優游執事は主君の為に穿つ

夕桂志

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第一章:銀髪執事は優游と主君を知る

お嬢ハン、泣かないでぇ

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 ホーシック家専用パーティー会場、今宵ココにメテオ中の貴族と言う貴族が集まっていた。

パーティー会場の内装はこれ以上ないと言う程に豪華なモノだった、会場の中央には二階までありそうな背丈の樅の木がクリスマス仕様に飾られており、窓辺には無数のテーブルが用意されて、立食パーティーと言うのが直ぐに分かる。会場は既に煌びやかなドレスやタキシードを身に纏った人でいっぱいだった。

その中には、執事を連れている者も大勢いた、普段ならば執事を連れて来るなんてあまりしないのだが、今宵は”貴族狩“が現れると言う噂がメテオ中に流れていた事もあり、皆、護身用に執事を連れて参加していた。危険と知りながらも参加する、それほどまでに、メテオの貴族にとってホーシック家は大きい家柄なのだ。

 そんな最中、会場入りしたエリルとその執事シュールは受付を済ませ、入口付近でノークスを探していた。


「ノークスどこかしら?」


「エリルお嬢様がドレスと髪型が気に入らないと駄々をこねるから、パーティー開始時刻に間に合わなくなってしまいました」


「もー、イチイチ煩いわね。いいのよ、ノークスにはちゃんと”遅れそう“ってメール入れといたんだから!」


「全く、そこら辺は抜かりありませんね。で、返事は何と?」


「”あんたが予定通り来た事ないじゃない”って返信があった」


それを聞いたシュールは溜息を付きながら、眼鏡を指で押し上げた。その時、エリルの前に普段よりも露出が激しく、黒をベースにしたドレスと黒いファーを身に纏っているカンノとホーツが現れた。

エリルは作り笑顔をしカンノに静かに頭を下げた。その様子を後ろから見たシュールも会釈をした。もちろん、カンノの周りに居た全員が同じ行動をとった、その後に話しかけるのは極僅かの人だけ。エリルは頭を上げると笑顔を絶やさずその場を離れようとした。その時、カンノがエリルに背を向けたままこう言った。


「何処の礼儀知らずが入口で騒いでいると思ったら、ハンバーンッツの三女だったのね、
 お姉様方をお呼びしたから三女は来なくても良かったのにね。
 どうせ、ノークスが呼んだんだろうけど、ハンバーンッツ家にとっては貴方の軽率な行動は恥の何物でもないわ。だから、貴方は他のパーティーには出してもらえないのよ」


それを聞いたエリルはドレスの裾をキュッと掴んだ。そして、何にもなかった様に、作り笑顔を保ってカンノの方を振り向く。


「カンノお姉様は相変わらず、お嬢様の鏡ですね。美しく凛とされていて」


「あら、貴方社交礼儀が上手くなったわね。ですが、忘れないで頂戴、ハンバーンッツ家の使用人は皆、ホーシック家の試験に不合格した者達だって事、言うなれば、おちこぼれを貴方達に上げているって事を」


そう言うカンノを下向きに、唇をかみしめ睨むエリル。そんなエリルを見ていたシュールは、エリルの前に庇うように立った。


「あーら、久しぶりじゃないのシュール。そう、貴方の主人ってこの子だったの?だったら、礼儀知らずで恥さらしなのも納得ね」


「お久しぶりで御座います、カンノ様。再会を喜びたいのですが、その前に私の主人に暴言を吐くのは止めて頂きたい」


と言うシュールの眼鏡の片方のレンズがキラリッと光る。それを見たカンノは、シュールの威圧感に足を一歩引いて唾を呑む。すると、後ろに居たホーツがカンノと入れ替わりに前に出て来た。


「一介の執事が我ホーシック家のカンノお嬢様に、何という口の効き方です?カンノお嬢様はエリル様にご注意をなされただけです。もっと言うならば、貴方の教育不足と言う事ですよ、シュール・ミスティ」


と冷静に冷たい表情で淡々と言うホーツ。それを聞いたシュールは、表情を変えずにこう言う。


「確かに、教育不足な点は多々ありますが、私には私なりの教育方針があります。
 この場で貴方にとやかく言われる筋合いも義理もありません。
 それに、エリルお嬢様をハンバーンッツ家の恥などと言われたら、私も黙っておれません、ホーツ・パクさん」


「黙っていないとは、どう言う事ですか?」


「やっちゃっても良いって事じゃないかしら?ホーツ」


と後ろからホーツの両肩に両手を乗せ、耳元で怪しく囁くカンノ。それを聞いたホーツは、何かを腰の所から出そうとした時、シュールとホーツの間にランドネルトがスッと入って来て二人を止めた。


「止めないか、ホーツ。
 こんな所で武器を抜くなど例え命令でもやるな。
 それに、お客様の執事に言う言葉ではなかったぞ、さっきのは。
 シュール、同僚がすまなかった、非礼を詫びよう。だが、お前もホーツに気を取られ過ぎだ、後ろを見ろ」


と言われシュールが後ろを見ると、エリルが今にも泣き出しそうな顔をしてシュールの袖口を震えた手で掴んでいた。それに気付くと、シュールはエリルにハンカチを差し出した。その場面を見ていたカンノは、高笑いをした。


「こんな所で泣くなんて、レディーの風上にも置けないわ」


と言うカンノにランドネルトはこう言う。


「失礼ながらカンノ様、今宵は我々ホーシック家が主催したパーティーです。招いた客人を不快な思いにさせる言動と行動は慎まれては如何ですか?私にはカンノ様の方が礼儀知らずとお見受けしました」


ニコリと笑いながらそう言うランドネルト。その威圧感に圧倒されるカンノ。すると、ランドネルトの後ろから、白いフリルとリボンが沢山付いたドレスを着たリバがやって来た。


「お姉様、先程、上の方に殿方達がお姉様にダンスを申し込みにいらしていましたわ。こんな所で遊んでいる場合ではないのでは?」


「そうだったわね、ホーツ行くわよ」


「はい」


と言うとカンノとホーツはその場を離れ、二階に向かった。それを見送ったリバは直ぐエリルを抱きしめた。


「ごめんなさいっ、エリルちゃん、怖かったでしょう?あの人あぁ言う言葉しか覚えてないの」


「いえ、騒いでた私が悪いんです」


「エリルちゃんは偉いわね、でも、お姉さんはエリルちゃんの元気なトコが好きよ」


と言われエリルは、少し頬を赤く染め頭を掻く。その仕草を見たリバはエリルを再び抱きしめる。それを見たランドネルトは咳払いをして、リバの暴走を止めた。リバは何かを思い出したようにエリルを放し、ポケットからあるカードを出しエリルに渡した。


「あのね、ノークスちゃん訳があって二階から動けないのよ。で、エリルちゃんがお姉様に何か言われている時、このカードをエリルちゃんに渡しに行ってくれるってランドネルトに頼んでたの」


「まぁ、俺が頼まれた事に嫉妬して、その役目を俺から奪ったのでリバお嬢様もココに居ると言う事になっていますけれどね」


「あら、ランドネルトも嫉妬かしら」


「えぇ、頼まれたのは俺ですから」


「相変わらず、ノークスが好きですね、お二人とも」


と言いながらリバから渡された、ノークスからのカードに目を落とした。そこにはこう書かれていた。

  ”エリルへ
      カンノお姉様に何言われたかは知らないけど、気にしない方が良い。
      私は色々あってそっちに行けない。だから、帰るなら帰れ。
      あと、これは頼みだ、カードをお前に持っていてもらいたい。“

と言う文面を見たエリルはフッと息を吐き、カードをハンドバッグの中へ入れた。そして、リバに軽く会釈をしてこう言った。


「お姉様、今宵は私はこれで失礼します。ノークスも帰れって言っていますし、それに、カンノお姉様とまた会うのはどうも。ノークスにこう伝えてください、”カードは読んだ“って」


そう聞いたリバは、少し残念そうな顔をしながらエリルを見てこう言った。


「そう、それは残念だわ。また遊びに来てあげてねノークスちゃんの所に、ノークスちゃんあぁ見えて、エリルちゃんの事、信頼しているみたいだから」


そう聞いたエリルは満面の笑みを浮かべながら、リバにこう告げた。


「はい。またお邪魔します。それでは、失礼します。行くわよシュール」


「はい」


と言うとシュールとエリルは人混みの中に消えて行った。そして、その様子を二階から見ていた八椥は、エリル達がパーティー会場を出て行くのを確認し、それを二階の中央に用意された一人用のソファーに座っていたノークスに報告した。ホーシック家の五人はそれぞれ二階の中央に一人用のソファーに座ると言うのが、ホーシック家のパーティーの決まりらしい。


「失礼します、ノークスお嬢様」


と公然の場の為、執事の見本となる様な身のこなしと口調で、取引先の会社の客人と話していたノークスに声を掛けた八椥。すると、ノークスは八椥の方を見て、目の前で話している客に断りを入れる。


「少し、失礼しても宜しいかしら?」


「えぇ」


客人は快く了解してくれた。その敬意を払い腰を優雅に折り曲げた。その仕草に客は見とれてしまった。そして、八椥は座っているノークスの耳に口を近づける為再び腰を折り、口の前に手を当て会話を聞かれない様にしてノークスにこう言った。


「エリル様が会場を御出になりました」


と聞いたノークスは何もなかった様に、静かに頷いた。八椥は曲げた腰を伸ばし、両手を腹の所で重ね合わせ、軽く会釈をして後ろに下がった。その一連の行動を見ていた客人は、八椥に目を奪われていた。その時、ノークスが客人に再び話しかけた。


「すいません、お話の途中」


「あっ、いえ。それにしても凄いですね~、ノークスさんの執事は彼があの噂のS1ですか?いや、他の執事に比
べてもダントツに優雅ですね」


「そうですか?ですが、アレは…」


とクスッと笑いながら言っていた時、横からシルバーのお盆に食事を乗せ、片方の掌で持ちながらスタスタと軽快で優雅に歩いて来たのは、完璧な笑顔を浮かばせ、周りに居るどの執事よりも風格があり指の先まで優雅で、それでいてどこか凛々しい身のこなしをしていた執事が来た。その執事に周りの者は皆、目を奪われていた。そして、その執事が誰かはホーシックの者なら言う必要はなかったが、ノークスは目の前の客人にニコリと笑いながら、こう言った。


「こちらの彼はS1ではありませんよ。そして、食事を運んで来るのが」


と言いかけた瞬間、真横に食事を運んで来た執事が到着した。そして、お盆を下げノークスと客人に乗っていた皿を見せる時にこう言った。


「私がノークスお嬢様の専属執事でS1の、ニコル・ファンジスタで御座います。お嬢様、セイン様、お二人ともお食事がまで御座います。お話も宜しいですが、御食事もしっかりと採らなければ」


と言うニコルは、執事の手本となる上品な口調で話に割り込んで来た。それを見た客人のセインは目を丸めながらこう言った。


「何で、私の名前を?それにどうして、私が食事がまだだって分かったんだい?」


「当たり前の事で御座います、御客様の顔と名前は一通り覚えていますし、セイン様はノークスお嬢様の取引先の幹部々長様。本日は挨拶回りをしていて、バイキングにも一度もお顔を出されていませんようでしたから、そろそろお腹が空いた頃だと思いまして」


「凄いなー、さすがS1。主人の関係者の事ならお見通しと言う事ですか、素晴らしい執事を雇われていますね、ノークスさん」


と言うとセインの携帯が鳴り響いた。申し訳なさそうに会釈をして席を後にしたセイン。それを笑顔で見送ったノークスは、溜息を付きニコルの方に顔を向けた。


「やり過ぎ」


と呆れた口調でニコルに言ったノークス。すると、ニコルは軽く握った片方の拳を胸に当て、目尻に涙を溜め少女漫画に出て来そうなポージングをして、嘆き訴えかけて来た。


「しかしっ、ノークスお嬢様っ!あの方はお嬢様に優しくされて少し浮かれていました。私はいくらお嬢様にその気がなかったとしても、お嬢様に少しでも邪な感情を抱かれた方を見ていると…、その根性ごと罵りたくなるのです」


ポージングと言っている事が一致しない。八椥が頭を抱えていると、ノークスが完璧な作り笑顔をして、お嬢様らしい口調でこう言った。


「分かったわニコル。では、自分でも罵っておけば?」


とコチラも笑顔と一致しない鋭いツッコミを入れた。その時、下のフロアから上がって来たカンノがノークスの所に来た。すると、ニコルはサッとノークスの後ろに行き八椥と並んだ。


「ノークス、エリルちゃん帰ったわよ」


と白々しく言うカンノ。それを聞いたノークスは作り笑顔を絶やさずに上品な口調でこう返した。


「カンノお姉様、帰らせたの間違いではありませんか?」


「言掛かりは止めてよ、あくまで帰ったのはエリルちゃんの決めた事。まっ、キッカケを作ったのは私かもしれないけど」


と言いながら一連の出来事を知らないカンノはノークスの前を通り過ぎ、自分のソファーに向かう。ソファーの所には男性達が群がっていた。それを見るノークスは、ほんの少しだけ羨ましい表情をした。そんなノークスを見た八椥は、何か声をかけるべきだとは思ったが掛ける言葉が見つからなく、視線を下に落とした。そんな八椥を尻目に、隣に立っていたニコルは一歩前に出て、腰を曲げ、ノークスの耳に口を近づけ右手で口を隠し、コッソリとこう言う。


「気になさる必要はないと思いますが、まぁ、カンノ様の外見には男なら大抵惹かれますが。お嬢様はカンノ様には無い美しさを持っています」


「ニコルも惹かれるのカンノお姉様にッ」


少しムッとして頬を膨らませるノークス。すると、ニコルは左目を薄く開け、剥れているノークスの顔を見て、一瞬固まり、口元をニヤリと緩ませるとこう言う。


「ヤキモチですか?安心してください、大抵の人と言った筈ですよ。そこに私は入っていません。私は…、僕はぁ、お嬢ハンの方がエェと思うでぇ」


そう聞いたノークスは、顔が赤くなるのを一生懸命抑えていた。それを見たニコルは、クスクスッと笑いながら上体を起こし後ろに下がった。その時、再びカンノが来た。ノークスは一瞬不満そうな顔をして、直ぐに作り笑顔をしカンノに応対をする。


「まだ何か?」


「貴女には用は無いの。ニコル、私とダンスを踊って頂ける?S1なら良い見本になると思うし、ホーツとは踊り飽きちゃって」


思いがけない言葉がカンノから飛び出して来た。ノークスは呆れた表情になりかけるが、直ぐに完璧な作り笑顔に戻した。その時、後ろに立っていたニコルから思いよらない言葉が発せられた。


「お誘い光栄で御座います」


と言うとニコルは前に出て、カンノに手を出した。それを見たカンノは、勝ち誇った笑みでノークスをチラッと見て、ニコルの掌に手を置き、ニコルのリードでホールに出て行った。カンノが見たノークスの表情はただ呆然としていた。すると、ノークスは右手を額に当てた。それを見た八椥はこう言う。


「大丈夫ですか?ノークスお嬢様」


と言う八椥の声はノークスには届いていなかった。そんな中、曲が始まる。ノークスは手を額に当てながらホールの中央を見ると、カンノがニコルに腰を持たれ片手を合わせながら優雅に踊っていた。その二人の姿はとても絵になっていた。


「ノークスお嬢様、大丈夫ですか?」


と八椥の声がやっと届いたのか、ノークスは八椥の方を見つめた。その瞳は手で隠されていたが、ノークスの雰囲気で八椥は今までノークスからは感じた事がない怒りを感じた。

 何かがおかしいと感じる八椥。それは、ノークスが今まで人前で感情を露わにしなかったのに、今夜はパーティー会場にも関わらず感情を露わにしているからだ。

 その時、スッとノークスの前に現れたのは六椥だった。六椥の出現に警戒態勢を取り、刀を握る八椥。すると、六椥はこう言って寄って来た。


「久方振りだね、ノークス嬢、それに八椥。日本町であった以来かな、こうやって話をするのは。しかし、ノークス嬢には欲求が無いのかな?」


「どう言う意味だ六椥」


「僕はノークス嬢に聞いているんだけどね。まぁいいか、周りをご覧。皆いつもより羽を伸ばしていると思わないか?」


と言われた八椥とノークスは、周囲を見渡すと男女二人組が多く、皆頬を紅潮させ楽しそうに話しているのが見受けられる。ノークスは立ち上がり六椥にこう言った。


「どう言う事?」


「ちょっと空調に思考をおかしくさせる薬を流しいれたんだよ、まぁ、ホーシック家の人と執事には今頃効いて来た様だけど。それが証拠に、さっきノークス嬢と話ししてた取引先の人を見て何も感じなかったのかい?少なくてもニコル君は何か気付いていたようだけど」


それを聞いた二人は少し前のニコルの行動を思い出した。ニコルの行動の真意を知った、ノークスと八椥はニコルを見た。ニコルは平然とした顔でカンノと踊っていたが、カンノの頬は紅潮を始めていた。


「八椥!今すぐ空調室に行くわよ」


「…」


八椥はノークスの声に無反応だった。すると、ノークスは痺れを切らした口調でこう言った。


「八椥!」


「…あっ、はい」


「さすが、S2良く耐えるね。他のS級もだけど。兄さんから褒美上げる」


「はぁ?」


と言う八椥は頬の紅潮を必死に堪えていた。その時、目の前から六椥が消えた。八椥が警戒を強めた時後から手が伸びて来て、薬物で湿らせたハンカチで鼻と口を塞がれた。そして、後ろに居るのが六椥だと分かった八椥は刀を振ろうとしたが、六椥が八椥の刀を持った手を後ろで固めた。


「錯乱状態の君の後ろを取るなんて、兄さんには簡単なんだ。八椥が今吸っているのは、空調に流した薬の原液なんだS級には原液位吸わさなくちゃ効果ないかなっと思って」


六椥が話していると、もう片方の手でもう一本の刀を抜き、六椥に向けて振った。すると、六椥は八椥から離れた。ノークスは肩で息をしていた八椥に心配そうな表情で駆け寄った。


「大丈夫か、八椥!」


「ノークス嬢…、近寄るなッ」


「懸命だね、八椥は。でも、この薬はね真面目な人ほど効くんだよ」


と六椥がノークスの後ろに立つと、それを見た八椥は反射的に、ノークスの元に行き六椥に刀を振るったが、余裕で回避されてしまった。そして、目の前に居たノークスを見た途端頬が紅潮してしまった。


「ノークス嬢…、俺から逃げて…」


と言う八椥は言葉とは裏腹に、両手でノークスを抱きしめていた。ノークスは何とかして逃げようと力を入れ、八椥が首筋をペロッと舐めた。すると、ノークスは吃驚して背中から床に転んでしまった。その時、八椥はノークスの両手を押え動きを封じた。その目は普段の八椥とは違って据わっていた。


「八椥…?大丈夫?」


「はぁ?何が?大丈夫じゃねーっつーの。こんな状況で大丈夫な奴はイねーぞ、嬢ちゃん」


「壊れたー!真面目な八椥が壊れたっ」


「だいたい、いつもニコルのヤローと距離近づくと赤くなるクセに、何で俺の時はなんねーんだよ、気にくわねー。気にくわねーからキスさせろ」


「なんっで、そうなるの!」


と言うノークスに顔を近づける八椥、周囲に助けを頼もうにも周囲も薬の効果で思考がおかしくなっていた。そして、唇が重なるまで後五センチと言うトコで六椥が八椥のうなじを叩き気絶をさせた。そして、ノークスに手を差し出し立ち上がらせた。


「どうして助けてくれたの」


とノークスが警戒しながら言うと、六椥はクスッと笑いこう言った。


「あのまま見ていても良かったんですが、貴女はリーダーのモノですから。これから、少しお付き合い願いますか。勿論断れば、八椥がどうなるか分かっていますよね」


と言うと六椥の刀の切っ先が倒れている八椥の首筋に当る。それを見たノークスは、静かに頷き、六椥の後について行く。

 その頃、ニコルと言うとカンノとのダンスが終わった後、コルネリッドとスプリットとセレムに囲まれていた。カンノはニヤリと笑いホーツの所に駆け寄り、ホーツから手渡されたガスマスクを付けた。


「成程、カンノ様が何故私を指名されたのか、疑問に思っていましたが、私をノークス様から離し、尚且つ一人にさせると言う目的でしたか。で、残った八椥は六椥一人いればどうとでもなる、そんな所ですか?」


「さすが、S1凄い推測ね」


「いえ、カンノ様この推測はノークスお嬢様の受け売りで御座います。それに、この状況を見ればそのような事バカでも分かりますよ」


というニコルの話を聞いていたコルネリッドは両手の袖口から、突然長い鎖がニコルに向かって勢い良く伸びて来た。すると、ニコルは軽く避けた。的を外した鎖は勢い良く床と壁に突き刺さった。それを見たコルネリッドは、逆上してこう怒鳴る。


「避けんなよ!ニコル・ファンジスタ!」


「避けませんと突き刺さるではありませんか?執事たるもの主君のお世話が出来ない怪我は負えません」


と冷静に淡々と返すニコル。その時、スプリットがニコルの後ろを取ろうとしたが、ニコルはスプリットの手を見ずに掴み背負い投げを決めた。投げ飛ばされたスプリットは床に背中を強打し、投げたニコルはいつもの笑顔でこう言った。


「私の背後を取って良いのは、ノークスお嬢様だけです」


「アンタ、前そんな話し方だったっけ?」


とコルネリッドが悔しそうにそう言うと、ニコルは口の前で人差し指を立て妖艶な笑みを浮かべた。


「アレはお嬢様用です。間違っても貴方々には使いません」


「あれから、随分よろしくやってる様だな?」


コルネリッドが右目の目尻をピクピクさせながら聞くと、ニコルはまるで背景にバラが咲き誇った笑みでこう言った。


「いえ、恐れ多い。私の様な者がノークスお嬢様のお相手など…、務まっています」


「よろしくやってんのかよ!」


少しコケながらそう言うコルネリッド。すると、コルネリッドの後ろに居たセレムが溜息を付きながら、腰から三十センチの棒を三本出して組み合わせ一本の長い棒にし、その先に刃渡り三十センチはありそうな刃を付けた。それを見たニコルは、感心したようにこう言った。


「長刀ですか」


「相変わらず、準備に手間取る武器だなセレム」


「うるさい、マジで避けられてた奴に言われたくない」


「なっ、アレはまぐれだ。まぐれ!」


と言うコルネリッド、どうやらコルネリッドはセレムの準備の時間稼ぎをしていたようだ。そして、投げ飛ばされたスプリットも起き上がった。


「コルネリッド、張りました。好きなだけ暴れてください」


ニコルはスプリットが言った”張りました“が気になり、周りを見渡すとダンスホール全域の床に何か糸状の物が蜘蛛の巣状に張り巡らされていた。


「赤外線爆破糸ですか?珍しい武器を使いますね。
 赤外線爆破糸はその扱いが難しく、執事協会の役員も極一部の方しか扱えません。
 何故なら、爆破糸は触れた所の一部を爆破させることが可能です。
 ですが、操る人物の繊細さにより、爆破させない事も爆破の規模も自由に出来る。
 そこまでに達するにはより繊細な技術とそれを維持する精神力が必要となります、
 ですから、好んで使う人はまれなのですが」


「良く知っているね。さすがS1。じゃぁ、もちろん対処方法も知っているんでしょう?」


とスプリットが言うと、ニコルは表情を崩す事をせずにこう答えた。


「えぇ、赤外線爆破糸のテリトリーに入った場合は動かずにじっとしている、が最善の対処方法とされていますが、私はいま急いでいまして。ヤキモチ焼きな主君の元に向かわなければなりませんので」


と言うとニコルは床を蹴り上げ上に高く飛び跳ねると、ニコルが立っていた所が爆発を起こした。それを見たコルネリッドとセレムは飛び上がったニコルに向かって、ワザと糸を踏み小規模な爆発を利用し、飛び上がりニコルに攻撃した。だが、二人の攻撃は空中にも関わらず交わされた。それを何度も繰り返す三人。

 それを見ていたカンノは圧倒されていた。それは、執事が戦っているのをまじかで見るのは初めてという事と、戦っているのに優雅さを感じてしまっていたからだ。すると、カンノの肩をポンッと叩くホーツに驚いて、転びそうになったがホーツがそっと受け止めた。


「大丈夫ですか?カンノお嬢様、ココは危険です、離れましょう。それに、もうそろそろ、他の執事もこっちに来るころです。我々がこの場に居るところを目撃されたら厄介です」


「そうね」


と言うとカンノとホーツはホールから姿を消した。そしてニコルは”貴族狩“三人を振り切れずにいた。どうやら、スプリットの赤外線爆破糸とセレムとコルネリッドに苦戦をしている様だ。ニコルは天井に下がっていたシャンデリアにぶら下った。一方、セレムとコルネリッドは何の躊躇いもなく赤外線爆破糸の上に着地し、立ってスプリットに掌を見せ爆破させないように指示を出した。


「どーしたんだ、S1さん。S1でも赤外線爆破糸は怖いのか?」


「いえ、赤外線爆破糸は怖くありません。ただ、今頃お嬢様がどうされているのか、それを考えると今すぐにでもお嬢様の所に行きたいのです」


とニコルが言うと、セレムがスプリットに向かって立てていた掌を下ろしかけた時、ニコルとコルネリッド達がある事に気付く。何十人もの執事に囲まれ、狙われていた。


「どう言う事っ。コレ、なぁスプリット」


と地団駄を踏むコルネリッド。そして状況を整理したスプリットは、ニコルにこう言う。


「どうやら、私達が今ここで争っても得をするのはあちらさんみたいですね。どうですか、ココは一時休戦と言うのは、ニコル君」


と言われたニコルが囲んでいる執事を見ると、全員がカンノの執事バッチをしていた。




  ***




 六椥にベランダに連れて来られたノークスは、そこで待っていた”貴族狩“のリーダー、ファントムに会っていた。ノークスが来る前にダンスホールの方を見つめていたファントム。ノークスが来たのが分かったのか、ファントムはクルッとノークスの方を向いた。その時、ダンスホールの方から爆発音が聞こえた。ノークスは爆発音に驚き、目を閉じてしまった。


「ノークス嬢は可愛いですね、あんな音で隙を作ってしまうなんて」


ノークスがそれを聞き、目を開けると、目の前にファントムが立っていた。それを見たノークスは一歩下がろうとしたが、ファントムに背中に手を回され左手を掴まれ、自分の体に抱き寄せられた。


「離れるなんて許しませんよ、もう…」


「…ッ、放しなさい」


「作り笑いはどうしました?それでは、元の執事に怒られますよ」


それを聞いたノークスの動きが止まった。そして、目を丸くして上を見上げる、そこには、フードで目元が見えないファントムの顔があった。ノークスは驚きながらこう聞いた。


「なんで、イサミルの事を知っているの…。答えなさいっ!」


声を張りファントムを威嚇するノークス、ファントムは口角を少し上げニヤリと不敵な笑みを浮かべた。そして、ノークスの背中に回していた手を伸ばし、顎を掴み固定する。


「それは教えて頂いたからです、彼女に。そう、ノークス嬢のお姉様のカンノ様に、彼はカンノ様の執事になってまで、ノークス嬢を守りたかった。その考えがバレ、ある命を受けました。それは…」


「『ノークスをホーシック家から追い出せ。それが出来ないなら、貴方の未来を私に頂戴』って言ったのよ」


と言う声が聞こえて来た方をノークスとファントムが見ると、そこにはカンノがホーツと供に立っていた。ノークスはカンノの顔を見て目を丸くした。


「カンノ…?」


理解力が低下しているノークス。そんな、ノークスを見つめていたカンノはクスッと笑いこう言った。


「あらぁ~、子供らしくない子供と思っていたら、こう言う所はまだ子供なのね。そう、イサミルが居なくなったのは、アンタを追い出さない代わりに自分の未来を私にくれた。そして、私はこう最初で最後の命令をしたわ…」


そう楽しそうに話すカンノを見て、ノークスは無表情になり目に涙を溜めた。その姿はまるで、涙を流す人形の様に、何にも感じられなず魂が抜けた様だった。ノークスの何もかも見通す瞳は死んだ魚の目になりかけていた。それを見たカンノは、更に追い打ちをかける様にこう言った。


「執事辞めなさい。そして落ちる所まで落ちなさいって命令したの」


「イサミル君は真面目でしたからね、カンノお嬢様の話を聞いて、本当に執事を辞め、姿を消してしまいました」


とホーツがカンノの捕捉をした。その時、ノークスの目に溜まっていた涙が頬を伝い、ファントムの手に落ちた。ファントムがノークスを見ると、先程までのノークスと一変し、顔を下に向け不敵な笑みを浮かべ、ケラケラッと不気味に笑っていた。それを見たファントム以外は、ノークスに威圧感を感じ一歩下がる。すると、ファントムはノークスから両手を放し、前に行きノークスにダンスに誘う様に手を差し出した。


「やはり、貴女でないと…。ノークス嬢、私と暗闇まで一緒に来て頂けますか?」


それを聞いたノークスは、ファントムの手に手を重ねようとした。その時、ベランダの入口から黒い何かが勢い良く入って来て、ノークスの両目を塞ぎ腰を腕で抱きよせながら、ファントムから遠ざけた。ノークスは自分が誰に抱きとめられているのかが、一瞬で分かった。何故なら、常に側にいた人だったから、見なくとも感覚で分かる。


「…ニコル」


「お嬢ハン…、何やっとるのか分かってんのぉッ…?」


と耳元で囁いたニコルは息が荒く、言葉も途切れ途切れだった。微かだったが、ノークスの鼻に血の匂いが漂って来た。ノークスは唇を噛みしめながらこう言った。


「ニコル、手を退かして」


「それはぁ…、いくらぁ…、お嬢ハンの頼みやからってぇ…聞かれへんなぁ…」


ノークスは弱弱しい声のニコルがいつもの様に飄々とした口調で接しようとしているのが、背中越しにヒシヒシと伝わって来た。ノークスはニコルに両目を覆われながら、ボロボロと涙を零し涙声でこう言った。


「どうしてだ?」


「泣かんとってぇ…、お嬢ハンが泣いてえぇのは僕のまえだ…けっ…」


というとニコルは力尽きたように、ノークスを放しながらその場に倒れこんだ。両目を覆うニコルの手が離れたノークスは目を丸くし、ゆっくりと横を見ると、そこには傷ついた体に軽い火傷を負ったニコルが倒れて、息苦しそうにノークスを見ていた。それを見たノークスは、顔を青ざめしゃがみ込み、ボロボロ大粒の涙を流しながらニコルの手を握った。すると、ニコルはこう言った。


「…せやからぁ、いややったんやぁ…お嬢ハンが泣くからぁ…、見せた無かった…」


「何も言うな、ニコル」


その時、ホーツが腰から何か黒くて長い物を抜いた、それは鞭だった。その鞭でノークスを狙った。

その時、ノークスは身の危険を感じ腕で頭を隠してしまう。だが、何秒経っても痛みはなかったので、ゆっくりと腕を退かすと目の前にはファントムのフードがあった。どうやら、ノークスはファントムに抱きかかわれて鞭から助けてもらった様だ。

すると、カンノがいきなり高笑いをし始めた。それに驚き、ノークスがカンノの方を向くと、そこには驚きの光景があった。ホーツの鞭はニコルの首に巻き付き、カンノの足元まで引き寄せていた。ニコルはダランとしながら倒れていた。それを見たノークスは、体を震わせ歯を恐怖でガチガチと言わせた。そんなノークスに追い打ちをかける様に、カンノはこう言う。


「可哀想ね、ニコル。ノークスの執事になったばかりに、私に目を付けられて、このままじゃ、イサミルの二の舞ね。まぁ、貴女がホーシック家を出てくなら、ニコルと八椥には手を出さないわ」


そう今までにない様にほくそ笑むカンノから聞いたノークスは、数秒間、黙り込んで悩んだ。その間にイサミルとの幼少期を過ごした記憶と、ニコルと八椥と出会って今日までの記憶が頭の中を駆け巡った。そして、悔しそうに下唇を噛みしめ涙声でこう言った。


「出て行けば…、いいんでしょ…」
         



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