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51話
しおりを挟む家に入った俺たちはそのままリビングに通されたけど、イザヨイさんとシャルローネさんにはオシャレなカップで湯気のたっている飲み物を出し、俺とポン太には紙コップで水という素晴らしい待遇の差で歓迎してくれた。
しかも女性陣は小洒落たテーブルと椅子に対して、俺とポン太はみかん箱で地べたに直座りという徹底さだ。
「さて、愛らしい女性方に自己紹介をさせてもらおうかな」
その言い方はつまり、俺やポン太には自己紹介する必要もねえぜってことか・・・。
「僕の名は、ボク=ノ=ナマーエハ=ケンジャ=カモだよ。気軽にケンジャ様って呼んでね」
「すげー名前だな。ケンジャって役職とか職業じゃなくて名前で、しかも最後のカモってどういうことだよ。っていうか、やっぱりお前が賢者なのか?」
「美しいお嬢さん方のお名前を聞かせてもらっても良いかな?」
・・・くっ。このウサギ野郎。
あくまで俺を、男を無視するつもりか?。
「センドウバ イザヨイだ」
「リリメス シャルローネよ。それで、あんたが何でも知ってるっていう賢者なの?」
話しかけられてるのに、ウサギはぼ~っと何処かを見ていて反応しない。
「どうしたウサギ? 死んだか?」
「おいケンジャ。どうした?」
イザヨイさんが少し体を揺すると、ウサギはやっと動き出した。
「・・・ああごめんよ。女神たちの声があまりにキレイで、つい聞き惚れてちゃってたよ」
くあ~っ!! なんなんだよこのウサギは!! いちいち小芝居イライラする!!。
とは言え、もしホントにこいつが元の世界への帰り方を知ってるなら、機嫌を損ねさせるわけにもいかないし・・・。
俺は深呼吸して気持ちを落ち着けてから、出来るだけ穏やかにウサギに話しかけた。
「てめえコラボケウサギ。お前が何でも知ってるっていう賢者――」
「愛らしいお嬢さんの言う通り、僕が何でも知ってるケンジャさ。何か知りたくて僕を訪ねて来たんだね? 何が知りたいのかな? 僕の血液型かな? 僕の誕生日かな? それとも・・・ふっ、僕の夜の本性かな?」
「いや、私たちが聞きたいのは――」
「ああそうかごめんごめん。僕の好みのタイプが知りたいんだね? でも心配しなくて良いよ。僕はこの世の全ての女性を等しく愛しているからね。キミたちのことも平等に――」
「話し聞けやーーーッ!!!」
我慢の限界に達した俺は、プチッと切れてウサギの長い耳を思いっきり引っ張り上げた。
「いたたた! ちぎれる! ちぎれちゃうよ! 耳を引っ張らないでおくれ~~!!」
「落ち着けマコト! 気持ちはわからないではないが落ち着け!」
「ちょっと何やってんのよマコト!? 最初はもう少し優しい痛みから慣れさせていかないといけないんじゃないの!?」
「何の話をしてるんだお前は! とにかく手を離すんだマコト殿!」
「ふ~っ! ふ~っ!」
ポン太たちに強引にウサギから引き離されたことで、俺の興奮も多少冷めてきた。
「ご、ごめん、つい・・・」
「ま、全くなんて野蛮な人間なんだ! これだから気品の欠片もない男は――」
「あぁ!?」
「ひ~っ!」
俺がまた襲い掛かる動作を見せると、ウサギはすぐに両手で耳を隠した。
「見ての通り、この人間は少し興奮しやすいタチでな。自分の耳が大切なら、少しで良いからこの人間の話を聞いてくれないか?」
「・・・えぇ~」
絶妙のタイミングで、落ち着いた優しい声色で説得したポン太だったけど、ウサギはこの期に及んでも露骨に嫌そうな顔だ。
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