13 / 101
12話
しおりを挟む「ところで、マコト様は公園に垂れ下がっていた糸を掴んだら、あの神殿に召喚されたと言っていましたよね?」
「最初はなんだと思ったけどな、あの糸」
「おそらく、その糸こそが王族に伝わる秘儀なのだと思います」
「へぇ~。あれがねぇ」
あの空中から垂れていた糸。そんなすごい物とは思えなかったけどなぁ。
なんか無造作っていうか、糸の先にクッキーついてたし。まるで釣り糸のエサみたいに。
・・・いやいや、そんなまさか。
「私が釣ったんだから、あなたは私の物」と言っていたお姫さんの言葉を思い出し、俺は恐ろしい想像をして、思わず首を振り考えを振り払った。
「で、でもさ、あの糸って普通に公園(雑木林)に垂れ下がってたんだけど? あんなんじゃ俺じゃない奴が掴んでたかも知れないけど、それで良いのか? あ、それとも、あの糸は俺にしか見えかったとか? なるほど。それなら説明が付くな」
「この秘儀はとてつもなく高度で、こちらの世界と別の世界を繋ぎ、とりあえず誰でも良いからとっ捕まえてお助けキャラとしてこちらに召喚する秘儀なのですが――」
「ちょ、ちょっと待って。今、聞き捨てならないことを聞いた気がするんだけど・・・?」
「なにか?」
「・・・とりあえず誰でも良いから、とか何とか? ま、まあ俺の聞き間違いだと――」
「いえ、聞き間違いではないですよ?」
「はぁ!? じゃ、じゃあ俺がこっちに召喚されたのは!?」
「マコト様がたまたま糸を掴んだからですね」
「なんだよそれ!? たったそれだけの理由!? 俺が特別だったからとかじゃねえの!?」
「あなたが? 特別? ・・・ふっ」
「なに鼻で笑ってんだおいっ!!」
俺は怒りに任せてテーブルから身を乗り出し、対面にいるファンナさんの両方のコメカミを拳でグリグリした。
「あぅ~! 痛い痛いですぅ~!」
「ものすごく騙された気分だ!! それに今気付いたけど、元いた世界じゃ俺は突然行方不明になってるんじゃないのか!?」
「だから言ったじゃないですかぁ。この秘儀はとてつもなく高度だって。相手方の都合は関係なく、お助けキャラとして召喚することが出来る素晴らしい秘儀なんですよ?」
「秘儀なんですよ? じゃねえだろ!? 相手の都合は関係なしか!? っていうかそれ誘拐だろ!? 拉致だろ拉致!」
「今この国は――」
「無視かよ!?」
「ええそうですよ誘拐ですよ拉致ですよ。それが何か?」
「なに開き直ってんだゴラァ!!」
「はあぅ~!! 痛いですぅ~!! お嫁に行けなくなっちゃいますぅ~!!」
「なんでだよっ!?」
「うきゅ~~ッ!?」
俺はひとしきりファンナさんのコメカミをグリグリしてから椅子に座り直した。
「はぁ。・・・で?」
「うぅ~・・・はい?」
涙目で頭を抑えてるファンナさんは「キョトン」とした様子で聞き返して来た。
「いや「はい?」じゃなくて話の続き」
「あ~。頭をグリグリされて、意識が因果地平の彼方まで逝っちゃってました」
「ずいぶん遠くまで行ったな!」
「え~と、何処まで話しましたっけ・・・あ、そうそう。趣味は1人H――」
「だから読書だろ!? それはもう良いから!! 今この国はなんなんだ!?」
「あ、そうでしたね」
ったく、この子はマジで大丈夫なのか? だんだん不安になってきたんだけど・・・。
「今この国は・・・滅亡の危機なんです」
「今までの流れ無視していきなり重いな」
「話の流れなど関係ないほどに危機なんですよ。それはもう、何処の馬の骨ともわからない人に頼らなきゃならないほどに」
「言葉遣いに悪意を感じる気がするんだが?」
「気のせいでは?」
「・・・まあ良いさ。で? なんだってそんな滅亡の危機なんだ?」
「魔王さんと、魔王さんが率いるモンスターさんのせいです」
「!?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる