時の宝珠~どうしても死んだ娘に会いたい~

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19、マルーン

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チャオの街に突然と現れたマルーン
あっという間に、宰相の位置まで駆け昇った男
スクロールを使うことで、人族に魔術を行使させた。

スクロールは、マルーンだけが創ることが出来る。
アミシャスやフォルティを自在に操った。

果たして、人間に、その様な事が可能なのだろうか?
その所業は、まるで神のようだ

俺(シュウ)は、ずっと、疑問に思っていた。
アマール神から聞いた、マルーンはテネブリスの配下
腑に落ちた
やっぱり、人間ではないんだな
そのマルーンと、俺は今、対峙している。
この男を倒さないと、先には進めない。
俺は、気合を入れ直し、刀をしっかりと握りしめた。

我が名はマルーン
テネブリス神の使徒として動いている、今わね。
もう人ではないが、昔は人であった。
記憶があいまいになってきているが、幸せに暮らしていたようだ。
妻がいた。
「ああ、あの日だけは覚えている」
私の妻は、猫の獣人であった。
そう、私は行商人だった、結構、裕福な商人だった。
そうだ、あの日だ。
行商から帰ってくると、私の屋敷は、真っ赤に燃えていた。
妻は、皮を剥がれ、腹を裂かれ、木に吊り下げられていた。

犯人は、領主だった。
領主は、人族至上主義だった。
人であれば、これは殺人だが、奴隷で獣人なら違う。
何故だ?

私は、奴隷として猫の獣人を購入した。
最初は、そうだったが、
エルザという彼女は、天真爛漫で、輝く笑顔の持ち主だった。
いつしか、私は、エルザを奴隷としてではなく、獣人だけれど、愛していた。
側に居てくれるだけで、どれだけ癒されたことだろう。

私がエルザだったものの前で、茫然と立ち尽くしていると、
気が付かないうちに、領主と騎士達が、私を取り囲んでいた。

「お前の奴隷は、当然の報いを受けたのだ」

「ふざけるな エルザが何をしたというのだ」
「どうして殺さなければいけない」
私が叫びながら、領主に掴みかかろうとすると、
周りにいた騎士たちに拘束された。

「やはり、お前の考えは危ない。 獣人に名前を付け、妻にするとはな」
「お前のような奴が増えるととんでもないことになる、それがこれだ」

そう言いながら、領主は、一人の騎士に手をあげ合図をした。
騎士は、赤緑色に染まったズた袋を、マルーンの前に、放り投げた。

袋の口から出てきたのは、赤ん坊になりかけのなにかだった。

「このけがわらしいものは、お前の奴隷の腹の中から出てきた」
「通常法は知っているな」
「獣人との間に、子をなしてはならぬ」
「お前は、法をおかした。」
「お前は、これから、一生、牢獄で暮らすのだ」

領主の声は、俺には聞こえなかった。
「俺の子どもだと、獣人を愛して何が悪い」
「俺の家族を返せ」

俺は、騎士を振りほどいて、領主に飛びかかろうとしたが、
横にいたもう一人の騎士に、槍で右足の太ももを突かれ、
傷みで、その場にうずくまった。

領主は、一言、
「不敬罪だな」
領主が、騎士に合図をすると、
騎士は、剣を抜き、マルーンに近づくと、その剣でマルーンを刺した。
剣を抜くと、赤い血が吹き出し、マルーンは大地に倒れた。

「ほお、一応、赤い血か、獣人などとまぐわったから、違うかと思ったがな」
「そのうち、この者も命をなくすであろう、
私は情け深いからな、最後に、獣人などを愛したことを、後悔しながら死ぬが良い」
そう言うと、領主たちは、その場から、去っていった。

私は、混濁していく意識の中で、地べたをはいずりながら、赤ん坊だったものの所へ行き、抱きかかえた」

「俺に力があれば、こんなことにならなかったのか?」
「エルザ、そして俺の子どもよ、すまない」
このまま死ぬのか、俺は嫌だ、あの領主だけには復讐を・・
徐々に意識が遠のいていく・・

その時だった・・
俺の頭の中に、声が聞こえてきた。

「人間よ、力が欲しいか?」
「復讐がしたいか?」

「貴方は、だれだ?」

「我が名は、テネブリス ジュウェルの神の1神だよ」
「我が使徒となれば、そなたの望ことはできるであろう」
「ただ、人間ではなくなるがね」

「俺は、すべてを失った。 愛する者、家や仕事。 
あの領主に復讐ができるのなら、他になにもいらない。頼む、俺に力を・・」

そして、気が付いたとき、私は、人ではなく。
神の使徒、マルーンとなった。


今のはなんだ。
俺(シュウ)は、なぜか、目の前にいるマルーンの事を理解した。
それは、ほんの数秒の事なんだろう。
テネブリスの加護をどちらも貰っているからなのかな。
マルーンが、妖精や、エルフの民にしていることも理解した。

「マルーン、お前には同情するが、してきたことは許されない」
「ここで、お前を止めるよ」
そう言いながら、俺は、刀を左腰に構え、前屈みに構えた。
そう、得意の居合の型だ。
じりじりと、俺は、マルーンの方へ足を進めて行く。
間合いに入った瞬間、俺は、マルーンに向けて刀を振った。
だが、手ごたえがない。

マルーンが、一言。
「異界人よ、それでは、私は倒せないよ」
そう言いながら、俺に向けて、杖を振った。

俺は、何をされたか分からなかったが、
俺の左腕が飛んでいた。
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