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白秋
はくしゅう16
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真横から撮影した写真を見ていると、一枚の写真が目に留まった。
二本の鎖が、それぞれいびつにねじれ、座る箇所が前方に向かって浮く。
子どものころ、ブランコをから飛び降りた経験を連想する写真だった。
「これ、よくない?」
写真を確認している間に、ブランコに乗っていた蒼依に声をかける。
「お、いいじゃん。光の加減もいい感じ」
「だよねだよね」
自分の頬が緩んでしまうのがわかる。
胸の方から、キラキラとしたものが溢れていく。
「俺でも、こんな写真撮れるんだな」
噛みしめるように、言葉を発する。
「そりゃ、一緒に勉強したんだから撮れるだろ。頑張ってたよ、奏汰」
蒼依からの思いがけない評価に、俺は驚きを隠せない。
「いやいや。頑張ってなんかないって」
俺の返答に、蒼依は気を悪くすることなく見つめ返す。
「奏汰からするとそうかもしれないけど、俺から見たら頑張ってたと思う。奏汰の自己評価は違うかもだけど、俺からの評価は頑張っていたってものから変更したくない」
俺達を包み込むように温かな風が吹く。
気が付くと、俺は体験したかったものの欠片を握ることができていた。
「奏汰見てたら俺もやる気になってきたわ。俺もちょっと頑張ってくる」
蒼依は腕まくりをし、ゆっくりとした足取りで公園の奥へ向かった。
残された俺は、ブランコの向かいにあるベンチへ向かい、腰を下ろした。
スマホを開き、再びブランコの写真を表示させる。
今までとは比較にならないくらい、気に入った作品ができた。
ベンチに座りながら、次の被写体を探す。
スマホのカメラを起動させる前に、両手の親指と人差し指を使って四角い枠を作り、公園を眺めていく。
先程までいなかった、日に焼けた子ども達が目の前を走り抜けていった。
老夫婦が、両手にスキー選手のような棒を持って歩いていた。
先ほどのブランコは、俺と同じくらいの男女グループが占領して童心にかえり、ブランコに乗っている。
奥の方に生えている木の近くで、褐色の体格がよい男がしゃがみ、何かに向かってスマホを向けているのが見えた。
蒼依は木の根元でなにを撮影しているのだろうか。
様子を見に行こうと立ち上がった途端、俺に向かって黄色いボールが転がってくる。
それを拾い上げると、転がってきた方を確認する。
「すみませーん!」
こちらに向かって謝罪しながら、小柄な女性が走ってきているのが見えた。
その声に、段々と近づく人物に覚えがあった。
初めて聞く声ではなかった。
小柄な体格に、一つ結びの髪型見覚えがあった。
声の主も徐々に近づいてくる。
「あ」
あちらも俺の顔に見覚えがあったらしい。
それもそうだろう。
「三宅さん」
注文の食事が完成する度に睨みつけていた人間がボールを拾い上げていたのだから。
二本の鎖が、それぞれいびつにねじれ、座る箇所が前方に向かって浮く。
子どものころ、ブランコをから飛び降りた経験を連想する写真だった。
「これ、よくない?」
写真を確認している間に、ブランコに乗っていた蒼依に声をかける。
「お、いいじゃん。光の加減もいい感じ」
「だよねだよね」
自分の頬が緩んでしまうのがわかる。
胸の方から、キラキラとしたものが溢れていく。
「俺でも、こんな写真撮れるんだな」
噛みしめるように、言葉を発する。
「そりゃ、一緒に勉強したんだから撮れるだろ。頑張ってたよ、奏汰」
蒼依からの思いがけない評価に、俺は驚きを隠せない。
「いやいや。頑張ってなんかないって」
俺の返答に、蒼依は気を悪くすることなく見つめ返す。
「奏汰からするとそうかもしれないけど、俺から見たら頑張ってたと思う。奏汰の自己評価は違うかもだけど、俺からの評価は頑張っていたってものから変更したくない」
俺達を包み込むように温かな風が吹く。
気が付くと、俺は体験したかったものの欠片を握ることができていた。
「奏汰見てたら俺もやる気になってきたわ。俺もちょっと頑張ってくる」
蒼依は腕まくりをし、ゆっくりとした足取りで公園の奥へ向かった。
残された俺は、ブランコの向かいにあるベンチへ向かい、腰を下ろした。
スマホを開き、再びブランコの写真を表示させる。
今までとは比較にならないくらい、気に入った作品ができた。
ベンチに座りながら、次の被写体を探す。
スマホのカメラを起動させる前に、両手の親指と人差し指を使って四角い枠を作り、公園を眺めていく。
先程までいなかった、日に焼けた子ども達が目の前を走り抜けていった。
老夫婦が、両手にスキー選手のような棒を持って歩いていた。
先ほどのブランコは、俺と同じくらいの男女グループが占領して童心にかえり、ブランコに乗っている。
奥の方に生えている木の近くで、褐色の体格がよい男がしゃがみ、何かに向かってスマホを向けているのが見えた。
蒼依は木の根元でなにを撮影しているのだろうか。
様子を見に行こうと立ち上がった途端、俺に向かって黄色いボールが転がってくる。
それを拾い上げると、転がってきた方を確認する。
「すみませーん!」
こちらに向かって謝罪しながら、小柄な女性が走ってきているのが見えた。
その声に、段々と近づく人物に覚えがあった。
初めて聞く声ではなかった。
小柄な体格に、一つ結びの髪型見覚えがあった。
声の主も徐々に近づいてくる。
「あ」
あちらも俺の顔に見覚えがあったらしい。
それもそうだろう。
「三宅さん」
注文の食事が完成する度に睨みつけていた人間がボールを拾い上げていたのだから。
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