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ROUTE1(プロローグ/斬裂魔事件編)
1-07 ハイテンション
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「ここからは本気だ。来いよ、ドチンピラ!」
「舐めんなよ、クソガキがァ!」
三度、男の拳が放たれる。
目一杯の振りかぶり。
しかしそれでも衝撃波の威力を考えれば安易に避けるというのは危険だ。
現に俺の背後には先輩がいることもあり、万が一にも備えて軌道を変えることが
望ましい。だが――――それではダメだ。
俺はまずは左腕を使い、男の拳が伸び切る前に奴の腕を払う。
すると当然男は反対の手で攻撃を繰り出そうとするが、そのモーションを見切り
即座に右正拳突きをお見舞いする。
「ぐぉ!」
男の体制が崩れる。だがすぐに追撃はしない。
奴の背後にいる暗示の魔術師の視界に入らぬように、上手いこと男の影に身を
隠しながら二激三激と直実にダメージを与えていく。
特に三激目の顎への直撃は男の脳を揺らし頭と身体を切り離す。
「(まずは一人目)」
再び男の大柄な身で視線を途切れさせつつ、背後の男たちの眼前へと迫る。
「うっ!」
「がぁ!」
短い悲鳴と共に男たちも一撃の名のもとに地面へと沈める。
◇
その後、男たちに勝利した俺は暗示の魔術師の力を使い(脅して)、一応の
対策として今回の件について口外しないこと。そして今後悪さを一切しないことを
約束させた。
そして平穏な時間へと戻った公園内。
ベンチでは未だ遠乃先輩との間に微妙な空気感が流れていた。
「…………」
「…………」
どれくらい経っただろうか。
傷を心配するやり取りが行われて以降、とんと会話はなくなり、
立ち去ろうにもうまくタイミングを計れないでいた。
「あの――――」
するとこちらより先に先輩の口が開く。
「ごめんね。その、助けてもらって」
「いえ、そのこちらこそ出過ぎた真似をしました。
先輩は強いから手助けはいらないと分かってはいたんですが」
「ううん、そんなことはないよ。ありがと」
短いながらも心の籠った謝意に俺ではなく、先輩の方が頬を赤らめる。
「助けてもらった立場でこういうことを言うのもどうかとは思うけど、その、
男の人に手を差し伸べられるのって初めての経験でちょっと照れ臭い」
両手で口を覆い被せ体を丸める先輩に、先程は感じなかった年相応の
可愛らしさに目を奪われる。
「(ダメだな。いくら憧れの先輩とはいえ、少し絆され過ぎだな俺。
……話題を変えよう)」
「そういえば先輩はどうしてこんなところに?
もしかしてこれからバイトですか?」
我ながら露骨な話題変更だったと思う。
だが彼女もまた何も言いことはなく、それに乗っかる。
「――当たり。この公園人もあんまりいなくて静かだから
よく時間つぶしで利用してるの」
「へー」
「司くんはどうして? 散歩?」
「まぁ、そんな感じです」
「そっかー。あーあ、この後何もなければ司くんに街を案内して
あげられたのになー」
世間話にシフトしたのを機に先輩の表情がいくらか柔和し、
それにより俺の体の張り巡らせられていた緊張も徐々に解け始める。
「それなら今度、一緒に出掛けませんか?」
「そうだね。また一緒の学校に通えるんだから仲良くはしていきたいよね」
と、先輩はスマホを取り出す。
「それじゃあ、司くん。連絡先教えてくれる?」
「勿論です」
そうしてお互いのメッセージアプリのIDを交換。
友達の欄に新たに先輩の名が登録される。
「それじゃ私、そろそろバイトの時間だから。もう行くね」
「ならお店まで送りますよ」
「え、いいよ別に。お店すぐそこだし」
「気にしないでください。俺がしたくてしてることですから」
「でも――」
俺の言葉に先輩は一瞬の躊躇いを見せる。
が逡巡の後、すぐに思い直したのかニッコリと微笑む。
「それじゃあ折角だし、お言葉に甘えちゃおうかな」
「是非」
学園に編入して最初の休日。
不良たちとの予想外の一悶着あったものの、その代わりとして俺は、
憧れの先輩との連絡先の交換という一大イベントを達成することに
成功したのだった。
「舐めんなよ、クソガキがァ!」
三度、男の拳が放たれる。
目一杯の振りかぶり。
しかしそれでも衝撃波の威力を考えれば安易に避けるというのは危険だ。
現に俺の背後には先輩がいることもあり、万が一にも備えて軌道を変えることが
望ましい。だが――――それではダメだ。
俺はまずは左腕を使い、男の拳が伸び切る前に奴の腕を払う。
すると当然男は反対の手で攻撃を繰り出そうとするが、そのモーションを見切り
即座に右正拳突きをお見舞いする。
「ぐぉ!」
男の体制が崩れる。だがすぐに追撃はしない。
奴の背後にいる暗示の魔術師の視界に入らぬように、上手いこと男の影に身を
隠しながら二激三激と直実にダメージを与えていく。
特に三激目の顎への直撃は男の脳を揺らし頭と身体を切り離す。
「(まずは一人目)」
再び男の大柄な身で視線を途切れさせつつ、背後の男たちの眼前へと迫る。
「うっ!」
「がぁ!」
短い悲鳴と共に男たちも一撃の名のもとに地面へと沈める。
◇
その後、男たちに勝利した俺は暗示の魔術師の力を使い(脅して)、一応の
対策として今回の件について口外しないこと。そして今後悪さを一切しないことを
約束させた。
そして平穏な時間へと戻った公園内。
ベンチでは未だ遠乃先輩との間に微妙な空気感が流れていた。
「…………」
「…………」
どれくらい経っただろうか。
傷を心配するやり取りが行われて以降、とんと会話はなくなり、
立ち去ろうにもうまくタイミングを計れないでいた。
「あの――――」
するとこちらより先に先輩の口が開く。
「ごめんね。その、助けてもらって」
「いえ、そのこちらこそ出過ぎた真似をしました。
先輩は強いから手助けはいらないと分かってはいたんですが」
「ううん、そんなことはないよ。ありがと」
短いながらも心の籠った謝意に俺ではなく、先輩の方が頬を赤らめる。
「助けてもらった立場でこういうことを言うのもどうかとは思うけど、その、
男の人に手を差し伸べられるのって初めての経験でちょっと照れ臭い」
両手で口を覆い被せ体を丸める先輩に、先程は感じなかった年相応の
可愛らしさに目を奪われる。
「(ダメだな。いくら憧れの先輩とはいえ、少し絆され過ぎだな俺。
……話題を変えよう)」
「そういえば先輩はどうしてこんなところに?
もしかしてこれからバイトですか?」
我ながら露骨な話題変更だったと思う。
だが彼女もまた何も言いことはなく、それに乗っかる。
「――当たり。この公園人もあんまりいなくて静かだから
よく時間つぶしで利用してるの」
「へー」
「司くんはどうして? 散歩?」
「まぁ、そんな感じです」
「そっかー。あーあ、この後何もなければ司くんに街を案内して
あげられたのになー」
世間話にシフトしたのを機に先輩の表情がいくらか柔和し、
それにより俺の体の張り巡らせられていた緊張も徐々に解け始める。
「それなら今度、一緒に出掛けませんか?」
「そうだね。また一緒の学校に通えるんだから仲良くはしていきたいよね」
と、先輩はスマホを取り出す。
「それじゃあ、司くん。連絡先教えてくれる?」
「勿論です」
そうしてお互いのメッセージアプリのIDを交換。
友達の欄に新たに先輩の名が登録される。
「それじゃ私、そろそろバイトの時間だから。もう行くね」
「ならお店まで送りますよ」
「え、いいよ別に。お店すぐそこだし」
「気にしないでください。俺がしたくてしてることですから」
「でも――」
俺の言葉に先輩は一瞬の躊躇いを見せる。
が逡巡の後、すぐに思い直したのかニッコリと微笑む。
「それじゃあ折角だし、お言葉に甘えちゃおうかな」
「是非」
学園に編入して最初の休日。
不良たちとの予想外の一悶着あったものの、その代わりとして俺は、
憧れの先輩との連絡先の交換という一大イベントを達成することに
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