底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

文字の大きさ
255 / 428

第二百五十五話 子猫の実力

しおりを挟む
「まずは、和歌山城の現状からわかっている範囲で説明します」

「ふむ」

「聞いて来た話しでは、和歌山には十分な食糧があるというお話でした。でも現状では、夜に小さなおにぎりを一つ食べるだけにしても、後十日で完全に無くなってしまいます」

 凄い、私がお城で聞いた話しと同じです。あずさちゃんはどうやって調べたのでしょうか?

「うむ」

「このまま追い詰め過ぎると、切腹をする恐れがあります」

「な、なんだって」

 すごい、そんなことまで……。

「十文字切りとか、三文字切りなど作法を確認しています」

「なにーっ! 本気じゃねえか。戦国時代じゃねえんだ。切腹なんてする必要ねえだろう。日本人の心には切腹が染みついているようだなあ」

 なにーっ!!
 昨日の晩、私が聞いた内容と同じです。
 ……
 違います。あずさちゃんは、私を心配してついて来ていたのです。
 バレていたのです。全然気が付きませんでした。

「はい。日本人の命は何よりも大事です」

「ちがいない!」

「そこで、私は竹中へい、半兵衛のように一生懸命子供なりに真剣に考えました」

「うむ」

「木田家の経済力を見せて、度肝を抜き屈服させる方法です」

「なるほど、武力では切腹をしてしまうから、経済力で屈服させるというのか」

「さすがは、とうさんです」

 うわあぁ、とうさんが少し嬉しそうな顔になりました。

「そこで祭りか、理にかなう。まさか遊びたくてやっているとは思わなかったが、そんな思慮深い考えがあったとは、あずさも大人になったなあ。任せて良かった」

 ひゃーーっ。
 とうさんは祭りをするというのを、もう見抜いていたみたいです。
 でも、騙されています。
 ただ、楽しみたかっただけだったのですよ。
 でも、さすがはあずさちゃん、切腹とかを持ち出してなんとか言いくるめました。半兵衛も孔明もビックリです。

「そこで、とうさんに命じます」

「ふ、ふむ」

「列車を和歌山まで運行させて下さい。とうさんがいないと思って兵士だけと考えていましたが、列車が使えれば一般の方も参加出来るようになります」

「良しわかった。食事が終ったらすぐに取りかかろう」

「お願いします。それと、ピーツインのステージの設営。屋台の増設、新たなジェネレーター。それとシュザク達六百人にアドちゃんと同じアダマンタイト製のメイド服をお願いします」

「う、うむ」

「あとは、とうさんが足りないと感じたところを、よきに計らってください」

 ひゃあ、全部丸投げしてしまいました。
 とうさん使いが荒いです。

「あ、あの、私達のやることが無くなってしまいますが」

 とうさんが可哀想過ぎてつい口を挟んでしまいました。
 とうさんが、「おお、ヒマリちゃーーん」という顔になっています。

「だめですよ、ヒマリちゃん。とうさんを甘やかしちゃぁ。私達はピーツインの練習があります」

「ええーーっ。は、はい」

 あずさちゃんは恐ろしい人です。
 とうさんに「甘やかしちゃぁいけません」なんて言っています。
 でも、とうさんに任せることが出来るのなら、祭りは成功したようなものです。何しろ世界一頼りになる人ですから。
 あずさちゃんはとても嬉しそうに、フォリスさんの横で給仕の手伝いを始めました。

「あの、よろしかったのですか?」

 古賀さんがとうさんに近づき、誰にも聞こえないほどの小声で話しかけました。

「ふふふ、あずさが楽しそうならそれでいい。それに木田家はこれから、戦争が続く。手始めに越中柴田との戦い、その後は北海道だ。関西は羽柴や新政府との小競り合いは続くだろう。秋に新潟で秋祭りを考えているが、それまでは暗い日々が続く、ここで祭るのもいいんじゃないかな」

「そうですね」

 古賀さんは笑顔ですんなり引き下がりました。
 大人の人はすべて分かっているみたいです。
 深くわからないのは、子供の私とあずさちゃんだけなのでしょう。
 はやく、大人になりたいものです。



「アド!」

「うまーい」

 アドちゃん、とうさんが呼んでいますよ。
 しかも、また、ニャを忘れていますよ。

「アド! アド!」

「やっぱり、ハンバーグの方がうまいニャ」

 やっぱり、子供はハンバーグですよね。
 じゃなくて、アドちゃん、とうさんが呼んでいます。
 アドちゃんは、とうさんのヒザの上にいますので、聞こえないわけがないと思うのですが。

「アド! チューはどこがいい?」

「口に決まっているニャ」

 アドちゃんは、ハンバーグのソースがびちゃびちゃに付いた口をとがらせました。

「聞こえているじゃねえか」

「ニャ! 騙したのかーー!! 許せないニャー!!」

 許せないのはこっちです。
 とうさんとチューをするなんて、百年早いです。

「お前に頼みたいことがある」

「いやニャ!」

「カンリ一族だが、お前の配下に入れて欲しい」

「耳が遠いのかニャ。いやニャ」

 とうさんはさっきの仕返しで、アドちゃんの言うことをまるで無視します。

「オオエ、カンリ一族は今からアドの配下になってもらう」

「はっ」

「だから、いやニャ」

「オオエ、本当にいいのか?」

 とうさんが自分で言っておいて驚いています。

「ふふふ、おやじ様に言われれば何でも嫌はございません」

「だから、いやニャ」

「おやじ様、アド様の実力が知りたいのですが」

 私がぶつかりそうになった、人相の悪い恐い男の人が言いました。

「ふむ。では、左近。アドとやってみるか? その方がはやい」

 そうそう左近さんです。

「しかし、それでは、幼女虐待になってしまいます」

「アド、戦うのは嫌か? お前、なめられているぞ」

「アドをなめる奴は許さないニャ!!」

 アドちゃんはとうさんの服で口を綺麗に拭くとロビーの広く開いているスペースに移動しました。
 アドちゃんの口は笑顔のようになっていますが、目は怒りに燃えているようです。

「左近、胸を貸してやるニャ。かかって来るニャ」

 アドちゃんの見た目は、六歳位です。
 完全に幼児です。
 幼女に言われて、左近さんは少し怒りの表情が見えます。
 ですが、すぐに驚きの表情になりました。

「来ないなら、こっちから行くニャ」

 アドちゃんがゆっくり左近さんに近づきます。

「まっ、まいりました。これよりアド様の命じるまま木田家に尽くします」

 何があったのでしょうか。
 達人は歩く姿を見るだけで、その実力がわかるとでも言うのでしょうか。

「ふふふ、アドそう言うことだ。頼んだぞ」

「はーーーっ。はめられたニャーー」

「あの、何があったのでしょうか」

 思わず聞いてしまいました。

「ふふふ、ヒマリ様。体験してみますか」

 そう言うと左近さんが私の顔を見ました。
 その目が光ったように感じました。

「あっ!?」

「おわかり頂けましたか?」

 私の体が、動かなくなりました。

「あ、はい」

「アド様には、まるで通じませんでした。凄いお方です」

「アドはすごいニャ!」

 アドちゃんは、少し自慢そうです。
 た、単純です。

「じゃあ、いいな頼んだぞ」

「……」

 アドちゃんはしょんぼりしています。
 しょんぼりしながらトボトボ歩いて、当たり前の様にとうさんのヒザの上に座りました。
 そして、フォリスさんに指でハンバーグの皿を示しました。
 どうやらお替わりをするようです。

 ただの子猫だと思っていましたが、ひょっとしてアドちゃんってとんでも無く強いのでしょうか。
 木田家の強さランキングって、いったいどうなっているのでしょうか?
 少なくとも戦ったら、私ではアドちゃんには勝てないという事はわかりました。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...