15 / 38
アンニュイなオレと仲間たちの激闘
しおりを挟む「いくら何でも敵多すぎじゃね!?」
敵味方入り混じった戦場の中。
猛烈な勢いで突っ込んで来た人狼「ウェアウルフ」をカウンターで返り討ちにしてやるが、周りにはまだまだ敵のモンスターがいやがる。
ミノが仲間になってから大体3ヶ月。
無茶なミシェリアの命令で何度も死にそうになりながらも、順調に戦功を重ねて来たオレたちだったが・・・今回はかなりヤベェ。
「まだこれだけの戦力を投入できるとは、ミノ後ろだ!!」
「ウモオオオッ!!!」
いつの間にかミノの背後に迫っていたデカいカマキリ「キラーマンティス」を間一髪、大斧を振り回して何とか倒すが・・・。
「大丈夫か!?」
「見りゃわかんだろ大丈夫じゃねえ! 倒しても倒しても切りがねえ! もうダメだろオレサマたち!」
「え~っ!? そんなのイヤにゃ~っ!!」
仲間も必死に戦い何とか生き残ってるが、みんなオレと同じく厳しい表情。
今回オレたちが召喚された場所は、とあるニンゲンの街。
ここは少し前の戦いでオレたちが奪い取った街だが、さして時を置かずに奪い返しに来やがった。
ただ敵側は劣勢って話だったし、もう大規模な攻めはないもんだと思ってたんだが、まさかここまで押されることになるとは・・・。
当初は街の手前で防衛線を張り、敵を街の中に入れる前に撃退する予定だった。
それが今や、予想外の敵の数と勢いに押され、すっかり主戦場は街の中。
オレはもう逃げた方が良いと思うんだが、傭兵には援軍が来るまで死守しろって命令が出てるらしく、オレたちはミシェリアの命令で、今も仕方なく必死こいて戦ってる。
・・・だが、ぶっちゃけ今はもう、どうやってここを死守するかじゃなく、どうすれば生き残れるかを考えねえといけねえ段階だ。
「くそっ、なんとかしねえと・・・あたしはこんなところで死ぬわけにいかないんだ・・・」
いつもは傲慢で強気なミシェリアも、オレらのすぐ後ろで、この状況をどう切り抜けるか必死に考えてる。
今更言ってもどうしようもねえが、こういう時、こいつが後方の安全な場所にいてくれりゃ、ヤバくなった時に召喚転送で安全な場所まで退避できるからありがたいんだが・・・。
今回みたいな時は特にそう思うぜ。
もしくは・・・。
「・・・ミシェリアがさっさと逃げるって言ってくれてりゃ、こんなことにはならなかったんだけどなぁ・・・」
「こうなってしまった原因は探るより、これからどうすれば良いかを考えようではないか」
相変わらずミシェリアの肩を持つレオンだが、確かにその通りか。
このままじゃ本格的にヤベェからな。
・・・いやまあ、もう十分ヤバくなってんだけどさ。
「・・・ボクたち、死んじゃうにゃ・・・?」
「レオンが言ったように、そうならないためにどうすべきか考えるんだ」
いつも冷静なフォーテルはこんな時も冷静だ。実に頼もしい。
「で、どうすりゃ良いんだ? オレにゃわからんから考えてくれ」
「少しはお前にも考えてもらいたいものだが、これから戦い続けるにしても撤退するにしても、まずはこの辺りから下がるべきと思う。ここは敵が多く味方が少なくてどうしようもない」
「なら、まだ生き残ってる周りの味方にも声をかけて、仲間を増やしながら下がろうぜ」
「うむ。賛成じゃ」
「わかったにゃ!」
「・・・あのよ」
ミノが不安げな表情で、ミシェリアの様子を伺いながら、ミシェリアに聞こえないように聞いてきた。
「・・・あの女。例の強制なんたらで、オレサマたちを囮にして、自分だけ逃げようなんてしねえだろうな?」
「・・・・・・・・・」
ミノの疑問に、オレは思わず目を背けちまった。
「いくらミシェリアでもそんなことしねえさ」と言いたかったが・・・実はオレもそれを考えてたからだ。
不吉すぎるから考えたくもなかったけどな。
「心配せずとも、お嬢はそんなことはせんよ」
オレたちの不安をよそに、レオンは全く心配してない。
むしろあり得ないとばかりに言い切る。
「なんでそう言い切れんだよ?」
「確かにお嬢は少々強気な性格で、苛烈な性格にも見えるが、根は優しい子じゃ」
「・・・少々強気? 苛烈な性格に見える? 根は優しい? おいおいレオン。酔っ払ってんのか?」
「ほっほっほ。いずれおぬしらにもわかるよ」
「なあ、いつも疑問だったんだが、お前だけはあの女と喋れるみてえだし、お前とあの女は一体なんなんだ?」
ミノが言ってるのは、ミシェリアとレオンの関係だ。
確かにオレも多少気にはなってたが、今まで深く聞いたことはない。
「さして特別な関係ではないよ。ただお前さん方より長く一緒にいるだけじゃ」
「けどよ――」
「話しは後にしようではないか。まずはこの窮地を脱するのが先決じゃろ?」
ミノは少し不満げだったが、ゆっくり喋れるような状況でもないのはわかってるのか、おとなしくその場は引いた。
「レオン、ミシェリアに作戦を伝えてくれ」
この中で唯一ミシェリアと意思疎通が出来るレオンがミシェリアに作戦を伝える間、オレたちで敵を防ぐ。
「・・・ちっ。仕方ねぇか・・・」
・・・良かった。どうやらミシェリアも納得してくれたらしい。
もしミシェリアが「後退なんてふざけんな!!」ってキレたらどうしようかと本気で心配してたんだが・・・マジで良かった。
「それじゃ敵と戦いながら後退するぞ! 常に仲間の場所を把握して離れないようにしろよ!」
そんなオレの掛け声を皮切りに、オレたちは敵で溢れる戦場で後退を始めたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる