもありません」
三人は、真っ赤な顔をして慌てて口に手を当てています。
あんな、ポーズをしたのでもう一度は言ってくれないでしょう。
まあ、何でもないと言うことは、たいしたことでは無いはずです。
「そうですか。ではパッパッと済ませましょう」
俺は特にポーズは必要無かったのだが、なんとなく両手を挙げて両手のひらを天に向けた。
「少し早いですが、散々苦労した、豚肉からのプレゼントです。どりゃあああぁぁぁぁぁーー」
「あの、散々苦労した豚肉って何ですか」
「えーーっ、それ聞いちゃうかなー。それはねー……サンザンクロウ、ロースです」
「まさか、サンタクロースですか」
三人は頭が良い、死んだ目で声をそろえて言った。
「……」
俺は、滑ったことを自覚して情けない顔をして黙り込んだ。
「プッ」
どうやらその顔がおかしかったようだ。
ほんのちょっとだけ、笑ってくれた。
「では、リヤカーの所まで戻りましょうか」
「えっ、もう治癒は終ったのですか」
「ええ、とっくに終っています。じゃあ、帰りましょう」
「おい!!」
俺達が帰ろうとしたら、後ろから呼び止められた。
振り向くと、一人のやり手婆がこっちに歩いてくる。
「お前達、もう帰る気か。折角来たんだ遊んで行かないのか?」
偉そうな、やり手婆だなあ。何者だー?
「えっ!?」
俺が、手を振るのをやめて言った言葉に、カクさんも響子さんもカノンちゃんも驚いた。
「帰ろっか、ではないのですか?」
三人はそう言うと思っていたようだ。響子さんが代表して質問をした。
「ええ、違います。今から遊郭へ行きます」
「……」
三人の顔が曇り、俺の言葉への返事は無かった。
あたりは薄暗くなり、大阪城の北側が一カ所明るくなっている。
太陽光発電で貯めた電気でも使っているのだろうか、高層ビル群の一角があやしくひかり、浮き上がっている。
俺は、三人の反応に気が付いていたが無視をした。
「じゃあ、行きますよ」
「……」
返事は無かったけど、あやしい光を目指して走り出した。
不服ではあるようですが、三人は黙ってついて来ているようだ。
遊郭は寝屋川と第二寝屋川に挟まれた、三角州のような場所にあり、第二寝屋川の南に大阪城が有る。そこには、東側からしか入れないようにバリケードが張られている。
バリケードには検問所が有り、出入りが出来るのはここだけのようだ。厳しいチェックをしている。
銃を装備した、衛兵が巡回していて、あやしい者は即銃殺されるのだろう。
「見せてみろ、ウィヒッ」
衛兵が、すげースケベそうな顔をして、ニヤニヤ笑いながら身分証をチェックする。
まるで、あの大物コメディアンのようだ。
「すきだねーー。おー!」
横から、もう一人の衛兵が、別のはげずらのコメディアンのような顔をして俺の顔を見た。
もうすでに帰りたくなるくらい恥ずかしい。
「まあ、良いだろう。通ってよし」
俺達は、身分証のおかげで通行を許可された。
元はホテルだったのだろうか、巨大な建物にあやしい赤い光りがともされている。
太い道路の歩道に、年増の女性がふてくされたような顔をして、ポツンポツンと間隔を開けて立っている。
前を通りすぎたが、向こうからは声をかけてこなかった。
「あれが、やり手ばばか。初めて見る」
風俗の店にはもちろん行った事が無い。
何より、行くのが恥ずかしかった。
ここにいること自体も恥ずかしい。
「さて、おっぱじめますか」
「はーーっ、ここでですか?」
カクさんが驚いていた。
「そうですよ。ここの女性達を救えるように、おまじないをします」
「おまじない?」
今度は響子さんが、不思議そうな顔をしてつぶやいた。
「本当は、今すぐここの女性を全員助け出したいのですが、それは無理です。だから、俺の超能力で、ここの女性達の病気や栄養失調を治します。それで、みんな半年位は生き長らえる事が出来るでしょう。その間に何とか助け出せるよう努力します。本当は、一人一人の間近で、力を使わないと効き目が出るかわかりませんが、少し強めに全体に治癒と回復の力を使います」
本当は魔法なのですが、それを言うと嘘っぽくなりますので、超能力と言っておきました。
「あの、シュウ様は、あの……女性を自由にするために来たのでは無かったのですね」
「すみません。俺はもう、女性の事はすべてあきらめています。こんな醜い、底辺おじさんは女の人の相手にされないことはもう分かっています。まあ、生まれ変わったら、絶世の美女になりますよ。ふふふ、だから今回の人生は捨てました。せめて、日本人の役に立つ為に使います」
「シュウ様……」
全員の目に涙が溜まりました。
涙がこぼれそうです。
あー、しまった。情けないことを言い過ぎて、かえって悲しませてしまったようです。
「私は……」
「わたくしは……」
「わたしは……」
「とうに好きになっています」
「そんなあなたをおしたいしています」
「大好きです」
三人がそれぞれのことを一度に言ったから、シュウ様の所以外は聞き取れませんでした。
「はーーっ? なんてーー?」
しまった。俺は、耳に手を当てて聞き直してしまいました。
まるで、テレビで良く見る憎たらしい奴の仕草です。
「はわわ、す、済みません。何でもありません」
三人は、真っ赤な顔をして慌てて口に手を当てています。
あんな、ポーズをしたのでもう一度は言ってくれないでしょう。
まあ、何でもないと言うことは、たいしたことでは無いはずです。
「そうですか。ではパッパッと済ませましょう」
俺は特にポーズは必要無かったのだが、なんとなく両手を挙げて両手のひらを天に向けた。
「少し早いですが、散々苦労した、豚肉からのプレゼントです。どりゃあああぁぁぁぁぁーー」
「あの、散々苦労した豚肉って何ですか」
「えーーっ、それ聞いちゃうかなー。それはねー……サンザンクロウ、ロースです」
「まさか、サンタクロースですか」
三人は頭が良い、死んだ目で声をそろえて言った。
「……」
俺は、滑ったことを自覚して情けない顔をして黙り込んだ。
「プッ」
どうやらその顔がおかしかったようだ。
ほんのちょっとだけ、笑ってくれた。
「では、リヤカーの所まで戻りましょうか」
「えっ、もう治癒は終ったのですか」
「ええ、とっくに終っています。じゃあ、帰りましょう」
「おい!!」
俺達が帰ろうとしたら、後ろから呼び止められた。
振り向くと、一人のやり手婆がこっちに歩いてくる。
「お前達、もう帰る気か。折角来たんだ遊んで行かないのか?」
偉そうな、やり手婆だなあ。何者だー?
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