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第63話 鬼術衆最強
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「誰かが来ます」
「えっ?」
足音が近づいているのにアルベクは気がつき、警戒を強める。
「鬼術衆でしょうか……」
ジュナが心配そうな顔をする。
今、鬼術衆と遭遇するのはまずい状況だった。アルベクは手負いであり、ジュナもアルベクを連れて転移できる程の鬼力はなかったからだ。
足音はどんどんこちらに近づいてくる。そして、草木をかき分け、背の高い男が姿を現す。
「お、見っけましたよ姫様。それと……あんたは……アルベクさんだったかな?」
「……アムラタさん! なんだ、良かった」
ジュナは安堵したような声を出す。
「安心してくださいアルベク様。彼は大丈夫です」
「鬼術衆ではないのですか?」
「いやぁ、あっしも鬼術衆ですよ。でもねぇ、他所《よそ》から来たお客様を襲うっつうガルナの馬鹿とは違いますよ。というかあっしは襲撃のことなんてこれっぽちも知らされなかったんだからこれが……」
アルベクはこの男に見覚えがあった。将王ナザムに謁見したときに、従者として、ガルナとともに上段の間にいた男でもあった。
「彼は穏健派の鬼術師です。おそらく父に言われて私を探しに来たのでしょう」
「そう、正解。大正解。いやぁ何、姫様がアルベクさんを探しに転移の鬼術を使ったでしょう。そんで、将王陛下は心配して、鬼術衆で唯一探知の鬼術を使えるあっしに白羽の矢が立ったって訳。あっ、でもガルナの馬鹿はこのこと知りませんよ。あくまで内密の話でね」
彼はガルナとは折り合いが悪いようだった。鬼術衆にもこのような戦争を望まない勢力がいることは心強い。
「アムラタさんは鬼術衆最強の剣士と名高いのです。彼に力になってもらいましょう」
「いやぁ、照れるねぇ。まぁ、あっしに出来ることがありゃ、何でもお申し付けくださいまし」
「あなたも鬼術師なら核玉をもつ鎧殻鬼兵ということですよね? バシュヌはいつから核玉の開発に成功したんです?」
アルベクの問いにアムラタは少し考えこむ。
「えーと、あれは何年前でしたかね。十年ほど前かなぁ。まぁ、そんぐらいの時分に一体の鬼が現れたんでさあ」
「おに?」
「へえ。鬼ってのは角が生えてて、立派な体躯でね。力も強いのなんのって。で、その鬼が持ってたんですよ核玉を。その鬼は色んなことを教えてくれてねぇ。強い鬼術の使い方とか武術なんかをね」
「本当にそんな生き物がいるんですか?」
アルベクはジュナに問う。
「はい、昔からこの地には異界より鬼という超常の力をもつ者が現れるとされていまして、鬼は人間に様々な知識や技術を授けてくれると…… そして、十年前に鬼王《オグルク》と名乗る鬼が現れたのです」
ジュナは続ける。
「鬼王《オグルク》様は瀕死の重傷を負っていましたので、我らは必死に看病しました。彼はなぜ傷を負ったのかだけでなく、自分の過去を全く覚えておられませんでした。しかし、我らの看病が功を奏したのか、鬼王《オグルク》様の傷は癒え、そのお礼として、我らに核玉をくださるとともに、強力な鬼術まで教えてくださったのです」
アリスティアは少し前までの鬼術はまじない程度の他愛無いものだと言っていた。それが魔術に匹敵するようになったのは、この鬼王《オグルク》のおかげという訳か。
「そうそう、そんで鬼術師たちは鬼王《オグルク》様の核玉を解析して、独自の核玉を開発し、鎧殻鬼兵になれたって訳でさぁ。まさに鬼王《オグルク》様様ってね」
「アルベク様に核玉のことを秘匿していたこと、申し訳なく思います。強力な核玉を開発していると、ヴァルスレン側には知られたくはなかったのです」
「薄々核玉があるのではないかとは疑っておりました…… しかしその事は良いです。今、鬼王《オグルク》という鬼はどこに?」
「シュザク城の御殿内に部屋を持っており、そこに居られるかと。」
将王もそうだが、その鬼王《オグルク》も説得できれば、戦争を防げるのではないか…… アルベクはそのように考える。
「鬼王《オグルク》に頼んで、鬼術衆に戦を止めてもらうようには出来ないのですか?」
アルベクの問いにジュナは首を振る。
「それは難しいかと。むしろ鬼術衆が戦争も辞さずに独立を希求するようになったのは、鬼王《オグルク》様の影響があるようなのです。鬼王《オグルク》様曰く、今のバシュヌ将国がおかれている状況はおかしい。ヴァルスレンに服属するのは道理に沿わないと。そして、私が鬼王《オグルク》様に鬼術衆を抑え込むようお願いしても、彼は聞く耳持たずでした」
「ガルナの馬鹿もね、昔はあんなに過激な奴じゃなかったんですよ。それが、鬼王《オグルク》様に影響されて、変わっちまいやがった……」
アムラタは溜息をつく。
「では、すべての元凶は鬼王《オグルク》だと?」
「鬼王《オグルク》様は我らのために様々な技術を教えてくださいましたし、バシュヌが独立すべきという意見も、我らを思ってのことかと…… それに鬼はこの国では神聖な存在です。元凶というのは……」
鬼王《オグルク》はバシュヌの人々にとっては恩人だが、それが戦への火種にもなっている。アルベクはそのように感じていた。
「まあ、とりあえず、姫様は一度ひとり御殿にお戻りになって、将王陛下を説得するしかないんじゃないですかね? アルベクさんはあっしがここでお守りしますんで」
「すみません……」
「なんのなんの。あっしもね、戦なんて楽しくないことやりたかないんですよ。全部丸く収まるのが一番いいってね」
そう言って彼はアルベクに笑いかける。
「分かりました。では、お願いいたします」
そう言って、ジュナは転移の術を使い、御殿に向かった。
「えっ?」
足音が近づいているのにアルベクは気がつき、警戒を強める。
「鬼術衆でしょうか……」
ジュナが心配そうな顔をする。
今、鬼術衆と遭遇するのはまずい状況だった。アルベクは手負いであり、ジュナもアルベクを連れて転移できる程の鬼力はなかったからだ。
足音はどんどんこちらに近づいてくる。そして、草木をかき分け、背の高い男が姿を現す。
「お、見っけましたよ姫様。それと……あんたは……アルベクさんだったかな?」
「……アムラタさん! なんだ、良かった」
ジュナは安堵したような声を出す。
「安心してくださいアルベク様。彼は大丈夫です」
「鬼術衆ではないのですか?」
「いやぁ、あっしも鬼術衆ですよ。でもねぇ、他所《よそ》から来たお客様を襲うっつうガルナの馬鹿とは違いますよ。というかあっしは襲撃のことなんてこれっぽちも知らされなかったんだからこれが……」
アルベクはこの男に見覚えがあった。将王ナザムに謁見したときに、従者として、ガルナとともに上段の間にいた男でもあった。
「彼は穏健派の鬼術師です。おそらく父に言われて私を探しに来たのでしょう」
「そう、正解。大正解。いやぁ何、姫様がアルベクさんを探しに転移の鬼術を使ったでしょう。そんで、将王陛下は心配して、鬼術衆で唯一探知の鬼術を使えるあっしに白羽の矢が立ったって訳。あっ、でもガルナの馬鹿はこのこと知りませんよ。あくまで内密の話でね」
彼はガルナとは折り合いが悪いようだった。鬼術衆にもこのような戦争を望まない勢力がいることは心強い。
「アムラタさんは鬼術衆最強の剣士と名高いのです。彼に力になってもらいましょう」
「いやぁ、照れるねぇ。まぁ、あっしに出来ることがありゃ、何でもお申し付けくださいまし」
「あなたも鬼術師なら核玉をもつ鎧殻鬼兵ということですよね? バシュヌはいつから核玉の開発に成功したんです?」
アルベクの問いにアムラタは少し考えこむ。
「えーと、あれは何年前でしたかね。十年ほど前かなぁ。まぁ、そんぐらいの時分に一体の鬼が現れたんでさあ」
「おに?」
「へえ。鬼ってのは角が生えてて、立派な体躯でね。力も強いのなんのって。で、その鬼が持ってたんですよ核玉を。その鬼は色んなことを教えてくれてねぇ。強い鬼術の使い方とか武術なんかをね」
「本当にそんな生き物がいるんですか?」
アルベクはジュナに問う。
「はい、昔からこの地には異界より鬼という超常の力をもつ者が現れるとされていまして、鬼は人間に様々な知識や技術を授けてくれると…… そして、十年前に鬼王《オグルク》と名乗る鬼が現れたのです」
ジュナは続ける。
「鬼王《オグルク》様は瀕死の重傷を負っていましたので、我らは必死に看病しました。彼はなぜ傷を負ったのかだけでなく、自分の過去を全く覚えておられませんでした。しかし、我らの看病が功を奏したのか、鬼王《オグルク》様の傷は癒え、そのお礼として、我らに核玉をくださるとともに、強力な鬼術まで教えてくださったのです」
アリスティアは少し前までの鬼術はまじない程度の他愛無いものだと言っていた。それが魔術に匹敵するようになったのは、この鬼王《オグルク》のおかげという訳か。
「そうそう、そんで鬼術師たちは鬼王《オグルク》様の核玉を解析して、独自の核玉を開発し、鎧殻鬼兵になれたって訳でさぁ。まさに鬼王《オグルク》様様ってね」
「アルベク様に核玉のことを秘匿していたこと、申し訳なく思います。強力な核玉を開発していると、ヴァルスレン側には知られたくはなかったのです」
「薄々核玉があるのではないかとは疑っておりました…… しかしその事は良いです。今、鬼王《オグルク》という鬼はどこに?」
「シュザク城の御殿内に部屋を持っており、そこに居られるかと。」
将王もそうだが、その鬼王《オグルク》も説得できれば、戦争を防げるのではないか…… アルベクはそのように考える。
「鬼王《オグルク》に頼んで、鬼術衆に戦を止めてもらうようには出来ないのですか?」
アルベクの問いにジュナは首を振る。
「それは難しいかと。むしろ鬼術衆が戦争も辞さずに独立を希求するようになったのは、鬼王《オグルク》様の影響があるようなのです。鬼王《オグルク》様曰く、今のバシュヌ将国がおかれている状況はおかしい。ヴァルスレンに服属するのは道理に沿わないと。そして、私が鬼王《オグルク》様に鬼術衆を抑え込むようお願いしても、彼は聞く耳持たずでした」
「ガルナの馬鹿もね、昔はあんなに過激な奴じゃなかったんですよ。それが、鬼王《オグルク》様に影響されて、変わっちまいやがった……」
アムラタは溜息をつく。
「では、すべての元凶は鬼王《オグルク》だと?」
「鬼王《オグルク》様は我らのために様々な技術を教えてくださいましたし、バシュヌが独立すべきという意見も、我らを思ってのことかと…… それに鬼はこの国では神聖な存在です。元凶というのは……」
鬼王《オグルク》はバシュヌの人々にとっては恩人だが、それが戦への火種にもなっている。アルベクはそのように感じていた。
「まあ、とりあえず、姫様は一度ひとり御殿にお戻りになって、将王陛下を説得するしかないんじゃないですかね? アルベクさんはあっしがここでお守りしますんで」
「すみません……」
「なんのなんの。あっしもね、戦なんて楽しくないことやりたかないんですよ。全部丸く収まるのが一番いいってね」
そう言って彼はアルベクに笑いかける。
「分かりました。では、お願いいたします」
そう言って、ジュナは転移の術を使い、御殿に向かった。
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