アンニュイな召喚奴隷リザードマンのレゾンデートル

ねこうさぎ

文字の大きさ
18 / 38

アンニュイなオレと仲間たちの激闘 4

しおりを挟む

「はぁ、はぁ・・・みんな頑張れ! もう少しだ!」 

 命をかけた味方の援護で敵の包囲網を突破し、満身創痍になりながらも、なんとか味方の本陣に戻って来たオレたちを出迎えたのは・・・。

「・・・ど、どういうことだよ、これ・・・」

 そこには既に味方の姿はなく、味方本陣はもぬけの殻になっていた。

「マ、マスター! マスター何処ですか!?」

 一緒にここまで戻って来た召喚奴隷も、自分の召喚術者の姿がないことに驚き、辺りを探し回っている。

「あ、おいみんな! あそこに誰かいるぞ!」

 本陣の開けた場所に、一体だけモンスターが残ってた。
 そこそこデカいボールみたいな球体で、黒一色の体。
 あまり見たことのないモンスターだが、とにかくあいつに話しを聞くしかない。
 疲れきって休んでる仲間を置いて、オレはすぐにそいつに駆け寄った。

「なあ教えてくれ。ここは味方の本陣だろ? なのになんで誰もいないんだ? 他の連中はどうしたんだ?」
「~~~~~~」

 そいつはオレの方を見もしないで、俯いて何かブツブツ言ってるだけ。
 それはオレの言語がわからないって言う感じじゃなく、オレを認識してないような、とにかく不気味な感じだった。

「おい! 聞こえないのか!? 何がどうなってるのか教えてくれ!」
「どうしたんだリザド?」

 様子がおかしいのがわかったのか、フォーテルもこちらに近付いてきた。

「いや、全然話しが通じねえんだよコイツ。なんなんだコイツは?」

 ・・・いや、待てよ?。
 こいつ、何処かで見た気が・・・?。

「何してんだお前ら? ・・・ん?」

 ミシェリアも何がどうなってるのかわかってないらしく、色々と辺りを見渡して来た後、オレたちを不審に思って近づいて来た。
 そして、正体不明のモンスターを見ると・・・。

「!?。クソが!!! そういうことかよ!!!」

 そのモンスターを見た途端、珍しく怒りと焦りが混じったような大声が響いた。

「てめえら!! 急いでここから離れるぞ!!」

 ミシェリアはコイツを見て何かに気付いたように、急いでここから離れようとしてるが、あいにくオレらには一体なんのことかさっぱりだ。

「早くしろボケ!! 死にてえのか!! ちっ! 我が忠実なる召喚奴隷に――」
「ギャッギャ!! ギャッギャミギャ!!(わかった!! わかったからそれは止めろ!!)」

 どういうことなのかはさっぱりだが、強制契約執行だけは勘弁だ。
 それに、ミシェリアのこの慌てようは尋常じゃない。
 おそらく何かが起こる。
 それも、かなり良くないことが。

「みな疲れてるじゃろうがお嬢の言う通りここから離れるんじゃ! お前さん方も一緒に来るんじゃ!」

 レオンは別の召喚奴隷に対しても同じように声をかけてる。

「なんだってんだよ。味方陣地に戻って来て、もう安心だと――」
「早くしろっつってんだろ!!! 死にてえのか!!!」
「・・・やれやれだぜ」

 不満はあれどミシェリアに急かされ、オレたちは限界の体に鞭打ってまた走り出した。

 ・・・数分後・・・。

「あっ」

 味方本陣から急いで離れてる途中で、オレは唐突に、さっきいた変な奴のことを思い出した

「どしたにゃ?」
「思い出した。さっきのブツブツ言ってた奴。何処かで見たことがあると思ったが、前に別の奴の召喚奴隷だった時に1度だけ見たことがあんだ。確かその時も、そいつ一体だけ別の場所に置き去りにされて、その後にすげえ爆発が――」

 次の瞬間。
 一瞬の閃光の後、大地が震え、大気が震えた。
 そして、すぐに立っていられないほどの衝撃波と爆風と熱風が襲って来た。

「うにゃ~!? にゃんにゃ~!?」

 爆風に吹き飛ばされないよう、身を屈めて振り返ったオレたちが見たのは、ついさっきまでオレたちがいた本陣に、凄まじい大爆発が起きてる光景だった。

「ど、どういうことだ!? 一体何が起きてるんだ!?」

 その場にいる全員が何が起きてるのかわからず動揺する中、オレは1人冷静だった。

「・・・アイツだ」
「アイツ!?」
「さっきブツブツ言ってた奴。やっぱりオレが前に見た奴と同じだ。あれは・・・自爆用に作られたモンスターだ・・・」
「自爆用だと!?」
「ああ。間違いない」
「・・・なるほどのう。これで本陣に誰もいなかった理由がわかったわい」

 レオンはミシェリアが吹き飛ばされないように庇いながら、納得したように頷いてる。

「ど、ど~ゆ~ことにゃ?」
「おそらく、最初から敵をこちらの陣地にまで誘い込んで、一気に吹き飛ばす算段じゃったんじゃろう」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! じゃあオレサマたちが戦ってたのはなんだったんだよ!?」
「・・・この作戦を察知されないためのカムフラージュ。つまり囮か」

 フォーテルも、やっと合点が言ったとばかりに納得しながら答えた。
 ちなみにオレも同感だ。
 ・・・やってくれるよ、クソどもが。

「ミシェリアは知ってたのか!?」
「知っておったら、もっと早くに撤退しておるわい」

 おそらく自爆用モンスターは、本陣と、そこ以外にも複数個所に複数用意されてたはず。
 しばらくして吹き荒れた爆風も落ち着き、爆発前は聞こえてた敵側の音も、今はもう何も聞こえなくなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...