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九州激闘編
第三百五十二話 水入り
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今の日本には、娯楽は少なくなりました。
そんな中、この一騎打ちはここに居る方達の大きな関心を集めています。真剣勝負ですので、娯楽などと言うと不謹慎ですが、まるで格闘の試合を見るような雰囲気です。
島津家、大友家、合わせれば五千人以上が固唾を飲んで見守ります。
もちろん観客の兵士は自分たちも命がけの戦いをするために来ています。この戦いの結果によっては、この後の戦いにも影響があるでしょう。この勝負を少しも見逃すまいと目を血走らせています。
ここはスタジアムではありません、ただのくさ原です。
このままでは後ろの人が見えません。
中央の二人を取り巻くように丸く陣が崩れました。
大友様も、島津様もそれをとがめませんでした。
兵士は勝手に見やすい位置に移動します。
前の兵士は、かがんで後ろの人が見やすくなるようにします。
これは島津家も、大友家も一騎打ちが終わるまでは、一騎打ちに集中して、これを利用して汚い戦闘をしないと、お互いを信頼しあっているという事なのでしょう。
三好様も、戸次様も既に、相良様の戦いでお互いの力を見せ合っています。
お互い相手にとって不足無しと、思っているはずです。
遠く間合いを取って、まわりを囲む兵士達のため時間を取りました。
そして、まわりの兵士の動きが無くなると、三好様と戸次様が少しずつ間合いを詰めます。
ザワザワしていた兵士達からざわめきが無くなりました。
水を打ったような静けさが訪れます。
ザザザッッ……
二人の足下から微かに音が出ています。
そんな小さな音が、聞こえるほどの静けさです。
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」
最初に動いたのは戸次様でした。
ですが、気合いとは裏腹、攻撃は素早く小さな動きの拳を多数打ち出しました。
ゴリ、コホン、三好様はそれを開いているのか、閉じているのか分らないような目で、楽々避けていきます。
「どりゃああーー」
三好様は、戸次様の少し大きな一撃を避けながら、戸次様の腕を取り、引っ張りました。
腕を取られた戸次様が踏ん張ったので、投げるところまでは行かなかったようです。
ですが、これで攻守が反転しました。
次々、三好様が攻撃を仕掛けます。
これを、戸次様は驚いた表情でかわします。
恐らく、いままでこんな攻撃をうけた事が無いのでしょう。
ですが、口元はずっと緊張したままですが、次第に目元は笑っているような表情に変わっていきます。
こんな恐ろしい攻防がどうやら楽しいようです。
「ふふふ、こんな戦いは大殿とやって以来だ」
「な、なんですって、ゴリ……三好様は木田様と戦った事があるのですか?」
「ふふふ、まったく歯がたたなかった」
「な、なんと……それほどなのですか」
「ふふふ、見た目はそうはみえないのだがな」
「い、一度、戦って見たいものです」
「ぐはっ!!!!」
「ぐおおおーーっ!!!!」
お互いの攻撃が当たりました。
実力が近いのでしょう、当たるときは同士討ちばかりです。
こんな緊張する戦いは見ているこっちも疲れます。
「うおっ!!」
三好様がたんぼの段差に足を取られました。
「うおおおーーーーーーーー!!!!」
戸次様が好機と大技を出しました。
いけません、これは大殿直伝の罠です。
「ぐはあああーーーーーー!!!!」
私は、またしても目をつぶっていました。
でも聞こえたのは三好様の声です。
どうやら本当に足を取られていたようです。
「やったーーーー!!!! そんなゴリラやっつけてしまえーー!!!」
まぶたを開いた私の瞳には、口から血を吹き出しながら、三好様が吹飛ぶ姿でした。
「!?」
私の声が聞こえたのか、戸次様が驚いた顔をしてこっちを見ました。
声の方にだけ見えるように小さく拳を作り、親指を立てました。
――かっけーー!!
でも、いけません。そんな事をしている暇はありませんよ。
三好様は、攻撃をうけた反動を利用して、回転しながら軸足に力を込めました。
壮絶な蹴りがくり出されます。
戸次様は、よそ見をしていたため、それがまともに入ります。
「きゃーーー!!!! だめーーー!!!!」
またしても、目を閉じてしまいました。
だって、女の子だもん、しょうがねえですわ。
目を開くと、戸次様がかろうじて肘を蹴りと脇腹の間に入れています。
「ぐあああぁぁぁっ……」
防御しても残る大ダメージ。
「ああっ!! 何て攻撃をするのですかーー!! この糞ゴリラーー!!!!」
「あの、桃井さん……」
横から申し訳なさそうに呼ぶ声がしました。
真田家当主、真田信繁様です。
そうです私はいま、真田様の陣の直近にいます。
「は、はい?」
「もしかして、戸次様を応援していますか?」
「はわわーー、しょしょ、しょんにゃことわ、ありましぇんでしゅ。ゴリラさーーん、そのまま頑張ってーー」
「ゴリラではなくて、三好ですよ」
「はわわわ、みよしさまーー、がんばれー……」
「ふふふ……」
バレていないですよね。
三好様の攻撃は戸次様に大きなダメージを与えましたが、戸次様の攻撃も三好様に大きなダメージを与えていたため、追い打ちは出来ませんでした。
この後お互い決め手が無いまま戦います。
二人が肩で息をしだし、動きが目立って遅くなるのを見て、声がかかりました。
「二人とも、やめーーーー!!!!」
大友義鑑様と島津義弘様の声が同時に上がりました。
その声を聞くと、二人はパッと後方へ飛び退き、間合いを取りました。
まさに正々堂々清々しい試合……死合でした。
汗だくになっている二人のあごから、汗が滴り落ちます。
それが太陽を反射してキラキラ輝きとても美しいです。
そんな中、この一騎打ちはここに居る方達の大きな関心を集めています。真剣勝負ですので、娯楽などと言うと不謹慎ですが、まるで格闘の試合を見るような雰囲気です。
島津家、大友家、合わせれば五千人以上が固唾を飲んで見守ります。
もちろん観客の兵士は自分たちも命がけの戦いをするために来ています。この戦いの結果によっては、この後の戦いにも影響があるでしょう。この勝負を少しも見逃すまいと目を血走らせています。
ここはスタジアムではありません、ただのくさ原です。
このままでは後ろの人が見えません。
中央の二人を取り巻くように丸く陣が崩れました。
大友様も、島津様もそれをとがめませんでした。
兵士は勝手に見やすい位置に移動します。
前の兵士は、かがんで後ろの人が見やすくなるようにします。
これは島津家も、大友家も一騎打ちが終わるまでは、一騎打ちに集中して、これを利用して汚い戦闘をしないと、お互いを信頼しあっているという事なのでしょう。
三好様も、戸次様も既に、相良様の戦いでお互いの力を見せ合っています。
お互い相手にとって不足無しと、思っているはずです。
遠く間合いを取って、まわりを囲む兵士達のため時間を取りました。
そして、まわりの兵士の動きが無くなると、三好様と戸次様が少しずつ間合いを詰めます。
ザワザワしていた兵士達からざわめきが無くなりました。
水を打ったような静けさが訪れます。
ザザザッッ……
二人の足下から微かに音が出ています。
そんな小さな音が、聞こえるほどの静けさです。
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」
最初に動いたのは戸次様でした。
ですが、気合いとは裏腹、攻撃は素早く小さな動きの拳を多数打ち出しました。
ゴリ、コホン、三好様はそれを開いているのか、閉じているのか分らないような目で、楽々避けていきます。
「どりゃああーー」
三好様は、戸次様の少し大きな一撃を避けながら、戸次様の腕を取り、引っ張りました。
腕を取られた戸次様が踏ん張ったので、投げるところまでは行かなかったようです。
ですが、これで攻守が反転しました。
次々、三好様が攻撃を仕掛けます。
これを、戸次様は驚いた表情でかわします。
恐らく、いままでこんな攻撃をうけた事が無いのでしょう。
ですが、口元はずっと緊張したままですが、次第に目元は笑っているような表情に変わっていきます。
こんな恐ろしい攻防がどうやら楽しいようです。
「ふふふ、こんな戦いは大殿とやって以来だ」
「な、なんですって、ゴリ……三好様は木田様と戦った事があるのですか?」
「ふふふ、まったく歯がたたなかった」
「な、なんと……それほどなのですか」
「ふふふ、見た目はそうはみえないのだがな」
「い、一度、戦って見たいものです」
「ぐはっ!!!!」
「ぐおおおーーっ!!!!」
お互いの攻撃が当たりました。
実力が近いのでしょう、当たるときは同士討ちばかりです。
こんな緊張する戦いは見ているこっちも疲れます。
「うおっ!!」
三好様がたんぼの段差に足を取られました。
「うおおおーーーーーーーー!!!!」
戸次様が好機と大技を出しました。
いけません、これは大殿直伝の罠です。
「ぐはあああーーーーーー!!!!」
私は、またしても目をつぶっていました。
でも聞こえたのは三好様の声です。
どうやら本当に足を取られていたようです。
「やったーーーー!!!! そんなゴリラやっつけてしまえーー!!!」
まぶたを開いた私の瞳には、口から血を吹き出しながら、三好様が吹飛ぶ姿でした。
「!?」
私の声が聞こえたのか、戸次様が驚いた顔をしてこっちを見ました。
声の方にだけ見えるように小さく拳を作り、親指を立てました。
――かっけーー!!
でも、いけません。そんな事をしている暇はありませんよ。
三好様は、攻撃をうけた反動を利用して、回転しながら軸足に力を込めました。
壮絶な蹴りがくり出されます。
戸次様は、よそ見をしていたため、それがまともに入ります。
「きゃーーー!!!! だめーーー!!!!」
またしても、目を閉じてしまいました。
だって、女の子だもん、しょうがねえですわ。
目を開くと、戸次様がかろうじて肘を蹴りと脇腹の間に入れています。
「ぐあああぁぁぁっ……」
防御しても残る大ダメージ。
「ああっ!! 何て攻撃をするのですかーー!! この糞ゴリラーー!!!!」
「あの、桃井さん……」
横から申し訳なさそうに呼ぶ声がしました。
真田家当主、真田信繁様です。
そうです私はいま、真田様の陣の直近にいます。
「は、はい?」
「もしかして、戸次様を応援していますか?」
「はわわーー、しょしょ、しょんにゃことわ、ありましぇんでしゅ。ゴリラさーーん、そのまま頑張ってーー」
「ゴリラではなくて、三好ですよ」
「はわわわ、みよしさまーー、がんばれー……」
「ふふふ……」
バレていないですよね。
三好様の攻撃は戸次様に大きなダメージを与えましたが、戸次様の攻撃も三好様に大きなダメージを与えていたため、追い打ちは出来ませんでした。
この後お互い決め手が無いまま戦います。
二人が肩で息をしだし、動きが目立って遅くなるのを見て、声がかかりました。
「二人とも、やめーーーー!!!!」
大友義鑑様と島津義弘様の声が同時に上がりました。
その声を聞くと、二人はパッと後方へ飛び退き、間合いを取りました。
まさに正々堂々清々しい試合……死合でした。
汗だくになっている二人のあごから、汗が滴り落ちます。
それが太陽を反射してキラキラ輝きとても美しいです。
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