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第138章『敬礼』
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第138章『敬礼』
「北見が斥候って……じゃあ、そいつは……片桐は?」
タカコが高根のその問いに答えようと口を開きかけたその時、不意に北見が動き出しズボンのポケットから何かを取り出し眼前に掲げて見せる。
「……どういうつもりだ、言葉で自爆した序でに本当に自爆するつもりか」
北見の手に握られているのはタカコが大和へと持ち込んだ手榴弾、先の事件の時に装備を積み込む作業の中に北見もいたが、その時に一つ盗み出されていたかと小さく舌を打つ。
「出来れば死にたくはねぇ……見逃してくれたらあんた等も助けてやるよ……どうだ?」
取り繕う事を止めたのか北見の表情と言葉が急に変わる、その眼差しには怒りも恐れも無い、有るのは純粋な殺気のみ。タカコはそれを認めて目を細め、浮かべていた笑みを深くして言葉を返した。
「馬鹿か貴様、逃げ切れるとでも?」
「やってみなきゃ分かんねぇぜ?あんたと出会ってからずっとあんたの目を欺き続けて来た、それは分かってんだろ?」
「ああ、それは認めるよ、綺麗に騙された。良い腕を持ってる、戦闘能力もきっと相応のものを持ってるだろうな」
「タカコ?そんな悠長な――」
「この場は私に任せてくれ」
黒川の言葉を右腕を翳して制しタカコは言葉を続ける。
「でもなぁ?私も、いや、私の部隊の能力もなかなかのものだぞ?『Providence』、摂理、神意なんて名前、伊達や酔狂で背負えるもんじゃない……試してみるか、小坊主」
その言葉と共にタカコの顔に浮かぶのは、人間という範疇から掛け離れているとすら感じられる冷たい笑みと気迫。全身から噴き出す覇気が周囲を歪めているのではとすら思えるそれに、北見はびくりと身体を揺らし、穏便に逃げ出す事は不可能だと思い知る。
「そんな大層な名前背負ってても、身体は人間のままだろうがよ……!」
その言葉に続けて手榴弾の針金の輪の部分を噛み、力任せにそれを引き抜きタカコ達の前に翳して見せる。
「動くなよ、俺が手を離せば五秒後にはこの場の全員爆死する羽目になるぞ」
そう言いながら片桐の身体を押さえたままゆっくりと扉の方へと後退り、そして、
「今迄楽しかったよ……でも、それももうこれで終わりだな」
そう言って扉の外へと半身を出しながら片桐の身体を突き飛ばし、手榴弾を放ろうとした瞬間、タカコが廊下へと向けて声を張り上げた。
「ヴィンス!制圧しろ!」
その刹那、廊下から伸びて来た腕が北見の手と彼が放ろうとした手榴弾を押さえ付け、点火の為の取っ手が飛ぶのを制止する。次の瞬間には両腕は大きく北見の腕を捻り上げ、堪らずその方向へと身体を捻った北見の腹へと鋭い膝が叩き込まれる。低く響いた北見の呻き声、それと同時に彼の身体が床へと落とされる振動と音、それが静まった時、そこには陸軍の戦闘服を身に付け、手には北見から奪った手榴弾を持った一人の男の姿が在った。
「金原!?お前、何でここに?」
驚いた様に言葉を発したのは黒川、斥候のもう一人と目されていた金原が何故ここに、黒川だけでなく高根と敦賀の視線も集中する中、金原はそれを気にする事も無くタカコへと向かって歩み寄る。
「御無事ですか、ボス」
「ああ、見ての通りだ」
「それは何よりです……ピン下さいピン、点火は防ぎましたけどこのまま持ってるのは気分的に嫌です」
「御尤も……あ、有った、ほい」
一体何がどうなっているのか、事態が全く飲み込めない三人の前でにこやかに言葉を交わすタカコと金原、そうだ、北見はと視線を向ければ、そこには拘束されていた筈の片桐に逆に押さえ込まれている北見の姿が在った。
「……タカコ?北見が斥候だってのは何と無く理解したけどその二人は?さっぱり話が見えねぇんだけど?」
高根のその言葉にタカコが漸く彼へと視線を向け、にやり、と人の悪そうな笑顔を向けて見せる。
「ああ、悪いな、紹介するよ、こっちがケイン・カタギリ、こっちがヴィンセント・キム、二人共私の優秀な部下だ。我々の本隊潜入に先駆けて潜入させておいた斥候だ、両方階級は中尉、宜しく頼むよ」
事も無げに言って退けるタカコ、敵勢力だけではなくタカコ達ワシントン陣営からも斥候を送り込まれていたのか、唖然とした後にやられた、と頭に手を遣る高根を見て、タカコはさもおかしそうに笑って見せた。
「潜伏の仕方はこの男の方が上手かったがな、でも、お前等もこの二人から不審な点を見つける事は結局出来なかったろ?」
「まぁ……そりゃ、確かに」
「私にもこの二人にも大和に対する害意は無い、今のところはな……それは、それだけは信じてくれ」
妙な流れではあるが結果的に敵勢力の斥候を炙り出し確保する事には成功した、話を本題に戻すべきか、高根はそう思い直し、一度敦賀と黒川の方へと顔を向けて彼等の反応を待つ。二人共それに無言で頷き肯定の意を示し、高根はそれに頷き返すとタカコの方へと向き直った。
「シミズ大佐、大和海兵隊総司令としてあなたの今迄の尽力に対して謝意を。そして、今後の協力の継続を要請する」
「了解だ、高根大佐。ワシントン合衆国軍大佐として、また、Providence指揮官としてその要請、受諾させて頂く」
どちらからともなく上がる右手、こめかみへと向けられる指先、互いへと向けられた挙手敬礼に、北見と、その彼を押さえているカタギリ以外の全員の手が上がり敬礼が相手へと向けられる。
「この仮り初めの同盟が本当且つ強固なものになる様、互いに全力を尽くそう」
「北見が斥候って……じゃあ、そいつは……片桐は?」
タカコが高根のその問いに答えようと口を開きかけたその時、不意に北見が動き出しズボンのポケットから何かを取り出し眼前に掲げて見せる。
「……どういうつもりだ、言葉で自爆した序でに本当に自爆するつもりか」
北見の手に握られているのはタカコが大和へと持ち込んだ手榴弾、先の事件の時に装備を積み込む作業の中に北見もいたが、その時に一つ盗み出されていたかと小さく舌を打つ。
「出来れば死にたくはねぇ……見逃してくれたらあんた等も助けてやるよ……どうだ?」
取り繕う事を止めたのか北見の表情と言葉が急に変わる、その眼差しには怒りも恐れも無い、有るのは純粋な殺気のみ。タカコはそれを認めて目を細め、浮かべていた笑みを深くして言葉を返した。
「馬鹿か貴様、逃げ切れるとでも?」
「やってみなきゃ分かんねぇぜ?あんたと出会ってからずっとあんたの目を欺き続けて来た、それは分かってんだろ?」
「ああ、それは認めるよ、綺麗に騙された。良い腕を持ってる、戦闘能力もきっと相応のものを持ってるだろうな」
「タカコ?そんな悠長な――」
「この場は私に任せてくれ」
黒川の言葉を右腕を翳して制しタカコは言葉を続ける。
「でもなぁ?私も、いや、私の部隊の能力もなかなかのものだぞ?『Providence』、摂理、神意なんて名前、伊達や酔狂で背負えるもんじゃない……試してみるか、小坊主」
その言葉と共にタカコの顔に浮かぶのは、人間という範疇から掛け離れているとすら感じられる冷たい笑みと気迫。全身から噴き出す覇気が周囲を歪めているのではとすら思えるそれに、北見はびくりと身体を揺らし、穏便に逃げ出す事は不可能だと思い知る。
「そんな大層な名前背負ってても、身体は人間のままだろうがよ……!」
その言葉に続けて手榴弾の針金の輪の部分を噛み、力任せにそれを引き抜きタカコ達の前に翳して見せる。
「動くなよ、俺が手を離せば五秒後にはこの場の全員爆死する羽目になるぞ」
そう言いながら片桐の身体を押さえたままゆっくりと扉の方へと後退り、そして、
「今迄楽しかったよ……でも、それももうこれで終わりだな」
そう言って扉の外へと半身を出しながら片桐の身体を突き飛ばし、手榴弾を放ろうとした瞬間、タカコが廊下へと向けて声を張り上げた。
「ヴィンス!制圧しろ!」
その刹那、廊下から伸びて来た腕が北見の手と彼が放ろうとした手榴弾を押さえ付け、点火の為の取っ手が飛ぶのを制止する。次の瞬間には両腕は大きく北見の腕を捻り上げ、堪らずその方向へと身体を捻った北見の腹へと鋭い膝が叩き込まれる。低く響いた北見の呻き声、それと同時に彼の身体が床へと落とされる振動と音、それが静まった時、そこには陸軍の戦闘服を身に付け、手には北見から奪った手榴弾を持った一人の男の姿が在った。
「金原!?お前、何でここに?」
驚いた様に言葉を発したのは黒川、斥候のもう一人と目されていた金原が何故ここに、黒川だけでなく高根と敦賀の視線も集中する中、金原はそれを気にする事も無くタカコへと向かって歩み寄る。
「御無事ですか、ボス」
「ああ、見ての通りだ」
「それは何よりです……ピン下さいピン、点火は防ぎましたけどこのまま持ってるのは気分的に嫌です」
「御尤も……あ、有った、ほい」
一体何がどうなっているのか、事態が全く飲み込めない三人の前でにこやかに言葉を交わすタカコと金原、そうだ、北見はと視線を向ければ、そこには拘束されていた筈の片桐に逆に押さえ込まれている北見の姿が在った。
「……タカコ?北見が斥候だってのは何と無く理解したけどその二人は?さっぱり話が見えねぇんだけど?」
高根のその言葉にタカコが漸く彼へと視線を向け、にやり、と人の悪そうな笑顔を向けて見せる。
「ああ、悪いな、紹介するよ、こっちがケイン・カタギリ、こっちがヴィンセント・キム、二人共私の優秀な部下だ。我々の本隊潜入に先駆けて潜入させておいた斥候だ、両方階級は中尉、宜しく頼むよ」
事も無げに言って退けるタカコ、敵勢力だけではなくタカコ達ワシントン陣営からも斥候を送り込まれていたのか、唖然とした後にやられた、と頭に手を遣る高根を見て、タカコはさもおかしそうに笑って見せた。
「潜伏の仕方はこの男の方が上手かったがな、でも、お前等もこの二人から不審な点を見つける事は結局出来なかったろ?」
「まぁ……そりゃ、確かに」
「私にもこの二人にも大和に対する害意は無い、今のところはな……それは、それだけは信じてくれ」
妙な流れではあるが結果的に敵勢力の斥候を炙り出し確保する事には成功した、話を本題に戻すべきか、高根はそう思い直し、一度敦賀と黒川の方へと顔を向けて彼等の反応を待つ。二人共それに無言で頷き肯定の意を示し、高根はそれに頷き返すとタカコの方へと向き直った。
「シミズ大佐、大和海兵隊総司令としてあなたの今迄の尽力に対して謝意を。そして、今後の協力の継続を要請する」
「了解だ、高根大佐。ワシントン合衆国軍大佐として、また、Providence指揮官としてその要請、受諾させて頂く」
どちらからともなく上がる右手、こめかみへと向けられる指先、互いへと向けられた挙手敬礼に、北見と、その彼を押さえているカタギリ以外の全員の手が上がり敬礼が相手へと向けられる。
「この仮り初めの同盟が本当且つ強固なものになる様、互いに全力を尽くそう」
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