アンニュイな召喚奴隷リザードマンのレゾンデートル

ねこうさぎ

文字の大きさ
17 / 38

アンニュイなオレと仲間たちの激闘 3

しおりを挟む
「・・・すまねぇ・・・」

 待ってる奴がいるわけでもない。
 心残りがあるわけでもない。
 それでも、やっぱり絶対に死ぬとわかってる場所にいくのは、出来なかった・・・。

「大丈夫だよ」

 オレのくだらねえ葛藤を知ってか知らずか、ちっこい奴は、こんな時だってのに、優しい表情でオレに笑いかけやがった。

「僕の友達は見た通り強いし、こう見えて僕も結構強いんだ。もしかしたら、後からみんなに追いつくかもしれないよ?」
「ッ!」

 それは、明らかにオレたちを気遣ったもの。
 こいつは、自分たちを見殺しにしようしてる連中に、なんでこんな・・・。

「やっぱダメだ! なんとか全員助かる方法を――」
「それを考えてる時間はもうないよ」

 こう話してる間にも、じりじりと包囲は狭まってきてる。
 こいつらの決意は固そうだし・・・ここで押し問答してる時間は、もうないか・・・。

「・・・わかった。なら先頭はオレが突っ切る」
「うん。君たちの後ろで何が起きても、みんなは気にしないで突っ切ってね」

 何が起きても、か・・・。
 悪い予感しか出来ねえ言葉だぜ・・・。

「・・・フォーテル。突破する場所は何処が最適だ?」
「リザドの前方にサイクロプスがいるのがわかるか?」

 見て楽しいもんじゃないが、一つ目の巨人が目の前にいるのを確認する。
 デカイこいつの戦いの巻き添えになるのを恐れてか、そいつの周りにはあまり敵がいない。

「そこが最も包囲が薄く、かつ味方陣営側に行くのに適した方角だ」
「わかった。レオン。ミシェリアに作戦を説明してくれ」
「同時翻訳で既に終わらせとるよ」

 ミシェリアは厳しい表情でレオンの背中に乗り、いつでも行けると言わんばかりだ。

「はっ。もし傭兵を廃業しても、レオンは翻訳の仕事で食っていけそうだな。後は言語が通じない奴らだが・・・オレたちの動きで察してくれるのを期待するしかないか」
「さあ、行って!」
「・・・お前らのことは忘れねえぜ!! ウオオオオオッ!!!!」

 オレが先陣を切って走り出す。
 その後にフォーテルたちが続くと、包囲してた連中も慌てた様子で一斉に動き出した。

「・・・さて、と。君とは長い付き合いだったね」

 猛烈な勢いで距離を詰めて来る敵を前に、2体は戦闘態勢になりながらも、何処か落ち着いていた。

「楽シイ、カッタ」
「アハハ。僕も楽しかったよ。あんな召喚術者に掴まっちゃったのは不幸だったけど、唯一良かったのは、君と出会えたことだね」
「ソレ、俺、言イタイ、カッタ」
「・・・ただ、自由になったら色々やろうねって君と話したけど、それがもう出来ないっていうのが、唯一の心残りかな・・・」

 寂しそうに呟く、自分の背中に乗っている小さい生き物を、大きな前脚で撫でた。

「・・・生マレル、場所、時間、違ウ。デモ、死ヌ、場所、時間、同ジ、嬉シイ」
「・・・そうだね。じゃあ最後に、思う存分遊ぼうか!」
「グォオオオオンッッッ!!!」

 一瞬振り返ったオレの目に映ったのは、デカい奴だけじゃなく、小さい奴まで堂々とした後姿。
 2体はまるで壁のように敵の前に立ち塞がり、雪崩れのように襲い掛かる敵に対して、1歩も引かずに猛然と戦い始めた。
 ・・・だが、いくらあの2体が強いと言っても、そう長くはもたないはず。
 だからオレたちは脇目もふらず突っ切った。
 あいつらが作ってくれたチャンスを無駄にするわけにはいかない。
 それだけを考えて目の前の敵にだけ集中し、サイクロプスを一気に倒すと、そのまま1度も振り返らずに突き進んだ。
 ・・・それからほどなくして、オレたちの背後で、2体の大きな叫び声が聞こえて来たのだった・・・。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...