魔術師たちに革命を

諸星影

文字の大きさ
10 / 28
ROUTE1(プロローグ/斬裂魔事件編)

1-09  君は何を思う?

しおりを挟む
 翌週のこと。

 俺は学園の実践授業というカリキュラムで、同級生であり学年委員の初風愛唯と
 バッタリと出くわした。

「あら、最上くんじゃない」

 グラウンドで体操着を纏う生徒たちを縫うようにして彼女は俺の前へと
 やって来てはいつものようにニッコリと笑顔を浮かべる。

「奇遇だな、初風」
「ほんと奇遇ね」

 仁とは違い、彼女は俺のかとっているカリキュラムとは違い、会うのは先週以来
 久しぶりである。

「それよりも今日の授業内容聞いた?」
「確か、魔術測定だっけ」
「ええ。だからもし最上くんさえよければ、私とペアを組まない?」
「いいけど――――こういうのって異性と組んでいいものなの?」
「お互いの合意があれば問題ないみたいよ」

 魔術測定――――それは魔術師生徒、個々人の魔術能力を数値化し正確に
 把握する為のもので、生徒会の指導の下により強制的に行われる、謂わば
 学期初めの身体測定のようなものである。

「最上くんの魔術って強化系であってるよね?」
「うん。初風さんは?」
「私の魔術は『振動』。止まっているものを振るわせたりできるわ」
「威力は?」
「ガラスのコップくらいなら割れるかしら」
「なるほど」

 物質干渉系に分類される魔術ってところか。
 威力は低いが色々と応用が利きそうな能力ではあるな。

 本鈴がなり、担当教師から各生徒に対し封筒が配られる。
 中には生徒それぞれの魔術に応じて割り当てられた項目がいくつも並んでおり、
 その横には計測数値を記入する欄が設けられていた。

 俺の場合、魔術は強化系に分類される『身体能力の向上』――――それ故に
 項目はどれもシンプルなものであり、魔力計測以外に特筆するべき点はない。

「初風のはどんな感じなんだ?」
「私のは振動数の検査と持続力の項目が思って感じね」

 ペアとして互いの記入をし合う規則に乗っ取り、
 初風の持つ封筒と自分のを交換する。

「どっちから先に済ませる?」
「それなら最上くんのを先にした方がいいかもね。
 身体強化の測定って割と混むから」
「分かった」

 そうして俺たちは各エリアに点在する計測値店の中で最初に、
 強化系の測定エリアへと向かう。

「――――それにしても意外だわ」

 移動中、ふと初風が言葉を漏らす。

「何が?」
「最上くんってもっと小難しい魔術だと思っていたから」
「シンプルでがっかりした?」
「いえ決して悪い意味で言ってるんじゃないの。これ、私の持論なんだけど
 魔術ってその人の内面を表す鏡みたいなものなんじゃないかって思うの」
「内面を現す鏡――――面白い考え方だね」

 科学的には何の根拠もないけどね、と初風。

「それじゃあ、初風的に僕は気難しい性格に思えたってことなのかな」
「むしろ逆。明るく気さくで頭の回転が速い人だと思ったわ」
「それはまた、随分と俺を高く買ってくれているんだな」
「栢原もそうだけど、長いこと学年委員をやってるとそういうの
 判るようになってくるのよ」
「そういうものなのかな」

 栢原仁といい、この初風愛唯といい流石、生徒会より学年委員を
 任されていることだけはある。

「(当たらずとも遠からず…………といった感じか)」

「そうなると初風の振動ってどうなんだ?」
「それは…………」

 初風はこちらの質問に初めて言い淀む。
 その様子を見て俺は咄嗟に「しまった」と思った。

「悪い初風、今のは無神経な質問だった。忘れてくれ」
「あ、いえ、そんな、謝らないで。私から話を振ったんだし最上くんは悪くないよ」
「いやそれでも今の自分の発言はデリカシーを欠いていたと思う。すまない」

 再び謝罪の言葉を口にする。

 学年委員ということもあってか、何かと気に掛けてくれる彼女は
 俺にとっても他の生徒よりは話やすい相手ではある。

 が、そうはいってもまだ会うのはこれで二度目。
 内面性のそれも女性に対して踏み入れ過ぎるべきではなかったと心から反省する。

「やっぱり最上くんって不思議な人ね。
 この学園に来て初めて見かけるタイプの人かも」
「それをいうなら初風さんも俺にとっては初めて見る人種だ」
「そう?」
「あぁ、普通、転校生だからってここまでしてくれる奴はそうはいないだろ」
「でもそれは栢原も同じじゃない?」
「あいつは……そうだな。不思議な奴だが、でもそれは初風とは別の理由だよ」
「――――?」
「つまりいい奴ってことさ」
「ふふっ、なにそれ」

 そういうと初風はまた笑顔を浮かべる。
 その表情を見て思う。

「(さっきの反応を見るに初風もきっと悩みの一つや二つはあるのだろう。
 それは思春期真っ盛りである学生にとっては当たり前のことなんだろう
 が…………)」

 仮に彼女の持論が正しいとするならば。
 振動――――その言葉から連想される心象はとても穏やかなものとは思えない。

「さて、それじゃさっさと計測を終わらせてしまいましょうか」
「ああ、そうだな」

 ともあれ彼女の悩みを俺がどうにかできるはずもなく。
 俺はその疑問をそっと心の内へと沈めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました

歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。 卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。 理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。 …と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。 全二話で完結します、予約投稿済み

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

処理中です...