魔術師たちに革命を

諸星影

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ROUTE1(プロローグ/斬裂魔事件編)

1-10  斬裂魔

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 そうして学園編入から二週間後。
 学園の雰囲気やカリキュラムのシステムにも慣れた頃。

 以前として斬裂魔の調査に進展が見られなかった俺は焦りを感じていた。

 情報屋からの資料を頼りに二日程、次の犯行日を予想し巡回を行ったが
 結果は不発。『斬裂魔事件』は更なる被害者も出ることなく今日という日を
 迎えていた。

「くそっ」

 生徒会からの怪しまれる危険性を危惧しつつも、風紀委員会の動向を
 探ってはみたがこちらも思った収穫は得られなかった。

「…………やはりこうなると風紀委員会としても斬裂魔の足取りは掴めていない
 とみて間違いないか」

 そうなると問題は、こちらとしても対応が後手に回ってしまうことだった。

 風紀委員会と俺との情報はほぼイーブン。しかし向こうとは圧倒的な人員の
 差がある。情報屋からの条件が、斬裂魔の確保である以上、必ずしもこちらが
 身柄を捉えなければならないのはせめてもの救いだが。

 モニターを眺め、腕を組み頭を悩ませているとしばらく。
 突然、テーブルの上に置いたスマホが振動する。

 表示は非通知。情報屋だ。

「はい」
『ザザ――――聞こえているかハイド7』
「ああ、聞こえている」

 雑音の後、機械音で奴の声がスマホから流れる。

「それで、何の用だ?」
『――――斬裂魔が出た』
「なに?」

 突然の報告に耳を疑う。

「手短に話せ」
『今より十分前、学園より北西二キロ地点で事件発生との連絡が風紀委員会に
 入った』
「北西二キロ、了解した」

 PCをシャットダウンし、クローゼットを開け着替えを始める。

『現在、風紀委員会の一個中隊が現場へと到着。斬裂魔の姿を確認したそうだ』

 情報屋は風紀委員会の無線でも傍受しているのだろうか。正確な詳細が語られる。
 俺はというと任務用に取り寄せていた専用の戦闘服へと着替えマンションを
 飛び出す。

「情報屋、斬裂魔の逃走経路を教えろ」
『西南へ進路を変えた。中央公園の方だ』
「了解した」

 通話を終了し、俺の魔術『身体能力の強化』を使い、公園へと向かう。

 塀を壁を屋根を飛び跳ね日の沈みかけた街を駆け抜ける。
 マンションから公園までは五百メートル強。俺の身体能力なら三分もあれば
 余裕で到着する。

 ダッダッダッ――――

 最後の塀を飛び越え公園内へと転がり込む。
 平日の夕方ということもあり公園にはほとんど人がいない。

 俺は頭に被った目出し帽を顎まで引き顔を覆い隠す。

 この戦闘服は特殊な繊維で編みこまれており、周囲の認識を阻害する。
 とはいえ透明化のような便利なものではなく、あくまでも周囲の人間や
 監視カメラから認識されにくくなるという程度のものだ。
 だが軽く防弾性にも優れているのもであり任務には欠かせないのも事実。

 風紀委員会は魔術の使用許可があるとはいえ、それはあくまでも緊急時に
 限られる。その為、代わりに委員会のメンバーは非殺傷のライオットガンの
 携帯を義務つけられている。

 そしてその威力は非殺傷といってもかなり高く、急所に命中すれば
 命の危険すらある代物だ。そんな装備を持つ奴らの前にいくら訓練された
 エージェントとはいえ、とても生身を晒すことなどできはしない。

「(――――見えた!?)」

 薄暗い街路樹の先。
 俺は木々の間から黒いローブの人物を発見すると速度を落とし、
 草むらに身を隠す。

 そしてそっとその人物の方へと視線を向ける。
 するとそこには驚きの光景が広がっていた。

「(――――なっ)」

 黒いローブの人物、その足元には風紀委員会の腕章をつけた男女数名が
 無残にも地面に転がり気を失っていた。

 ギラリとローブの人物の手にあった日本刀が月夜に照らされる。

「(間違いない、あいつが斬裂魔だ)」

 ようやく犯人をこの目で拝めたものの、予想外なことに風紀委員のメンバー、
 それも一個中隊が返り討ちにされている現場に遭遇し、思わずゴクリと生唾を
 飲み込む。

 すると不意に斬裂魔の視線がこちらに向けられる。

「(気付かれたか…………)」

 余程の実力者なのだろう。俺の気配に対し正確にこちらの位置を気取られた。
 それは俺としても初めての経験だった。
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