ある意味凄惨な異世界 ～ 憧れた異世界転移だったのに ～

４５話

「さっきは、その・・」

　さっき？　この子とは初対面のはずだけど・・・？。

「べ、別にあんたに助けてもらわなくても、自分でなんとか出来たけど、でも、その・・・」

　・・・俺に助けてもらった？。
　その言葉を聞いて、さっきモンスターが街を襲った時のことを思い出した。

「あ！　何処かで見たと思ったら、さっき触手モンスターに襲われてたメイドさんか！？」
「襲われかけただけ！　っていうか今まで気付いてなかったの！？」
「あ、ご、ごめん。あの時は俺もいっぱいいっぱいだったから」

　そうか。シャルローネさんは俺のことを覚えてたのか。
　だからこの部屋に入って来た時、俺がいて思わず声が出たんだな。
　俺がイザヨイさんを見て思わず声が出たみたいに。

「ま、まあいいわ。確かにあの時は大変だったし、それにあんたが覚えてなくても助けられたことは事実だし。だから・・・か、感謝してあげてもいいから！」
「お、おぅ・・・」

　・・・俺が想像する感謝って、頭を下げてありがとう、って感じなんだけど、この子のは胸を反らせて上からって・・・。
　いや別に感謝して欲しくて助けたわけじゃないし、別に良いけどさ。

「あ、それより、あの場にいたってことは・・・見たのか？」
「見たって、なにをよ？」
「い、いやなんでもない。忘れてくれ」

　あの恥ずかしいポーズやセリフは自分でも思い出したくないし、思い出させたくもない。

「それにしても・・・」

　さっきから少し気になることもあって、イザヨイさんとシャルローネさんを見ようと思ったら、いつの間にか２人の体を遠慮気味に舐め回すように見ていた俺だった。

「見事なまでに不快な視線なんだが？」
「な、なに見てんのよ！？」

　イザヨイさんは腕を組んで俺を睨み、シャルローネさんは顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに自分の体を抱きしめブチ切れてる。

「なぜ我らをジロジロ見ている？　返答によっては、いくら姫の命とはいえ考え直さねばならないが？」
「あ、ち、違う違う！　変なことを考えて見てたわけじゃなくて、２人とも人間なのかと思って見てただけですって！」

　・・・まあ、ちょっとだけ変なことを考えてなかったわけでもないかも知れないけど、とにかくイザヨイさんに本格的に怖い感じに詰め寄られて慌てて答えた。

「どういう意味だ？」
「これだけ人間以外の種族がいるんだから、２人は一見人間っぽいけど、実はどっちかは違うのかなって思って。獣人みたいな？　それだけですよ。ホント。それだけ」

　いやホント。最初はホントに、それが気になってただけなんだけど・・・途中からは、まあ、ちょっとね。こんな綺麗なお姉さんとか可愛い女の子見たことないし。
　さすがに怖くて口に出しては言えないけど、男の子だからね。仕方ないよね。テヘ☆。

「マコトは人間なんだから、お供も人間の方が良いと思ってそうしてくれたんだろ」

　俺の下心など知る由もなく、ポン太は特に迷う様子も見せず淡々と答えてくれた。

「オレみたいにお前と種族が違えば生活習慣やら食うものも違うし、色々と分からないことがあって弊害が出そうだからな」
「あぁ、なるほど」
「さて、天上世界の賢者に会いに行くとのことだが、これからすぐ出発するのか？」
「あ、え～と・・・どうなの？」
「今日はもう暗くなってきてるし、お前たちも準備があるだろ。出発は明日の朝にしよう」

　どう段取りを付ければ良いかわからずにいると、ここも代わりにポン太が答えてくれた。

「そうか。では明日の朝。街の正門で集合にしよう」
「わかったっす」
「了解だ」
「・・・・・・・・・」
「シャルローネ？　どうした？」
「・・・え？　あっ！？」

　なんかぼ～っと俺を見てたらしいシャルローネさんと目が合うと、彼女は顔を赤くしてすぐさま目を逸らした。

「な、なに！？　なんかあった？」
「明日の朝。街の正門で集合だと聞いていたか？」
「も、もちろん聞いてたわよ！？　変なことなんて全然考えてないんだから！！」
「・・・変なこと？」
「あっ！？」
「やれやれ。シャルは相変わらずのようだな」

　訳知り顔のポン太は呆れたように呟くが、俺には何のことかさっぱりだ。

「とにかく今日はこれで解散だ。明日遅刻するなよ」