底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

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激闘編

第二百九十三話 呂瞬対ゲン

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「ごちゃごちゃ言ってねえでかかってこい!」

 ゲン様が無表情で、すごみます。
 よほど自信があるのでしょう、ゲン様の言葉にひるむ事無く呂瞬さんが襲いかかります。
 遅れまいと慶次郎さんと張高さんも動きます。
 一益さんも、手の平を前に出しました。

 ――!?

 恐ろしい震動が体に伝わりました。
 大砲が近くで撃たれた様な震動です。
 呂瞬さんの体が橋を越え廣瀬さんの足下に転がります。
 呂瞬さんの体を見たら、鎧が水面に大きな石を投げ込んだような波紋のように波うってへこんでいます。

 鎧の中の呂瞬さんが大きく目を見開いて、目玉がだいぶ前に飛び出しています。でも、意識はあるようです。
 鎧が必死で呂瞬さんを守ったようにも見えます。
 鎧が動かないためなのか、呂瞬さんは起き上がれないようです。
 鎧の中でゴソゴソもがいています。

「ゲン様は手加減を……したのでしょうか」

 廣瀬さんがつぶやきました。
 呂瞬さんの体が、廣瀬さんの足下で止まったと言う事はそこを狙っていますよね。
 もう少し強ければゾンビの群れの中です。
 この呂瞬さんの絶妙な位置を見れば手加減をしている事は明白ですね。

 ゲン様は右手の平を前に出して止まっています。
 大殿のように、掌底を使って攻撃したようです。
 拳なら鎧を突き破っていたかもしれません。

「か、片手かよ! まいるぜ!!」

 一益さんがあきれたようにつぶやきます。

「次はおめー達か?」

 ゲン様はそう言うと、一益さんと慶次郎さんを見ました。
 笑顔でも無く、怒りでも無い無表情なゲン様の顔は、他のどの表情よりも恐いです。
 一益さんと慶次郎は、恐ろしい勢いで首を振っています。
 頭にプロペラを付けたら飛んで行きそうな勢いです。

「兄ちゃん、こいつこわいよー」

「こいつだとー!!」

「こ、このお方こえーーよーー」

 あの慶次郎がゲン様を恐れています。

「ちっ、てめーは、ゲンさん、いやゲン様と呼びゃあがれ! このやろー!」

 慶次郎さんが今度は凄い勢いで首を盾に振っています。
 そして、張高さんを見ました。
 張高さんは駆け寄ろうとして、その姿のまま硬直しています。
 そして、ゲン様の視線に気が付くと素早く地面に両手をつきました。

「ま、まいりました」

 頭を下げます。

「ちっ、やる前からそれじゃあ、俺の何がわかるって言うんだよ!!」

 いやいや、やらなくてもわかりますよ。
 ここから見ている私でさえもわかりますよー!

「わ、わかります。もう、ぜんぜんわかります」

 そう言う感じでよく言いますけど、張高さん日本語間違っていますよー。

「ちっ、わかった。鎧が壊れるのが嫌なんだな。大丈夫だ。壊れちゃいねえ。少し目を回しているだけだ」

 ゲン様が言い終わると、呂瞬さんが立ち上がりました。
 鎧が元に戻っています。
 あの鎧は、生きているのでしょうか? ゲン様のとんでも無い攻撃で、本当に目を回していたということなのでしょうか?

「お、おおっ! わしの鎧が治った!」

 呂瞬さんが喜んでいます。

「見ろ、言った通りだろ」

 ゲン様はまだ張高さんと戦いたいようです。

「いえ、私ごときでは呂瞬様に遠く及びません。いまのまま戦っても勝負になるとは思えません。ご容赦頂きたい」

「ちっ!! まあいいか。少しは楽しめた」

「!?」

 もはや全員が驚愕しています。
 これで、少し楽しめた程度だそうです。

「あ、そうか、武器だ!! お前達は全員武器をつかおっか」

「ひーっ、ゲン様がこえーよー! 兄ちゃーーん!!」

 慶次郎が四つん這いになって、涙目で一益さんに近寄ります。
 ゲン様、どうやら全員ゲン様の実力を充分理解しているみたいですよ。
 そろそろ、許してあげて下さい。

「ちっ! てめーはいかれてやーがるのか!?」

 一益さんがゲン様に言いました。
 ゲン様はそれを聞くと、視線を一益さんに向けてしばらくその目を見つめました。

「なるほどなあ。赤穂さんが推薦するわけだ。てめーはだいぶいかれているようだなあ。会えて良かったぜ! 実力も性根もよおーく理解できた」

 一益がなおもゲン様をてめー呼ばわりするのを見て、一益さんの本性を見抜いたようです。

「おーい、廣瀬さん、赤穂さーん!! 俺達は帰る。こっちへ来てくれー。おい、てめーら何をしている。前線へ戻らねーか! ボヤボヤするな馬鹿やろー!!」

 ゲン様が、三人に言いました。
 呂瞬さんはすでにこっちにいます。
 私と廣瀬さんはゲン様の所へ戻りました。
 その間にゲン様は伊達様の脱臼を治しているようです。

「よし、俺達は兄弟のところへ行かねえといけねえ。北海道国に喧嘩をうっちまったからなあ」

「なるほど、大殿に報告というわけですな」

 伊達様がニヤニヤして言いました。

「廣瀬さん、兄弟のところまで案内を頼めるか?」

「は、ひゃい。お、大殿のところにゃら、ご案にゃいできます」

 わかり易く動揺しています。
 これでは、大殿に会いたいと言うのが誰の目にも明らかですよね。
 まさか、廣瀬さんは大殿のことを……。

「よかったなあ、赤穂さん。いよいよ大殿に会える」

 伊達様がニヤニヤしたまま、今度は私にいいました。

「なななにゃ、にゃにえを言うのれすか」

 はーしまったー。廣瀬さんのせいで私まで動揺してしまいましたー。
 ゲン様を見たら、何事も無い表情をしています。
 やれやれ私の気持ちは、ばれていないようです。

 私と廣瀬さんが天夕改に乗り、ゲン様と伊達様が独眼竜で大殿のいる金沢を目指しました。
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