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第73話 予感
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晩餐会が終わり、ロージア宮殿内に貸し与えられた部屋に戻ったアルベクだったが、しばらくしてドアをノックする音が聞こえて、扉を開ける。
すると、部屋の外には親衛隊のネリスを連れた皇帝アリスティアの姿があり、アルベクは驚く。
「へ、陛下」
「ふふ、アルベク…… まだ飲み足りないだろう。我が直々に酒を持ってきてやったぞ」
「そ、それはどうも……」
そう言って、部屋の中に入ったアリスティアは椅子に座り、アルベクと自分の分の酒をグラスに注ぐ。
「さあ、飲め……」
「は、はい…… いただきます」
度数の高いブランデーにアルベクは口をつける。
「で、だ……ジュナと付き合うことにしたのか」
その言葉に、思わず口に含んだ酒を吐きそうになった。
「その話、ご存じで……」
「この宮殿内の出来事で、我の知らぬことなぞないわ。それで、どうする?」
「……その……色々障害が多い事は承知しております」
それを聞いて、アリスティアは笑う。
「その障害とやらの中には、我も含まれているのであろう?」
「……」
「たしかに、我が国の核玉《コア》を持つ戦士を、他国にみすみす渡すのは難しいな……。それが、帝国最強の戦士となれば、なおの事厄介だ」
アリスティアはグラスに入ったブランデーを一気に飲み干す。彼女は晩餐会でもさんざん飲んだはずなのに、顔色ひとつ変えやしない。とんでもない酒豪である。
「だがな、そなたの功に免じて、我は許そうと思う。愛し合う二人の仲を裂くような野暮なことを我はせん」
「それは……寛大なお言葉。ありがたく存じます」
「ただな、我はよくとも、将王が可愛い一人娘をそなたにやるとは思えんぞ。むしろ大変なのはそっちぞ……」
たしかに、将王ナザムはジュナ以外の子はいない。ナザムの弟の子が次の将王の座に就くという。
「確かに……将王陛下が一介の平民と姫君が付き合うことをお許しになる訳もなく……」
「それに、付き合ってみたらお互いの欠点ばかり見えてすぐに分かれるかもしれんしな。若人の恋愛なんてそんなものぞ……」
「は、はぁ」
「ただまあ、我はそなたとジュナの恋路の邪魔はせん。後は好きにしろ」
皇帝の許可の方は、意外とすんなりと降りた……あとはナザムの許可だが……
「そなたはジュナとともにもう一度将国に行くがよい…… 将王に頭を下げて必死に頼み込むのだな」
「……承知いたしました」
娘思いのナザムの許しを得るのは難しそうだ。それでも、やるしかないとアルベクは心に誓った。
すると、アルベクの部屋をノックする音が聞こえた。
「入れ」
アリスティアの言葉を受けて、長い髪の女性が部屋に踏み込み、アリスティアに一礼する。そして、彼女の近くまで来ると、耳元でなにやら耳打ちする。
それを聞いたアリスティアは満面の笑みを浮かべる。
「やっとか…… わかったすぐ我が部屋に持ってこさせよ」
そう言うと、女性は再び一礼して、部屋を後にする。
「すまぬな、アルベク。我はちょっと用事ができた。自室に参る」
「は、はい。承知しました」
そう言って、アリスティアも部屋を出ていく。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「皇帝陛下はお許しになったのですね!」
翌日、アルベクの部屋にやってきたジュナは嬉しそうに言う。
「ええ、あとはあなたの御父上に認めてもらうだけなのですが……」
「……それは確かに骨が折れそうですね……」
ジュナも自分の父の頑固さは痛い程知っていた。
「断られるでしょうけど、俺は精一杯頭を下げます」
「私も父に一世一代の我儘を通そうと思います。だから、心配しないで」
そう言って、彼女はアルベクの手を握る。
「しかし、俺でほんとにいいんですか…… 一時の気の迷いなんじゃ……」
「もう! そういうとこですよ。もっと自信を持ってください」
「……は、はい」
ジュナの迫力の前に、アルベクは縮こまる。
「私は父を敵に回しても、あなたと共にいる覚悟です…… あなたは違うのですか?」
「そうですね……俺も世界を敵に回しても、あなたの傍にいたい」
「ふふ、良く出来ました」
彼女は満面の笑顔でそう言った。
「そういえば、アルベクはステムセン王国のライゼル殿下ともお友達なのですよね」
「ええ、彼は大学を去ってしまいましたが……」
(しかし、俺は平民の身でありながら、高貴な出の人々と色々と縁があるな……)
「それは残念です。私も彼にお会いしたかった」
「あいつは良い奴ですよ。ジュナもライゼルのことをきっと好きになるかと」
「ステムセン……これは私の勘でしかないのですが、あの国で近々何かが起こるような気がします」
「何かとは?」
「そこまではわかりません。ただ、そんな予感がするのです」
ジュナは強い鬼力を持っている。また、予知夢もよく見ると言っていた。友のいる国で何か大事が起こらなければ良いが……
(『君もたまには我が家に遊びにくればいい』)
ライゼルはそう言っていたが、気軽に会いに行ける場所ではない。しかし、あの国になにかあれば、アルベクはすぐに駆け付けるつもりだった。
すると、部屋の外には親衛隊のネリスを連れた皇帝アリスティアの姿があり、アルベクは驚く。
「へ、陛下」
「ふふ、アルベク…… まだ飲み足りないだろう。我が直々に酒を持ってきてやったぞ」
「そ、それはどうも……」
そう言って、部屋の中に入ったアリスティアは椅子に座り、アルベクと自分の分の酒をグラスに注ぐ。
「さあ、飲め……」
「は、はい…… いただきます」
度数の高いブランデーにアルベクは口をつける。
「で、だ……ジュナと付き合うことにしたのか」
その言葉に、思わず口に含んだ酒を吐きそうになった。
「その話、ご存じで……」
「この宮殿内の出来事で、我の知らぬことなぞないわ。それで、どうする?」
「……その……色々障害が多い事は承知しております」
それを聞いて、アリスティアは笑う。
「その障害とやらの中には、我も含まれているのであろう?」
「……」
「たしかに、我が国の核玉《コア》を持つ戦士を、他国にみすみす渡すのは難しいな……。それが、帝国最強の戦士となれば、なおの事厄介だ」
アリスティアはグラスに入ったブランデーを一気に飲み干す。彼女は晩餐会でもさんざん飲んだはずなのに、顔色ひとつ変えやしない。とんでもない酒豪である。
「だがな、そなたの功に免じて、我は許そうと思う。愛し合う二人の仲を裂くような野暮なことを我はせん」
「それは……寛大なお言葉。ありがたく存じます」
「ただな、我はよくとも、将王が可愛い一人娘をそなたにやるとは思えんぞ。むしろ大変なのはそっちぞ……」
たしかに、将王ナザムはジュナ以外の子はいない。ナザムの弟の子が次の将王の座に就くという。
「確かに……将王陛下が一介の平民と姫君が付き合うことをお許しになる訳もなく……」
「それに、付き合ってみたらお互いの欠点ばかり見えてすぐに分かれるかもしれんしな。若人の恋愛なんてそんなものぞ……」
「は、はぁ」
「ただまあ、我はそなたとジュナの恋路の邪魔はせん。後は好きにしろ」
皇帝の許可の方は、意外とすんなりと降りた……あとはナザムの許可だが……
「そなたはジュナとともにもう一度将国に行くがよい…… 将王に頭を下げて必死に頼み込むのだな」
「……承知いたしました」
娘思いのナザムの許しを得るのは難しそうだ。それでも、やるしかないとアルベクは心に誓った。
すると、アルベクの部屋をノックする音が聞こえた。
「入れ」
アリスティアの言葉を受けて、長い髪の女性が部屋に踏み込み、アリスティアに一礼する。そして、彼女の近くまで来ると、耳元でなにやら耳打ちする。
それを聞いたアリスティアは満面の笑みを浮かべる。
「やっとか…… わかったすぐ我が部屋に持ってこさせよ」
そう言うと、女性は再び一礼して、部屋を後にする。
「すまぬな、アルベク。我はちょっと用事ができた。自室に参る」
「は、はい。承知しました」
そう言って、アリスティアも部屋を出ていく。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「皇帝陛下はお許しになったのですね!」
翌日、アルベクの部屋にやってきたジュナは嬉しそうに言う。
「ええ、あとはあなたの御父上に認めてもらうだけなのですが……」
「……それは確かに骨が折れそうですね……」
ジュナも自分の父の頑固さは痛い程知っていた。
「断られるでしょうけど、俺は精一杯頭を下げます」
「私も父に一世一代の我儘を通そうと思います。だから、心配しないで」
そう言って、彼女はアルベクの手を握る。
「しかし、俺でほんとにいいんですか…… 一時の気の迷いなんじゃ……」
「もう! そういうとこですよ。もっと自信を持ってください」
「……は、はい」
ジュナの迫力の前に、アルベクは縮こまる。
「私は父を敵に回しても、あなたと共にいる覚悟です…… あなたは違うのですか?」
「そうですね……俺も世界を敵に回しても、あなたの傍にいたい」
「ふふ、良く出来ました」
彼女は満面の笑顔でそう言った。
「そういえば、アルベクはステムセン王国のライゼル殿下ともお友達なのですよね」
「ええ、彼は大学を去ってしまいましたが……」
(しかし、俺は平民の身でありながら、高貴な出の人々と色々と縁があるな……)
「それは残念です。私も彼にお会いしたかった」
「あいつは良い奴ですよ。ジュナもライゼルのことをきっと好きになるかと」
「ステムセン……これは私の勘でしかないのですが、あの国で近々何かが起こるような気がします」
「何かとは?」
「そこまではわかりません。ただ、そんな予感がするのです」
ジュナは強い鬼力を持っている。また、予知夢もよく見ると言っていた。友のいる国で何か大事が起こらなければ良いが……
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