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第二百二十話 明智対上杉
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城から一部隊がすでに私達の動きを察知して、待ち構えていました。その数は千人ほどです。千人の部隊はやはり脅威です。とても大勢で巨大に見えます。
ノブ君の目は見開かれ、手が震えています。
十人や二十人くらいなら今の私達なら何とかなるのでしょうけど、さすがに一度に千人の相手は無理です。
私たちが向かって行っても、数人の相手が限度でしょう。相手をしていない者が女性たちに襲い掛かれば被害が出ます。最悪死者が出るかもしれません。
無防備な女性達を無傷で守り切ることは無理だと思います。
「お前達の負けだ。観念しな!」
旗には十の文字があります。
新政府軍十番隊で間違いありません。
副隊長でしょうか小柄ですが、人相の悪い男がニヤニヤ笑っています。
私達は戦う事をあきらめて、うなだれました。
「うぎゃー!」「ぐあーー!!」
城の南から、叫び声が聞こえ始めました。
「おーーい!! 冨田ー!!」
城の方から、声がします。
「何ですかー! 辻隊長」
「城の南へ行けーー!!」
「えっ!? し、しかし、こいつらは?」
「そんなことはどうでもいい! さっさと行くんだーー!!」
冨田と呼ばれた男は渋々、城の南へ移動を始めました。
とても悔しそうです。
何かよからぬ事でも考えていたのでしょうか。
きっと、シュウ様がこちらの動きを見て、攻撃の手を強めてくれたに違いありません。
さすがは、シュウ様です。
「ノブ君、今のうちです尾野上隊長のところまで急ぎましょう」
「シュウさんが、敵を引きつけてくれたんだね」
「そうよ。だから早く」
ノブ君は、先頭を元気よく目を輝かせて走り出しました。
このまま、尾野上隊長のところまで逃げられれば、後は尾野上隊長が、守ってくれます。
尾野上隊長は橋の前まで出て、私達を迎え入れようと待ってくれています。なんとか、任務は達成出来そうです。
「桃井組頭、報告してきました」
大阪城にむかって、明の旗印の軍が淀川の橋を渡るのを見つけて、部下に大殿へ報告させました。
その部下が戻ってきました。
「ちゃんと、出来たのでしょうね」
「も、もちろんです。『古賀忍軍、い組、桃井組頭配下若園! 大殿に至急知らせたいことがあります』ちゃんと言えましたよ」
この子は新たに正規メンバーになったばかりです。
心配していましたが、どうやら初任務は無事終ったようです。
「で、大殿はどうされましたか?」
「はい、上杉様に伝令を出されました。私と同じタイミングで通天閣を出ましたので、間もなく陣に着く頃かと」
若園ちゃんが言い終わると、上杉軍が動き始めました。
大阪城のまわりはすでに何も建物はありません。
それは、北側も同じです。ただ、南や東ほど進んでいませんので、全体が見渡せるビルが、比較的近くまで残っています。
私はその上に登り配下四人と明軍が建物の間を抜けて荒野に出てくるのを、かたずを呑んで今か今かと待ち構えます。
「きたーー!! 明軍だーー!!」
「桃井組頭! あれは織田家明智軍だと、ミサ様と大殿が話していました」
「なんでわかるのーー?」
「ですよね」
どうやら若園ちゃんも歴史は苦手のようです。
明の一文字で、何でそんなことが解るのかがわかりません。
上杉様は大阪城の北西へ移動し、明智軍を待ち構えるようです。
「桃井様、見えました!」
別の隊員がいち早く見つけて、指をさしました。
舗装道路の中央を綺麗な隊列を組み、建物を抜けてきます。
前面に千人程の日本の甲冑を着けています。
映画とか美術館でしか見た事の無いあの甲冑です。
鎧の部品がぶつかる音があたり一面に鳴り響きます。
「すごい!!」
部隊全員が荒野に姿を出すと、思わず声が出てしまいました。
恐らく隊長が几帳面な方なのでしょうか、整列した姿が美しい。
明智軍は、前面に甲冑隊が千人、その後ろに足軽隊、その後ろは、三千人ほどが長い布の袋に入った者を持っています。何でしょうか。
そして、そこから五百メートル程先に上杉軍が整然と整列をして待ち構えます。
「おおおぉぉぉ」
明智軍から地鳴りのような低いどよめきが起りました。
「ロボだ。ロボだー!」「自衛隊はあんな新兵器を開発していたのか。まるでアニメじゃねえか」
続いて、ザワザワと騒々しくなりました。
その気持ちはわかります。まるで漫画です。はい。
「うろたえるなー! みっともない! どうせ見た目だけだ。張りぼてに決まっている。戦いが始まればすぐに解る。ところであれはどこの軍だ? 天地海山? 武田信玄の風林火山じゃあるまいし、誰かわかる者はいないかー」
明智軍の一番後ろで威張っている人が言います。
あれが大将明智さんでしょうか。
上杉軍は旗に天地海山と書いています。
上杉家は、天地海山教徒です。ですから旗印もそれにしている様です。
「明智様、あれは越後の上杉軍です」
「なに、上杉謙信か。なぜ、こんな所に? 間違いないのか?」
「はっ、越中での戦いで見てきた者がいます」
「なるほど、柴田に負けた上杉か。戦国時代の上杉とは違う、恐るるに足らずだ。だが、まさか俺達の動きを読んで待ち構えるとはたいしたもんだ、そこだけは褒めてやる」
いいえ、読んでいません。
たまたまです。偶然同じ日になっただけだと思います。
交通事故みたいなものですね。
「さてと、上杉軍の度肝を抜く時間がやって来た。全軍準備しろ」
「はっ!!」
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! な、なんなんだあれはーー?」
上杉軍から驚きの声が上がりました。
ノブ君の目は見開かれ、手が震えています。
十人や二十人くらいなら今の私達なら何とかなるのでしょうけど、さすがに一度に千人の相手は無理です。
私たちが向かって行っても、数人の相手が限度でしょう。相手をしていない者が女性たちに襲い掛かれば被害が出ます。最悪死者が出るかもしれません。
無防備な女性達を無傷で守り切ることは無理だと思います。
「お前達の負けだ。観念しな!」
旗には十の文字があります。
新政府軍十番隊で間違いありません。
副隊長でしょうか小柄ですが、人相の悪い男がニヤニヤ笑っています。
私達は戦う事をあきらめて、うなだれました。
「うぎゃー!」「ぐあーー!!」
城の南から、叫び声が聞こえ始めました。
「おーーい!! 冨田ー!!」
城の方から、声がします。
「何ですかー! 辻隊長」
「城の南へ行けーー!!」
「えっ!? し、しかし、こいつらは?」
「そんなことはどうでもいい! さっさと行くんだーー!!」
冨田と呼ばれた男は渋々、城の南へ移動を始めました。
とても悔しそうです。
何かよからぬ事でも考えていたのでしょうか。
きっと、シュウ様がこちらの動きを見て、攻撃の手を強めてくれたに違いありません。
さすがは、シュウ様です。
「ノブ君、今のうちです尾野上隊長のところまで急ぎましょう」
「シュウさんが、敵を引きつけてくれたんだね」
「そうよ。だから早く」
ノブ君は、先頭を元気よく目を輝かせて走り出しました。
このまま、尾野上隊長のところまで逃げられれば、後は尾野上隊長が、守ってくれます。
尾野上隊長は橋の前まで出て、私達を迎え入れようと待ってくれています。なんとか、任務は達成出来そうです。
「桃井組頭、報告してきました」
大阪城にむかって、明の旗印の軍が淀川の橋を渡るのを見つけて、部下に大殿へ報告させました。
その部下が戻ってきました。
「ちゃんと、出来たのでしょうね」
「も、もちろんです。『古賀忍軍、い組、桃井組頭配下若園! 大殿に至急知らせたいことがあります』ちゃんと言えましたよ」
この子は新たに正規メンバーになったばかりです。
心配していましたが、どうやら初任務は無事終ったようです。
「で、大殿はどうされましたか?」
「はい、上杉様に伝令を出されました。私と同じタイミングで通天閣を出ましたので、間もなく陣に着く頃かと」
若園ちゃんが言い終わると、上杉軍が動き始めました。
大阪城のまわりはすでに何も建物はありません。
それは、北側も同じです。ただ、南や東ほど進んでいませんので、全体が見渡せるビルが、比較的近くまで残っています。
私はその上に登り配下四人と明軍が建物の間を抜けて荒野に出てくるのを、かたずを呑んで今か今かと待ち構えます。
「きたーー!! 明軍だーー!!」
「桃井組頭! あれは織田家明智軍だと、ミサ様と大殿が話していました」
「なんでわかるのーー?」
「ですよね」
どうやら若園ちゃんも歴史は苦手のようです。
明の一文字で、何でそんなことが解るのかがわかりません。
上杉様は大阪城の北西へ移動し、明智軍を待ち構えるようです。
「桃井様、見えました!」
別の隊員がいち早く見つけて、指をさしました。
舗装道路の中央を綺麗な隊列を組み、建物を抜けてきます。
前面に千人程の日本の甲冑を着けています。
映画とか美術館でしか見た事の無いあの甲冑です。
鎧の部品がぶつかる音があたり一面に鳴り響きます。
「すごい!!」
部隊全員が荒野に姿を出すと、思わず声が出てしまいました。
恐らく隊長が几帳面な方なのでしょうか、整列した姿が美しい。
明智軍は、前面に甲冑隊が千人、その後ろに足軽隊、その後ろは、三千人ほどが長い布の袋に入った者を持っています。何でしょうか。
そして、そこから五百メートル程先に上杉軍が整然と整列をして待ち構えます。
「おおおぉぉぉ」
明智軍から地鳴りのような低いどよめきが起りました。
「ロボだ。ロボだー!」「自衛隊はあんな新兵器を開発していたのか。まるでアニメじゃねえか」
続いて、ザワザワと騒々しくなりました。
その気持ちはわかります。まるで漫画です。はい。
「うろたえるなー! みっともない! どうせ見た目だけだ。張りぼてに決まっている。戦いが始まればすぐに解る。ところであれはどこの軍だ? 天地海山? 武田信玄の風林火山じゃあるまいし、誰かわかる者はいないかー」
明智軍の一番後ろで威張っている人が言います。
あれが大将明智さんでしょうか。
上杉軍は旗に天地海山と書いています。
上杉家は、天地海山教徒です。ですから旗印もそれにしている様です。
「明智様、あれは越後の上杉軍です」
「なに、上杉謙信か。なぜ、こんな所に? 間違いないのか?」
「はっ、越中での戦いで見てきた者がいます」
「なるほど、柴田に負けた上杉か。戦国時代の上杉とは違う、恐るるに足らずだ。だが、まさか俺達の動きを読んで待ち構えるとはたいしたもんだ、そこだけは褒めてやる」
いいえ、読んでいません。
たまたまです。偶然同じ日になっただけだと思います。
交通事故みたいなものですね。
「さてと、上杉軍の度肝を抜く時間がやって来た。全軍準備しろ」
「はっ!!」
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!! な、なんなんだあれはーー?」
上杉軍から驚きの声が上がりました。
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