魔女は言う。「復讐したい? なら新兵器の実験台になってくれないかしら?」と……  【鎧殻剣記】

熱燗徳利

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第85話 悪魔五将

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 アルベクはジュナを連れて、ロージア宮殿に戻っていた。
 ジュナは皇帝アリスティアがアルベクを殺そうとしたことについて、散々に抗議をし、アリスティアはそれに対して平謝りするしかなかった。

「まあまあ、ジュナ。陛下も反省なされていることだし……」

 アルベクも怒れるジュナをなだめる。

「もう! アルベクはもう少しで死んでいたところですよ!」
「ジュナ、アルベク、ほんとうにすまなく思っている。すべて我の過ちだ……」
「陛下、頭をおあげください。ジュナも怒りを抑えて…… それより、これからの事について話し合いましょう。ね?」

 ジュナは不服そうだったが、仕方なく押し黙る。

「そう、それがいいわ。私も陛下の命令でそこにいるヒュークに殺されそうになったけど、水に流したわ」

 セフィーネが謁見の間に入ってきて、アリスティアの傍に控えるヒュークを見つめる。

「セフィーネさん。その件に関しましては申し訳なく思っております」

 ヒュークはそう言って俯く。

「ヒュークのせいではない。命じた我の責任だ……」
「もうどうでもいいですわ。それより、鎧殻警備隊のカイン隊長とライサーを連れてきました」
「おお、カイン、ライサーよく来てくれた」

 アリスティアは二人に笑いかける。
 
「陛下、勿体ないお言葉…… 鎧殻警備隊、力を尽くします」

 カインは力強く宣言する。

「親衛隊もね」

 セートも他の親衛隊員を引き連れて謁見の間にやってきた。

「セート、久しぶりだな。しかし、でっかくなったなおい」

 ライサーは驚く。セートの身長はアルベクと同じぐらいまでに高くなっていた。

「いや、前会った時もそう言われたよ…… 忘れちゃったの?」
「そうだったか……最近記憶力悪くてな」
「楽しそうなところ悪いけど、お話良いかしら? 私とジュナ様の探知能力でも今のところユリファは見つけられていないわ」

 セフィーネは苦々しそうに言う。

「私も鬼力を高める核玉を身体に入れたのですが、それでも駄目でした……」

 ジュナは将国で彼女用に調整された核玉を手に入れ、鎧核鬼兵となる事が可能となった。もともと強かった彼女の鬼力を最大限に高めるものだが、その力を持ってしてもユリファの居場所は分かっていない。

「ユリファは気配を消すのが上手いのよね。彼女が事を起こす前に何とか捕らえたいのだけど、それは難しそうだわ……」

 セフィーネはため息をついた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ヴァルスレン帝国を裏切った魔女ユリファは、とある廃墟にいた。
 そこにはもうひとり、白く長い髪をもつ女性もいる。彼女はバシュヌ将国の元鬼術衆で、アルベク襲撃に関与しながらも逃げ延びた鬼術師のルフリヤだった。

「ルフリヤ、おまえの逃走を手助けしてやった俺のために、存分に働いてもらうぞ」

 そうユリファは言う。
 
「わかってる。ただ、数日かけて準備したけど、魔術と鬼術、両方の力を合わせても、リウロ・ゴバレルを召喚するのは容易じゃなさそう」
「そうだろうな。やはりまずは配下の悪魔五将から呼び寄せる」
「彼らをコントロール出来る自信はあるの?」

 その問いに、ユリファは笑う。

「ま、契約の交渉しだいだな…… それに俺の目的は奴らを支配することじゃなく、悪魔に世界をぶっ壊してもらうことだ。おまえは本当にいいんだな?」
「私は面白い実験がしたいだけなの。たとえ、それでこの世界が滅びたって……」

 ルフリヤはユリファと違ってこの世界に恨みはない。ただ、自分の鬼術とユリファの魔術でどれ程のことができるか試してみたかったし、その結果として世界が破滅しても構わないと思っていた。

「……そうか。では、始めるぞ」
「うん」

 ユリファは廃墟の地面に巨大な赤い魔法陣を展開する。そこにルフリヤは自身の鬼力とこの世に留まっている無数の魂を集めた。

「闇より生まれし冥府の悪魔たち…… このユリファの名のもとに、地上へ顕現せよ!」

 その言葉と共に魔法陣は眩い光を放つ。すると、魔法陣から声が聞こえてくる。

『……脆弱な人間が我らに何用か?』
「俺は世界を灰燼に帰すために、汝らを呼び寄せた。俺の望みは世界の破滅。地上の有象無象を悉く滅ぼすさまを見せて欲しい」
『……承知……その願い聞き届けた…… 召喚に応じよう』

 魔法陣の光はさらに強くなり、その上から、五体の悪魔が姿を現す。

 深紅の鍛え抜かれた肉体をもち、頭部に二本の角がある悪魔アザム。
  
 女性のような体つきで、昆虫のような複眼に蝶のような羽をもつ悪魔モルフィン。
 
 山羊のような頭に全身に灰色の毛のある悪魔ゴーク。
 
 獅子のような頭部をもち、その体躯を黒い鎧で固めているブレオ。
 
 竜の顔と翼を持つ竜人のような悪魔ドレイクス。

 彼らが冥王リウロ・ゴバレルに仕える。悪魔五将であった。

「ここが地上…… 薄汚いところね。こんなところに召喚するなんて無礼の極み!」

 モルフィンは忌々しそうに言う。

「まあいいじゃないですか。これからすべてが美しい灰になるのですから……」

 ゴークは笑う。

「地上を灰にする前に、まず儂はこの地上の酒が呑みたいのう」

 悪魔ドレイクスは無類の酒好きだった。

「はは、そりゃいいな。で、アザム。どこから攻める?」

 ブレオの問いにアザムは考える。

「そうだな…… 我は以前セフィーネという魔女との契約で、核玉を作るための力を奴に与えた。その中でも最も強いという赤の鎧殻装兵の力を確かめたい」
「アルベク・レーニスか? 奴がどこにいるかわかるか?」

 ユリファは問う。

「ああ、奴は人間の皇帝の宮殿にいる……」
「ほう、まだロージア宮殿にいたか…… なら、俺が転移の術で送ろう」
「……そうか。では、参るぞ、同胞たち」

 アグスの言葉を受けて、悪魔たちとユリファはロージア宮殿に転移する。

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