吸血鬼のオレと人間のあいつの主従契約

村雨

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その2.待っていた甘々な調教

「いやーーっ、やめろ馬鹿バカぁーーっ!」
「逃げられないよ、ヒュー。大人しくしなさい」
「お前なんて嫌いだ……!」
「追い出されたら困るのはヒューじゃないのか?」
「くっ……!」

くやしいものの、オレをここに置いている事で彼に
利点があるのは家事全般をやってくれる相手がい
るという事だけだ。
血は取られるし食費はかからないとしても、様々
な光熱費等はオレの分もかかるし。
本当に追い出されたら困るのはオレの方、という
のも正しい。
オレはただの居候なのだから。
オレは実は吸血鬼である。
名前はヒューバート・クライン・トールズ。
長いからか、目の前にいる彼――北斗星夜ほくとせいやはヒュ
―と呼んでいるが。
ちなみに星夜は人間でオレの血の補給のための相
手という訳だ。
それ以上でもそれ以下でもない。
オレは彼の事をどうとも想っていない。
しかし、面白がってかそれとも気に入られたか。
毎夜毎夜押し倒され、くすぐられたり愛撫あいぶされたり
といやらしい事ばかりされていた。

「ヒュー、おいで」
「……~~っ!!」

でも、嫌じゃない。
それどころか、凄く彼のそばにいるのが心地いい。
でも、素直に甘えるにはオレのプライドが邪魔をし
た。
オレは彼よりかなり年上の吸血鬼だ。
大分年月を生きているし若輩者にいいようにされる
なんて、とついつい思ってしまう。
それでも、優位なのは彼の方なのは確かだ。
ここは彼の家でありオレはただの居候。
いつでも追い出せるし、そうしたらオレは血を供給し
てくれる相手も住む場所も失い。
ただ野垂れ死ぬか日射病になって朽ちるかだけであ
る。
真正の吸血鬼ではないオレの血はクォーターより薄い
ため、太陽の熱で蒸発したり消えたりする事はない。
星夜の膝の上に乗せられ、猫のように頭を撫でられる
のが気持ちいいなんて。
恥ずかしすぎる。
絶対に一族の誰かには言えない。
ここにずっといられたら、なんて願ってしまう事さえも。
星夜の血は極上中の極上。
今まで味わった事もない美味だ。
変な食生活をしていた割には。
せいぜい家事やらなんやらに精を出し、少しでも恩返
しするか。

「ヒュー、先に食事を取るかい?」
「ん……そうさせてもらう」
「おいで、ヒュー」
「ん……」

もちろん、オレの食事は人間の血液を飲む事だ。
別に動物の血でもいいんだが、少し匂いがきついた
め好みではない。
オレは星夜のような極上の血を好むグルメだからな。
誰の血でもいい訳ではない。
抵抗ていこうに手を広げた星夜に抱き着き、首筋に牙を立
てる。
痛いのかそれともかゆかったりこそばゆかったりするの
か。
星夜は軽く眉を顰めたが大人しくしていた。
オレは大食漢ではないため、適量飲むと吸血を止める。
牙を離すと、彼の首筋にはオレのつけた穴が開き微か
に血がついていた。
もったいないと感じ、オレはそれをめ取ろうとする。
が、今度はこっちの番だとばかりに星夜に押し倒された。
もぞもぞと胸の辺りを手がくすぐるように触れ、びくっと
なる。
血の対価だというようにたっぷりくすぐられ、あえがされ。
結局、オレが彼の食事の支度をするのにかなりかかった。

「いただきます……」
「どうぞ」
「んっ。美味うまい……ヒューの料理は最高だな」
「そりゃどうも」
「すねるなよ。いっぱい愛してやっただろ?」
「うるさい黙れ馬鹿。お前なんて嫌いだ」
反抗はんこう的なところがまた可愛い」
「ひやぁ!? ちょっ、やだ……ああーーっ!!」

ちなみに今日のメニューはチーズたっぷりのドリア。
そしてトーストしたカリカリのフランスパンだ
昨日の残りの細かい野菜が入ったコンソメスープ
に、解凍したライスを入れとろけるチーズを載せ
てオーブンで焼いた一品である。
それにしても、最近はめちゃくちゃ便利だよなぁ。
羽釜はがまで炊かなくても炊飯器とかいう電化製品は
あるし。
冷凍ライスやパンの上に載せて焼くだけ、みたい
な簡易チーズさえある。
表情をほころばせ、流し目で見て来る星夜につんとし
た対応を貫くオレ。
ほだされてたまるか。
血の供給相手&家主でなければ、料理や家事なん
てしてやってないし。
ましてや好意なんて持っていない。
そう思ってにらんでやるのに、一端スプーンを置いた
星夜はちゅっと首筋にキスをしたり。
マントの上から胸元をくすぐったりと悪戯して来る。
つねるようにきゅっ、と胸の蕾をままれついには
またオレは悲鳴ひめいを上げさせられる羽目になった。

「ご馳走ちそう様でした」
「うぅ……お粗末様」
「いろんな意味でご馳走様、ヒュー」
「く、くそぅ……」
「そんなところで寝ていないで、お見送りしてくれ
よ。愛するヒュー」
「だ、誰のせいだ。愛する、なんて歯の浮く事言っ
て……」
「あーあ。仕事行くの止めようかなぁ」
「わ、分かったよ! いってらっしゃい、星夜!!」

涼しい顔で手を合わせる星夜。
こっちはぐったりと床に伏しているというのに。
あれから、胸の蕾をくすぐってくるわ。
首筋を舐められるわ。
挙句の果てに、下を脱がされそうになったけどなん
とかご飯冷めるから!と抵抗した。
……疲れる事この上ない。
なのに、からかってくるし。
愛する、とか歯の浮くような台詞言って来るし。
本当になんなんだよ、お前は。
しかも仕事行くの止めようか、とかお前は子供か。
仕方なく、ちゅっ、と頬にキスしながらお見送りする。
ようやく、にやにやと笑いながら星夜は出て行った。

「なんなんだよ……もう」

ベッドにぐったりと身を預ける。
部屋の中の物は、好きに使えと星夜に言われていた。
なんとなく星夜と一緒に過ごしているものの、ここは
一応オレの部屋だ。
まあ与えたのは主である星夜だし。
彼がどこで過ごそうが家主であるので自由だ。
疲れるからほっとした半面。
寂しさを感じてしまうのは何故なんだろう。
慌ててオレは首を振ってそれを打ち消した。
寂しいなんてあるもんか。
星夜と一緒に暮らすようになって、気持ちは休まらな
いし。
疲れてばかりなんだからな。
少し、寝ようと布団の中にもぞもぞもぐり込む。
自分で思うよりも疲れていたらしく、ことんと眠りに落
てししまうオレだった。

「……ヒュー。ヒュー……! 大丈夫か!?」
「ん……? うう、ん……?」
「起きろ……起きてくれ!」
「な、なんだ……!? オレ、何かしたか……!?」
「あ……っ」

あれから、どのくらいの時間が経ったんだろう。
ここに来てから、朝日に弱いオレのためにカーテンは
常に閉ざされていて。
今が何時なのか。
昼なのか夜なのかも分からない。
突然、激しく揺り動かされオレはぎょっとした。
うっすらと目を開くと、そこには何故か星夜がいる。
仕事へ行ったんじゃなかったんだろうか。
珍しく焦ったような顔をしているのは何故なんだろう。
さっ、とオレは青ざめて震えた。
何か知らない間にしでかしていたのかもしれない。
じゃなきゃ、こいつがこんな必死な顔になる訳がない。

「よかった……」
「――へ?」
「全く動かないから、死んだかと思った」
「死ぬわけないだろ……オレだって吸血鬼の血を引い
てるんだからそれなりに強い」
「そうか……」
(き、きまずいな……。でも、心配してくれたのか。
少し、嬉しいな……)
「何、にやにやしてる」
「ふぁっ!? い、いひゃいーーっ!!」

どうやら、心配してくれていただけらしい。
吸血鬼に詳しくないだろうから、仕方がないけれど。
太陽の光を浴びてもいなくて。
十字架を当てられてもいなくて。
そんな状況で死ぬ訳がないのにな。
ちなみに、オレはにんにくの匂いは平気だ。
吸血鬼とはいってもにんにくだけが苦手という訳では
なく、寧ろオレが苦手なのは人参の匂いだ。
まあ星夜には言っていないが。
なんとなく、心配された事が嬉しくてにやけてしまう
と。
頬を思い切り両側からつねられた。
――めちゃくちゃ痛かった。

「悪かったって。おわびにたくさん血を吸ってもいいか
ら」
「いや、オレは小食だし」
「じゃあ飯を作る」
「それだけは絶対にやめろ! ってかオレは元々、
そんなに人間の食べ物は栄養にならん!」
「冗談だ。可愛い反応をするからな、ヒューは」
「……うっせー」

ぶすっとした顔でオレはそっぽ向いていた。
だって、そんな事される謂われなんてなかったんだ。
そこまで悪い事をしていた訳ではないし。
カモン、と言いたげに腕を広げる星夜をスルー。
明らかにつまらなそうな顔で、彼はちっと舌を打っ
た。
おわびに血をたくさん吸っていい、って言われても
オレにだって血の許容量がある。
オレは割と小食な方だ。
というか、大量に血を抜けば倒れるのは星夜の
方。
そんな事はさせたくなかった。
じゃあ、と交換条件として料理を作ろうとする星
夜。
絶対にやめろと悲鳴を上げてしまった。
こいつの料理スキルは底辺も底辺といってもいい。
味は一応分かるから食べたくなんてない。

「……キス、してくれたら許す」
「口にしていいのか?」
「い、いちいち聞くな……」

少し、オレは星夜に絆され始めていた。
そもそも、オレは誇り高き吸血鬼の一族。
契約に従っているとはいえ嫌な相手に触られたく
はない。
ま、まあだから嫌は嫌だが。
星夜に関してはそこまで嫌ってもいない。
でも、なんでオレはキスしろなんて言ってしまった
んだ。
自分でも自分が分からなかった。
どくんどくんと自分でも知らず心音が高まる。
なんなんだ、オレは。小娘じゃないんだぞ。
しかも、あいつが口にしていいのかとか聞いて来る
から余計に恥ずかしくなる。
何も言わずにただすればいいだろうに。

「目、閉じて……ヒュー」
「ん……」

そっ、と首筋の辺りを大きな手が撫でた。
星夜の手は、モデルをやっているだけあって手入れ
が行き届いている。
すべすべとした女性みたいな手が振れると、少しく
すぐったく感じてぴくんとオレの体が揺れた。
別に逆らったって怒られはしない。
でも、なんだかこいつの言う事にはあんまり逆らう
気がおきなくて。
自然とオレは目を閉じてしまっていた。
ふわっ、と唇と唇が触れあう。
これまた艶々とした唇に表面を食まれ、また体を
揺れる。
息が乱れて口が半開きになっていくと、今度は舌が
伸びて来てオレの舌を絡み取った。
心地いいような、少しこそばゆいような感覚は酷く
そそられる。
気が付くと、じん、と足の間の自身が緩く反応を示
すのを感じていた。
さっきまで首筋にあった手は、いつの間にか胸元を
緩やかに撫でている。
爪を立てられながらくりくりと胸の蕾をいじられ、
あっ、と甘いような声がオレの口から洩れていた。

「は……っ。あ……っ、んん……っ」
「可愛い、ヒュー。もっとその声、聞かせて?」
「や……っ、恥ずかし……。きか、な……っ」
「いい子だから聞かせてヒュー」
「やんっ、つねっちゃやだぁ……っ」

男とこういう関係になるなんて思わなかった。
別に、男女じゃなければいけないなんて思わない
が。
こんなに触れられて自分が感じる方、だなんて全
く知らなかったし。
それが嫌じゃない、なんて考えてしまうなんて。
だんだんとオレの吐息が乱れて熱くなって来る。
声は震え、まるで喘いでいるようだった。
女の子みたいにあんあん言わされている、のだと
気づいて顔が赤く染まる。
耳をぺろりと舐めながら、星夜がねだるように甘く
囁いて来るからさらにびくっ、と体が跳ねた。
や、止めろ。止めてくれ。
感じてしまう……恥ずかしい、のに。
ふるふると子供みたいに首を振っていると、むっ
とした星夜に服の上から胸の蕾をぐりぐりとつね
るようにいじられる。
普通に考えれば痛いだけなのに、何故かぴくんと
足の間のそれから先走りのような雫が垂れた。
はっ、はっ、と顔がさっきとは違う意味で熱を持つ。
もっと星夜に触れられたい。
もっといじめられたい。
たくさんいじって甘くイカせて欲しい。
下も触って欲しい。
そう思うのに、舌が上手く動いてくれない。
震える指で下半身の一点を示してはみたが、ちら
と視線を向けた癖に彼は無視した。
オレが言うまで焦らすつもりなんだろうか。

「ちゃんとおねだりするまで、触らないよ?」
「くっ……。さ、触ってくれ……」
「どこを?」
「し、下を触ってくれ……頼む!」
「どんな風に?」
「い、意地悪するな! い、イカせて、くれ……っ」
「はははっ。了解……」

年上なのに、年下に翻弄されているこの状況が
めちゃくちゃ恥ずかしい。
必死に触ってくれ、と懇願するのに星夜は焦らして
触れてくれなかった。
にやにや笑っている様子さえ、モデルだからか恰好
良く感じるのが悔しい。
ようやくイカせて、なんて泣きそうに言うしかない。
ようやく、足の間へと手が伸びて来た。
やっぱり、星夜の手は長く綺麗だ。
それが自分に触れるのだ、と思うとどきんどきんと
心臓の鼓動が早くなって来る。
きゅっ、と軽く自身を握り込まれた。
左手の薬指の腹でこしょこしょと先端を擦られ、くすぐっ
たいような気持ちいいような複雑な感覚が襲う。
痛い訳ではないが、ぽろぽろとオレの目から涙が零れる。
他の誰かを相手にする事もあるのだろうか。
星夜は触るのが非常に上手く、扱くように手を動かした
り全体をくすぐって来たりとオレを刺激に慣れさせない。
いつの間にか、オレはびくびくと体を揺らして喘いでいた。
新たなる刺激を求め、自ら星夜の手に自身を押し付ける
ようにしている。
可愛いよ、ヒューと星夜が耳元で呟く。
舌が中へ侵入しちろりと軽く舐める。
いろんなところを攻められ、舌をより一層早く扱かれ。
甲高い悲鳴を上げてオレはイッてしまった。
血を吸っているのはオレだし。
本来ならば主従関係の上はオレのはずなのに。
食糧のはずの星夜に、オレはいいように喘がされただ大人
しくイカせられる。
このまま、ここで生活していていいのか?
そもそも星夜はオレの事をどう想っているんだ?
いっぱいいっぱいになったオレの脳内のせいで、ぷつりと意識
が途切れ闇の中へと落ちて行った。
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