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リューシャ編
46話
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「…スカイ様。まさか、裏切った…などということはございませぬな?」
リリエを守るように引き寄せているスカイを見て、スヴールはそう言うが、スカイは不服そうにスヴールを見つめる。つい先程までは恐ろしくも感じたその目は、やはり立場の感じかたの違いだろうか。とても頼もしく見えた。
「よく言うよ。さっき俺を狙ってたくせに。それに俺は元から、あんたの力になるつもりはさらさら無かったんだけど。」
スカイは先に、優しい目でリリエに言ったとは思えないような無表情っぷりでそう返す。
「あれは偶然です。私にも中は見えていなかったですからね。…しかし、スカイ様は協力するようなことを言ってはいたはずですが?」
「でも確定はさせてなかったよね。」
スカイの言葉にスヴールはため息を軽くつく。
「私との契約より、そんなに優先させる物があるのですか?」
「それを、あんたに言う必要は無い」
「必要は無くとも、聞く権利はあるはず。そこまでその者を守るとは、よほどその者が大切か。」
スヴールの目に、一瞬だけ、狂気が混ざった。その目にリリエは明確に、かつてリューシャといたときに皇都で見た違和感を感じて、ついスカイの服をぎゅっと握り締めた。リリエが服を掴んだのをスカイは感じたのか、ほんのすこしだけリリエを引き寄せる腕に力が入った。
「…そこまで言うなら、俺の言える範囲で教えてあげるよ。俺は、とある誰かにリリエを守るように頼まれたんだ。だから、俺はその頼みを聞いてる。」
その言葉にリリエは疑問を持たずにはいられなかった。
″とある誰か…?誰なんだろう…あ、ルクトのことかな?頼まれたって言ってたし…″
その結論が一番納得できるはずなのにどこか納得できない自分がいるものの、そんなことより離してほしいが、安心するからしばらくこのままでいたいなんて途中からよくわからない思考が巡りだして、リリエの頭が混乱してきたため、一旦思考を落ち着かせようとする。
″…スカイに抱き締められてると安心するなんて、なに考えてるんだろ私!今はスヴール、敵が目の前にいるんだよ!安心しきって気を抜いてたら私が邪魔になるんだからね!″
自分で自分に葛を入れて、ようやく思考が落ち着いたリリエは、何事もなかったようにスヴールの方を見る。
「…っ!…」
しかしスヴールに何かを感じて、リリエの背中にぞわりと寒気が走った。また、スカイの服をぎゅっと掴んでしまう。だが、リリエにはそれを気にする暇などなかった。リリエは、スヴールの目がついさっきと変わって、真っ赤な紅い色に変化していたから。
″目の色が…違う…?さっきは両目とも黒だったはずなのに、両目が紅色に…?″
「貴様らには、姫を救えん。早々に諦めて去れ。…それとも、霧の中でこの私にもてあそばれたいか?」
ニヤリと2人に向けて狂気の混じる笑みを浮かべるスヴールに、リリエは再び寒気が走る。
「…二重人格だよ。」
「二重…人格…?」
スヴールの変化に少なからず怯えているであろうリリエに、スカイはそう言った。スカイの言葉に、リリエはそう繰り返す。スカイはリリエのおうむ返しに頷き、言葉を続ける。
「スヴールは簡単に言うと戦い、殺戮を好まない人格と、殺戮に積極的な人格の2つを持ってるんだ。で、言わずともわかるとおもうけど今は…」
もちろん、積極的な方だろう。恐らく、前に感じた矛盾した違和感は狂気がどちらかに混ざっていたからなのだと、何となく感じた。
「でも、二重人格なんて、関係ないよね。」
「リリエ?」
リリエはスカイに笑みを向ける。そう。二重人格だろうと自分達の目的はただ1つなのだから。
「どんな相手でも勝って先に進まなきゃ」
「リリエって、ネガティブになったりポジティブになったり忙しいよね。まあ、二重人格とか、関係ないって言われたらその通りだけど。」
スカイは呆れたように言うが、リリエの言った言葉を否定はしない。スカイもリリエの意見に賛同しているのだろう。リリエは、掴んでしまっていたスカイの服から手を離し、スカイからも離れる。
「大丈夫?」
その問いかけに頷くが、本音はあまり大丈夫ではない。それは、スヴールの変化に少なからずとも圧されているから。でもそんなことで怖がって逃げたら、今まで何人もの相手を倒してきた意味がなくなる。
「…そんなことは、絶対にしない。」
「敢えて、勝てぬ相手に立ち向かうと言うか」
スヴールの紅い目がリリエに退けとでも言うように煌めく。が、そんなものに屈するものか。
「当たり前じゃないですか。ここに来るまでだって、いくらスカイの手助けがあったにしろ、何人もの勝てない相手と戦って勝ってきたんです。こんなところで逃げないですよ。」
スヴールは、リリエの言葉に鼻で笑って言う。
「勝てない相手?戦闘に慣れていない小娘一人に勝てなかったなど、所詮それほどの実力だったと言うことだ。」
どうしてとリリエがスヴールに言いかけるが、スヴールはそんな疑問を察し、言葉を続ける。
「どうして、と思っているだろうな。…私の部下が良い例だ。……あんな、前神の皇子の直属部隊の一人や二人、雑魚に過ぎない。」
リリエは、その言葉に疑問を覚えた。前、神の皇子?前の皇子は直属部隊も結成していたのか、と。その前皇子が、リリエのよく知る人物であると言うことはまだ知らない。
リリエを守るように引き寄せているスカイを見て、スヴールはそう言うが、スカイは不服そうにスヴールを見つめる。つい先程までは恐ろしくも感じたその目は、やはり立場の感じかたの違いだろうか。とても頼もしく見えた。
「よく言うよ。さっき俺を狙ってたくせに。それに俺は元から、あんたの力になるつもりはさらさら無かったんだけど。」
スカイは先に、優しい目でリリエに言ったとは思えないような無表情っぷりでそう返す。
「あれは偶然です。私にも中は見えていなかったですからね。…しかし、スカイ様は協力するようなことを言ってはいたはずですが?」
「でも確定はさせてなかったよね。」
スカイの言葉にスヴールはため息を軽くつく。
「私との契約より、そんなに優先させる物があるのですか?」
「それを、あんたに言う必要は無い」
「必要は無くとも、聞く権利はあるはず。そこまでその者を守るとは、よほどその者が大切か。」
スヴールの目に、一瞬だけ、狂気が混ざった。その目にリリエは明確に、かつてリューシャといたときに皇都で見た違和感を感じて、ついスカイの服をぎゅっと握り締めた。リリエが服を掴んだのをスカイは感じたのか、ほんのすこしだけリリエを引き寄せる腕に力が入った。
「…そこまで言うなら、俺の言える範囲で教えてあげるよ。俺は、とある誰かにリリエを守るように頼まれたんだ。だから、俺はその頼みを聞いてる。」
その言葉にリリエは疑問を持たずにはいられなかった。
″とある誰か…?誰なんだろう…あ、ルクトのことかな?頼まれたって言ってたし…″
その結論が一番納得できるはずなのにどこか納得できない自分がいるものの、そんなことより離してほしいが、安心するからしばらくこのままでいたいなんて途中からよくわからない思考が巡りだして、リリエの頭が混乱してきたため、一旦思考を落ち着かせようとする。
″…スカイに抱き締められてると安心するなんて、なに考えてるんだろ私!今はスヴール、敵が目の前にいるんだよ!安心しきって気を抜いてたら私が邪魔になるんだからね!″
自分で自分に葛を入れて、ようやく思考が落ち着いたリリエは、何事もなかったようにスヴールの方を見る。
「…っ!…」
しかしスヴールに何かを感じて、リリエの背中にぞわりと寒気が走った。また、スカイの服をぎゅっと掴んでしまう。だが、リリエにはそれを気にする暇などなかった。リリエは、スヴールの目がついさっきと変わって、真っ赤な紅い色に変化していたから。
″目の色が…違う…?さっきは両目とも黒だったはずなのに、両目が紅色に…?″
「貴様らには、姫を救えん。早々に諦めて去れ。…それとも、霧の中でこの私にもてあそばれたいか?」
ニヤリと2人に向けて狂気の混じる笑みを浮かべるスヴールに、リリエは再び寒気が走る。
「…二重人格だよ。」
「二重…人格…?」
スヴールの変化に少なからず怯えているであろうリリエに、スカイはそう言った。スカイの言葉に、リリエはそう繰り返す。スカイはリリエのおうむ返しに頷き、言葉を続ける。
「スヴールは簡単に言うと戦い、殺戮を好まない人格と、殺戮に積極的な人格の2つを持ってるんだ。で、言わずともわかるとおもうけど今は…」
もちろん、積極的な方だろう。恐らく、前に感じた矛盾した違和感は狂気がどちらかに混ざっていたからなのだと、何となく感じた。
「でも、二重人格なんて、関係ないよね。」
「リリエ?」
リリエはスカイに笑みを向ける。そう。二重人格だろうと自分達の目的はただ1つなのだから。
「どんな相手でも勝って先に進まなきゃ」
「リリエって、ネガティブになったりポジティブになったり忙しいよね。まあ、二重人格とか、関係ないって言われたらその通りだけど。」
スカイは呆れたように言うが、リリエの言った言葉を否定はしない。スカイもリリエの意見に賛同しているのだろう。リリエは、掴んでしまっていたスカイの服から手を離し、スカイからも離れる。
「大丈夫?」
その問いかけに頷くが、本音はあまり大丈夫ではない。それは、スヴールの変化に少なからずとも圧されているから。でもそんなことで怖がって逃げたら、今まで何人もの相手を倒してきた意味がなくなる。
「…そんなことは、絶対にしない。」
「敢えて、勝てぬ相手に立ち向かうと言うか」
スヴールの紅い目がリリエに退けとでも言うように煌めく。が、そんなものに屈するものか。
「当たり前じゃないですか。ここに来るまでだって、いくらスカイの手助けがあったにしろ、何人もの勝てない相手と戦って勝ってきたんです。こんなところで逃げないですよ。」
スヴールは、リリエの言葉に鼻で笑って言う。
「勝てない相手?戦闘に慣れていない小娘一人に勝てなかったなど、所詮それほどの実力だったと言うことだ。」
どうしてとリリエがスヴールに言いかけるが、スヴールはそんな疑問を察し、言葉を続ける。
「どうして、と思っているだろうな。…私の部下が良い例だ。……あんな、前神の皇子の直属部隊の一人や二人、雑魚に過ぎない。」
リリエは、その言葉に疑問を覚えた。前、神の皇子?前の皇子は直属部隊も結成していたのか、と。その前皇子が、リリエのよく知る人物であると言うことはまだ知らない。
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