底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

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九州漫遊編

第三百三十五話 浴衣美人

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「何もかもが懐かしい……」

 俺は、目を細めて景色を楽しんでいる。
 アスファルトの国道を挟むように緑が続き、山に囲まれているそんな風景。
 今日の空は雲が多いがそれが気温を下げてくれている。
 とても気持ちがいい。

「ほほほ、八兵衛さん。ここは、初めての土地です。懐かしくはありませんよ」

「そうですね。響子さん、でも何だか伊勢の道中を思い出しました」

「わたしもー!!」

 カノンちゃんが同調してくれた。
 肝属家の関所を出てからここまで、すれ違う人は一人もいなかった。
 きっと肝属家の悪評が人を近づけないのだろう。
 今日は、久遠さんも歩いている。
 背中を出したら首をブンブン振って断られた。

「すっかり、遅くなりましたね」

 カクさんが言った。

「都城の関所あたりで、泊まりになりそうですね」

 肝属家の関所で食事を振る舞ったので、出発に時間がかかってしまった。





「とまれーーー!!!!」

 伊藤家の関所は道の駅の手前にあった。
 立派な道の駅で、大きな物見櫓が作られていて、ここから関所破りも監視している様だ。

「お勤めご苦労様です」

 一行のあるじ、久美子さんが番兵の前に進み出た。
 ポケットから通行手形を出して手渡した。
 それを一人の番兵が受け取ると、建物の方へ移動していった。

「お前達は、何の目的で何処へ行く」

 番兵達の隊長だろうか、少し態度のでかい男が聞いてきた。
 手形の確認の間の時間稼ぎと、あやしくないかの尋問だろう。

「はい、この先で戦う島津軍への慰問です」

「なにっ!!」

 そう言うと、俺達一行の女性陣をジロジロ見ている。
 あっ、鼻の下が伸びた。
 わかりやすい。
 ミサの表情がみるみる曇り不快をあらわにした。
 それはさあ、ミサも悪いよー。半分出ているんだもん。
 嫌なら隠さなきゃあ。

「隊長、島津義久様の許可がある本物です」

 配下の番兵が走って戻ってきて報告した。

「義久様だと! 島津家当主の許可……、あんた達はいったい何者なんだ?」

「うふふ、ただの慰問の一行です。通して頂いてもよろしいかしら」

「まあ、良いだろう。あやしいところは無い」

 どうやら、伊藤家は肝属家と違って山賊では無いようだ。

「あのー、番兵さん」

 俺は興味津々で番兵の隊長に話しかけた。

「んっ!? なんだ」

「あれは和牛の像ですか?」

「そうだ。都城牛は名物だからな」

「番兵さん」

「なんだ?」

「まだ食べられるのですか?」

「そんなわけあるか!! とっくに食べ尽くしたわ!!」

「そうですか……。番兵さん」

 俺はガックリ肩を落とした。

「なんだ!!」

 番兵さんの少し機嫌が悪くなった。

「立派な道の駅ですね。街までまだ少しあります。今日は駐車場に泊めさせてもらってもよろしいですか?」

「まあ、良いだろう。ここには二十人程の兵士がいる。襲われても良いのならな」

 番兵の隊長さんはニヤリと笑った。
 まあ、そんな事はする気が無いが、度胸があるならやって見ろという所だろうか。

「あの、番兵さん?」

「なんだ、さっきからうるさいぞ!!!! もう黙って行け!!」

 とうとう怒られた。

「そうですか。申し訳ありません。『食事の準備をするので兵士の皆さんの分も用意しましょうか』と言おうと思いましたが口にチャックで黙って行きますね」

「なにっ!! …………」

 隊長は驚いて俺達を見たが、手持ちの荷物が少ないのを見ると、手でシッシッと追っ払う仕草をした。

「まあ、隊長から駐車場使用許可も取ったし始めますか」

「まさか、八兵衛さん!!」

 だが、うちの一行は感づいたようだ。
 これだけ広い駐車場なら、いくつか屋台を出してプチ祭りが出来る。

 ――あれ?

 そう言えば俺は、仙台で屋台を大量に作ったはずだが、一つも手元にない。
 さては、あずさかー!?
 まあ、いいか。一度作った物はすぐにつくれる。

 俺は、銭湯と宿舎を駐車場の隅に作って、皆を休ませると晩飯のための屋台作りをはじめた。
 屋台作りは、全員が風呂に入り着替えて出て来るのに間に合った。
 女性陣は、夏祭りのように浴衣で出て来た。

「う、美しい」

「まあ」

 響子さんとカノンちゃんが赤くなってくねくねしている。
 ミサと久美子さんと久遠さんは、無言だがうれしそうにそして恥ずかしそうに頬を染めた。
 ここの女性達はみんな優しい。
 俺みたいな醜い豚野郎に言われても本当にうれしそうにしてくれる。
 涙が出そうだよ。あっいけねえ、涙より先に鼻水が出た。

「よし!! 都城、初夏祭りじゃーーーっ!!!!」

「おおおおーーーーーっ!!!!」

 さっきまで曇っていた空に青空がのぞいている。
 太陽はだいぶ傾いているが、まだ昼のように明るい。
 全員の声が、青空に届くように響いた。

 ――んっ!?

 やけに声が大きいと思ったら、アドやオオエ、古賀忍軍い組の忍者の子が四人、浴衣で姿をあらわして楽しむ気満々だ。
 相変わらず、アドは猫耳と尻尾は付けている。
 尻尾が浴衣の裾を持ち上げてパンツが丸出しじゃねえか。
 でも、安心して下さい、見た目は幼女ですが、アドはきっちり大人です。
 合法ロリなので、じっくり楽しんでも大丈夫です。

 しかし、アドの奴最近はすっかり幼女が板について可愛すぎるなぁー。
 あっ、さっきの鼻水、鼻水じゃ無くて鼻血だった。
 おっさん思わず興奮していたようだ。

「な、なんじゃ、あれはーー!?」

「お待ち下さい。祐子様!」

「祐子様では無い、お忍びの時はユウと呼べといつも言っているじゃろう」

 なんだか、若いのにばあさんみたいなしゃべり方をする女がやって来た。
 まあ、顔は可愛い方だ。
 響子さんやカノンちゃんに慣れてしまった俺には、普通に見えてしまう。
 だから普通に見えるという事は美人のうちだろう。
 俺みたいな豚男がこんな事を思う事も失礼な事なのだろうけど。

「こんな、ご時世にいったい何をしようというのじゃ!!」

「うふふ、初夏祭りですよユウ様」

「かーっ!! 可愛いのう。お人形さん見たいじゃ!! 名は何と言うのじゃ?」

「カノンと申します。ユウ様はこちらへ何をしに」

「ふふ、ここには、秘密の場所があるのじゃ」

「なんですか、それは?」

「ふむ、教えたら祭りに参加させてくれないか。それなら教えてやる。とっておきの情報じゃ」

 カノンちゃんは俺の顔を見た。
 もちろん良いに決まっている。
 祭りは人数が多い方が楽しい。俺はコクリとうなずいた。

「うふふ、良いですよ」

「よし、実はな…………」

 ユウ様はカノンちゃんの耳元に小声で言った。

「はっ、はちみつーー!!!!」

「こ、これ。大声で言うでない!」

 どうやら近くに養蜂場があって蜂蜜が取れるようだ。
 なかなか、素晴らしい情報だ。
 これは、手厚くもてなさなければならないだろう。

「ユウ様、そこにお風呂があります。カノンちゃんに案内してもらって浴衣に着替えてきて下さい。歓迎しますよ」

 思わず、俺が言ってしまった。

「はーーっ!! なんですかこの豚は馴れ馴れしい!! 豚はそこの養豚場に行っていなさい!!」

 御供の女性に叱られてしまった。
 どうやら、近くに養豚場があるらしい。

「私は、使用人の八兵衛です。出過ぎた真似をしました。お許し下さい」

 俺は丁重に頭を下げた。

「これ、サッチン、お忍びじゃ。ほどほどに! それに良く見たら可愛い顔をしているじゃ無いか」

「そう言われれば、ユウ様の好きなアニメの空飛ぶ豚に似ています」

 おぉーーい、ユウ様はひょっとすると世にも珍しい豚好きの女性なのかー。
 まあ、あの豚は呪いかなんかで豚になっているのだが、俺は生まれつきの豚だ。人間には戻らんぞ。

 ともあれ、二人の浴衣姿の女性が初夏祭りへ加わってくれた。
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