アンニュイな召喚奴隷リザードマンのレゾンデートル

ねこうさぎ

文字の大きさ
16 / 38

アンニュイなオレと仲間たちの激闘 2

しおりを挟む

「助かった。俺たちも劣勢になってるのはわかってたんだが、これからどうすりゃいいのかわからなくなってたんだ」
「仲間がみんな死んで、オレもこのまま死んじまうと思ってたぜ」
「まさか助けが来るとは思わなかった」
「べ、別に苦戦なんてしてなかったんだからね!!」

 孤立していた味方を助けながら後退していると、いつの間にか味方が結構増えてた。
 つっても、それぞれ違う種族で、ミシェリアの召喚奴隷ってわけでもないから言葉が通じないんだが、まあそこは身振り手振りや雰囲気なんかで、お互いに何を言いたいか察する努力をしあう。
 生き残りたいのはみんな同じだからな。
 ただ状況はよくなってないし、戦闘も一向に楽にはならない。
 むしろ味方が集まれば、当然敵も集中する。
 かと言ってバラバラに動けば各個撃破される。
 しかも敵の召喚奴隷はミシェリアを執拗に狙ってくる(召喚術者が死ねば、その召喚奴隷とは戦う理由がなくなる。オレも召喚術者が近くにいれば優先的に狙う)から、オレたちは自分の身だけじゃなくて、ミシェリアも守らなきゃならない。
 ・・・まあ、ぶっちゃけミシェリアが死んでくれた方が・・・なんだが、そんな動きをしてるのがバレたら強制執行間違いなし。
 それに、どうあってもレオンはミシェリアを守るだろうから、結果的にレオンも危険にさせちまう。
 だから結局はミシェリアも守らなきゃならず、そんな中で、必死に後退していたオレたちだったんだが・・・。
 やがて、とうとう退路も断たれ、敵に完全に囲まれちまった。

「・・・どうするよ・・・」
「これは・・・参ったのぅ。どうやらいつもとは様子が違うようじゃな」

 さすがのレオンも、この状況に頭を抱えてる。
 実際に頭を抱えてるわけじゃないが、そんな雰囲気ってことだ。
 んで、オレはすでに頭を抱えてるどころか、お手上げ状態。
 ちなみにレオンの言った「いつもとは違う」ってのは、後退や撤退、もしくは相手が戦意を失ってる場合は追撃しないっていう、召喚奴隷同士の暗黙の了解があるのに、って意味だ。
 召喚奴隷は召喚術者の命令で敵味方に分かれて戦ってるだけで、本来はお互いに憎み合ってるわけでもねえし、戦う理由もない。
 だから相手が引けば追い詰めて殺す必要はないし、そんなことをしたいと思ってる奴なんて・・・まあ、中にはいるが、滅多にいない。
 もちろん生死をかけて戦ってるわけだから、殺すことも殺されることも覚悟のうえだが、殺すか殺さないかを選べる状況であれば、殺さないようにするのが大半だ。
 ところが最近はその暗黙の了解に気付いてて、そうならないように監視するような人種がいる。
 んで、今回がそうだ。
 もしその人種がいなければ、こうも執拗に追撃されることもなかっただろうに・・・マジで人種ってのはイヤなもんだ。

「・・・ミシェリアを囮にして、オレサマたちだけで逃げるってのはどうだ?」
「そんなことしたら、それこそ強制契約執行でオレたちが囮にされるぞ」
「・・・だよな」

 そうこうしてるうちにも、包囲網はどんどんと狭まってくる。
 たぶん、一度状況が動いたら、敵が雪崩れみたいに襲い掛かってくるはずだ。

「クソッ、あたしはこんなところで死ぬのか・・・あたしにはやらなきゃならねえことがあるのに・・・」

 さすがのミシェリアも、この絶体絶命の状況に諦めかけてるっぽいな・・・。

「・・・フォーテルちゃん。今度こそ、もうダメにゃ?」

 なんとか生き残る道はないものかと、ニャン吉は再度、うちの天才軍師に教えを乞う。
 ついでにオレも、ニャン吉と全く同じ思いで天才軍師様を見る。

「・・・包囲してる敵を全て倒せるだけの戦力があればいいが、現状不可能だ」
「それは、もう全滅するしかないってことか?」
「いや、全てを倒しきれないなら、一点突破で包囲を突き破ることが出来れば、あるいは・・・」
「しかし、それも易々と出来そうにはないのう。せめて、少しの間だけでも背後を足止め出来ればよいのじゃが」
「ならその役目。僕たちが引き受けるよ」
「は? うおっ!?」

 そう言って出て来たのは、レオンよりデカい四足で、こいつは・・・確か恐竜種とか言ったっけか。
 サイみたいに太い角も生えていかにも強そうなんだが、そいつの背中にもう1体。
 体は丸っこくて小っこく、2腕2足で長い頭、大きな垂れ下がった耳の、今まで見たことのない、いかにも弱そうな奴が乗ってた。
 オレにゃ見分けはつかねえが、召喚術者であるミシェリアには、どいつが味方でどいつが敵なのか見分けられるらしい。
 んで、オレたちはそんなミシェリアの指示で、とりあえず助けられる奴は全部助けて来たから、いつの間にこんな奴も助けてたのかと思って、今更ながら驚いちまった。

「っていうか、なんでそっちの言葉がわかんだ? ミシェリアと契約したのか?」
「僕は精神感応力が使えるんだ。テレパシーって言えばわかるかな? 発生の仕方は違うけど、異種族である召喚術者の言葉を理解出来るのは、これの応用なんだよ?」

 どうやらちっこい方が話してるらしいが・・・なるほど。わからん。
 けどまあ、今は言語が通じることがわかれば十分か。

「足止めを引き受けると言ったが、何か良い案があるのか?」

 フォーテルも俺と同じ結論に至ったらしく、とにかく話を進めることにしたようだ。

「僕たちは、もうあんな召喚術者に使われるのは疲れきってたんだ。だからここで死ぬんなら、それもいいと思ってた。それなら無駄に死ぬより、同じ召喚奴隷を守って死んだ方がずっと良いと思ってね」
「ちょっと待て。それは足止めに良い案があるわけじゃなく、体を、命を張って足止めするってことか?」
「他に良い方法があるんなら良いけど、今は他にないと思うからね」

 ・・・誰かが足止めしなければ全滅する。
 けど、足止め役にこいつらを置いていけば、確実にこいつらは死ぬ。
 それは全員わかってた。
 だから「そんなことしなくていい」とか「自分も残る」なんてことは、誰も言えなかった。
 ・・・そして、オレは・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

処理中です...