魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

文字の大きさ
78 / 94

第76話 再会

しおりを挟む
「ふむ、お主がセフィーネ殿か。帝国の核玉を開発している者に会えるとは……」
「私も将王陛下にお会いできて、光栄ですわ」

 アルベク、ジュナ、セフィーネ、将王ゼナムの四人は黒書院に集まっていた。

「それで、話を聞かせて欲しいんだが。俺はおまえが失踪したこの一年ちょっと、ずっと心配したんだからな……」
「あら? そんなに心配してくれていたとは嬉しいわ」
「心配して損したよ……」

 ジュナはそんなアルベクとセフィーネの親しそうなやり取りが不満だったのか、アルベクの背中を軽く小突く。彼女は意外と嫉妬深いようだ……

「それで、セフィーネ様は何故ステムセンに?」
「簡潔にまとめますと、帝国工廠に居られなくなったからです……」
「それって、ユリファという少女が関係しているのか?」

 その名前を聞いたセフィーネは渋い顔をする。アリスティアの話だと、彼女はユリファと折り合いが悪かったようで、ユリファの才能に嫉妬していたという噂もあるようだ。

「あら、陛下からその話を聞いたの?」
「そのユリファという少女と何かあって、帝国工廠に居辛くなったのか?」
「そうね……彼女がいなければ、私は今も帝国工廠にいたかもしれないわね」

 そう言って、彼女は詳細を語りだした。

「アルベクには以前話したと思うけど、私の先祖の魔女ユグシャが禁断の核玉を開発したのは知っているわよね」
「ああ、強力な力を得る代わりに、次第に力が暴走して、この星の文明さえ滅ぼしかねない危険な核玉だっけ?」
「なんと、そのような核玉が存在するのか?」

 ナザムはアルベクの言葉に驚愕していた。それはジュナも同じだった。

「そう、そんな危険な核玉をアリスティア陛下は自分のコントロール下に置こうとしているのよ。あの核玉にはユグシャがかけた封印が施されていて、今は力は使うことが出来なくなっていたの。しかし、陛下はそのユリファという少女を使って、その封印を解除しようとしているの」
「あの陛下が? なんのために?」

 アリスティア帝は多少強引なところがあるが、戦争を避けようとアルベクを使者として将国に派遣したりと、そんな危険なことをする人物に見えなかった。

「ヴァルスレンのよる大陸統治には、もう綻びが出ているのよ…… 現にこの将国が独立しようしたりね……」

 その言葉にナザムとジュナは苦い顔をする。

「アリスティア陛下は大陸がヴァルスレンのもと一つに統一されてこそ、真の平和が保たれるというお考えなのよ。でも、今はもう各国が核玉を秘かに手に入れている…… ヴァルスレン一国による支配はもはや終焉が近い……」
「待ってくれ、各国が秘かに核玉を手に入れているだって? どうやって」
「ああ、その話は知らないのね。秘密結社ゼスナムという組織が独自に核玉を開発して、各国に渡しているのよ」

 セフィーネはそう言った。

「秘密結社ゼスナム? 何なんだそりゃ?」
「詳しい実体は掴めていないわ。カノア島から比較的早い時期に枝分かれした組織か、帝国工廠の誰かが裏で核玉を流しているのか……」
「シェルド族の組織なのか?」
「うーん、中核はシェルド族だと思うけど……全員がそうかは分からないわね…… 組織の規模も不明。とにかく、独自に核玉《コア》を開発して、各国に配っていること以外謎なのよ」

 シェルド族の残党がまだいて、独自に核玉を開発している? たしかにそうなれば、ヴァルスレンの武力の優位性は次第になくなっていくだろう……

「父上はこの事はご存じ無いのですか?」
「儂はそのような話聞いたことがないが……」

 ジュナの問いにナザムはそう答える。

「それはこの国が独自に核玉を開発を進めていたから……違いますか?」
「なんと、お主はその事も知っているとは……」
「アリスティア陛下も私が帝国工廠にいるときから将国が核玉を開発していたことはご存じでしたよ」
「……まさか」

 アルベクがアリスティアに初めて会った時、将国が核玉を開発していると疑いつつも、核心には至っていない様子だったが、あれも演技だという事か……

「アリスティア陛下は将国が独自に核玉を開発したり、各国がゼスナムの作った核玉を保持しているのを知っていました。それを危険視して、カノア島の戦いで手に入れた冥王の核玉をもとに、新しい親衛隊を組織したり、禁断の核玉の封印を解除してしようとしているのです。たしかに、禁断の核玉の力をコントロール出来れば無敵ですが、アレは私の先祖でもコントロール出来なかったもの。無謀すぎます……」

 セフィーネは呆れたように言う。

「それで、私は禁断の核玉を開封すべきではないと忠言申し上げましたが、アリスティア陛下は聞く耳持たずでした」
「しかし、実際に使うのはまずいだろうけど、陛下がそんなことをするだろうか?」
「あれには見た者を誘惑し、力に溺れさせる呪いがかけられている。封印を解けば、その力に囚われて、いずれ使わずにはいられなくなる」
「……そんな恐ろしい核玉なのか」

 その話に皆が驚愕する。まるで核玉自体が意思を持っているようだ。

「複数の悪魔の力を宿しているのだもの。ユグシャでさえ、最期はその力の誘惑に負けそうになり、封印したもの。アレは厳重に封じ込めなきゃならないものなのよ」「陛下はそれを知っていても封印を解こうとするのか?」
「ええ、そうよ。あの方には使いこなす自信があるみたいね。そして、やがて私を疎むようになり、核玉の開放を阻止せんとする私を物理的に排除しようとしてきたの」

 セフィーネは溜息をつく。

「そんな……セフィーネは命の危険があってヴァルスレンを出奔したのか……」
「そうよ…… 私は帝国の親衛隊の一人にある日急に襲われて、その場はなんとか転移の魔術で逃げれたけど、もうヴァルスレンには戻れないわ」
「知らなかった……」
「それからは、各地を転々とし、核玉を陛下の手から奪取する方法を考えたり、秘密結社ゼスナムの足取りを追ったりしていたわ。その過程で、ステムセン王家と関りをもって、今はステムセンを拠点にしているの。知り合いのライゼルの生家というのあったしね」

(俺が大学生活を送っている間、セフィーネは一人戦っていたんだな)

「そうだったのか……辛かったろう」
「まあね。ただ、私も不甲斐ない事にゼスナムの尻尾さえ掴めていないわ…… 我ながら情けない」
「俺に協力できることがあったら、遠慮なく言ってくれ…… というか、もっと早く言ってくれれば良かったのに」
「アルベクのことはずっと私の命を狙った親衛隊が監視していたのよ…… ただ、彼は流石に将国へは付いてきていないみたいだから、ようやく会えたという訳」
「気付かなかった…… 俺もすっかり気が緩んでいたな」

 もう平和になって、長い事戦いを忘れていた弊害だなとアルベクは思った。

「あと、本来なら、あなたを巻き込みたくは無かったんだけど…… どうしてもあなたの力が必要なの」
「とりあえずヴァルスレンに戻って陛下を説得してみよう」
「その前に、ステムセンに来てくれない?」
「ステムセンに何かあるのか?」
「竜《ドラゴン》がいるのよ……」

 そう、セフィーネは言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

天才王子、引き篭もる……いや、引き篭もれない

戯言の遊び
ファンタジー
平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」 辺境に飛ばされた“元サラリーマン王子”、引き篭もるつもりが領地再生の英雄に――! 現代日本で社畜生活を送っていた青年・レオンは、ある日突然、 中世ヨーロッパ風の王国「リステリア」の第五王子として転生する。 怠惰で引き篭もり体質なレオンは、父王により“国の厄介払い”として 荒れ果てた辺境〈グレイア領〉の領主を任される。 だが、現代知識と合理的な発想で領内を改革していくうちに、 貧困の村は活気を取り戻し――気づけば人々からこう呼ばれていた。 『良領主様』――いや、『天才王子』と。 領民想いのメイド・ミリア、少女リィナ、そして個性派冒険者たちと共に、 引き篭もり王子のスローライフ(予定)は、今日もなぜか忙しい! 「平穏に暮らしたいだけなのに、なぜ問題が山積みなんだ……!?」 社畜転生王子、引き篭もりたいのに領地がどんどん発展していく! ――働きたくないけど、働かざるを得ない異世界領主譚! こちらは、以前使っていたプロットを再構成して投稿しています 是非、通学や通勤のお供に、夜眠る前のお供に、ゆるりとお楽しみ下さい

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。 追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。 しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。 港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。 イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。 犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。 被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。 追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。 この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。 ・世界観・設定の管理補助 ・プロット段階の壁打ち ・作者による執筆後の校正

処理中です...