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第27話 幼馴染
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アルベクの幼馴染《おさななじみ》であるリーナは剣術が得意だった。
物語に出てくる勇者に憧れたかなんかで、アルベクの父であるアルゼドに剣を自主的に習いにきたのだ。
リーナはアルベクより二歳年上で、当時の彼より身長も高かった。安全な防具を着けての木剣での試合では、彼女に勝てたことは一度もなかった。
「はは、アルベク、あいかわらず弱いね」
「……今はそうだけど、もう数年もしたら、俺の方が強くなるから見てろよ」
「それは楽しみだね」
十三歳の彼女はそう言って笑う。十一歳のアルベクには、その顔が大人びて見えた。
アルベクはそんなリーナに片思い中であったが、彼女の方は友達としてしか見てないことが分かっていた。
というか、彼女は優しく明るい少女だが、アルベクの事にさほど興味がないんじゃないかと被害妄想をしてしまう時さえあった。彼女はアルベクと話す時、その顔はこちらを向いているが、瞳はアルベクではない別の何かを見据えているように感じるのだ。
考えすぎかもしれないが、当時のアルベクにはそう思えた。
二歳年上な彼女には、アルベクが子供っぽく見えたのかもしれないが、真相はわからない。
だから、当時のアルベクは彼女に剣術で勝って、自分の存在をしっかり彼女に認識してもらうことが目標だった。
アルベクは自分自身をちゃんと見てほしくて、必死で剣術の練習をした。強くなれば、彼女の瞳に自分を映してくれるその日が来ると信じて。
今思うと、ほんとうに考えすぎだったと思う。でも、狭い田舎に住んでいた当時のアルベクにとって、剣術と自分の両親、そしてリーナが世界のすべてのように思えていた。
だから、両親が殺され、彼女が消えたとき、自分の中で何かが壊れたような感覚になったのを覚えている。暗い復讐の炎が心の中にともり、それ以外何も考えられなくなった。大好きだった剣術も、いつか両親を殺してリーナを奪った相手を殺すための道具としてしか見れない時期があった。
両親の死後、アルベクを引き取り、育ててくれた叔父に心配をかけたくないからと次第に復讐心を表に出さなくなる。
しかし、今は叔父の許を離れ、セフィーネからも復讐の相手が帝国を裏切った魔術師だと教えられた。
鎧殻装兵としての力も得た。皇帝がカノア島への第二次征伐軍を編成すれば、おそらくアルベクもそこに加わるだろう。そうすれば、帝国を裏切った魔女はカノア島にいるというし、自分の復讐が成し遂げられるかもしれない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なあ、セフィーネ。どうして俺の両親は殺されたと思う?」
たまたま鎧殻警備隊本部に来ていた彼女に、思い切って聞いてみた。
「急にどうしたの?」
彼女は怪訝そうな顔をする。
「ちょっと昨日幼馴染のことを考えていて、それでふと思ってさ。どう思う?」
「そうね……あなたの復讐の相手は帝国を裏切った魔女よ。あなたのお父さんも元々は帝国工廠《ていこくこうしょう》で働いていた魔術師だったし、顔見知りだったはず。だから、帝国を裏切るにあたって仲間になってくれるよう頼んで断られたから殺した、とかは考えられるわね」
「なるほどな……でも争った痕跡はないし、寝ている所を胸を一突きだぜ……」
アルベクがある朝目覚めると、両親はベッドで胸を一突きされて死んでいたのだ。
「あら、そうだったわね。うーん、だとすると、あなたのお父さんは優秀な魔術師だったし、再び帝国工廠に戻られてカノア島が不利になる兵器を開発するのを避けたかったんじゃないの?」
「それはあるかもだけど、それだと、母まで殺して、リーナの両親も殺した理由がわからない。あと、俺は生かされ、リーナが誘拐された理由も」
あの事件は色々と不自然だ。犯人の魔女が何をしたかったのかいまいちよくわからない。
「セフィーネ、あんたは本当はどこまで知っているんだ?」
アルベクはセフィーネの顔を真っ直ぐ見つめる。
「残念ながら、今はあなたにこれ以上話すことは出来ない。前にも言ったけど、上から口止めされているのよ…… 悪く思わないでね」
「なんでなんだ。真実を知っても、フェルザーという魔術師の頭目なら俺が倒すよ。だから、教えてくれ」
「……できないわ。ただ、もうカノア島の第二次征伐が行われることは確定事項のようじゃない。なら、フェルザー云々はもう関係なく、あなたは真実を知るでしょうね。フェルザーを倒すのは、もはや誰でもいいのよ」
「カノア島にいけば、すべてわかるのか?」
「ええ、あなたはたぶん、両親を殺した犯人にも出会うはずよ。そういう運命の下にあると思う」
セフィーネはリーナと違い、まっすぐとアルベクを見つめる。この少女は、いつだってそうだ。
「分かった…… これ以上は聞かない。すべては、自分で確かめる」
アルベクはそう宣言する。
物語に出てくる勇者に憧れたかなんかで、アルベクの父であるアルゼドに剣を自主的に習いにきたのだ。
リーナはアルベクより二歳年上で、当時の彼より身長も高かった。安全な防具を着けての木剣での試合では、彼女に勝てたことは一度もなかった。
「はは、アルベク、あいかわらず弱いね」
「……今はそうだけど、もう数年もしたら、俺の方が強くなるから見てろよ」
「それは楽しみだね」
十三歳の彼女はそう言って笑う。十一歳のアルベクには、その顔が大人びて見えた。
アルベクはそんなリーナに片思い中であったが、彼女の方は友達としてしか見てないことが分かっていた。
というか、彼女は優しく明るい少女だが、アルベクの事にさほど興味がないんじゃないかと被害妄想をしてしまう時さえあった。彼女はアルベクと話す時、その顔はこちらを向いているが、瞳はアルベクではない別の何かを見据えているように感じるのだ。
考えすぎかもしれないが、当時のアルベクにはそう思えた。
二歳年上な彼女には、アルベクが子供っぽく見えたのかもしれないが、真相はわからない。
だから、当時のアルベクは彼女に剣術で勝って、自分の存在をしっかり彼女に認識してもらうことが目標だった。
アルベクは自分自身をちゃんと見てほしくて、必死で剣術の練習をした。強くなれば、彼女の瞳に自分を映してくれるその日が来ると信じて。
今思うと、ほんとうに考えすぎだったと思う。でも、狭い田舎に住んでいた当時のアルベクにとって、剣術と自分の両親、そしてリーナが世界のすべてのように思えていた。
だから、両親が殺され、彼女が消えたとき、自分の中で何かが壊れたような感覚になったのを覚えている。暗い復讐の炎が心の中にともり、それ以外何も考えられなくなった。大好きだった剣術も、いつか両親を殺してリーナを奪った相手を殺すための道具としてしか見れない時期があった。
両親の死後、アルベクを引き取り、育ててくれた叔父に心配をかけたくないからと次第に復讐心を表に出さなくなる。
しかし、今は叔父の許を離れ、セフィーネからも復讐の相手が帝国を裏切った魔術師だと教えられた。
鎧殻装兵としての力も得た。皇帝がカノア島への第二次征伐軍を編成すれば、おそらくアルベクもそこに加わるだろう。そうすれば、帝国を裏切った魔女はカノア島にいるというし、自分の復讐が成し遂げられるかもしれない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なあ、セフィーネ。どうして俺の両親は殺されたと思う?」
たまたま鎧殻警備隊本部に来ていた彼女に、思い切って聞いてみた。
「急にどうしたの?」
彼女は怪訝そうな顔をする。
「ちょっと昨日幼馴染のことを考えていて、それでふと思ってさ。どう思う?」
「そうね……あなたの復讐の相手は帝国を裏切った魔女よ。あなたのお父さんも元々は帝国工廠《ていこくこうしょう》で働いていた魔術師だったし、顔見知りだったはず。だから、帝国を裏切るにあたって仲間になってくれるよう頼んで断られたから殺した、とかは考えられるわね」
「なるほどな……でも争った痕跡はないし、寝ている所を胸を一突きだぜ……」
アルベクがある朝目覚めると、両親はベッドで胸を一突きされて死んでいたのだ。
「あら、そうだったわね。うーん、だとすると、あなたのお父さんは優秀な魔術師だったし、再び帝国工廠に戻られてカノア島が不利になる兵器を開発するのを避けたかったんじゃないの?」
「それはあるかもだけど、それだと、母まで殺して、リーナの両親も殺した理由がわからない。あと、俺は生かされ、リーナが誘拐された理由も」
あの事件は色々と不自然だ。犯人の魔女が何をしたかったのかいまいちよくわからない。
「セフィーネ、あんたは本当はどこまで知っているんだ?」
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「なんでなんだ。真実を知っても、フェルザーという魔術師の頭目なら俺が倒すよ。だから、教えてくれ」
「……できないわ。ただ、もうカノア島の第二次征伐が行われることは確定事項のようじゃない。なら、フェルザー云々はもう関係なく、あなたは真実を知るでしょうね。フェルザーを倒すのは、もはや誰でもいいのよ」
「カノア島にいけば、すべてわかるのか?」
「ええ、あなたはたぶん、両親を殺した犯人にも出会うはずよ。そういう運命の下にあると思う」
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アルベクはそう宣言する。
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