377 / 428
夏休み編
第三百七十七話 隊長の本音
しおりを挟む
「ぎゃあああぁぁぁぁーーーー!!!!」
悲鳴を上げたのはさっき俺の悪口を言った奴だ。
アドが真っ先に攻撃したようだ。
「うぎゃあー!!」
「ぐはっ!」
「ぐえええええぇぇぇーーーー!!!!」
「ぐぼっ!!」
「げはっ!!」
「気を付けろーーー!! 目に見えない何かがいるぞ!! しかも速い!!」
瞬く間に隊長だけになった。
「アド、もういいでしょう。姿を見せてあげて下さい」
「ニャッ!」
俺の足元にメイド服姿の猫耳幼女が姿をあらわしました。
「なんですか、その可愛い幼女は、まさか、その幼女が……」
沖田と呼ばれていた隊長が目を大きく見開きながら言いました。
「ふふふ、私は十田家の使用人八兵衛です。この者は主人が私に付けてくれた護衛です。姿を出したままでも貴方より十分すぎるほど強いですよ。やってみますか」
「ふふふ、でえええぇぇぇぇーーーーーい!!!!」
沖田隊長は刀でアドに斬りかかりました。
カンッ!!
金属音がすると沖田隊長は、刀をアドに振り降ろした形で止まっています。
アドを見ると目を閉じて、あくびをしています。
右手を頭の上にあげて、人差し指と親指で沖田隊長の刀をつまんで止めています。
「くっ!?」
沖田隊長が、体を前後に動かしています。
どうやら、刀を取り戻そうと力を入れているようです。
「……」
アドは、全く表情も変えず目を閉じたまま無言で立っています。
沖田隊長は足を踏ん張り、渾身の力を入れたようです。
「うわあああああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」
アドが少し笑顔に成り、指を開きました。
沖田隊長は、数メートル後ろによろけると尻もちをつきました。
「ニャハッ!」
それを見てアドが短く声をあげました。
「くそう!! 隊長が危ない!! かかれーーっ!!」
倒れていた兵士達が、沖田隊長を守ろうと立ち上がり、戦おうとしてアドに襲いかかります。
「やめろーーっ!!!!」
沖田隊長が一喝します。
「…………!?」
部下の兵士達が動きを止め沖田隊長を無言で見つめます。
「お前達がかなう相手ではない。八兵衛さんでしたね。申し訳ありませんでした。実力は充分理解しました。アドさんですか。部下を手加減して倒してくれたのですね。お心遣いありがとうございます」
「今のところ敵ではないことは、理解していただけましたか?」
「ええ、十二分に。ところで八兵衛さん、あなた方はどの様なお方なのですか?」
「はい、私達は越後の……」
「おおっ……!!」
俺が越後のまで言ったら、どよめきがおこった。
「ちりめん問屋だ。ご老公様一行だあー!!」
「いやいや、違いますよ。十田家一行です。主人は十田謙之信様です。若くて美形の男性です」
「なるほど、十田謙之信殿ですか。何のご用で函館へ?」
「特に理由はありません。主人の思いつきで諸国漫遊の旅です」
「そこは、ご老公と同じなのですね」
「ふふふ、そうですね。ところで沖田様、街の守りがずいぶん手薄に感じますが大丈夫なのですか」
「いいえ、十田家のご助力が無ければ、好き放題されていたかもしれません。ですが、仕方がありません。屈強な兵士は前線に送らないと、前線の維持が出来ません」
「なるほど、戦況は思わしくないと言うことですか」
「ふふふ、これは個人的な意見ですが、共和国は長くはないでしょう。まあ、土方さんだけは勝つ気満々ですけどね」
沖田隊長は、俺を信頼してくれたのか、腹を割って話してくれた。
街からは、まだ悲鳴がポツポツ聞こえてきます。
「十田家の方はお強いのですねえ」
沖田隊長は、遠くを見るような目で視線を街の方に向けた。
俺も真似をすると、聞こえてくる物音は既にこの方向だけになっている。
「ふふふ、スケさんとカクさんが、あらかた片付けてくれたようですね。あの人達は別格に強いですから」
「す、スケさん、カクさん!? やっぱりご老公様じゃないのか……」
また、兵士達の間からザワザワと声が聞こえる。
ご老公はやっぱり有名だなあ。
「そうですか。スケさん、カクさん……会うのが楽しみです」
「沖田様は、この世界をどう思いますか?」
俺は、少しこの沖田隊長という人物に興味を持った。
ふふふ、沖田とは良くつけたものです。
背が高く、肩幅が広いのに、顔に男臭さが無く、どこか中性的で清流のように邪心が全くないように感じる。
新撰組の沖田総司を感じる……まあ、会ったことがねえから分からんけど。
微妙に男か女かも俺には分からない。どちらかと言うと男の様に感じている。
まあ、パフパフしないと分からんタイプだ。
「八兵衛さん、ここだけの話です。聞いたらすぐに忘れていただけますか?」
「もちろんです」
沖田隊長は意を決したようにうなずいた。
「お前達、ここはもういい。あたりが静かになった。少し見てきてくれ」
「はっ!!」
沖田隊長は、部下に仕事を与え人払いをしてくれた。
「私は……、とっととこの世界が終わって欲しいと思っています」
「えっ!?」
俺は意外な返事で少し驚いた。
「ふふふ、世界にはまだ核ミサイルがあるのでしょ。それで、もう、この世界を終わらせて欲しいと思っています」
そう言って、真っ直ぐ俺の目を見てきた。
涼やかな顔立ちの中にある目だけが異質で、光を失い真っ暗でまるで吸い込まれそうに感じた。
悲鳴を上げたのはさっき俺の悪口を言った奴だ。
アドが真っ先に攻撃したようだ。
「うぎゃあー!!」
「ぐはっ!」
「ぐえええええぇぇぇーーーー!!!!」
「ぐぼっ!!」
「げはっ!!」
「気を付けろーーー!! 目に見えない何かがいるぞ!! しかも速い!!」
瞬く間に隊長だけになった。
「アド、もういいでしょう。姿を見せてあげて下さい」
「ニャッ!」
俺の足元にメイド服姿の猫耳幼女が姿をあらわしました。
「なんですか、その可愛い幼女は、まさか、その幼女が……」
沖田と呼ばれていた隊長が目を大きく見開きながら言いました。
「ふふふ、私は十田家の使用人八兵衛です。この者は主人が私に付けてくれた護衛です。姿を出したままでも貴方より十分すぎるほど強いですよ。やってみますか」
「ふふふ、でえええぇぇぇぇーーーーーい!!!!」
沖田隊長は刀でアドに斬りかかりました。
カンッ!!
金属音がすると沖田隊長は、刀をアドに振り降ろした形で止まっています。
アドを見ると目を閉じて、あくびをしています。
右手を頭の上にあげて、人差し指と親指で沖田隊長の刀をつまんで止めています。
「くっ!?」
沖田隊長が、体を前後に動かしています。
どうやら、刀を取り戻そうと力を入れているようです。
「……」
アドは、全く表情も変えず目を閉じたまま無言で立っています。
沖田隊長は足を踏ん張り、渾身の力を入れたようです。
「うわあああああぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」
アドが少し笑顔に成り、指を開きました。
沖田隊長は、数メートル後ろによろけると尻もちをつきました。
「ニャハッ!」
それを見てアドが短く声をあげました。
「くそう!! 隊長が危ない!! かかれーーっ!!」
倒れていた兵士達が、沖田隊長を守ろうと立ち上がり、戦おうとしてアドに襲いかかります。
「やめろーーっ!!!!」
沖田隊長が一喝します。
「…………!?」
部下の兵士達が動きを止め沖田隊長を無言で見つめます。
「お前達がかなう相手ではない。八兵衛さんでしたね。申し訳ありませんでした。実力は充分理解しました。アドさんですか。部下を手加減して倒してくれたのですね。お心遣いありがとうございます」
「今のところ敵ではないことは、理解していただけましたか?」
「ええ、十二分に。ところで八兵衛さん、あなた方はどの様なお方なのですか?」
「はい、私達は越後の……」
「おおっ……!!」
俺が越後のまで言ったら、どよめきがおこった。
「ちりめん問屋だ。ご老公様一行だあー!!」
「いやいや、違いますよ。十田家一行です。主人は十田謙之信様です。若くて美形の男性です」
「なるほど、十田謙之信殿ですか。何のご用で函館へ?」
「特に理由はありません。主人の思いつきで諸国漫遊の旅です」
「そこは、ご老公と同じなのですね」
「ふふふ、そうですね。ところで沖田様、街の守りがずいぶん手薄に感じますが大丈夫なのですか」
「いいえ、十田家のご助力が無ければ、好き放題されていたかもしれません。ですが、仕方がありません。屈強な兵士は前線に送らないと、前線の維持が出来ません」
「なるほど、戦況は思わしくないと言うことですか」
「ふふふ、これは個人的な意見ですが、共和国は長くはないでしょう。まあ、土方さんだけは勝つ気満々ですけどね」
沖田隊長は、俺を信頼してくれたのか、腹を割って話してくれた。
街からは、まだ悲鳴がポツポツ聞こえてきます。
「十田家の方はお強いのですねえ」
沖田隊長は、遠くを見るような目で視線を街の方に向けた。
俺も真似をすると、聞こえてくる物音は既にこの方向だけになっている。
「ふふふ、スケさんとカクさんが、あらかた片付けてくれたようですね。あの人達は別格に強いですから」
「す、スケさん、カクさん!? やっぱりご老公様じゃないのか……」
また、兵士達の間からザワザワと声が聞こえる。
ご老公はやっぱり有名だなあ。
「そうですか。スケさん、カクさん……会うのが楽しみです」
「沖田様は、この世界をどう思いますか?」
俺は、少しこの沖田隊長という人物に興味を持った。
ふふふ、沖田とは良くつけたものです。
背が高く、肩幅が広いのに、顔に男臭さが無く、どこか中性的で清流のように邪心が全くないように感じる。
新撰組の沖田総司を感じる……まあ、会ったことがねえから分からんけど。
微妙に男か女かも俺には分からない。どちらかと言うと男の様に感じている。
まあ、パフパフしないと分からんタイプだ。
「八兵衛さん、ここだけの話です。聞いたらすぐに忘れていただけますか?」
「もちろんです」
沖田隊長は意を決したようにうなずいた。
「お前達、ここはもういい。あたりが静かになった。少し見てきてくれ」
「はっ!!」
沖田隊長は、部下に仕事を与え人払いをしてくれた。
「私は……、とっととこの世界が終わって欲しいと思っています」
「えっ!?」
俺は意外な返事で少し驚いた。
「ふふふ、世界にはまだ核ミサイルがあるのでしょ。それで、もう、この世界を終わらせて欲しいと思っています」
そう言って、真っ直ぐ俺の目を見てきた。
涼やかな顔立ちの中にある目だけが異質で、光を失い真っ暗でまるで吸い込まれそうに感じた。
0
あなたにおすすめの小説
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる