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白秋
はくしゅう10
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「青春を撮影するなんて無理ゲーだよ」
講義前の空き時間、俺は机に突っ伏していた。
横には夏を満喫したらしく、夏休み前より日焼けしている蒼依が座っている。
ちらりと視界の隅に入る褐色の主張は強い。
「そんなんじゃ青春は遠いぞ、奏汰」
そう言った後、UR出たと呟いているところから考えて、あいつはスマホゲームをしてるらしい。
人が悩んでるっていうのに、気楽な奴め。
「俺なりにやってみたのよ、青春を撮ろうと」
「その結果があれか。WINGに投稿してた、昼飯撮影会」
蒼依が言っているのは、昨日投稿した昼食の写真だろう。
試しに昼食として作ったチャーハンを撮影してみたが、写真映えする訳でもなく、ただ俺の昼食をWINGに晒しあげただけに終わった。
努力を残すために、選りすぐりの四枚を投稿したのだが、様々な角度からチャーハンの投稿になってしまった。
「悪いかよ。美味かったぞあのチャーハン」
顔を上げて蒼依を睨む。たくましい腕と、ゲーム画面が写ったスマホが目に入った。
今見ているものを取ると写真映えするだろうか。
不意にそう考えたが蒼依にからかわれて終わりだと思い、撮影は断念する。
「自分で悪いって思ってるから悩んでるんだろ。美味いかどうかは別の話」
蒼依の返答に、ぐうの音も出なかった。
「一応、コツとか見たんだけどな。ネットのやつ」
「うん」
「小学生の平仮名練習帳みたいに線出してみたけど活かせてる感じないし」
「グリッドな」
「そう、それ。それに部屋の電気じゃなくて、自然光で撮ったし」
「ただの暗いところで撮った写真だったけどな。もう少し光量が多いとこじゃないと」
どう返しても言い負かされてしまう。
「やけに写真に詳しくない?」
「まあ、一眼レフ持ってたりしたし」
スマホゲームの片手間に返事を返す蒼依。その余裕を感じると、俺の余裕の無さを痛感する。
「じゃあ一眼レフ貸してくれ。最終兵器一眼レフで映えさせてやる」
「アホか。昼飯撮影会に一眼レフ使ったところで映えもなんもないだろ。映えもなにもない、ただの素人チャーハンだ」
眉間の皺の深さを目の当たりにし、反論が出来ない。
確かに、あの写真に映える要素は皆無だったかもしれない。
叱られた子犬のように身を縮こまらせることで反省の意を伝えた。
「それに、撮らなくなったから兄貴に譲ったから今は持ってない」
「ダメか……」
「というか、最近のスマホすごいし、一眼レフじゃなくても結構いい感じで写真撮れるぞ」
「じゃあなんで俺のチャーハンは映えないんだよ」
「そりゃコツが分かってないからじゃないの」
「じゃあ教えてくれよ蒼依」
「いいよ」
予想外の返事に、俺は飛び上がった。
ガタンという音に、近くに座る学生の目が刺さる。
羞恥を覚えながら静かに姿勢を正した。
「マジで? 一緒にやってくれるの?」
声をひそめながら訊ねる。蒼依はしっかり頷いた。
「それくらい、別にいいよ。同じ学部なんだし、顔合わせた時に教えればいい。写真撮るの嫌いじゃないし」
半ば強引に蒼依の手を取り、握手を交わす。
「よろしく……先生……」
「授業料は俺の課金額の十割負担でよろしく」
「何万も飛ぶじゃん。絶対嫌」
そう言うと、俺と蒼依はヘラヘラと笑った。
講義前の空き時間、俺は机に突っ伏していた。
横には夏を満喫したらしく、夏休み前より日焼けしている蒼依が座っている。
ちらりと視界の隅に入る褐色の主張は強い。
「そんなんじゃ青春は遠いぞ、奏汰」
そう言った後、UR出たと呟いているところから考えて、あいつはスマホゲームをしてるらしい。
人が悩んでるっていうのに、気楽な奴め。
「俺なりにやってみたのよ、青春を撮ろうと」
「その結果があれか。WINGに投稿してた、昼飯撮影会」
蒼依が言っているのは、昨日投稿した昼食の写真だろう。
試しに昼食として作ったチャーハンを撮影してみたが、写真映えする訳でもなく、ただ俺の昼食をWINGに晒しあげただけに終わった。
努力を残すために、選りすぐりの四枚を投稿したのだが、様々な角度からチャーハンの投稿になってしまった。
「悪いかよ。美味かったぞあのチャーハン」
顔を上げて蒼依を睨む。たくましい腕と、ゲーム画面が写ったスマホが目に入った。
今見ているものを取ると写真映えするだろうか。
不意にそう考えたが蒼依にからかわれて終わりだと思い、撮影は断念する。
「自分で悪いって思ってるから悩んでるんだろ。美味いかどうかは別の話」
蒼依の返答に、ぐうの音も出なかった。
「一応、コツとか見たんだけどな。ネットのやつ」
「うん」
「小学生の平仮名練習帳みたいに線出してみたけど活かせてる感じないし」
「グリッドな」
「そう、それ。それに部屋の電気じゃなくて、自然光で撮ったし」
「ただの暗いところで撮った写真だったけどな。もう少し光量が多いとこじゃないと」
どう返しても言い負かされてしまう。
「やけに写真に詳しくない?」
「まあ、一眼レフ持ってたりしたし」
スマホゲームの片手間に返事を返す蒼依。その余裕を感じると、俺の余裕の無さを痛感する。
「じゃあ一眼レフ貸してくれ。最終兵器一眼レフで映えさせてやる」
「アホか。昼飯撮影会に一眼レフ使ったところで映えもなんもないだろ。映えもなにもない、ただの素人チャーハンだ」
眉間の皺の深さを目の当たりにし、反論が出来ない。
確かに、あの写真に映える要素は皆無だったかもしれない。
叱られた子犬のように身を縮こまらせることで反省の意を伝えた。
「それに、撮らなくなったから兄貴に譲ったから今は持ってない」
「ダメか……」
「というか、最近のスマホすごいし、一眼レフじゃなくても結構いい感じで写真撮れるぞ」
「じゃあなんで俺のチャーハンは映えないんだよ」
「そりゃコツが分かってないからじゃないの」
「じゃあ教えてくれよ蒼依」
「いいよ」
予想外の返事に、俺は飛び上がった。
ガタンという音に、近くに座る学生の目が刺さる。
羞恥を覚えながら静かに姿勢を正した。
「マジで? 一緒にやってくれるの?」
声をひそめながら訊ねる。蒼依はしっかり頷いた。
「それくらい、別にいいよ。同じ学部なんだし、顔合わせた時に教えればいい。写真撮るの嫌いじゃないし」
半ば強引に蒼依の手を取り、握手を交わす。
「よろしく……先生……」
「授業料は俺の課金額の十割負担でよろしく」
「何万も飛ぶじゃん。絶対嫌」
そう言うと、俺と蒼依はヘラヘラと笑った。
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