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混沌の泉編
65話
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「落ち着け、リリエ落ち着け。」
冷静にルクトに諭されながらも、リリエは叫ぶ。
「うん!なんだかまた衝撃的なこと暴露されそうな気がするのは気付いてたけどね!?」
「…落ち着いてくれないと、リリエが知りたいこと全部分からないままになるけど良いんだね」
「………………。」
スカイの言葉に一瞬で静まるリリエ。そんなに知りたいことがあるのだろうか。
「はい、質問は?」
「なんで神と人のハーフなんですか。」
「両親が神と人だったからです、って、そんな分かりきったこと聞かないでくれるかな」
スカイからの美味しいノリツッコミを頂いたところで、本当に聞きたかったことを口にする。始めからそれを聞け、なんてツッコミは聞かない。
「えっと……神と人って、寿命が人より長くて魔法が使えることが唯一の違いだよね?だったらスカイはもうほぼ神と同一なんじゃ…?」
スカイは、首を横に振った。
「リリエの言ってる事には、少しだけ間違いがある。俺は、神と同等の魔法を扱える能力がありながら、寿命が人とほぼ同じなんだ。だから俺は神と少しも同一じゃないよ」
いつも通りの無愛想な無表情。だがその無表情な目の中には、微かに憂いが漂っている気がする。
「でも、そのときまで生きてみないと寿命なんて判らないものでしょ?」
「いや。判るよ。」
スカイは躊躇うこともなく断言した。そして、リリエが何故?と言葉を口にする前にスカイは話を続ける。
「だって、考えてもみなよ。俺は神と人のハーフだから、人の特徴と神の特徴とを併せ持っている。神と人って、見た目的には何も変わらない。…その二種族の違いは明確にたった二つだけ。“寿命”か、“魔法が使えるかどうか”ただそれだけ。」
スカイは、そこまで言うともう分かったでしょと言いたげにリリエの目を見詰めた。
「えっ、と、それはつまり、スカイは魔法が使えるから…」
その後の言葉は声という衣を与えられずに宙を漂い消えた。
「……お陰で、俺は酷い目に遭った。…なんで、俺の親は子供がこうなることを見越せなかったのか謎だよ。」
そこまで呟くように言い切ると、はぁと何処か怒気の込められたような溜め息を吐く。
「酷い目…?」
スカイは頷いて、聞きたいなら言うよ?と、こともなげに言うとリリエの返事を待たずに言葉を続けた。
「神からは虐げられ、人からは怯えられて仲良くもなれなかった。まぁつまり俺は孤独になったってこと。」
「えっ…、でも、ハーフってことは言わなきゃ分からないでしょ?だから隠して、どちらかの種族に溶け込むことが出来たんじゃないの?」
その言葉に、呆れたようにスカイは肩を竦める。
「残念ながら、なぜか俺の特徴と共に俺がハーフだってことが神と人の両種族全体に広められてた。」
はぁ、とスカイは当時のことを思い起こしているのか溜め息を吐く。
「……神は、人より寿命が長く、魔法が自由自在に扱えることを自慢とし、そしてその両方を兼ね備えてこその神なんだと誇りを持っている。そして種族全体でそれを象徴とする意識が当然とされている。……そんな神の中に、人並の寿命しか生きれない俺が混じったら、どうなると思う?…神の誇り、象徴をほんの欠片でも持ち合わせていない俺は、神じゃないと虐げられた。そして、人からは魔法が使えるから、と畏怖された。」
─その結果俺は、神にも、人にもなれなかった。
何も、言えることがリリエには無かった。ルクトすらもかける言葉が無いのか、悲しげな表情でスカイを見つめている。
「ハーフは、両方の血が入ってしまう。だから、種族間の境界線を曖昧にする。種族間の境界線は、曖昧にするべきじゃないと俺は思うよ。まぁだからといって、ハーフの存在を全面から否定する訳じゃないけど。……?二人とも暗そうな顔してどうしたの?」
首を傾げてリリエとルクトを見つめるスカイは、何も気にしていないように見えた。
きっとリリエは、あまり気にしていないんだろうなと安堵しているだろう。だがそれは間違いだ。いつものポーカーフェイスを最大限に発揮して、前に出る感情の大半を押し殺している。しかし押し殺せ無かったほんの少しだけ残った行き場のない感情が、言動の節に滲んでいるのだ。スカイがそんな風に殆ど感情を前に出さなくなったのはいつからだったろうか、とルクトは嘆くように心の中で自問した。
当のリリエは何か言いたげな目をしてスカイを見つめていたものの、それを言葉にすること無く視線を地面へと落とした。
「スカイ。あなたは、自身がハーフであることをどう思ってるの?」
不意に、リューシャがそんなことを尋ねる。
「…俺がハーフであることを自分でどう思ってるかって?……さぁ、どうだろうね。嫌いと思った事も無いし、好きだと思ったことも無い。かといって、好きになる気も無いけど。……それがどうしたの?」
スカイの言葉になるほどね…。とリューシャは呟く。
「どうしたの?リューシャ?」
考え込んでいるような仕草をするリューシャ。そしてリューシャはおもむろに言い放った。
「スカイには、私の思うハーフとしての責務を知ってもらわなくちゃいけないみたいね」
え?と三人の声がぴったりと重なる。リューシャはリリエの腕からするりと抜け出し地面に降り立つと、姿を変えてルーナになると自身の腕を組んで真剣な眼差しでスカイを見つめた。
「あ、この話は私の主観で考えた話だから、あんまり真に受けなくても良いけどね?」
くすっと人懐っこい笑みをルーナはその口許に浮かべた。
冷静にルクトに諭されながらも、リリエは叫ぶ。
「うん!なんだかまた衝撃的なこと暴露されそうな気がするのは気付いてたけどね!?」
「…落ち着いてくれないと、リリエが知りたいこと全部分からないままになるけど良いんだね」
「………………。」
スカイの言葉に一瞬で静まるリリエ。そんなに知りたいことがあるのだろうか。
「はい、質問は?」
「なんで神と人のハーフなんですか。」
「両親が神と人だったからです、って、そんな分かりきったこと聞かないでくれるかな」
スカイからの美味しいノリツッコミを頂いたところで、本当に聞きたかったことを口にする。始めからそれを聞け、なんてツッコミは聞かない。
「えっと……神と人って、寿命が人より長くて魔法が使えることが唯一の違いだよね?だったらスカイはもうほぼ神と同一なんじゃ…?」
スカイは、首を横に振った。
「リリエの言ってる事には、少しだけ間違いがある。俺は、神と同等の魔法を扱える能力がありながら、寿命が人とほぼ同じなんだ。だから俺は神と少しも同一じゃないよ」
いつも通りの無愛想な無表情。だがその無表情な目の中には、微かに憂いが漂っている気がする。
「でも、そのときまで生きてみないと寿命なんて判らないものでしょ?」
「いや。判るよ。」
スカイは躊躇うこともなく断言した。そして、リリエが何故?と言葉を口にする前にスカイは話を続ける。
「だって、考えてもみなよ。俺は神と人のハーフだから、人の特徴と神の特徴とを併せ持っている。神と人って、見た目的には何も変わらない。…その二種族の違いは明確にたった二つだけ。“寿命”か、“魔法が使えるかどうか”ただそれだけ。」
スカイは、そこまで言うともう分かったでしょと言いたげにリリエの目を見詰めた。
「えっ、と、それはつまり、スカイは魔法が使えるから…」
その後の言葉は声という衣を与えられずに宙を漂い消えた。
「……お陰で、俺は酷い目に遭った。…なんで、俺の親は子供がこうなることを見越せなかったのか謎だよ。」
そこまで呟くように言い切ると、はぁと何処か怒気の込められたような溜め息を吐く。
「酷い目…?」
スカイは頷いて、聞きたいなら言うよ?と、こともなげに言うとリリエの返事を待たずに言葉を続けた。
「神からは虐げられ、人からは怯えられて仲良くもなれなかった。まぁつまり俺は孤独になったってこと。」
「えっ…、でも、ハーフってことは言わなきゃ分からないでしょ?だから隠して、どちらかの種族に溶け込むことが出来たんじゃないの?」
その言葉に、呆れたようにスカイは肩を竦める。
「残念ながら、なぜか俺の特徴と共に俺がハーフだってことが神と人の両種族全体に広められてた。」
はぁ、とスカイは当時のことを思い起こしているのか溜め息を吐く。
「……神は、人より寿命が長く、魔法が自由自在に扱えることを自慢とし、そしてその両方を兼ね備えてこその神なんだと誇りを持っている。そして種族全体でそれを象徴とする意識が当然とされている。……そんな神の中に、人並の寿命しか生きれない俺が混じったら、どうなると思う?…神の誇り、象徴をほんの欠片でも持ち合わせていない俺は、神じゃないと虐げられた。そして、人からは魔法が使えるから、と畏怖された。」
─その結果俺は、神にも、人にもなれなかった。
何も、言えることがリリエには無かった。ルクトすらもかける言葉が無いのか、悲しげな表情でスカイを見つめている。
「ハーフは、両方の血が入ってしまう。だから、種族間の境界線を曖昧にする。種族間の境界線は、曖昧にするべきじゃないと俺は思うよ。まぁだからといって、ハーフの存在を全面から否定する訳じゃないけど。……?二人とも暗そうな顔してどうしたの?」
首を傾げてリリエとルクトを見つめるスカイは、何も気にしていないように見えた。
きっとリリエは、あまり気にしていないんだろうなと安堵しているだろう。だがそれは間違いだ。いつものポーカーフェイスを最大限に発揮して、前に出る感情の大半を押し殺している。しかし押し殺せ無かったほんの少しだけ残った行き場のない感情が、言動の節に滲んでいるのだ。スカイがそんな風に殆ど感情を前に出さなくなったのはいつからだったろうか、とルクトは嘆くように心の中で自問した。
当のリリエは何か言いたげな目をしてスカイを見つめていたものの、それを言葉にすること無く視線を地面へと落とした。
「スカイ。あなたは、自身がハーフであることをどう思ってるの?」
不意に、リューシャがそんなことを尋ねる。
「…俺がハーフであることを自分でどう思ってるかって?……さぁ、どうだろうね。嫌いと思った事も無いし、好きだと思ったことも無い。かといって、好きになる気も無いけど。……それがどうしたの?」
スカイの言葉になるほどね…。とリューシャは呟く。
「どうしたの?リューシャ?」
考え込んでいるような仕草をするリューシャ。そしてリューシャはおもむろに言い放った。
「スカイには、私の思うハーフとしての責務を知ってもらわなくちゃいけないみたいね」
え?と三人の声がぴったりと重なる。リューシャはリリエの腕からするりと抜け出し地面に降り立つと、姿を変えてルーナになると自身の腕を組んで真剣な眼差しでスカイを見つめた。
「あ、この話は私の主観で考えた話だから、あんまり真に受けなくても良いけどね?」
くすっと人懐っこい笑みをルーナはその口許に浮かべた。
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