ある意味凄惨な異世界 ～ 憧れた異世界転移だったのに ～

30話

「な、なんじゃそりゃ！？　あいつらモンスターなんだろ！？」
「モンスターさんだって・・・好きでモンスターさんなわけじゃないんですよ？」
「言ってる意味がわからないんだが！？　つかホントにモンスターなのか！？　やる気あんのか！？　遊びに来てるんじゃねえんだろ！？」
「この国を侵略しに来てるんですが？」
「ならもっと真面目にやってくれよ！！　つか何で俺がこんなこと言ってんだよ！？」

　俺は地面に手を付き「orz」の姿になった。
　・・・ヒドい。いくらなんでもこの世界はヒドすぎる。
　ファンナさんの説明を受けた俺は、この世界に来て一番の衝撃を受け・・・そして絶望していた・・・。
　説明を要約するとこうなる。
　子供のころ、もちろん俺もそうだったが、こういう経験した人はそれなりにいると思う。
　MAGの登場人物が使う必殺技や魔法なんかの動きを真似て、さも「何かが出てるような気分」になっていたことが。
　・・・実は、さっきの女騎士とキメラもそうだった。
　キメラの迫力ある行動も、あれはキメラが「必殺技を出したつもり」になっていて、女騎士の「バーニング・ジャスティス・ブレイカー」も「出したつもり」になっていただけ。
　だから最初、キメラが「必殺技を出したつもり」の時「受けたつもり」になって女騎士は膝をつき、女騎士が「バーニング・ジャスティス・ブレイカー」をやった時は、キメラはそれを「受けたつもり」になって倒れた。
　・・・つまり、全部ごっこ遊びみたいなものだったのだ。
　しかも勝敗は、相手の必殺技を見て、ダメージを受けたつもりになって、それに耐えきれなかったら、その場に自分から倒れるという主観的な思い込み。
　さらにお互いに倒れなかった場合は、どちらかが倒れるまで必殺技を出し合い、それでも決着が付かなかったら、先に必殺技がなくなった方の強制負け。
　同時に必殺技がなくなった場合は相打ちという決まりまである始末。
　そして、負けたら勝った方の言うことを絶対に聞かないといけなくて、さらに負けた方は全体の戦いが終わるまで、その場に倒れたまま待つんだそうだ。
　もし負けたのに相手の言うことを聞かなかったら、卑怯者ってレッテルを貼られて、世界中の人から無視されるらしい。
　・・・ＭＡＧ好きの人なら、俺が絶望した理由に共感してくれるはず。
　もしこんなゲームがあったら、クソゲーだと全米が泣くはずだ。
　こんな子供のケンカ以下みたいなことを、騎士団の連中やモンスターが「本気」でやってる。
　さらに俺には見えないだけで、他の人たちには必殺技が見えてるらしいし・・・。
「じゃあファンナさんたちには必殺技が見えてんのか？」って聞いたら、迷いなく「視える！！」って答えたくらいだからな・・・。
　それがさっきの「考えるじゃない。感じるんだ」に繋がるらしいけど・・・。