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その3.助けと安らぎ
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「あ、あの……その……や、やだ……っ」
「怖がらなくていいよ、可愛い子。優しくしてあげる
からね」
「やーーっ!!」
どうして、こんな事に。
どうすればいいんだろう。
俺は混乱する頭で必死に考えようとしていた。
でも、そんな状況で上手く整理出来る訳も。
正解を導き出せる訳でもない。
俺、日暮憐は只今ピンチに陥りかけていた。
事の発端は、今現在のご主人様と言える存在である
芹沢誠がお弁当を忘れた事だ。
よせばいいのに、俺はそんな彼の大学生活とやらが知
りたくて。
届けるという手段を選んでしまった。
でも、誠は同じ学部らしい女の子と学食に行くらしい
ので。
こっそり学食に出向き、弁当を食べてしまおうと思った。
そこで出会ったのが、ぎらつく目をして俺を今にも押し
倒さんとしている目の前の彼だ。
嫌だ、触らないで。
そう言いたいのに、俺は女の子のように声と体が震えて。
つっかえるようにしか話せない。
触れられる箇所が気持ち悪くてたまらない。
誠以外に、触られたくない。
「たす、けて……!」
「無駄だ。助けなんて来ないよ……」
肌が粟立つのを自分でも感じていた。
嗜虐心をそそるのだろうか、目の前の男は嫌らしく笑っ
ている。
押し倒そうと思えばすぐにでも出来るのに。
そうしないのは、きっといたぶりたいからだ。
でも、そうしたいのなら早くして欲しい。
一刻も早く解放されたい。
誠はめちゃくちゃ怒るだろうけれど。
舌を噛んでやりたいくらい気持ち悪いけど。
いろいろな部分に触れられるよりは。
一早く抱かれた方がいい。
一度だけなら耐えてみせるから早くして欲しい。
それでも、俺はこいつになんて心は渡さない。
誠だけに心はあげたいから。
体は屈服しても感じたりなんてするもんか。
とん、と軽く押されただけなのに俺はぐらつい
て簡単に倒されてしまった。
恐怖で体がすくんで体が言う事を利かない。
ごめん、誠――。
「そんなに震えなくても、優しくしてあげるよ。
ほら、服は脱いじゃおうね?」
(――ぅう)
器用にもするすると服を脱がされ、ぽいぽいと
目の前に放られた。
上も下も脱がされた挙句下着まで取られ。
生まれたままの姿を晒す事になってしまう。
舌なめずりするような顔も気持ちが悪いし。
ぎらついた目は明らかに獲物を狙う目で。
怖くて怖くてたまらなかった。
するっ、と肩の部分をくすぐるように撫でられ
る。
くすぐったいだけで、ちっとも感じない。
寧ろ怖気が立つくらいだった。
なのに、こいつはにやにやと笑っている。
やっぱりいたぶるつもりなんだ。
逃げられないと分かっていて。
(や、やっぱりやだーーっ。誠――っ!!)
「泣いてる顔も可愛いね。もっと泣かせてあげ
ようか?」
「――憐! そこにいるのか!?」
「まことぉ!!」
「ちょっと待ってろ……!」
「う、嘘だろ……? どうしてここが……?」
胸元に手が伸びた瞬間、俺は心の中で絶叫し
ていた。
ぞわぞわと肌が粟立ちたまらない。
もちろん、感じている訳じゃないし。
期待なんてこれっぽっちもしてない。
こいつに触られて蹂躙されるなんてやっぱり嫌
だ。
心だけは誠にしか明け渡しはしない、と彼の名
を心で呼ぶ。
でも、なんでいるんだよ誠。
なんで、声に出してないのに通じるんだよ。
ほっとしてつい大きな声で叫んでいた。
誠は、来てくれた。
俺を助けに。
さすがに不味いと思ったのか、男は俺から離れ
て顔を青白く染めてしまっていた。
がたんっ、と勢い良く扉が滑り落ちて来る。
自分が裸である事も忘れ、俺はさっきの女の子
と共に飛び込んで来た誠に抱き着いた。
泣いて泣いて。思い切り泣いた。
目が潰れそうなくらい。ひりひりと痛くなるくら
いには。
無事でよかった、とほっとした様子の誠の声は
いつももより柔らかく優しかった。
「――憐。ちょっとおいで……」
「ほえ?」
「いいから、おいで!」
「は、はい……」
「まずそこに正座!!」
「……はい」
さっきの女の子、実は誠の従妹ちゃんだった
らしい。
しかも俺の事も誠から聞いて知ってたみたい
だし。
岡崎真子って名前でしかも恋人(女性)がいて、
そういう関係じゃないからね~と釘を刺された。
見た目に反した怪力なのか、青ざめて動かなく
なった例の男を引きずるように教授室に行って
しまったので。
俺は手早く服を着せられ、誠にお姫様抱っこさ
れて誠のマンションへと戻って来た。
シャワー浴びて来な、と命令するように有無を言
わさぬ口調の誠。
にこにこしているんだけども、非常に怖くて。
大人しくシャワーを浴びて来たんだけど。
そのまま正座、って言われて正座させられた。
別に汚れてなかったんだけど、服は奴に触られた
からって言われて新しい服に変更させられた。
助かったのは良かったんだけど、誠怒ってるよ、ね?
きついお仕置きされそうで体が震えた。
「なんで、憐はあんな奴に着いて行ったのかな?」
「え、えっと……それは……」
「危ないって分からなかった? 僕が行かなかったら
どうなってたと思う?」
「だ、だって……誠が困るって思って」
「へぇ、俺のせいなんだ。じゃあ反省してないね。
憐はちっとも」
「ち、ちが……っ。そういう訳じゃ……っ」
「来なさい!」
「わ……っ!?」
俺は正座になれていない。
ほんの少しさせられただけで、早くも痺れるような
痛みが足に来始めた。
ヤバイな、これ長くは持たないぞ?
でも、真剣な顔をしている誠の前でそれを言うの
が怖い。
大人しく正座のままでいるしかなかった。
まだ、誠は俺に対して怒っているらしい。
懇々とお説教を繰り出して来るので、俺はもじも
じと落ち着かない気分にさせられた。
でも、俺にだって言い分はある。
誠を困らせたくはなかったし。
誠のためだ、って本気で思ったんだ。
その事を弁明するも、ぴくりと誠の眉が軽く跳ね
る。
僕のせいか、といきなり言って来た。
ちょっと待て、そんな事は一言も言っていない。
しかも、反省していないと言われてぐいっと腕を引
っぱられた。
そうなると、バランスが悪くなった俺は正座したま
まの誠の膝へと招かれる羽目になる。
って、まさかこの体勢――!?
ばちぃーん!
「いっだあああっ!?」
いきなり始まったお尻ぺんぺんに、俺は悲鳴を上げ
る。
服の上からなのにめちゃくちゃ痛い。
1発でもうひりひりし出していた。
しかも、服の上からだったのはそれで終わり。
ずるっ、とズボンごと下着を下ろされて。
すうすうした空気をお尻に感じて震えあがった。
そんな事、日常的にされた事なんてないし怖すぎる。
それに、小さい子にするみたいにお尻を剥き出しに
されるなんて恥ずかしい。
いやだいやだと首を振るも、誠は許してなんてくれ
ないみたいだ。
手が振りあがり、びくっと俺は目を閉じるしかなかっ
た。
ばちん! ばちん! びし! びし! びし!
ばちん! ばちん! びし! びし! びし!
ばちん! ばちん! びし! びし! びし!
ばちん! ばちん! びし! びし! びし!
ばちん! ばちん! びし! びし! びし!
ばちん! ばちん! びし! びし! びし!
「い、いたいいたいっ! 止めてよ、誠ぉ!」
「まだお仕置きは終わってないから下ろさないよ。
憐、お前本当に自分が何したか分かってるのか?
僕がいなかったら今頃危なかったんだぞ!?」
「うぅ……」
「――反省するまで泣いていろ」
お尻ぺんぺんなんて、子供の時にすらされなかっ
たのに。
しかも誠の馬鹿力でぶたれる訳だから痛すぎる。
すぐに俺の声は悲鳴に代わりぎゅっと誠の服の袖
を握ってしまった。
絶対、もうお尻腫れ上がってるって。
でも、誠はちっとも止めてくれない。
耳に痛いお説教と共にぴしゃりと叱って来る。
確かに、言っている事は事実だし。
誠がいなければ今頃襲われていた、けどさ。
うなだれたようにぼやくも、誠はまた手を振り上げ
る。
反省するまで泣いてろ、なんて怖すぎた。
どうしたら許してもらえるんだろう。
躾けを受けた事のない俺にはまるで分らなかった。
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
「ご、ごめんなさいーーっ。もう、危ない事しませんーーっ」
「反省したか?」
「し、したぁ……っ。ぐす……っ」
「じゃあ、お仕置きは終わりだ。おいで……」
「わあぁん、誠ぉ!!」
「よしよし、痛かったな憐。よく頑張った」
「えぐ……っ、ふええんーーっ」
「憐。いい子いい子……」
「うわーん、誠が来てくれて良かったよぉ」
ついには、大声を上げながら俺は泣き叫んだ。
もういっぱいいっぱいで、自分がなんて言ったのかも分から
ないくらい。
でも反省していたのは確かだ。
だって、誠にあんなに心配をかけてしまった。
あんな男に着いて行ったから怖い想いをした。
誠が怒るのも無理はない。
そっ、と誠が俺を抱き直すように膝に置く。
今度は腹這いじゃなく、ちょうど座らせるような恰好だ。
許してくれたんだ、って思うと嬉しくて。
怖かったさっきの想いも思い出して俺は誠にすがった。
もう怒ってないらしく、誠はよしよしと俺の頭を撫でてくれる。
子供扱いされるように髪や手にキスをされても、誠なら気持
ち悪くないし。
とても心地良くて甘く感じてしまいそうだった。
「――憐、お腹空いたろう? どこかで食べてく?」
「うん……お腹空いた」
「何が食べたい?」
「誠と一緒ならなんでもいい」
「可愛いヤツだな……よしよし」
「ん……っ」
すっかり冷めたお弁当を食べる気持ちにはなれず。
誠がどこかで食べて行くかと聞いて来たので、俺は小さく頷
いた。
いろいろあったので、もちろんお腹は空いている。
でも、こういう時何が食べたいかなんて分からない。
っていうか、料理を出す店を自分で選んだ事はないし。
連れて行かれるばかりだったから詳しくない。
それに、誠とならどこでもご馳走だった。
ぼそりと俺が呟くと、誠が頭をよしよしと撫でて来る。
やっぱり、俺は誠になら何をされても嫌じゃない。
好き、なんだろうな誠の事が。
普通の大学生ならばファミレスかカフェへ行くのだろう。
しかし、芹沢コーポレーションの会長の孫息子の誠は違うらし
かった。
俺が連れて行かれたのは、まずは一流の高価そうな衣服が揃
ったブティックで。
そこで誠ともども選んでもらった衣服に着替えさせられ。
そして、入った事もない超高級レストランに連れて来られた。
「こっちのコースと、後そちらのコースを」
「かしこまりました。お飲み物は何にいたしますか?」
「俺はスパークリングウォーターを。憐は……?」
「ま、誠とお、同じので……」
「スパークリングウォーターを二つ」
「はい。では、先にお飲み物をお持ちしますね」
ふ、フランス料理なんて俺、初めてなんだけどぉ!?
目の前に並べられるナイフとフォーク、どう使えばいいか分か
らないよぉ。
とりあえず、すぐに出て来たワイングラスに入った炭酸水を一
口飲んで泣きそうになっていると。
教えてあげるから、と誠に苦笑されてしまった。
誠と俺のコースはそれぞれ違うらしい。
俺のが砂肝とポテトのコンフィ、誠のが生ハムとキャベツのマリ
ネ。
本来はマナー違反かもしれないが、誠は取り皿を貰い半分ずつ
料理を取り分けてシェアした。
誠が手前側から取る、とか教えてくれたし。
いろんな物が食べられるのは素直に嬉しい。
うん、すっごく美味しいなぁ。誠は優しいし楽しい。
俺達は食べ盛りだけあって食べるスピードも速く。
誠がお得意さんだけあってどんどん料理が運ばれて来た。
芹沢コーポレーションぱないっす。
さらに、誠にこの店美味しいから憐をぜひ連れて来たかった、な
んて言われてしまい。
顔を真っ赤にした俺は有頂天になっていた。
「あ~お腹いっぱい……」
「憐が喜んでくれてよかったよ」
「あ、りがと誠……」
「また、来ような……」
料理はどれも美味しかった。
二品目は誠がかぼちゃのポタージュで俺のが海老のビスク。
三品目は誠が鯛のポアレで俺が鱈のバター炒め。
四品目は誠が牛肉煮込みのブフブルギニュンで、俺がチキンの
ワインビネガー煮込み。
さらに、デザートには誠がバスク風チョコケーキで俺が林檎パイ。
どれもこれも分け合って食べたよぉ。
さすがにお腹がいっぱいになり、眠くてとろとろしながら歩いて
いた。
誠がタクシー使う?って言って来たけど。
そこまでさせるの悪いし。
少しくらい歩かないと太りそう。
興奮した熱も冷ましたかったし、歩きたいと言った。
憐、大丈夫?と誠が抱き寄せてくれる。
人通りがあるというのに、いきなりキスされたから真っ赤になって
しまった。
「――憐、おいで。お仕置きの続きするから」
「ふええっ!? だ、だってもう叩かないって!?」
「お尻ぺんぺんは終わり。でも、あんなのだけでお仕置きになる
訳ないだろ。仕上げに、くすぐりマシーンでのこちょこちょしてや
るよ」
「ふえーん、いやだぁ!!」
「嫌なら、もう一回お尻ぺんぺんからやり直す?」
「分かったからお尻ぺんぺんはやめてぇ!!」
そして、誠と俺のおうちに帰って来た俺達。
折角、お腹いっぱいで眠くてお昼寝しようと思ったのに。
誠ったら、お仕置きの続きするなんて言って来た。
また痛い事されるのかと、俺はまだ少し痛むお尻を服の上から
擦る。
くすっと笑ってお尻ぺんぺんはもうしない、って言う誠。
でも、仕上げだってくすぐりマシーンでこちょこちょするって。
実は、くすぐられるのはそう嫌でもない。
誠にされると甘く痺れるような感覚が全身を襲い。
すぐに感じてしまい耐え切れないほどだ。
でも、くすぐりマシーンは嫌。
最初にされた時、くすぐったすぎて泣きそうになったもん。
っていうか泣いてたかも。
でもでも、お尻ぺんぺんからやり直すのも嫌。
となったら、もうくすぐりの刑を受けるしかなかった。
うぅ……俺が寝れるのはいつになるんだよぉ。
「あっはははは……っ、やだぁ……!
もう許してぇ~、きゃはは……っ!」
「はい、まだ駄目。もう少し我慢」
「わーん、誠ぉ!!」
「甘えても駄目~。次言ったらお尻ぺんぺんからやり直し」
「そんああぁ! ひゃんっ、そこやだぁぁ!!」
やっぱり、誠にくすぐられるならともかく。
全身を羽ヤマジックハンドにくすぐられるマシーンは苦手
だ。
泣き喚きながらひぃひぃ叫んでしまった。
誠も泣き言を言っても止めてくれないけど。
機械はさらに無慈悲で、胸の蕾や足の間や脇の下など俺
の弱点を激しくくすぐって来る。
しかも止める気配などなく。
そりゃあ、機械は心なんてないから無理もないが。
誠に対して哀願したり泣き言を言ったりしてみたけれど。
どれも失敗に終わりがくりと俺は肩を落とす。
お仕置き、って割とは凄く楽しそうな誠。
さらに次言ったらお尻ぺんぺんからやり直す、って言われ。
泣く泣くくすぐられ続けるしかなくなってしまった。
それでも、ここにいられる事。誠のそばにいられる事。
全てが愛おしく思えて嬉しくなる。
――まあ、欲を言えば激しいこちょこちょは嫌だけども。
「怖がらなくていいよ、可愛い子。優しくしてあげる
からね」
「やーーっ!!」
どうして、こんな事に。
どうすればいいんだろう。
俺は混乱する頭で必死に考えようとしていた。
でも、そんな状況で上手く整理出来る訳も。
正解を導き出せる訳でもない。
俺、日暮憐は只今ピンチに陥りかけていた。
事の発端は、今現在のご主人様と言える存在である
芹沢誠がお弁当を忘れた事だ。
よせばいいのに、俺はそんな彼の大学生活とやらが知
りたくて。
届けるという手段を選んでしまった。
でも、誠は同じ学部らしい女の子と学食に行くらしい
ので。
こっそり学食に出向き、弁当を食べてしまおうと思った。
そこで出会ったのが、ぎらつく目をして俺を今にも押し
倒さんとしている目の前の彼だ。
嫌だ、触らないで。
そう言いたいのに、俺は女の子のように声と体が震えて。
つっかえるようにしか話せない。
触れられる箇所が気持ち悪くてたまらない。
誠以外に、触られたくない。
「たす、けて……!」
「無駄だ。助けなんて来ないよ……」
肌が粟立つのを自分でも感じていた。
嗜虐心をそそるのだろうか、目の前の男は嫌らしく笑っ
ている。
押し倒そうと思えばすぐにでも出来るのに。
そうしないのは、きっといたぶりたいからだ。
でも、そうしたいのなら早くして欲しい。
一刻も早く解放されたい。
誠はめちゃくちゃ怒るだろうけれど。
舌を噛んでやりたいくらい気持ち悪いけど。
いろいろな部分に触れられるよりは。
一早く抱かれた方がいい。
一度だけなら耐えてみせるから早くして欲しい。
それでも、俺はこいつになんて心は渡さない。
誠だけに心はあげたいから。
体は屈服しても感じたりなんてするもんか。
とん、と軽く押されただけなのに俺はぐらつい
て簡単に倒されてしまった。
恐怖で体がすくんで体が言う事を利かない。
ごめん、誠――。
「そんなに震えなくても、優しくしてあげるよ。
ほら、服は脱いじゃおうね?」
(――ぅう)
器用にもするすると服を脱がされ、ぽいぽいと
目の前に放られた。
上も下も脱がされた挙句下着まで取られ。
生まれたままの姿を晒す事になってしまう。
舌なめずりするような顔も気持ちが悪いし。
ぎらついた目は明らかに獲物を狙う目で。
怖くて怖くてたまらなかった。
するっ、と肩の部分をくすぐるように撫でられ
る。
くすぐったいだけで、ちっとも感じない。
寧ろ怖気が立つくらいだった。
なのに、こいつはにやにやと笑っている。
やっぱりいたぶるつもりなんだ。
逃げられないと分かっていて。
(や、やっぱりやだーーっ。誠――っ!!)
「泣いてる顔も可愛いね。もっと泣かせてあげ
ようか?」
「――憐! そこにいるのか!?」
「まことぉ!!」
「ちょっと待ってろ……!」
「う、嘘だろ……? どうしてここが……?」
胸元に手が伸びた瞬間、俺は心の中で絶叫し
ていた。
ぞわぞわと肌が粟立ちたまらない。
もちろん、感じている訳じゃないし。
期待なんてこれっぽっちもしてない。
こいつに触られて蹂躙されるなんてやっぱり嫌
だ。
心だけは誠にしか明け渡しはしない、と彼の名
を心で呼ぶ。
でも、なんでいるんだよ誠。
なんで、声に出してないのに通じるんだよ。
ほっとしてつい大きな声で叫んでいた。
誠は、来てくれた。
俺を助けに。
さすがに不味いと思ったのか、男は俺から離れ
て顔を青白く染めてしまっていた。
がたんっ、と勢い良く扉が滑り落ちて来る。
自分が裸である事も忘れ、俺はさっきの女の子
と共に飛び込んで来た誠に抱き着いた。
泣いて泣いて。思い切り泣いた。
目が潰れそうなくらい。ひりひりと痛くなるくら
いには。
無事でよかった、とほっとした様子の誠の声は
いつももより柔らかく優しかった。
「――憐。ちょっとおいで……」
「ほえ?」
「いいから、おいで!」
「は、はい……」
「まずそこに正座!!」
「……はい」
さっきの女の子、実は誠の従妹ちゃんだった
らしい。
しかも俺の事も誠から聞いて知ってたみたい
だし。
岡崎真子って名前でしかも恋人(女性)がいて、
そういう関係じゃないからね~と釘を刺された。
見た目に反した怪力なのか、青ざめて動かなく
なった例の男を引きずるように教授室に行って
しまったので。
俺は手早く服を着せられ、誠にお姫様抱っこさ
れて誠のマンションへと戻って来た。
シャワー浴びて来な、と命令するように有無を言
わさぬ口調の誠。
にこにこしているんだけども、非常に怖くて。
大人しくシャワーを浴びて来たんだけど。
そのまま正座、って言われて正座させられた。
別に汚れてなかったんだけど、服は奴に触られた
からって言われて新しい服に変更させられた。
助かったのは良かったんだけど、誠怒ってるよ、ね?
きついお仕置きされそうで体が震えた。
「なんで、憐はあんな奴に着いて行ったのかな?」
「え、えっと……それは……」
「危ないって分からなかった? 僕が行かなかったら
どうなってたと思う?」
「だ、だって……誠が困るって思って」
「へぇ、俺のせいなんだ。じゃあ反省してないね。
憐はちっとも」
「ち、ちが……っ。そういう訳じゃ……っ」
「来なさい!」
「わ……っ!?」
俺は正座になれていない。
ほんの少しさせられただけで、早くも痺れるような
痛みが足に来始めた。
ヤバイな、これ長くは持たないぞ?
でも、真剣な顔をしている誠の前でそれを言うの
が怖い。
大人しく正座のままでいるしかなかった。
まだ、誠は俺に対して怒っているらしい。
懇々とお説教を繰り出して来るので、俺はもじも
じと落ち着かない気分にさせられた。
でも、俺にだって言い分はある。
誠を困らせたくはなかったし。
誠のためだ、って本気で思ったんだ。
その事を弁明するも、ぴくりと誠の眉が軽く跳ね
る。
僕のせいか、といきなり言って来た。
ちょっと待て、そんな事は一言も言っていない。
しかも、反省していないと言われてぐいっと腕を引
っぱられた。
そうなると、バランスが悪くなった俺は正座したま
まの誠の膝へと招かれる羽目になる。
って、まさかこの体勢――!?
ばちぃーん!
「いっだあああっ!?」
いきなり始まったお尻ぺんぺんに、俺は悲鳴を上げ
る。
服の上からなのにめちゃくちゃ痛い。
1発でもうひりひりし出していた。
しかも、服の上からだったのはそれで終わり。
ずるっ、とズボンごと下着を下ろされて。
すうすうした空気をお尻に感じて震えあがった。
そんな事、日常的にされた事なんてないし怖すぎる。
それに、小さい子にするみたいにお尻を剥き出しに
されるなんて恥ずかしい。
いやだいやだと首を振るも、誠は許してなんてくれ
ないみたいだ。
手が振りあがり、びくっと俺は目を閉じるしかなかっ
た。
ばちん! ばちん! びし! びし! びし!
ばちん! ばちん! びし! びし! びし!
ばちん! ばちん! びし! びし! びし!
ばちん! ばちん! びし! びし! びし!
ばちん! ばちん! びし! びし! びし!
ばちん! ばちん! びし! びし! びし!
「い、いたいいたいっ! 止めてよ、誠ぉ!」
「まだお仕置きは終わってないから下ろさないよ。
憐、お前本当に自分が何したか分かってるのか?
僕がいなかったら今頃危なかったんだぞ!?」
「うぅ……」
「――反省するまで泣いていろ」
お尻ぺんぺんなんて、子供の時にすらされなかっ
たのに。
しかも誠の馬鹿力でぶたれる訳だから痛すぎる。
すぐに俺の声は悲鳴に代わりぎゅっと誠の服の袖
を握ってしまった。
絶対、もうお尻腫れ上がってるって。
でも、誠はちっとも止めてくれない。
耳に痛いお説教と共にぴしゃりと叱って来る。
確かに、言っている事は事実だし。
誠がいなければ今頃襲われていた、けどさ。
うなだれたようにぼやくも、誠はまた手を振り上げ
る。
反省するまで泣いてろ、なんて怖すぎた。
どうしたら許してもらえるんだろう。
躾けを受けた事のない俺にはまるで分らなかった。
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
「ご、ごめんなさいーーっ。もう、危ない事しませんーーっ」
「反省したか?」
「し、したぁ……っ。ぐす……っ」
「じゃあ、お仕置きは終わりだ。おいで……」
「わあぁん、誠ぉ!!」
「よしよし、痛かったな憐。よく頑張った」
「えぐ……っ、ふええんーーっ」
「憐。いい子いい子……」
「うわーん、誠が来てくれて良かったよぉ」
ついには、大声を上げながら俺は泣き叫んだ。
もういっぱいいっぱいで、自分がなんて言ったのかも分から
ないくらい。
でも反省していたのは確かだ。
だって、誠にあんなに心配をかけてしまった。
あんな男に着いて行ったから怖い想いをした。
誠が怒るのも無理はない。
そっ、と誠が俺を抱き直すように膝に置く。
今度は腹這いじゃなく、ちょうど座らせるような恰好だ。
許してくれたんだ、って思うと嬉しくて。
怖かったさっきの想いも思い出して俺は誠にすがった。
もう怒ってないらしく、誠はよしよしと俺の頭を撫でてくれる。
子供扱いされるように髪や手にキスをされても、誠なら気持
ち悪くないし。
とても心地良くて甘く感じてしまいそうだった。
「――憐、お腹空いたろう? どこかで食べてく?」
「うん……お腹空いた」
「何が食べたい?」
「誠と一緒ならなんでもいい」
「可愛いヤツだな……よしよし」
「ん……っ」
すっかり冷めたお弁当を食べる気持ちにはなれず。
誠がどこかで食べて行くかと聞いて来たので、俺は小さく頷
いた。
いろいろあったので、もちろんお腹は空いている。
でも、こういう時何が食べたいかなんて分からない。
っていうか、料理を出す店を自分で選んだ事はないし。
連れて行かれるばかりだったから詳しくない。
それに、誠とならどこでもご馳走だった。
ぼそりと俺が呟くと、誠が頭をよしよしと撫でて来る。
やっぱり、俺は誠になら何をされても嫌じゃない。
好き、なんだろうな誠の事が。
普通の大学生ならばファミレスかカフェへ行くのだろう。
しかし、芹沢コーポレーションの会長の孫息子の誠は違うらし
かった。
俺が連れて行かれたのは、まずは一流の高価そうな衣服が揃
ったブティックで。
そこで誠ともども選んでもらった衣服に着替えさせられ。
そして、入った事もない超高級レストランに連れて来られた。
「こっちのコースと、後そちらのコースを」
「かしこまりました。お飲み物は何にいたしますか?」
「俺はスパークリングウォーターを。憐は……?」
「ま、誠とお、同じので……」
「スパークリングウォーターを二つ」
「はい。では、先にお飲み物をお持ちしますね」
ふ、フランス料理なんて俺、初めてなんだけどぉ!?
目の前に並べられるナイフとフォーク、どう使えばいいか分か
らないよぉ。
とりあえず、すぐに出て来たワイングラスに入った炭酸水を一
口飲んで泣きそうになっていると。
教えてあげるから、と誠に苦笑されてしまった。
誠と俺のコースはそれぞれ違うらしい。
俺のが砂肝とポテトのコンフィ、誠のが生ハムとキャベツのマリ
ネ。
本来はマナー違反かもしれないが、誠は取り皿を貰い半分ずつ
料理を取り分けてシェアした。
誠が手前側から取る、とか教えてくれたし。
いろんな物が食べられるのは素直に嬉しい。
うん、すっごく美味しいなぁ。誠は優しいし楽しい。
俺達は食べ盛りだけあって食べるスピードも速く。
誠がお得意さんだけあってどんどん料理が運ばれて来た。
芹沢コーポレーションぱないっす。
さらに、誠にこの店美味しいから憐をぜひ連れて来たかった、な
んて言われてしまい。
顔を真っ赤にした俺は有頂天になっていた。
「あ~お腹いっぱい……」
「憐が喜んでくれてよかったよ」
「あ、りがと誠……」
「また、来ような……」
料理はどれも美味しかった。
二品目は誠がかぼちゃのポタージュで俺のが海老のビスク。
三品目は誠が鯛のポアレで俺が鱈のバター炒め。
四品目は誠が牛肉煮込みのブフブルギニュンで、俺がチキンの
ワインビネガー煮込み。
さらに、デザートには誠がバスク風チョコケーキで俺が林檎パイ。
どれもこれも分け合って食べたよぉ。
さすがにお腹がいっぱいになり、眠くてとろとろしながら歩いて
いた。
誠がタクシー使う?って言って来たけど。
そこまでさせるの悪いし。
少しくらい歩かないと太りそう。
興奮した熱も冷ましたかったし、歩きたいと言った。
憐、大丈夫?と誠が抱き寄せてくれる。
人通りがあるというのに、いきなりキスされたから真っ赤になって
しまった。
「――憐、おいで。お仕置きの続きするから」
「ふええっ!? だ、だってもう叩かないって!?」
「お尻ぺんぺんは終わり。でも、あんなのだけでお仕置きになる
訳ないだろ。仕上げに、くすぐりマシーンでのこちょこちょしてや
るよ」
「ふえーん、いやだぁ!!」
「嫌なら、もう一回お尻ぺんぺんからやり直す?」
「分かったからお尻ぺんぺんはやめてぇ!!」
そして、誠と俺のおうちに帰って来た俺達。
折角、お腹いっぱいで眠くてお昼寝しようと思ったのに。
誠ったら、お仕置きの続きするなんて言って来た。
また痛い事されるのかと、俺はまだ少し痛むお尻を服の上から
擦る。
くすっと笑ってお尻ぺんぺんはもうしない、って言う誠。
でも、仕上げだってくすぐりマシーンでこちょこちょするって。
実は、くすぐられるのはそう嫌でもない。
誠にされると甘く痺れるような感覚が全身を襲い。
すぐに感じてしまい耐え切れないほどだ。
でも、くすぐりマシーンは嫌。
最初にされた時、くすぐったすぎて泣きそうになったもん。
っていうか泣いてたかも。
でもでも、お尻ぺんぺんからやり直すのも嫌。
となったら、もうくすぐりの刑を受けるしかなかった。
うぅ……俺が寝れるのはいつになるんだよぉ。
「あっはははは……っ、やだぁ……!
もう許してぇ~、きゃはは……っ!」
「はい、まだ駄目。もう少し我慢」
「わーん、誠ぉ!!」
「甘えても駄目~。次言ったらお尻ぺんぺんからやり直し」
「そんああぁ! ひゃんっ、そこやだぁぁ!!」
やっぱり、誠にくすぐられるならともかく。
全身を羽ヤマジックハンドにくすぐられるマシーンは苦手
だ。
泣き喚きながらひぃひぃ叫んでしまった。
誠も泣き言を言っても止めてくれないけど。
機械はさらに無慈悲で、胸の蕾や足の間や脇の下など俺
の弱点を激しくくすぐって来る。
しかも止める気配などなく。
そりゃあ、機械は心なんてないから無理もないが。
誠に対して哀願したり泣き言を言ったりしてみたけれど。
どれも失敗に終わりがくりと俺は肩を落とす。
お仕置き、って割とは凄く楽しそうな誠。
さらに次言ったらお尻ぺんぺんからやり直す、って言われ。
泣く泣くくすぐられ続けるしかなくなってしまった。
それでも、ここにいられる事。誠のそばにいられる事。
全てが愛おしく思えて嬉しくなる。
――まあ、欲を言えば激しいこちょこちょは嫌だけども。
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