15 / 18
第十五話 泣いている女の子
しおりを挟む
安崎さんが廃神社に行って、1週間が過ぎました。
パソコンの前で、作業をしていると電話がかかってきました。
「もしもし、安崎です」
「はい、恵美子です」
「久しぶりです、今日時間はありますか」
「はい、大丈夫です」
「色々話したいことがありますが、全てはその時に」
居酒屋貴賓席
「一週間、連絡もせずに済みません」
安崎さんはいつもの様に、約束の時間の五分前に来てくれました。
「いいえ、大丈夫です」
私は久しぶりに好物を食べて満足しています。
「先生、あの映像について、わかっていることを教えて下さいませんか」
「はい、そのつもりで来ました。ですがこれは全て私の推測です」
私は、安崎さんの隣に座りディスクをセットしてもらった。
そして、画面が昼の映像を映しています。
「私は多くの時間、心霊映像を見ています。映像として見ている分には、ほとんど何も感じません」
「そうですか」
「はい、でもザブさんの配信映像は、格が違いました。見た瞬間に寒気を感じました。本当に恐ろしい映像です。でも、このディスクに入っている昼の映像には最初、何も感じませんでした」
ノートパソコンに映し出される昼間の廃墟映像を指さしました。
「でも、配信映像でみた昼間の廃墟は、すでに恐ろしい気配がします。この違いは、ザブさんが荒らす前と、後の違いということです」
「先生は、この映像だけで違いを感じるのですね。私にはどちらも気持ち悪さを感じて、違いなどわかりません」
私はそういうものなのかと、改めて思った。
こんな映像ばかり見ていると、見た目だけでは恐く感じ無くなるらしい。
「この家からは、二つの感情を感じます。一つは、子供からの感情、そしてもう一つはそのお父さんの感情です」
子供と言った時に、安崎さんは少しビクッと反応しました。
「この家を見ただけで、それがわかるのですか」
「いいえ、それに気が付いたのは、もう少し後ですがこの時に、怒りの感情と悲しみの感情を感じました」
私は、ここでビールを口に運んで、少し間をとった。
「ふふふ、誰かの細工のせいで、この家に、こんなに変化が起きた理由が、しばらくわかりませんでした……」
私はチラリと安崎さんを見た。
安崎さんが少し照れながら頭を掻いています。
「昼間、ザブさんはこの家を荒らし、換金出来そうなものを持ち出したのですね。あまりお金にならないものが置いてある部屋は、撮影の為にそのままにしたのでしょう。そしてもともと空き巣だったザブさんはタンスを荒らして、そのままにしたのでは無いでしょうか」
安崎さんは赤い顔になり動きを止めた。
「私は、この家に手を出してはならないものが、有ったのだと思います。親子の大事な思い出の品」
「ぬいぐるみと鏡ですか」
安崎さんの答えを聞いて私はうなずいた。
「この家は、何か複雑な事情があった様に思います。でも、父親は娘を愛し、娘さんはお父さんを愛していたのでは無いでしょうか。その思いは私達が考えるより、ずっと強かったのかもしれません」
安崎さんの表情がかわった。
泣きそうな顔になって私を見つめている。
きっと、なにか事情を知っているのでしょう。
でも、私はそれには触れず話しを続けた。
「私はこう考えています。思い出の品に手を出したザブさんに、父親が怒り、そんな父親を娘さんが心配していたと」
「ザブはとんでも無いことをしたのですね」
私はこれには答えず、映像を進めた。
映像には夜の廃墟で、スピリットボックスを出したザブさんの姿が映し出された。
そしてスピリットボックスから声がする。「ザザザ、ガエデーー、ザザザーザ」この音がするとザブさんは「か、帰ります、帰りますー―!!」と言ってあわてて逃げ出します。
「私は、この男の人の声がお父さんで、かえせーーって言っている様に聞こえます。何か大事なものを取ってしまったことがわかります。とても強い思いですよね」
「ふむ」
私はディスクを替えて自宅の映像にします。
「そして、これが自宅での映像です。ここに人の影が見えてきます」
私は、照明の消えている部屋の映像の、人影の位置を指さします。
ザブさんが引き戸を開けた瞬間に人影が一瞬見える場所です。
そして、人影が見える瞬間、
「うわあああーー」
安崎さんがとんでも無い大声を上げました。
店内のお客さんが全員振り向きます。
「おおおお、女の子が泣いているうー。おおおおおおー」
安崎さんが、凄い勢いで震えだしました。
パソコンの前で、作業をしていると電話がかかってきました。
「もしもし、安崎です」
「はい、恵美子です」
「久しぶりです、今日時間はありますか」
「はい、大丈夫です」
「色々話したいことがありますが、全てはその時に」
居酒屋貴賓席
「一週間、連絡もせずに済みません」
安崎さんはいつもの様に、約束の時間の五分前に来てくれました。
「いいえ、大丈夫です」
私は久しぶりに好物を食べて満足しています。
「先生、あの映像について、わかっていることを教えて下さいませんか」
「はい、そのつもりで来ました。ですがこれは全て私の推測です」
私は、安崎さんの隣に座りディスクをセットしてもらった。
そして、画面が昼の映像を映しています。
「私は多くの時間、心霊映像を見ています。映像として見ている分には、ほとんど何も感じません」
「そうですか」
「はい、でもザブさんの配信映像は、格が違いました。見た瞬間に寒気を感じました。本当に恐ろしい映像です。でも、このディスクに入っている昼の映像には最初、何も感じませんでした」
ノートパソコンに映し出される昼間の廃墟映像を指さしました。
「でも、配信映像でみた昼間の廃墟は、すでに恐ろしい気配がします。この違いは、ザブさんが荒らす前と、後の違いということです」
「先生は、この映像だけで違いを感じるのですね。私にはどちらも気持ち悪さを感じて、違いなどわかりません」
私はそういうものなのかと、改めて思った。
こんな映像ばかり見ていると、見た目だけでは恐く感じ無くなるらしい。
「この家からは、二つの感情を感じます。一つは、子供からの感情、そしてもう一つはそのお父さんの感情です」
子供と言った時に、安崎さんは少しビクッと反応しました。
「この家を見ただけで、それがわかるのですか」
「いいえ、それに気が付いたのは、もう少し後ですがこの時に、怒りの感情と悲しみの感情を感じました」
私は、ここでビールを口に運んで、少し間をとった。
「ふふふ、誰かの細工のせいで、この家に、こんなに変化が起きた理由が、しばらくわかりませんでした……」
私はチラリと安崎さんを見た。
安崎さんが少し照れながら頭を掻いています。
「昼間、ザブさんはこの家を荒らし、換金出来そうなものを持ち出したのですね。あまりお金にならないものが置いてある部屋は、撮影の為にそのままにしたのでしょう。そしてもともと空き巣だったザブさんはタンスを荒らして、そのままにしたのでは無いでしょうか」
安崎さんは赤い顔になり動きを止めた。
「私は、この家に手を出してはならないものが、有ったのだと思います。親子の大事な思い出の品」
「ぬいぐるみと鏡ですか」
安崎さんの答えを聞いて私はうなずいた。
「この家は、何か複雑な事情があった様に思います。でも、父親は娘を愛し、娘さんはお父さんを愛していたのでは無いでしょうか。その思いは私達が考えるより、ずっと強かったのかもしれません」
安崎さんの表情がかわった。
泣きそうな顔になって私を見つめている。
きっと、なにか事情を知っているのでしょう。
でも、私はそれには触れず話しを続けた。
「私はこう考えています。思い出の品に手を出したザブさんに、父親が怒り、そんな父親を娘さんが心配していたと」
「ザブはとんでも無いことをしたのですね」
私はこれには答えず、映像を進めた。
映像には夜の廃墟で、スピリットボックスを出したザブさんの姿が映し出された。
そしてスピリットボックスから声がする。「ザザザ、ガエデーー、ザザザーザ」この音がするとザブさんは「か、帰ります、帰りますー―!!」と言ってあわてて逃げ出します。
「私は、この男の人の声がお父さんで、かえせーーって言っている様に聞こえます。何か大事なものを取ってしまったことがわかります。とても強い思いですよね」
「ふむ」
私はディスクを替えて自宅の映像にします。
「そして、これが自宅での映像です。ここに人の影が見えてきます」
私は、照明の消えている部屋の映像の、人影の位置を指さします。
ザブさんが引き戸を開けた瞬間に人影が一瞬見える場所です。
そして、人影が見える瞬間、
「うわあああーー」
安崎さんがとんでも無い大声を上げました。
店内のお客さんが全員振り向きます。
「おおおお、女の子が泣いているうー。おおおおおおー」
安崎さんが、凄い勢いで震えだしました。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/5:『ひとのえ』の章を追加。2025/12/12の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/4:『こうしゅうといれ』の章を追加。2025/12/11の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/3:『かがみのむこう』の章を追加。2025/12/10の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
〈奨励賞受賞〉招く家
雲井咲穂(くもいさほ)
ホラー
第8回ホラー・ミステリー小説大賞 奨励賞を受賞いたしました。応援していただき誠にありがとうございました!
ーーーーーーーーー
その「家」に招かれると、決して逃げられない――。
仕事を辞めたばかりで先の見えない日々を送っていた谷山慶太は、大学時代の先輩・木村雄介の誘いで、心霊調査団「あやかし」の撮影サポート兼記録係としてバイトをすることになった。
初仕事の現場は、取り壊しを控えた一軒家。
依頼者はこの家のかつての住人――。
≪心霊調査団「あやかし」≫のファンだという依頼人は、ようやく決まった取り壊しの前に木村達に調査を依頼する。この家を、「本当に取り壊しても良いのかどうか」もう一度検討したいのだという――。
調査のため、慶太たちは家へ足を踏み入れるが、そこはただの空き家ではなかった。風呂場から聞こえる水音、扉の向こうから聞こえるかすかな吐息、窓を叩く手に、壁を爪で削る音。
次々と起きる「不可思議な現象」は、まるで彼らの訪れを待ち構えていたかのようだった。
軽い気持ちで引き受けた仕事のはずが、徐々に怪異が慶太達の精神を蝕み始める。
その「家」は、○△を招くという――。
※保険の為、R-15とさせていただいております。
※この物語は実話をベースに執筆したフィクションです。実際の場所、団体、個人名などは一切存在致しません。また、登場人物の名前、名称、性別なども変更しております。
※信じるか、信じないかは、読者様に委ねます。
ーーーーーーーーーーーー
02/09 ホラー14位 ありがとうございました!
02/08 ホラー19位 HOT30位 ありがとうございました!
02/07 ホラー20位 HOT49位 ありがとうございました!
02/06 ホラー21位 HOT81位 ありがとうございました!
02/05 ホラー21位 HOT83位 ありがとうございました!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
隣人意識調査の結果について
三嶋トウカ
ホラー
「隣人意識調査を行います。ご協力お願いいたします」
隣人意識調査の結果が出ましたので、担当者はご確認ください。
一部、確認の必要な点がございます。
今後も引き続き、調査をお願いいたします。
伊佐鷺裏市役所 防犯推進課
※
・モキュメンタリー調を意識しています。
書体や口調が話によって異なる場合があります。
・この話は、別サイトでも公開しています。
※
【更新について】
既に完結済みのお話を、
・投稿初日は5話
・翌日から一週間毎日1話
・その後は二日に一回1話
の更新予定で進めていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる