青春活動

獅子倉 八鹿

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玄冬

げんとう5

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「世間の考えが少し変わってきているとはいえ、そういうのは変だって思う人が多いと思うんですけど、他の人に迷惑掛けないならいいんじゃないかなって。別に性別を偽って、見てくれている人を裏切るとか、そんな問題が起きるような活動ではないと思います」

「そっか」
 三宅さんの言葉に、蒼依の顔に柔らかさが戻ったような気がした。
「そうだよな。確かにそうだな」
 そう言うと空を仰ぐ。
「もしかして俺のしてることって、WINGでバレたら炎上する案件かなって思ってたけど、そんなことないよな」
 視線を三宅さんに戻すと、笑顔になる。
「りょーちゃんありがとう。改めて、あきをよろしくねっ」
 それは、普段のふざけた様子とは違う、自然な振る舞いだった。

「じゃあ、気持ち切り替えて写真撮りますか」
 先程とは変わり、はつらつとした表情で蒼依は言う。
「どんな写真撮るんですか? テーマとか決める感じ?」
 三宅さんにそう訊ねられ、蒼依は小さく唸ると、こちらを見た。
「リーダー、どうする?」

「別に、ここから出てもいいんじゃないかな。前りょーさんと会ったのがここだったから、集合場所ここにしただけだし。商店街行ってもいいし、猿待さるまち通りの近くにある公園に行ってもいいだろうし」

 俺の通う大学の近くには、並行するように商店街が二つある。

 一つは海月くらげ通り。俺のバイト先がある、シャッター街になりつつある商店街だ。
 もう一つが猿待通り。こちらも閉店したまま、シャッターを閉めている店舗がないわけではないが、大型ディスカウントストアがあったり、大型チェーンのカフェがあったり、川に隣接した公園があったりと海月通りよりも活気がある。

 ただ、どちらの商店街も都会の商店街に比べれば活気もなく、最近は青春活動のための写真撮影で訪れることが増えたが、その前はあまり寄ることもなかった。

 正直、今日は撮影したい気分ではない。
 この気持ちを一人で処理したい。

 しかし、正直にそんなことを言うと気を遣わせてしまうだろうし、それを隠しつつ、この集団を解散に誘導できるスキルを俺は持ち合わせていない。

「いいじゃん。そこ行こ。なんて名前だっけ、その公園。名前思い出せないな」
「猿待公園です」
「あー、それそれ」
 一人で帰る選択肢も無い。俺は渋々付いていくしかないのだ。

 先程までの雰囲気を考えさせない程、二人の雰囲気は明るくなっている。
 俺以外の二人はやや饒舌気味で、公園が近いこともあり、沈黙する時間などはなかった。
 俺だけが孤立している。俺は要らないような気がするのだが。

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