203 / 428
第二百三話 初夢
しおりを挟む
「まずは、その四人について教えていただけますかな」
名古屋城天守閣には、今は主人のいない机が三つある。
あずさとヒマリと愛美ちゃんの勉強用の机だ。
はぁーっ、三人がいないと寂しい。
窓の外は、すでに暗闇になっている。
風呂から出て来た俺の正面に、北尾張を任せている加藤が座り、その左右に、美濃の斎藤と南尾張の東が座り、その左右に北伊勢の本多と南伊勢の藤堂が座っている。北伊勢の本多はもともと浜松の城主だったが、桑名に移動してもらい北伊勢を守ってもらっている。
加藤の後ろに尾野上隊長が座っている。
これが尾張の六人の最高幹部という事になる。
俺の正面にいる、加藤が俺の横にいる四人を見て質問してきたのだ。
「この四人は、俺の左隣が響子さん、その左横がスケさん、右隣がカノンちゃんその右横にカクさんだ」
紹介の順に、全員が頭を下げてくれた。
尾野上隊長は四人の顔を知っているようで少し驚いている。
そう言えば、尾野上隊長は今川家の主力部隊の隊長だった人だ。
「この四人は、元今川家、家中の者だったのだが、今は俺に命を預けてくれている」
「それならば、我らも同じにございます」
加藤が言うと、六人全員がうなずいた。
「そうだね。そうだろう。だが、お前達の命は、俺の守るべき命だ。そうだなー、どういったらいいかなー。もし、お前達がなにものかに捕まり人質になったら、俺はどんな手段を使っても助ける。だが、この四人なら、俺は見捨てることが出来る。そういう使い捨てに出来る命の持ち主なのさ」
まあ、そうは言ってもすでに情が入ってしまっているので、見捨てるようなことは無いけどね。
ここで、食事が運ばれてきた。
陶器の器だったので、信楽の事を思い出した。
「信楽って知っているか?」
「タヌキの焼き物ですな」
加藤でも知っているようだ。
有名なのだろう。
「うむ、陶器が手に入る」
「はっ!?」
加藤が、すごく驚いた顔をした。
何をそんなに驚いているのだろう。
「いや、だから、焼き物が手に入る。まだ、誰も手を出していないようだ。老人が多いのだろうが、人も結構生活しているようだ」
「殿、尾張には瀬戸があります。日本中に知れ渡る瀬戸物の産地です。陶器ならここで手に入ります。まあ、人が大勢いるのなら、そちらは喜ばしいことですが」
「なっ、なにぃーー!! 瀬戸物って瀬戸内海で出来た陶器のことじゃないのか」
「違います。尾張の瀬戸市で作られた陶器です」
「そうだったのか。じゃあ、瀬戸の花嫁って、尾張の歌だったのか!」
「いえ、そちらは瀬戸内海の歌だと思います」
「えーーっ」
「しかし、信楽に人が大勢いるという事がわかっただけでも、殿が遊びに行った価値がありましたなあ」
斎藤が言った。
この斎藤は、元は榎本と言う名だったのだが、美濃の岐阜城の城主なので斎藤と、名前を改めてもらった。
「何を言われます!! 遊びに行ったなどと!! 伊勢では、藤堂様を毛むくじゃらの化け物から守り、藤堂家を傘下に加えました。大和の地では新政府軍の支配から大和の人を解放し、解放軍まで組織しました。その上、新政府軍に入り込み織田軍から大勢の新政府軍の命を救いました」
響子さんが、俺の代わりに怒ってくれました。目に一杯涙が溜まっています。
「響子さん、俺の代わりに怒ってくれて、ありがとうございます。でも、まあ、それほどたいしたことはしていません」
「はぁーーっ!!」
全員が驚いて俺の顔をみた。
「響子殿、済みませんでした。殿のお供はさぞかし大変だったでしょう。その苦労も考えずに浅はかな言い方をしてしまいました。申し訳ありません」
「い、いいえ、私が言いたかったのは、シュウ様が決して遊んでいた訳ではないと言いたかったのです」
すでに、斎藤は理解しているようだ。
この後、大阪で見てきたことを詳細に伝え、結論としては新政府軍の兵士もまた、木田家が救うべき日本人であるという認識を共有した。
また、取り残された人が大勢いるようなので、本多と藤堂で、山の中の街を広く保護するように指示した。
話しが終る頃には深夜になってしまい、そのままこの部屋で眠ることにした。
「とうさん……とうさん……」
「あずさか?」
「うん、アドちゃんも一緒。来ちゃった」
「もう、怒っていないのか」
「うん、アドちゃんから全部聞きました」
「そうか」
「お疲れ様でした」
「うん、行ってみて感じたのだが、あずさが一緒でも良かったかなと思ったよ」
「でしょうー」
「でも、あずさは、お勉強があるのか。残念だ」
「ぶーっ!」
「ふふふ」
「アド! アドもお疲れさん。今日はもう寝よう。明日は、はやいしな」
俺は、久しぶりに眠った。
そして、幼い頃のあずさとお安い外食をする夢を見た。
夢の中の世界は、まだ隕石が近づいている事が分かっていない、貧乏だけど幸せな世界だった。
翌朝、目を覚ますとあずさとアドの姿はもう無かった。
「殿、支度をお願いします」
加藤が、服を持って来た。どこで用意したのか、スーツだった
俺は、もう一度風呂に入った。そして、風呂に入って綺麗になった体で用意されたスーツを着た。
こんなの、会社の面接の時以来だ。
「お迎えにまいりました」
「おお、ミサ!! 綺麗なドレスだなー!!」
「はあーーっ!!」
久しぶりに会ったのに、いきなり怒らせてしまった。
一体、俺は何をしてしまったんだーー。
名古屋城天守閣には、今は主人のいない机が三つある。
あずさとヒマリと愛美ちゃんの勉強用の机だ。
はぁーっ、三人がいないと寂しい。
窓の外は、すでに暗闇になっている。
風呂から出て来た俺の正面に、北尾張を任せている加藤が座り、その左右に、美濃の斎藤と南尾張の東が座り、その左右に北伊勢の本多と南伊勢の藤堂が座っている。北伊勢の本多はもともと浜松の城主だったが、桑名に移動してもらい北伊勢を守ってもらっている。
加藤の後ろに尾野上隊長が座っている。
これが尾張の六人の最高幹部という事になる。
俺の正面にいる、加藤が俺の横にいる四人を見て質問してきたのだ。
「この四人は、俺の左隣が響子さん、その左横がスケさん、右隣がカノンちゃんその右横にカクさんだ」
紹介の順に、全員が頭を下げてくれた。
尾野上隊長は四人の顔を知っているようで少し驚いている。
そう言えば、尾野上隊長は今川家の主力部隊の隊長だった人だ。
「この四人は、元今川家、家中の者だったのだが、今は俺に命を預けてくれている」
「それならば、我らも同じにございます」
加藤が言うと、六人全員がうなずいた。
「そうだね。そうだろう。だが、お前達の命は、俺の守るべき命だ。そうだなー、どういったらいいかなー。もし、お前達がなにものかに捕まり人質になったら、俺はどんな手段を使っても助ける。だが、この四人なら、俺は見捨てることが出来る。そういう使い捨てに出来る命の持ち主なのさ」
まあ、そうは言ってもすでに情が入ってしまっているので、見捨てるようなことは無いけどね。
ここで、食事が運ばれてきた。
陶器の器だったので、信楽の事を思い出した。
「信楽って知っているか?」
「タヌキの焼き物ですな」
加藤でも知っているようだ。
有名なのだろう。
「うむ、陶器が手に入る」
「はっ!?」
加藤が、すごく驚いた顔をした。
何をそんなに驚いているのだろう。
「いや、だから、焼き物が手に入る。まだ、誰も手を出していないようだ。老人が多いのだろうが、人も結構生活しているようだ」
「殿、尾張には瀬戸があります。日本中に知れ渡る瀬戸物の産地です。陶器ならここで手に入ります。まあ、人が大勢いるのなら、そちらは喜ばしいことですが」
「なっ、なにぃーー!! 瀬戸物って瀬戸内海で出来た陶器のことじゃないのか」
「違います。尾張の瀬戸市で作られた陶器です」
「そうだったのか。じゃあ、瀬戸の花嫁って、尾張の歌だったのか!」
「いえ、そちらは瀬戸内海の歌だと思います」
「えーーっ」
「しかし、信楽に人が大勢いるという事がわかっただけでも、殿が遊びに行った価値がありましたなあ」
斎藤が言った。
この斎藤は、元は榎本と言う名だったのだが、美濃の岐阜城の城主なので斎藤と、名前を改めてもらった。
「何を言われます!! 遊びに行ったなどと!! 伊勢では、藤堂様を毛むくじゃらの化け物から守り、藤堂家を傘下に加えました。大和の地では新政府軍の支配から大和の人を解放し、解放軍まで組織しました。その上、新政府軍に入り込み織田軍から大勢の新政府軍の命を救いました」
響子さんが、俺の代わりに怒ってくれました。目に一杯涙が溜まっています。
「響子さん、俺の代わりに怒ってくれて、ありがとうございます。でも、まあ、それほどたいしたことはしていません」
「はぁーーっ!!」
全員が驚いて俺の顔をみた。
「響子殿、済みませんでした。殿のお供はさぞかし大変だったでしょう。その苦労も考えずに浅はかな言い方をしてしまいました。申し訳ありません」
「い、いいえ、私が言いたかったのは、シュウ様が決して遊んでいた訳ではないと言いたかったのです」
すでに、斎藤は理解しているようだ。
この後、大阪で見てきたことを詳細に伝え、結論としては新政府軍の兵士もまた、木田家が救うべき日本人であるという認識を共有した。
また、取り残された人が大勢いるようなので、本多と藤堂で、山の中の街を広く保護するように指示した。
話しが終る頃には深夜になってしまい、そのままこの部屋で眠ることにした。
「とうさん……とうさん……」
「あずさか?」
「うん、アドちゃんも一緒。来ちゃった」
「もう、怒っていないのか」
「うん、アドちゃんから全部聞きました」
「そうか」
「お疲れ様でした」
「うん、行ってみて感じたのだが、あずさが一緒でも良かったかなと思ったよ」
「でしょうー」
「でも、あずさは、お勉強があるのか。残念だ」
「ぶーっ!」
「ふふふ」
「アド! アドもお疲れさん。今日はもう寝よう。明日は、はやいしな」
俺は、久しぶりに眠った。
そして、幼い頃のあずさとお安い外食をする夢を見た。
夢の中の世界は、まだ隕石が近づいている事が分かっていない、貧乏だけど幸せな世界だった。
翌朝、目を覚ますとあずさとアドの姿はもう無かった。
「殿、支度をお願いします」
加藤が、服を持って来た。どこで用意したのか、スーツだった
俺は、もう一度風呂に入った。そして、風呂に入って綺麗になった体で用意されたスーツを着た。
こんなの、会社の面接の時以来だ。
「お迎えにまいりました」
「おお、ミサ!! 綺麗なドレスだなー!!」
「はあーーっ!!」
久しぶりに会ったのに、いきなり怒らせてしまった。
一体、俺は何をしてしまったんだーー。
0
あなたにおすすめの小説
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる