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九州激闘編
第三百五十話 名乗り
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「なっ、なぜ、わかったのですか?」
私は、声が震えるのを押さえながら返事をしました。
「おおっ、本当にいた!!」
そう返事をしたベッキーさんに、殺気がありませんでした。
「えっ!?」
私は驚くと同時に、緊張から解放されました。
どういうことでしょう。
「いやー、昨日から二時間おきにやっているんですよ。おかげで部下から、頭がおかしくなったんじゃ無いかと疑われてしまいましたよ」
「そ、それは……」
それは、卑怯と言いそうになりましたがやめました。
どんな状況でも負けは負けです。
うかつにバレたと勝手に思い込み、声を出した私の負けです。
「たしか、約束をしていましたよねえ」
「はっ!!??」
「何でも言う事を聞くと」
――うわあー!! そうでした。
なんだか、そんな約束をしていた気がします。
やばい!!
「わかりました。私も木田家の忍び、約束は守ります。何なりとどうぞ」
いやーーっ!! エッチなやつだけはやめてーー!!
「ふふふ、では、エッチな事でもお願いしましょうか」
だからーー!! やめてー!!
「くうぅぅっ!」
大殿!! 申し訳ありません。
桃井はここまでのようです。おゆるしください。
「なーーんちゃって!! 嘘です。あの約束は俺が桃影殿を見つけた時という約束だ。こんなインチキは、俺の勝ちにはならない。ふふふ、これ以上続けると、桃影さんが自害しそうです。ただ、食事くらいは同行していただけませんか?」
「食事ですか?」
ほっ! よかった!
「そうです。そのまま消えたまま同行して下さい。ところで、桃影さんはお一人ですか?」
「ええ、ひとりです。部下がいては、戸次様にすぐ察知されてしまいますので」
「そうですか。ふふふ……」
この時、私は意味深に笑った戸次様の笑いの深意に気付く事が出来ませんでした。
ホッとしていたため、注意力が散漫になっていました。いいえ、それすらも手のひらの上だったようです。
戸次様は一流の策士でもあるようです。
私は早足で進む戸次隊の後ろを、姿を消したまま付いて行きます。
部隊は、国道を進み、そのまま折れ曲がる国道を県道へ直進します。
県道は宇城の街を抜けると川を越え少し行くと、急に開けた田園風景になりました。
道の横に高い建物が見えてきました。
「ここです。つきましたよ」
戸次様が誰かに話しかけるように言いました。
どうやら部隊の駐留地に到着したようです。
「……」
私は返事を返しませんでした。
「はーー、隊長! またですか? 誰もいないじゃないですか!」
戸次様の配下の兵士は、いい加減あきれているようです。
「うるさいんだよ。応接にお茶と食事を二人分運んでおけ、その後は絶対に誰も近づくな!! わかったな!」
「はいはい、二人分食べるんですね。わかりました」
「ちっ!」
食事の準備が終わると、戸次様はキョロキョロあたりを見回します。
「……うふふ、心配しなくてもちゃんといますよ」
「そうですか。すごいですなあ。俺でも気配が分らない」
「ありがとうございます。戸次様に言われると本当にうれしいです。そういえば戸次様も体が一回り大きくなっていますね。この短期間にさすがですね」
「ふふふ、桃影さんに『精進して下さい』って言われましたからね。毎日、朝から晩まで寝る間を惜しんで、精進しておりました。ところで桃影殿、食事はそのままでは出来ないでしょう……」
私は少し悩みましたが、いずれは戸次様も木田家の一員になるかもしれない方。いいえ、木田家に絶対必要な人材と考え、顔を見せる事にしました。
しばらくたわいも無い話をしていると、ノックの音がしました。私はすぐに姿を消しました。
「どうした、入れ!!」
「報告します」
「うむ」
「島津軍、五百名程で宇城に入りました。ここから二キロ弱先の学校を拠点にして、本日は休むようであります」
「うむ、分った。ふふふ、桃影殿は姿と気配を消しましたか。次は戦場ですな」
私は、島津軍に合流すべく、戸次様の拠点を後にしました。
翌日は、島津軍も戸次隊も田園地帯で対峙して、本陣の設営、物見櫓の設営で一日終わりました。
翌日、大友軍の本体四千がやって来ました。
いよいよ野戦の開戦です。
早朝、明るくなると朝食が始まりました。
お互いの様子を見ながら、食事を終わらせ、陣立てが始まりました。
宇城の田園、緑の大地を両軍が移動します。
島津軍は、真田、安東、島津の三隊を本陣の前に並べます。
右翼は、赤い真田隊、左翼は安東隊、中央に島津本体総勢五百五十四名です。
右翼と左翼がやや前に出て、行動を終わりました。
対する、大友軍は四隊に部隊を分け、千人ずつ三隊を前に、本陣まわりに千五百を配置しました。
前面の三隊の中央をやや前掛かりに移動させて、動きが止まりました。
中央の前掛かりの部隊の、さらにその前に一人の将が立っています。
ザザザと、風が後ろから草をならします。
島津の後ろから吹いた風が、草を波のように揺らし、たった一人戦場の中央に立つ将の足下まで移動します。
将は、自分の足下の草がザワザワ揺れるのを合図に声を出しました。
「我は、大友軍、戸次統虎なりイーー!!」
声を上げると、持っていた武器の棍を素早く頭上で回転します。
回転で起った風が、足下の草を揺らした風の後を追いかけます。
その風は強く、自然の風を飲み込み、大友の陣に入ると、大友軍の旗をバサバサと大きくはためかします。
私は、声が震えるのを押さえながら返事をしました。
「おおっ、本当にいた!!」
そう返事をしたベッキーさんに、殺気がありませんでした。
「えっ!?」
私は驚くと同時に、緊張から解放されました。
どういうことでしょう。
「いやー、昨日から二時間おきにやっているんですよ。おかげで部下から、頭がおかしくなったんじゃ無いかと疑われてしまいましたよ」
「そ、それは……」
それは、卑怯と言いそうになりましたがやめました。
どんな状況でも負けは負けです。
うかつにバレたと勝手に思い込み、声を出した私の負けです。
「たしか、約束をしていましたよねえ」
「はっ!!??」
「何でも言う事を聞くと」
――うわあー!! そうでした。
なんだか、そんな約束をしていた気がします。
やばい!!
「わかりました。私も木田家の忍び、約束は守ります。何なりとどうぞ」
いやーーっ!! エッチなやつだけはやめてーー!!
「ふふふ、では、エッチな事でもお願いしましょうか」
だからーー!! やめてー!!
「くうぅぅっ!」
大殿!! 申し訳ありません。
桃井はここまでのようです。おゆるしください。
「なーーんちゃって!! 嘘です。あの約束は俺が桃影殿を見つけた時という約束だ。こんなインチキは、俺の勝ちにはならない。ふふふ、これ以上続けると、桃影さんが自害しそうです。ただ、食事くらいは同行していただけませんか?」
「食事ですか?」
ほっ! よかった!
「そうです。そのまま消えたまま同行して下さい。ところで、桃影さんはお一人ですか?」
「ええ、ひとりです。部下がいては、戸次様にすぐ察知されてしまいますので」
「そうですか。ふふふ……」
この時、私は意味深に笑った戸次様の笑いの深意に気付く事が出来ませんでした。
ホッとしていたため、注意力が散漫になっていました。いいえ、それすらも手のひらの上だったようです。
戸次様は一流の策士でもあるようです。
私は早足で進む戸次隊の後ろを、姿を消したまま付いて行きます。
部隊は、国道を進み、そのまま折れ曲がる国道を県道へ直進します。
県道は宇城の街を抜けると川を越え少し行くと、急に開けた田園風景になりました。
道の横に高い建物が見えてきました。
「ここです。つきましたよ」
戸次様が誰かに話しかけるように言いました。
どうやら部隊の駐留地に到着したようです。
「……」
私は返事を返しませんでした。
「はーー、隊長! またですか? 誰もいないじゃないですか!」
戸次様の配下の兵士は、いい加減あきれているようです。
「うるさいんだよ。応接にお茶と食事を二人分運んでおけ、その後は絶対に誰も近づくな!! わかったな!」
「はいはい、二人分食べるんですね。わかりました」
「ちっ!」
食事の準備が終わると、戸次様はキョロキョロあたりを見回します。
「……うふふ、心配しなくてもちゃんといますよ」
「そうですか。すごいですなあ。俺でも気配が分らない」
「ありがとうございます。戸次様に言われると本当にうれしいです。そういえば戸次様も体が一回り大きくなっていますね。この短期間にさすがですね」
「ふふふ、桃影さんに『精進して下さい』って言われましたからね。毎日、朝から晩まで寝る間を惜しんで、精進しておりました。ところで桃影殿、食事はそのままでは出来ないでしょう……」
私は少し悩みましたが、いずれは戸次様も木田家の一員になるかもしれない方。いいえ、木田家に絶対必要な人材と考え、顔を見せる事にしました。
しばらくたわいも無い話をしていると、ノックの音がしました。私はすぐに姿を消しました。
「どうした、入れ!!」
「報告します」
「うむ」
「島津軍、五百名程で宇城に入りました。ここから二キロ弱先の学校を拠点にして、本日は休むようであります」
「うむ、分った。ふふふ、桃影殿は姿と気配を消しましたか。次は戦場ですな」
私は、島津軍に合流すべく、戸次様の拠点を後にしました。
翌日は、島津軍も戸次隊も田園地帯で対峙して、本陣の設営、物見櫓の設営で一日終わりました。
翌日、大友軍の本体四千がやって来ました。
いよいよ野戦の開戦です。
早朝、明るくなると朝食が始まりました。
お互いの様子を見ながら、食事を終わらせ、陣立てが始まりました。
宇城の田園、緑の大地を両軍が移動します。
島津軍は、真田、安東、島津の三隊を本陣の前に並べます。
右翼は、赤い真田隊、左翼は安東隊、中央に島津本体総勢五百五十四名です。
右翼と左翼がやや前に出て、行動を終わりました。
対する、大友軍は四隊に部隊を分け、千人ずつ三隊を前に、本陣まわりに千五百を配置しました。
前面の三隊の中央をやや前掛かりに移動させて、動きが止まりました。
中央の前掛かりの部隊の、さらにその前に一人の将が立っています。
ザザザと、風が後ろから草をならします。
島津の後ろから吹いた風が、草を波のように揺らし、たった一人戦場の中央に立つ将の足下まで移動します。
将は、自分の足下の草がザワザワ揺れるのを合図に声を出しました。
「我は、大友軍、戸次統虎なりイーー!!」
声を上げると、持っていた武器の棍を素早く頭上で回転します。
回転で起った風が、足下の草を揺らした風の後を追いかけます。
その風は強く、自然の風を飲み込み、大友の陣に入ると、大友軍の旗をバサバサと大きくはためかします。
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