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第287章『傷痕』
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第287章『傷痕』
中洲をふらついて万が一が有ってはいけないという事でいつもの旅館に直行した二人、元々そのつもりで予約を入れていたのかいつもの離れへと入った時には既に二人分の食事が整えられており、相変わらず手際が良いと言うか要領が良いと言うか、と、苦笑するタカコの背中を黒川が押して席へとつかせ、久し振りに真っ当な食事にありつけた、そんな事を言い合いながら食事へと手を付けた。
「……効くなぁ……もう二週間近く呑んでねぇし……」
「陸軍は海兵隊よりも大変だよねぇ、本土内の治安維持は陸軍の仕事だし、お疲れ様」
食事を摂りつつもいつもの様に徳利と猪口を手に酒を進める黒川、ここ最近は晩酌どころか自宅に戻る事も出来ずに執務室のソファで寝ていただけだったから、久々の酒は随分と染み渡る様子。しみじみとそう言いながら飲み進める黒川を見て笑いながら、タカコの方はと言えば酒の方にはあまり手を付けずに食事の方を楽しんでいる。
仕事の話は一切無し、そう言い出したのは黒川の方で、タカコもそれに同意し、話すのは主に高根夫妻の事について。双子だそうだが男か女か両方か、外見にしろ内面にしろ、是非とも凛の方に似て欲しい、特に内面が高根の方に似てしまっては凛が将来苦労するに違い無い、そんな事を笑いながら話し小一時間程過ごし、食後に出された林檎の甘煮をタカコが平らげたのを見て黒川が風呂を勧める。
「一緒に――」
「入らねぇよスケベジジイ!」
黒川の予想通りに頬を染めて言い放ち立ち上がるタカコ、黒川はそれを肩を揺らせて笑いながら見送る。暫くしてから微かに聞こえて来た湯の音に目を細め、徳利の中に僅かに残っていた酒を猪口を使わずに飲み干し立ち上がり、続きの間に支度されていた布団の上に身を投げた。
今日太宰府を空けた皺寄せは明日以降にじわじわと響いて来るのだろうが、それでも来て良かった、そう思う。いつ終わるとも知れない底なし沼の様に重苦しい毎日、その中で身体の中に汚泥の様に溜まっていた疲れがタカコと過ごした時間で幾分なりとも消えて心身共に軽くなったのが体感出来る。彼女が風呂から出たら自分が交代で入って、その後は、と、天井を眺めつつぼんやりとそんな事を考えている内に、蓄積した疲労と酔いに負けたのか、黒川の意識は眠りへと落ちて行った。
何だか息苦しい、浮上する意識の中でそう思った黒川が目を開ければ、顔には何かの布が当たっており、状況が掴めないままに身体を起こせば、縦に二つ折りにされた掛布団に挟まれているという状況が何とか把握出来た。一体何なんだと周囲を見回してみれば、直ぐ隣で浴衣姿のタカコが布団も被らずに丸まって眠っており、ああ、布団の上に転がったまま寝入ってしまったところに布団を被せてくれたのか、それでタカコは掛布団も無しに眠る羽目になったのかと思い至り、寝落ちするとは随分と疲れていた様だと頭を掻きつつ掛布団から這い出してそれをタカコに掛けてやる。
「……ん……タツ、さん?」
「悪かったな、落ちちまってて。寒かったろ?」
「そんな事……無いよ。今何時?」
「まだ一時だ、そんなに時間は経ってねぇな……風呂、入って来るから、お前は寝てろ」
「……ん」
暑い季節ではないがどうも身体のべたつきが気になる、さっぱりしてから寝ようと立ち上がり風呂へと向かい、若干ぬるくなっていた湯船の湯を温め直し、その中へと身体を浸し湯に疲れが溶け出して行くのを何をするでもなく感じていた。
朝になればまた底なし沼の様な毎日が始まる、やらなければいけない事は山積していて何から手を付ければ良いのかも分からず途方に暮れたくもなるが、そんな弱音を吐いて良い立場では無い事は自分が一番よく分かっている。九州を、ひいては大和を護る任の最前線である西部方面旅団、その頂点である総監の座は、任官した時から二十年近く、それだけの長い年月見据え続け、そして漸く手にしたものなのだ、放り出す気も手放す気も更々無い、求められる事を全うする、それだけだ。
風呂から上がり身体を拭き浴衣に袖を通す。そう言えば自分は風呂上がりにはいつもここの備え付けの浴衣を着るが、タカコはいつも戦闘服で彼女の浴衣姿を見たのは初めてだったな等と思いつつ部屋へと戻れば、そこには障子を明け放ち縁側で徳利と猪口を手に夜空を見上げるタカコの姿が有った。
「何だ、起きたのか、寝てれば良かったのに」
「ん?いや、何か目が冴えちゃって」
室内の明かりは常夜灯のみ、月も満月ではなく新月も間近の二十三夜、そんな心許無い明かりの中で微笑む気配が伝わって来て、黒川はそれに目を細めて歩み寄り、隣へとそっと腰を下ろす。
「はい、じゃあタツさんも一献」
「お、悪いね」
少しおどけて言うタカコから猪口を受け取れば、肘辺り迄捲れ上がった浴衣の袖からタカコの細い腕が覗く。普段は長袖で隠されているそこには大小沢山の傷痕が刻まれ、黒川は猪口を受け取りつつ空いた左手で静かに彼女の手首を掴み腕を引き寄せ、傷痕の一つにそっと唇を寄せた。
「何、どうしたの、私の傷なんか見慣れてるでしょ?」
「お前の頭、生え際のその傷は今日初めて見たぞ。真吾に聞いたよ、昨日の暴動で投石受けたって?」
「あー……うん、そう」
「何でそう無茶するかねぇ……このお嬢ちゃんは」
「えー、そんなの他の連中も同じだし。仕事なんだから仕方無いじゃん」
「お前は――」
他の海兵達とは違うだろう、そう言おうとして言葉を飲み込む。大和海兵隊の人間ではない、それ以前に大和軍人、大和人ですらない。本来であれば自分達軍人が守ってやらねばならない立場の外国人、だからそう前に出るな、無茶をするなと言おうとしたが、その言葉は危うい均衡の上に辛うじて成り立っている繋がりを自ら壊す事になりそうで、言えなかった。
「……タツさん?どうしたの?」
「もう布団行こうぜ……お前が欲しい、抱きたい」
何の衒いも無い黒川の言葉、あまりにも真っ直ぐなそれにタカコが硬直する様子が伝わって来て、押される事には本当に弱いらしい、黒川はそんな事を考えつつ小さく笑って彼女の腕を引いて立ち上がり寝室へと入り、部屋の明かりを点けてからタカコを布団の上へとそっと押し倒した。
「ちょ、タツさん、明かり」
「ん?どうした?」
「いや、消してよ、何で点けるの」
「今日は明るいところでやりたい気分。考えてみたら一度もそんな事してねぇし。あー、二回有ったか。でも最初は無理矢理気味だったし二回目は慌ただしかったし、仕切り直しって事で」
「ちょ!やだ!消してよ!!これも無理矢理じゃねぇか!」
「却下。お前の善がってる顔見たい」
「いーやーだー!!」
「はい駄目ー、大人しくしなさーい」
「止めてぇぇぇ!」
突然の黒川の行動と言葉に狼狽するタカコ、何とか逃れようとするものの黒川に組み敷かれ自由にならず、首筋に口付けられ舌を這わされ吸い上げられれば、身体からは力が抜けて行く。やがて漏れ始めた高く甘い声に気を良くした黒川は更に攻め立て、せめて顔を隠そうとするタカコの両腕を布団に縫い付け、宣言通りに彼女の艶を思う存分に堪能した。
「……っ!!」
やがて高みへと上り詰め、タカコの体内に呻きと共に欲を吐き出せば、それを受けて組み敷いた小さな身体が喘ぎと共に大きく撓る。室内に響くのは双方の荒い息と衣擦れの音、黒川は耳朶を打つそれを感じながら、脱力してしまったタカコの裸体をぼんやりと見下ろしていた。
白い肌、そして、そこに刻まれた沢山の傷痕。そのまま治癒したものも有れば縫合処置が為されたものも有る、右脇腹近くの傷は数か月前に海兵に刺されて瀕死の重傷を負った時のものだろう。他にも腹部には複数の傷が有り、黒川はそれを眺めながら、ゆっくりとタカコへと覆い被さりきつく、きつく身体を抱き締める。
「……タツさん?どうしたの?」
タカコのその問い掛けに黒川は言葉を返さず、代わりに更に腕に力を込めるだけ。
それきり黒川が口を開く事は無く、二人共いつの間にか眠りへと落ちて行った。
中洲をふらついて万が一が有ってはいけないという事でいつもの旅館に直行した二人、元々そのつもりで予約を入れていたのかいつもの離れへと入った時には既に二人分の食事が整えられており、相変わらず手際が良いと言うか要領が良いと言うか、と、苦笑するタカコの背中を黒川が押して席へとつかせ、久し振りに真っ当な食事にありつけた、そんな事を言い合いながら食事へと手を付けた。
「……効くなぁ……もう二週間近く呑んでねぇし……」
「陸軍は海兵隊よりも大変だよねぇ、本土内の治安維持は陸軍の仕事だし、お疲れ様」
食事を摂りつつもいつもの様に徳利と猪口を手に酒を進める黒川、ここ最近は晩酌どころか自宅に戻る事も出来ずに執務室のソファで寝ていただけだったから、久々の酒は随分と染み渡る様子。しみじみとそう言いながら飲み進める黒川を見て笑いながら、タカコの方はと言えば酒の方にはあまり手を付けずに食事の方を楽しんでいる。
仕事の話は一切無し、そう言い出したのは黒川の方で、タカコもそれに同意し、話すのは主に高根夫妻の事について。双子だそうだが男か女か両方か、外見にしろ内面にしろ、是非とも凛の方に似て欲しい、特に内面が高根の方に似てしまっては凛が将来苦労するに違い無い、そんな事を笑いながら話し小一時間程過ごし、食後に出された林檎の甘煮をタカコが平らげたのを見て黒川が風呂を勧める。
「一緒に――」
「入らねぇよスケベジジイ!」
黒川の予想通りに頬を染めて言い放ち立ち上がるタカコ、黒川はそれを肩を揺らせて笑いながら見送る。暫くしてから微かに聞こえて来た湯の音に目を細め、徳利の中に僅かに残っていた酒を猪口を使わずに飲み干し立ち上がり、続きの間に支度されていた布団の上に身を投げた。
今日太宰府を空けた皺寄せは明日以降にじわじわと響いて来るのだろうが、それでも来て良かった、そう思う。いつ終わるとも知れない底なし沼の様に重苦しい毎日、その中で身体の中に汚泥の様に溜まっていた疲れがタカコと過ごした時間で幾分なりとも消えて心身共に軽くなったのが体感出来る。彼女が風呂から出たら自分が交代で入って、その後は、と、天井を眺めつつぼんやりとそんな事を考えている内に、蓄積した疲労と酔いに負けたのか、黒川の意識は眠りへと落ちて行った。
何だか息苦しい、浮上する意識の中でそう思った黒川が目を開ければ、顔には何かの布が当たっており、状況が掴めないままに身体を起こせば、縦に二つ折りにされた掛布団に挟まれているという状況が何とか把握出来た。一体何なんだと周囲を見回してみれば、直ぐ隣で浴衣姿のタカコが布団も被らずに丸まって眠っており、ああ、布団の上に転がったまま寝入ってしまったところに布団を被せてくれたのか、それでタカコは掛布団も無しに眠る羽目になったのかと思い至り、寝落ちするとは随分と疲れていた様だと頭を掻きつつ掛布団から這い出してそれをタカコに掛けてやる。
「……ん……タツ、さん?」
「悪かったな、落ちちまってて。寒かったろ?」
「そんな事……無いよ。今何時?」
「まだ一時だ、そんなに時間は経ってねぇな……風呂、入って来るから、お前は寝てろ」
「……ん」
暑い季節ではないがどうも身体のべたつきが気になる、さっぱりしてから寝ようと立ち上がり風呂へと向かい、若干ぬるくなっていた湯船の湯を温め直し、その中へと身体を浸し湯に疲れが溶け出して行くのを何をするでもなく感じていた。
朝になればまた底なし沼の様な毎日が始まる、やらなければいけない事は山積していて何から手を付ければ良いのかも分からず途方に暮れたくもなるが、そんな弱音を吐いて良い立場では無い事は自分が一番よく分かっている。九州を、ひいては大和を護る任の最前線である西部方面旅団、その頂点である総監の座は、任官した時から二十年近く、それだけの長い年月見据え続け、そして漸く手にしたものなのだ、放り出す気も手放す気も更々無い、求められる事を全うする、それだけだ。
風呂から上がり身体を拭き浴衣に袖を通す。そう言えば自分は風呂上がりにはいつもここの備え付けの浴衣を着るが、タカコはいつも戦闘服で彼女の浴衣姿を見たのは初めてだったな等と思いつつ部屋へと戻れば、そこには障子を明け放ち縁側で徳利と猪口を手に夜空を見上げるタカコの姿が有った。
「何だ、起きたのか、寝てれば良かったのに」
「ん?いや、何か目が冴えちゃって」
室内の明かりは常夜灯のみ、月も満月ではなく新月も間近の二十三夜、そんな心許無い明かりの中で微笑む気配が伝わって来て、黒川はそれに目を細めて歩み寄り、隣へとそっと腰を下ろす。
「はい、じゃあタツさんも一献」
「お、悪いね」
少しおどけて言うタカコから猪口を受け取れば、肘辺り迄捲れ上がった浴衣の袖からタカコの細い腕が覗く。普段は長袖で隠されているそこには大小沢山の傷痕が刻まれ、黒川は猪口を受け取りつつ空いた左手で静かに彼女の手首を掴み腕を引き寄せ、傷痕の一つにそっと唇を寄せた。
「何、どうしたの、私の傷なんか見慣れてるでしょ?」
「お前の頭、生え際のその傷は今日初めて見たぞ。真吾に聞いたよ、昨日の暴動で投石受けたって?」
「あー……うん、そう」
「何でそう無茶するかねぇ……このお嬢ちゃんは」
「えー、そんなの他の連中も同じだし。仕事なんだから仕方無いじゃん」
「お前は――」
他の海兵達とは違うだろう、そう言おうとして言葉を飲み込む。大和海兵隊の人間ではない、それ以前に大和軍人、大和人ですらない。本来であれば自分達軍人が守ってやらねばならない立場の外国人、だからそう前に出るな、無茶をするなと言おうとしたが、その言葉は危うい均衡の上に辛うじて成り立っている繋がりを自ら壊す事になりそうで、言えなかった。
「……タツさん?どうしたの?」
「もう布団行こうぜ……お前が欲しい、抱きたい」
何の衒いも無い黒川の言葉、あまりにも真っ直ぐなそれにタカコが硬直する様子が伝わって来て、押される事には本当に弱いらしい、黒川はそんな事を考えつつ小さく笑って彼女の腕を引いて立ち上がり寝室へと入り、部屋の明かりを点けてからタカコを布団の上へとそっと押し倒した。
「ちょ、タツさん、明かり」
「ん?どうした?」
「いや、消してよ、何で点けるの」
「今日は明るいところでやりたい気分。考えてみたら一度もそんな事してねぇし。あー、二回有ったか。でも最初は無理矢理気味だったし二回目は慌ただしかったし、仕切り直しって事で」
「ちょ!やだ!消してよ!!これも無理矢理じゃねぇか!」
「却下。お前の善がってる顔見たい」
「いーやーだー!!」
「はい駄目ー、大人しくしなさーい」
「止めてぇぇぇ!」
突然の黒川の行動と言葉に狼狽するタカコ、何とか逃れようとするものの黒川に組み敷かれ自由にならず、首筋に口付けられ舌を這わされ吸い上げられれば、身体からは力が抜けて行く。やがて漏れ始めた高く甘い声に気を良くした黒川は更に攻め立て、せめて顔を隠そうとするタカコの両腕を布団に縫い付け、宣言通りに彼女の艶を思う存分に堪能した。
「……っ!!」
やがて高みへと上り詰め、タカコの体内に呻きと共に欲を吐き出せば、それを受けて組み敷いた小さな身体が喘ぎと共に大きく撓る。室内に響くのは双方の荒い息と衣擦れの音、黒川は耳朶を打つそれを感じながら、脱力してしまったタカコの裸体をぼんやりと見下ろしていた。
白い肌、そして、そこに刻まれた沢山の傷痕。そのまま治癒したものも有れば縫合処置が為されたものも有る、右脇腹近くの傷は数か月前に海兵に刺されて瀕死の重傷を負った時のものだろう。他にも腹部には複数の傷が有り、黒川はそれを眺めながら、ゆっくりとタカコへと覆い被さりきつく、きつく身体を抱き締める。
「……タツさん?どうしたの?」
タカコのその問い掛けに黒川は言葉を返さず、代わりに更に腕に力を込めるだけ。
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