魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

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第66話 堅牢

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「ガルナが敗れたか……」

 鬼王《オグルク》はシュザク城の本丸庭園にてそう呟く。彼の探知の鬼術は鬼術衆の鎧殻鬼兵を蹴散らすアムラタとアルベクの動向を捉えていた。

 アムラタもそうだが、あのアルベクという若者も相当の使い手だと鬼王《オグルク》は感じていた。そして、まだ使いこなせてない秘めたる力にも興味を持つ。

「この肉体もだいぶ力を取り戻してきた…… 某《それがし》自らが戦うとするか……」

 命のやり取りをするのは実に久しぶりでだ。このバシュヌに来る前の記憶はおぼろげで、つい先日まで、なぜ十年前に大怪我を負っていたのかなどは忘れてしまっていた。少しずつ記憶を取り戻してはいるが、まだ不明瞭なことは多い。
 ここの者たちは鬼王《オグルク》を鬼と呼び崇めるか、本当に自分が鬼なのかもわからない。悪魔かもしれぬし、はたまた別の怪物かもしれぬ。
 
 ただし、全盛期の自分はさらに強かったことだけは覚えている。そして、自分が心のそこから大きな戦を望んでいることは確かなのだ。

 バシュヌとヴァルスレンが戦になれば、鬼王《オグルク》は先頭に立って戦うつもりであった。血沸き肉躍る戦場こそ、自分が最も希求する場所であった。しかし、アルベクという若者はなかなか気骨があり、戦を必死に止めようと足掻いている。彼を殺し、戦の火蓋を切らねばなるまい。

「久しぶりに楽しい殺し合いが出来そうよ……」

 鬼王《オグルク》は心の中で笑う。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「アルベク様! アムラタさん!」

 転移の術でジュナがアルベクとアムラタの前に姿を現す。

「ジュナ様。御無事で」
「ええ、父は鬼王《オグルク》様さえ打ち破れば、ヴァルスレンに再び頭を下げるのもやぶさかではないと……」
「鬼王《オグルク》を? しかし、彼はあなた方の恩人でもあるのでしょう?」
「彼曰く、すべてはバシュヌとヴァルスレンを戦わせるために準備してきたことだと…… 残念ながら彼は悪鬼だったようです」

 ジュナは顔に静かな怒りを滲ませながらそう言った。

「まあ、鬼王《オグルク》様がやられたとなれば、鬼術衆もさすがに大人しくなるかもわかりませんね。ただ、鬼王《オグルク》様は化け物みたいに強いですよ」

 そうなると、第三形態になるしかないが、先ほどのように心が闇に飲まれないとも限らない。

『某をお探しかな』

 突如、頭の中で声が響く。

「これは?」
「鬼王《オグルク》様の声です!」

『某が戦いの場に皆を招待いたそう』

「何?」

 次の瞬間、三人の姿はその場から消えていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 気がつくと、三人はシュザク城内の庭園にいた。そして、異形の怪物・鬼王《オグルク》がその近くに立っている。

「ここは……本丸庭園。転移の術ですね……鬼王《オグルク》様」
「如何にも。我らの戦いを将王殿にも見届けていただきましょう」

 ジュナの問いに鬼王《オグルク》は頷く。

「ジュナ!」

 護衛を引き連れて、将王ナザムも庭園にやってきた。また、騒ぎを聞きつけた鎧殻鬼兵もぞろぞろと集まってくる。

「舞台は整った。鎧殻鬼兵の皆々は手出し無用。この二人は某が討ち取る」

 そう言って、鬼王《オグルク》は漆黒の大太刀を生成する。

「姫様、危ないんでね、離れた場所にいてください。ここはあっしとアルベクさんにお任せあれ」
「……承知しました。御武運を」

 自分が邪魔だと悟ったジュナは、将王ナザムの許に走っていく。

「あんたが鬼王《オグルク》か…… お互い剣を納めて争わない道はもうないのか?」

 鬼王《オグルク》の姿を見たアルベクは、鎧魔殻を纏ったリーナの姿に酷似しているように思った。まるで、物語に出てくる魔王のようなおどろおどろしさがある。

「ござらん。アルベク殿、某は御辺《ごへん》と戦いとうて仕方がない。御辺を殺し、大戦の口火を切らせてもらおう」

 アルベクの問いを鬼王《オグルク》は否定する。

「ならば、仕方ない」

 アルベクは長剣を構える。
 
「ふふ、いざ!」

 そう言うと、鬼王《オグルク》は右手一本で大太刀を薙ぐ。凄まじい威力の波動斬撃がアルベクとアムラタの二人を襲い、彼らは後方に吹き飛ばされる。

「「ぐっ!」」

 その隙に鬼王《オグルク》は転移の鬼術を使い。アムラタの背後に立つ。

「こ、この!」

 アムラタがなんとか体勢を立て直し、核玉《コア》の出力を上げ、鬼王《オグルク》に斬りかかる。

「無駄なことよ」

 アムラタの二刀の攻撃は鬼王《オグルク》の鋼の肉体の前に全くの無力だった。

「ば、馬鹿な」

 攻撃が通じず、アムラタはたじろぐ。その隙に鬼王《オグルク》は右拳を彼の鳩尾に叩き込んだ。

「ぐはっ……」

 アムラタは地面に崩れ落ち、意識を失う。鎧殻装も解除されている。

「他愛無い、これで終わりか」

 そこにアルベクが駆け付け、長剣で攻撃での攻撃を繰り出す。しかし、鬼王《オグルク》は大太刀でその攻撃を軽々と捌いていく。

「なかなかの技量! だが、某には遠く及ばん」

 鬼王《オグルク》は長剣を大太刀で受け流し、カウンターの攻撃を繰り出す。アルベクはそれを防御したものの、そのあまりの力の前に長剣を叩き折られる。

「くっ!」

 後方に跳躍しつつ、新しい長剣を生成しなおす。そして、核玉の出力を最大限に上げて、鬼王《オグルク》の胸めがけて諸手突きを繰り出す。

 しかし、鬼王《オグルク》はそれを避けようともせず、刀身は胸に直撃する――が、ダメージを負ったのはアルベクの長剣の方で、刀身が真っ二つに砕ける。

「クソ……」

「はは、その姿では無理ぞ。御辺の真の力を某に見せてみよ」
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