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第10話『王子の涙と、聖女の孤独』
しおりを挟む季節は、春の柔らかな薄緑色から、生命力に満ち溢れた初夏の深い緑へと、その衣をゆっくりと着替えつつあった。
太陽の光は力強さを増し、木々の葉を透かして、きらきらと輝く木漏れ日を地面に落とす。雪解け水で満たされていた小川は、穏やかなせせらぎを取り戻し、その水面を覗き込めば、小さな魚の影が素早く横切るのが見えた。カッコウの鳴き声が、谷間にのどかに響き渡る。
イザベラの領地にも、確かな変化が訪れていた。
あの「熊イチゴジャム」の評判が、少しずつではあるが、街道を行く商人たちの間で広まり始めていたのだ。最初は、物珍しさで立ち寄るだけだった彼らも、一口食べればその濃厚で深みのある味の虜になった。そして、次にこの地を訪れる時には、友人の商人仲間を連れてくるようになった。
かつては、誰も寄り付かなかった寂れた辺境の村に、月に数度、賑やかな馬車の鈴の音が響くようになった。それは、小さな、しかし確かな希望の音だった。
その日、村の工房にやってきたのは、これまでで最も大きな荷馬車を引く、恰幅の良い商人だった。男の名はゲオルグ。王都を拠点とし、国中を旅して回る、名の知れた大商人だという。彼の服装は、この辺境の村では見たこともないほど上質で、その指にはめられた金の指輪が、初夏の日差しを浴びてぎらりと光った。
「いやはや、噂には聞いておりましたが、これは素晴らしい!」
ゲオルグは、イザベラが差し出した試食用のジャムを、小さな銀の匙で口に運ぶと、感嘆の声を上げた。
「なんと力強く、そして気品のある味わいでしょう! この複雑な甘みと酸味の調和……王都のどんな菓子職人も、これほどの逸品は作れますまい! まさに、辺境に咲いた奇跡の花ですな!」
大げさな身振りと共に、彼はイザベラを絶賛した。その目は、目の前のジャムに、そしてそれを生み出した「追放された公爵令嬢」という物語に、確かな商機を見出している、抜け目のない商人の目だった。
「お気に召したようで、何よりですわ」
イザベラは、穏やかに微笑んで見せた。以前の彼女なら、この男の下心を見抜き、冷ややかにあしらっていたかもしれない。しかし、今の彼女は、純粋に自分たちの仕事が認められたことが嬉しかった。
「もしよろしければ、在庫の限り、お譲りいたしますが」
「おお、それはありがたい! では、棚にあるもの全て、買い取らせていただきましょう!」
ゲオルグとの商談は、驚くほどスムーズに進んだ。村の誰もが見たことのないほどの枚数の銀貨が支払われ、工房にいた村人たちから、抑えきれない喜びのどよめきが上がった。
取引を終え、上機嫌になったゲオルグは、村人たちが振る舞う昼餉の席で、饒舌に王都の近況を語り始めた。彼は、王侯貴族の屋敷にも出入りしているらしく、その情報は、そこらの行商人とは比べ物にならないほど生々しく、詳しかった。
「いやあ、今の王都は、なんとも落ち着きがありませんでな」
ゲオルグは、黒パンをちぎってスープに浸しながら、大きなため息をついた。
「アルフォンス王子殿下と、リリア聖女様のご婚約が決まり、表向きはお祝いムードに包まれてはおりますが、その裏では、まあ、色々とありまして」
その言葉が出た瞬間、イザベラの背筋が、ぴんと伸びた。周りで聞いていた村人たちも、固唾を飲んで商人の言葉に耳を傾ける。
「……色々と、と申しますと?」
イザベラは、努めて平静を装い、尋ねた。心臓が、少しだけ速く脈打つのを感じた。
「ええ。まず、アルフォンス王子殿下ですが……近頃は、少々お疲れのご様子で」
ゲオルグは、声を潜めて言った。
「王子は、ご存知の通り、理想に燃えるお方です。腐敗した貴族社会を正し、民のための政治を、と意気込んでおられる。しかし、現実はそう甘くはありません。古くからの権力を持つ大貴族たちが、ことごとく殿下の政策に反対し、議会は常に紛糾。改革は一向に進まず、殿下は孤立を深めておられるとか」
イザベラの脳裏に、かつての王子の姿が蘇った。書類の山に埋もれ、眉間に深い皺を刻み、「どうすれば、この国は良くなるんだ」と、何度も苦悩していた、若き日の姿。
「それに加え、民からの期待というのも、相当な重圧になっているご様子で。夜な夜な、一人でお酒を呷(あお)っておられる、なんて噂も耳にします。まあ、無理もありません。あの方は、まだお若い。それなのに、国中の期待を一身に背負っておられるのですから。以前は、その重荷を分かち合う、聡明な方がおそばにいらっしゃったと聞きますが……」
ゲオルグは、そこまで言って、はっとしたように口をつぐみ、ちらりとイザベラを見た。
イザベラは、無表情を保っていた。しかし、その心の中では、無視しようとしても、小さな波紋が広がっていた。
「……では、リリア様は? 聖女様が、殿下をお支えになっているのではなくて?」
イザベラは、自分の声が、わずかに震えていることに気づいた。
ゲオルグは、さらに声を潜めた。
「それが、そのリリア聖女様も、大変なご苦労をなさっているようでして。ご存知の通り、あの方は平民のご出身。それだけで、気の強いご婦人方からは、陰で何を言われているか……。夜会に招かれても、誰も話しかけてはくれず、壁の花になっていることも一度や二度ではないとか。殿下は、そんな彼女を必死で守っておられますが、かえってそれが、周囲の嫉妬に油を注いでいる有様で」
商人の言葉は、イザベラが想像していた光景とは、全く違うものだった。
わたくしを追放し、二人で幸せの絶頂にいる。国民から祝福され、何不自由なく、華やかな日々を送っている。そうに違いない。そうであってほしい、とさえ思っていた。そうでなければ、自分のこの苦しみが、あまりにも惨めだからだ。
「それに……これは、ここだけの話ですが」
ゲオルグは、周りを見回し、決定的な一言を付け加えた。
「リリア聖女様の『癒やしの力』。あれは、確かに本物で、病や怪我には絶大な効果を発揮するそうです。しかし、民が期待しているのは、それだけではない。『奇跡』を求めているのです。例えば、日照りが続けば雨を降らせ、長雨が続けば晴れ間を呼ぶ、といったような。しかし、聖女様には、天候を操るような力はない。その期待と現実の狭間で、彼女もまた、深く苦悩し、追い詰められている、と……」
話を聞き終えた時、イザベラの心の中に、最初に湧き上がってきたのは、黒く、ねじれた感情だった。
(……自業自得ですわ!)
心の声が、叫んでいた。
(それが、わたくしを裏切った報いよ! 理想だの、純粋な愛だの、甘い夢を見ていたから、そんなことになるのよ! もっと苦しめばいい! 絶望すればいい!)
胸がすくような、サディスティックな快感が、一瞬、心をよぎった。
しかし、その黒い感情が湧き上がったのと、ほぼ同時に。
彼女は、第7話の、あの雪の夜の焚き火を思い出していた。
『その嵐を、ただの嵐として、眺めてみろ』
カイルの声が、蘇る。
そうだ。これは、ただの嵐だ。
わたくしの心の中で生まれた、「嘲り」と「怒り」という名の、感情の波だ。
わたくしは、この嵐ではない。
わたくしは、嵐を、眺める。
イザベラは、大きく、深く、息を吸った。そして、ゆっくりと吐き出した。
目の前のゲオルグの話を、もはや個人的な攻撃としてではなく、ただの「一つの情報」として、冷静に受け止めようと努めた。
彼の話が、すべて真実かどうかは分からない。噂には、尾ひれがつくものだ。
しかし、もし、これが本当だとしたら?
その日の午後、商人が去り、村にいつもの静けさが戻った後も、イザベラは一人、考え込んでいた。
彼女は工房を離れ、領地を見渡せる小高い丘の上に登った。
眼下には、自分たちが耕した畑が広がり、村の家々からは、夕餉の支度をする煙が立ち上っている。平和で、穏やかな光景だ。
しかし、彼女の心は、王都にあった。
彼女は、丘の上の切り株に腰を下ろすと、目を閉じた。
そして、生まれて初めての、奇妙な試みを始めた。
もし、わたくしが、アルフォンスだったら?
彼女は、自分の心を、あの婚約者の立場に置いてみた。
——自分は、この国の第一王子。次期国王としての重圧が、常に両肩にのしかかっている。父である国王からは、実績を求められ、保守的な重臣たちからは、若さゆえの理想論を嘲笑われる。誰も、本当の意味で、自分の理想を理解してはくれない。
そんな時、婚約者であるイザベラは、常に「正しい」答えをくれる。彼女の助言は的確で、非の打ち所がない。しかし、その正しさは、時として、自分の未熟さを責め立てる刃のように感じられる。彼女の前では、決して弱音を吐けない。常に「完璧な王子」でいなければならない。息が、詰まる。
そんな時、現れたのが、聖女リリアだった。彼女は、何も言わずに、ただ微笑んで、自分の話を聞いてくれる。彼女のそばにいると、王子の仮面を脱ぎ捨て、ただの弱い一人の男に戻れる気がした。この温かさに、救いを求めてしまったのは、そんなに罪なことだったのだろうか?——
次に、イザベラは、自分の心を、聖女リリアの立場に置いてみた。
——私は、平民の生まれ。ある日突然、自分に不思議な力があることが分かり、聖女として王宮に迎えられた。周りは、見たこともないほど煌びやかで、皆、自分よりも遥かに身分の高い人たちばかり。言葉遣いも、作法も、何も分からない。
王子殿下だけが、優しくしてくれた。彼は、私の唯一の光だった。だから、彼に愛されたい、彼の隣にいたい、と必死に願った。その願いが、結果として、婚約者だったイザベラ様を傷つけてしまったことは分かっている。
でも、どうすればよかったの? 貴族のご婦人方は、私のことを「成り上がり」と蔑み、誰も友達になってはくれない。民は、私に「聖女の奇跡」を求める。でも、私にできるのは、怪我を癒やすことだけ。雨を降らせることなんてできない。怖い。期待に応えられないことが、バレてしまうのが、怖い。王子様の愛を失ってしまったら、私には、もう何も残らない……。——
その、想像の旅を終えた時。
イザベラは、自分が泣いていることに気づいた。
頬を、温かい涙が伝っていた。
それは、自分のための涙ではなかった。
これまで、敵だと、悪だと思っていた、あの二人のための、涙だった。
もちろん、彼らがしたことを、許したわけではない。
わたくしを傷つけ、追放したという事実は、消えない。
しかし。
彼らは、わたくしが思っていたような、絶対的な悪意の塊ではなかった。
彼らもまた、それぞれの立場で、それぞれの重圧と戦い、それぞれの弱さに苦しむ、ただの不完全な「人間」だったのだ。
世界は、白か黒か、善か悪か、正しいか間違っているか、という、単純な二元論でできていたわけではなかった。
そこにあるのは、様々な立場、様々な事情、様々な苦しみを抱えた、無数の人間たちの、複雑で、哀しい、営みだけなのだ。
誰もが、自分の視点から見れば「正しく」、そして同時に、誰かの視点から見れば「間違っている」。
絶対的な正義も、絶対的な悪も、どこにも存在しない。
この気づきは、イザベラの世界観を、根底から覆すものだった。
これまで彼女がよじ登ろうとしていた、「正しさ」という名の、一本の絶対的な梯子が、足元から、音を立てて崩れ落ちていく。
その代わりに現れたのは、無数の人々が、それぞれの細い糸で結びつき、支え合い、時には絡まり合いながら存在する、巨大で、複雑な、タペストリーのような世界だった。
「……そうか。そういう、ことだったのですね」
イザベラが呟いた時、背後から、静かな足音が聞こえた。カイルだった。彼は、いつものように、何も言わずに、彼女の隣に立った。
「カイル……」
イザベラは、自分の心境を、うまく言葉にできずに、途切れ途切れに話した。
「わたくし……ずっと、自分が正しくて、彼らが間違っていると、信じておりました。でも、違ったのかもしれません。彼らにも、彼らの事情が、苦しみがあったのです。わたくし、今まで、自分のことしか、見えておりませんでした」
カイルは、黙って彼女の話を聞いていた。そして、夕焼けに染まる地平線を見つめながら、ぽつりと言った。
「ようやく、物事の『こちら側』と、『あちら側』の両方が、見えるようになったんだな」
『こちら側』と、『あちら側』。
その言葉が、イザベラの胸にすとんと落ちた。
そうだ、自分は今まで、世界の『こちら側』からしか、物事を見てこなかった。自分の正義、自分の価値観。その窓から見える景色だけが、全てだと思い込んでいた。
しかし、世界には、無数の窓があるのだ。アルフォンスの窓から見える景色。リリアの窓から見える景色。それらは、自分の窓から見える景色とは、全く違う。
「彼らを、憎む気持ちが……消えてしまいそうですわ」
イザベラは、戸惑いながら言った。
「あれほど、復讐だけを考えて生きてきたのに。その憎しみがなくなってしまったら、わたくしは、これから、何を支えに生きていけばいいのでしょう?」
すると、カイルは、初めて彼女の方に向き直り、穏やかな、本当に穏やかな目で言った。
「憎しみ以外のものを、支えにすればいい。例えば……」
彼は、村の方を指さした。家々の窓に、温かい灯りがともり始めている。
「目の前にある、あの光のようなものを」
イザベラは、カイルが指さす方を見た。
そこには、自分が守りたい、豊かにしたいと願う、ささやかで、しかし愛おしい世界が広がっていた。
憎しみは、強力なエネルギーになる。しかし、それは、自らの心をも焼き尽くす、危険な炎だ。
愛や、慈しみは、炎のように激しくはないかもしれない。しかし、それは、静かに、そして長く、心を温め続けてくれる、灯火のようなものだ。
イザベラは、新しい、より広く、そして少しだけ優しい世界への扉を、今、確かに開けたことを実感していた。
彼女を縛り付けていた、過去の亡霊が、初夏の風の中に、静かに溶けていく。
その風は、もう、冷たくはなかった。
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