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白秋
はくしゅう7
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「来てくれてありがとうございます、特待生さん! 改めて自己紹介しますね」
茶髪の女性スタッフは、スカートのウエスト部分に取り付けた名札を見せてくれた。
黒地に銀色のマーカーで『板木アリシャ』と書かれており、四隅には、金色のマーカーで六芒星が描かれていた。
どちらも大きく、自己主張が強い。
「ステラ魔法学園日本校首席、板木アリシャです」
見た目は大幅に変わっているが、今朝俺に声をかけてきたアリシャに間違いないようだ。
「先程は、どうも」
俺からも浅いお辞儀をし、椅子に座る。
「特待生さん、なんとお呼びすれば良いですか?」
アリシャは、満面の笑みで俺に問いかける。
よく考えてみると、俺がアリシャの名前を一方的に知っているだけだった。
アリシャからすると、俺はただのモブ客のままだ。
「えーっと……」
しかし、なんと名乗ろう。
正直、特待生さんのままでいいのだが、特待生のままでと伝えるのも気が引ける。
下の名前か? 上の名前か? 個人情報は公開せずWINGの名前がいいのか?
「じゃあ――奏汰で」
WINGのアカウント名を出す寸前で思い直し、本名を告げた。
別にインフルエンサーや芸能人でもないし、本名の方が無難だろう。
WINGのアカウント名は読みにくいし、有名人気取りだと思われたくない。
「じゃあ、奏汰くん。よろしくお願いします」
「お願いします」
俺が体験し損ねた青春を、体験させてください。
そう思いながら、再び頭を下げた。
アリシャがリードしてくれたお陰で、飲み物と食べ物の注文ができた。
あまり散財したくはなかったが、これから会話をする上で、1人だけ飲み食いするのも気が引けた為、隅に書いてあるスタッフ用の飲み物も一緒に注文すると、初めて自分の分の飲み物を注文してくれた客だと嬉しそうに話してくれた。
黒い革のショルダーバッグから取り出したペンで、同時に取り出した伝票に注文を記入すると、アリシャはカウンターの奥へ向かった。
一人になった隙を見て、再び室内を見回す。
以前蒼依と行ったカフェにとは違い、客はスタッフとのコミュニケーションに夢中な様子で、他の客を見る暇はないようだ。
客もスタッフも笑顔で、カフェのように身構える必要がない。
カフェはカフェでも、コンカフェの方が楽かもしれない。
「お待たせしました。コーラとチョコレートパンケーキです」
アリシャが、トレーを持ってカウンターの奥から戻ってきた。
目の前に置かれたトレーを見ると、注文したもの以外に、茶色いボトルと、鉛筆よりも少し長く茶色い棒が一緒に乗っているのが分かった。
「奏汰さんにお願いがあるんです。特待生さんである奏汰さんと一緒に美味しくなる魔法をかけたくて」
アリシャの言葉が、急に澱みないものに変わる。
もしかして、メイドカフェでよく見る「萌え萌えビーム」のようなものを言わされるフラグではないか?
やけに言い慣れているように感じる。
「え、あ、はい」
動揺しているのを悟られまいと振る舞ってみるが、アリシャにはバレているだろう。
「一緒に仕上げの魔法、かけてもらえませんか?」
予想通りだった。
「あ、はい……」
もちろん、俺に拒否はできない。
やりたくないと言えば拒否できるだろうが、俺にはそんな勇気がない。
「この杖を持って、せーのって言うので、デリシャステラって言ってくださいね!」
アリシャは、トレーに乗った杖を俺に渡す。先程ペンを取り出したショルダーバッグからもう一本杖を取り出す。
「はい……」
「せーの!」
「デリシャステラー」
そう言いながら杖をトレーに向けていると、身体の奥深くから寒気が溢れ、身体全体広がるのが分かる。
前言撤回だ。
コンカフェは、カフェより苦手。
茶髪の女性スタッフは、スカートのウエスト部分に取り付けた名札を見せてくれた。
黒地に銀色のマーカーで『板木アリシャ』と書かれており、四隅には、金色のマーカーで六芒星が描かれていた。
どちらも大きく、自己主張が強い。
「ステラ魔法学園日本校首席、板木アリシャです」
見た目は大幅に変わっているが、今朝俺に声をかけてきたアリシャに間違いないようだ。
「先程は、どうも」
俺からも浅いお辞儀をし、椅子に座る。
「特待生さん、なんとお呼びすれば良いですか?」
アリシャは、満面の笑みで俺に問いかける。
よく考えてみると、俺がアリシャの名前を一方的に知っているだけだった。
アリシャからすると、俺はただのモブ客のままだ。
「えーっと……」
しかし、なんと名乗ろう。
正直、特待生さんのままでいいのだが、特待生のままでと伝えるのも気が引ける。
下の名前か? 上の名前か? 個人情報は公開せずWINGの名前がいいのか?
「じゃあ――奏汰で」
WINGのアカウント名を出す寸前で思い直し、本名を告げた。
別にインフルエンサーや芸能人でもないし、本名の方が無難だろう。
WINGのアカウント名は読みにくいし、有名人気取りだと思われたくない。
「じゃあ、奏汰くん。よろしくお願いします」
「お願いします」
俺が体験し損ねた青春を、体験させてください。
そう思いながら、再び頭を下げた。
アリシャがリードしてくれたお陰で、飲み物と食べ物の注文ができた。
あまり散財したくはなかったが、これから会話をする上で、1人だけ飲み食いするのも気が引けた為、隅に書いてあるスタッフ用の飲み物も一緒に注文すると、初めて自分の分の飲み物を注文してくれた客だと嬉しそうに話してくれた。
黒い革のショルダーバッグから取り出したペンで、同時に取り出した伝票に注文を記入すると、アリシャはカウンターの奥へ向かった。
一人になった隙を見て、再び室内を見回す。
以前蒼依と行ったカフェにとは違い、客はスタッフとのコミュニケーションに夢中な様子で、他の客を見る暇はないようだ。
客もスタッフも笑顔で、カフェのように身構える必要がない。
カフェはカフェでも、コンカフェの方が楽かもしれない。
「お待たせしました。コーラとチョコレートパンケーキです」
アリシャが、トレーを持ってカウンターの奥から戻ってきた。
目の前に置かれたトレーを見ると、注文したもの以外に、茶色いボトルと、鉛筆よりも少し長く茶色い棒が一緒に乗っているのが分かった。
「奏汰さんにお願いがあるんです。特待生さんである奏汰さんと一緒に美味しくなる魔法をかけたくて」
アリシャの言葉が、急に澱みないものに変わる。
もしかして、メイドカフェでよく見る「萌え萌えビーム」のようなものを言わされるフラグではないか?
やけに言い慣れているように感じる。
「え、あ、はい」
動揺しているのを悟られまいと振る舞ってみるが、アリシャにはバレているだろう。
「一緒に仕上げの魔法、かけてもらえませんか?」
予想通りだった。
「あ、はい……」
もちろん、俺に拒否はできない。
やりたくないと言えば拒否できるだろうが、俺にはそんな勇気がない。
「この杖を持って、せーのって言うので、デリシャステラって言ってくださいね!」
アリシャは、トレーに乗った杖を俺に渡す。先程ペンを取り出したショルダーバッグからもう一本杖を取り出す。
「はい……」
「せーの!」
「デリシャステラー」
そう言いながら杖をトレーに向けていると、身体の奥深くから寒気が溢れ、身体全体広がるのが分かる。
前言撤回だ。
コンカフェは、カフェより苦手。
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