ある意味凄惨な異世界 ～ 憧れた異世界転移だったのに ～

37話

「少々沸点は低いですが、マコト様が異世界の住人であることは間違いないと思われます」
「沸点が低くて悪かったな！　まともな人なら誰でもこうなるわっ！」
「元神官長の孫であり、将来有望なファンナちゃんがそこまで断言するのであれば、こちらも疑うわけにはいかんブルな」

　ファンナさんが神官の家系だって言うのは聞いてたけど、元神官長の孫だったのか。
　元神官長ってことはかなり偉い人だろうし、ファンナさん自身の信用も相当なものみたいで、今まで疑いの目で俺を見ていた神官長と大臣も納得したっぽい。
　っていうか、ファンナさんのことは誰でも「ちゃん」付けなんだな。

「でも～、ちょっと～、がっかり～」
「がっかりとは？」

　姫さんは可愛らしいまつげを伏せて、何処か落胆した様子で憂鬱っぽい溜息を吐くと、そんな姫さんの姿に大臣も何事かと尋ねている。

「だって～、ホントは～、もっとカッコよくて～、逞しい人が～、良かったのに～」

　・・・俺のこめかみに「ピキッ！」と青筋が１本浮かんだ。

「確かに、見れば見るほど頼りなさそうな奴ブルなぁ」
「雰囲気も威厳も何も感じられませんのぅ」

　ピキピキッと青筋が３本に増えた。

「背も～、もっと～、高かったらよかったな～」
「せめてもう少し筋肉などがついておればよかったんですがなぁ」
「あと顔も貧弱ブル。もうちょっと精悍な感じであれば良かったブル」
「いやはや全く。はっはっは」
「てめえら好き放題言ってくれてんじゃねえよ！！」

　俺を無視して口々に好き放題言う犬とじじいと姫さん（小娘と言いたいところだけど、あまりの可愛さに無下に出来ない・・・）に俺の堪忍袋の緒が切れた。

「全部事実（泣）だけどこっちだって迷惑してんだ！　あんたたちは俺に期待してないみたいだし俺ももう帰りたいから丁度良いだろ！　さっさと元いた場所に帰してくれ！！」
「それは無理～」
「・・・は？」

　ゆる～い口調で何か言ったっぽいけど、何かの聞き違いかと思って、耳の穴をかっぽじってもう一度聞き返した。

「あ～、ごめん。よく聞こえなかったんだけど・・・とにかく俺を元いた場所に――」
「だから～、こっちに呼ぶことは出来ても～、帰すことは～、出来ないの～」

　・・・あ、一瞬気が遠くなった。
　だが俺は気丈にも倒れることなく踏みとどまる。
　誰か誉めてほしい。

「いやいや、そんなバカなことないだろ？　だって、あんたが俺をこっちに呼んだんだろ？」
「そうだよ～！　すごいでしょ～！」

　体を反り返らせても残念なおっぱいは残念なままだけど、とにかく得意満面の笑顔だ。