底辺おじさん、助けた異世界転生美少女の異世界魔法と異世界アイテムそして特殊能力ゴミ処理で世界を救う

覧都

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北海道最終戦

第四百十四話 飢える人々

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「お待たせしました。どうぞお通りください」

 ずいぶん待たされたが、どうやら通して貰えるらしい。
 門が開き中に通された。

「ここからは俺が案内をする。ついて参れ!!」

 態度のでかい、髭を生やした目つきの鋭い男が言った。

「うっ!?」

 門の中に入った瞬間俺達全員の顔が曇った。
 中に入ったとたん、瓦礫の外とまるで空気が違うのに気がついた。
 空気その物に重さがあるように感じるほど、体に空気がねっとりとまとわりつくのを感じる。その気持ち悪さに思わず声が出たのだ。

 バリケードの中には、右側に民間人、左側に身分の低いのであろう、身なりのみすぼらしい兵士が大勢いる。
 全員バリケードの近くにいて、バリケードを越えてきた敵兵の攻撃を真っ先に受けるように配置されている。

「ひ、ひどい」

 響子さんが、いち早く意味を理解して声を出した。

「ふむ」

 返事をして俺は、全体を一通りゆっくり見渡した。
 兵士も民間人も暗い顔をして無気力にうつむいて座っている。
 それもそのはず、兵士も民間人もここ数日は、薄い米のとぎ汁のような粥を二日に一回食べているだけと、赤穂さんから報告を受けている。
 この惨状を見て、あずさとヒマリとイルナが震えながら抱きついている。
 俺は餓死者を出さないために、今回の野菜の差し入れを考え付いたのだ。

 それに対して、政府の高官達の昨日の晩御飯はすき焼き、その前の晩は中華、そしてその前の晩はステーキを腹一杯食べていたと、赤穂さんから報告を受けている。
 政治家って奴はいつでも、平気で国民を苦しめて自分達は贅沢三昧だ。
 こんな時こそ国民を助けるのが政府の仕事じゃないのか?
 せめて、おなじ物をたべろよな!

「イルナ兄ちゃーん、ゴホッ、ゴホッ」

 イルナが札幌の街で護っていた子供達が駆け寄ってきた。
 おそらく、栄養失調になっているのだろう。
 変な咳が出ている。
 栄養失調は幼い子供達から先に体力や抵抗力を奪っていく。
 どうやら、危険な状態の様だ。
 俺の想像通りになっている。やれやれだぜ!

「お。おまえらーー!!!! 父ちゃんには会えたのか?」

 イルナも駆け寄って子供達を抱きしめる。

「うっううん」

 駆け寄った子供達が首を振る。
 親に会えるかも知れない、そんな淡い期待を持ってここに来たのだが、どうやら肉親には会えなかったようだ。

「は、八兵衛さん…………」

 弱々しい声がする。

「お、おおっ、ばあさん、無事だったのか。息子さんはいたのか?」

 確か、ばあさんも息子さんが心配で、ここへ来ていたはずだ。

「ふふふ、息子は共和国軍に捕まってしまったらしい」

 生きているにしては悲しそうだ。
 そうか、横にお孫さんがいるから、本当の事が言えないのか。
 だったら、もう、こんな地獄にいる必要はないじゃないか。
 イルナの護っていた子供達も、ばあさんとお孫さんも、はやいところこんな地獄から助け出してやらないと。

「おいっ!! 何をしている!! さっさとついて来い!!」

 先導していた髭の兵士が、勝手に足を止めてしまった俺達に、イライラして怒っている。

「いえ、いえ。案内はもういいです。ここにいるご婦人達が丹精込めて作った野菜ですからね。当然ここに置いていきます」

「ばっかもーーん!!!! それは、北海道国の政府の物だ!! 勝手な事を言うんじゃ無ーーい!!!!」

 えらい大声だなあ。
 なんでこんなに偉そうなんだ。

「どうしたーー!!!! 何があったーー!!!! うおっ!! は、八兵衛!!!!」

「あーっ!! またお会いしましたねえ隊長さん」

 この前、学校に来ていた憲兵隊の隊長だ。
 大声を聞きつけてやって来たようだ。

「き、きさまーー!! な、何しに来たーー!? それよりなんでこんな危険な奴を通したんだーーーー!!!!」

「しかし、隊長さんは元気ですねえ。すき焼きでも食ってきたのですか?」

「はーーっ!! 俺達は白米に漬物しか食ってねーー!!」

「なっ、なんだってーー!?」
「このやろーー!!」
「ふざけるなーー!!!!」

 隊長の言葉を聞いて、うつむいて元気のなかった兵士達が立ち上がって隊長に罵声をあびせかけた。

「し、しまった。ついうっかり、本当の事を言ってしまったーー!!」

 俺の急な質問に意表をつかれたのか、うっかり本当の事を言ってしまったようだ。
 つーか、母屋ではすき焼きを食っているのに、こいつらはご飯に漬物だけか。まあそれでも白米を食えるだけましか。
 ここにいる兵隊や、国民はうすーいお粥だと言うのになあ。

「お前達は、騙していたのか!? 全員おなじ物を食べていると聞いていたぞー!!」

 兵士の中から声があふれ出す。

「皆さんは知らないのですか。大臣達は昨日の晩は、すき焼きですよ。沢山残して捨てていました。捨てることはあっても皆さんに分ける事は無いようです。政治家とはひどい奴らですよね」

「な、ななな、なんだとーー!!!! うそだーー!!!!」

 憲兵隊の隊長の口が震えています。
 きっと、「お前達は特別だから俺達と同じものを食べさせるのだからな」などといわれて、ご飯と漬物を出してもらっていたのでしょう。
 だましていると思っていたら、騙されていたと言ったところでしょうか?

「ふふふ、嘘だと思うのなら、もう少し後、丁度夕食の時間に食堂に乗り込んだらいい。大臣達がご馳走を食べている所を、見ることが出来ると思いますよ」

「はっ、八兵衛。……ほ、本当なのか?」

「もうじき、夕飯の時間です。自分の目で確かめればいいでしょう」

「う、ううむー!!」

 隊長がうなっています。

「この野菜も持って行ったら、誰も食べられませんよ。どうしますか?」

「……八兵衛、建物の中には親衛隊がいる。うかつには、入れないぞ」

「ご同行いたしましょうか。親衛隊などものの数ではありません」

「よし! わかった。野菜は、ここの者達に配ってやってくれ」

「お、俺は、知りませんよ。あんたが勝手にやったことだーー!! 俺は知りませんからねーー!!!!」

 そう言うと、俺達を門の所から案内していた髭の兵士が、どこかへ素早く逃げて行った。

「いかせて、よろしかったのですか?? 俺達の事を報告されると思いますよ」

「ふふふ、かまわん。腹は決まった。俺の家族は、あそこにいる。このままでは飢死だ。俺の飯を握り飯にして渡していたが、周りの者達に心苦しくてなあ。誰か正義の味方が助けてくれないかなあと思って居たところなのだ」

 隊長は、弱って苦しんでいる人達を、遠くを見るような目で見ている。

「さあ、そうと決まれば、ばあさん! 野菜を皆に配ってやってくれ、それと、これは俺からだ」

 台車の影に箱を出した。中身はアイスクリームだ。

「こ、これは!!」

「ふふふ、少しずつ、腹を壊さないように食べてくれ。足りなきゃドンドン出してやるからな」

「ふぐぅ、はじべえぇざーーん……」

 ばあさんが、顔をくしゃくしゃにして泣きながら俺にしがみついてきた。
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