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異世界転移の章
6.異世界
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未来の固有スキル、短距離転移と投擲、そして愛莉の固有スキル錬金術を使用し、何とか難を逃れた女子高生二人。
倒れてピクリとも動かなくなったワイルドウルフを見て、二人はヘタヘタとその場に崩れ落ち、そして互いの身体を力いっぱい抱きしめた。
「こ、怖かったよぉ愛莉ぃ~!もう駄目かと思ったよぉぉぉ!!」
「わ、わたしも……怖かったよぉ未来ぅぅぅ!!」
わんわんと泣き出す二人。ずっと恐怖と戦っていた。怖いのを我慢して、何とか生き残る為に必死に頑張ったのだ。そして結果的に、何とか二人で危機を乗り越えた。そんな二人の頭の中に、例の謎の声が響き渡る。
ーー日下未来のレベルが上がりました。
ーー日下未来のレベルが上がりました。
ーー日下未来のレベルが上がりました。
ーー日下未来のレベルが上がりました。
ーー望月愛莉のレベルが上がりました。
ーー望月愛莉のレベルが上がりました。
ーー望月愛莉のレベルが上がりました。
ーー望月愛莉のレベルが上がりました。
ーー望月愛莉が固有スキル【合成】を覚えました。
「うひゃえ!?」
「ひゃう!?」
まだ慣れない未来と愛莉。こんなに一度に何度も声が響いたのも初めてなので、仕方ないと言えば仕方ないのだが。
「何かめっちゃレベル上がったね!強くなったって事?」
「どうなんだろう……あまり変わった感じしないけど」
「そうだ、鑑定してみて!」
なるほど、もしかしたら鑑定でステータスに変化があるかもしれない。そう思い、言われた通り未来を鑑定するべく未来の顔をじっと見つめる愛莉。
「そ……そんなにじっと見られると恥ずかしいよ愛莉……」
「はいはい、今はそういうのいいから」
「ぶぅ~」
愛莉が未来の顔をじっと見つめると、未来の頭の上に文字が浮かび出す。
『日下未来(職業無し:Lv5)
ーー固有スキル:短距離転移、瞬剣(LV6)、投擲(Lv6)、言語認識
ーーパッシブスキル:腕力上昇(Lv2)脚力上昇(Lv3)回避(Lv1)』
「……あれ?いつの間にか投擲と瞬剣のレベルが6になってるけど……そんなに上がったの?」
「え?どっちも一回しか上がってないよ?」
どちらも一回なら、最初はレベル1だったので現在は2の筈だ。しかし今は6まで上がっている。つまりーーーー
「そっか、固有スキルは本人のレベルが上がった時にも同じだけ上がるんだ」
「へえ、そうなんだ。あっちは?なんだっけ………パッションスキル?」
「パッシブスキルだよ。腕力上昇が一つ上がってる」
「ああ、それはさっき狼と戦ってる時に上がったんだー。お陰であの長い石刀を投擲出来たんだよっ」
未来の説明で色々と合点がいく愛莉。それなら腕力上昇が一つ上がっている事も、最初は投擲するの無理と言っていた最初に作った石刀を投擲出来た事も納得出来る。
じゃあ次は自分のステータスを見てみようと思った時、愛莉は突然尿意を催した。ずっと恐怖と緊張の連続だったのがプッツリと解けて、安心したせいだろう。見ると、未来も足をモジモジとさせている。
「あのね愛莉……あたしちょっと……おしっこしたくなっちゃって……」
「あ、うん……実はわたしも………」
お互い顔を見合わせて頬を染める。トイレなどある筈もないこんな場所、当然その辺でするしかない。
「じゃ、じゃあこの木のこっち側とあっち側で別れてしよっか!しゅ、集合は隣の木の下って事で!」
「わ、分かった。じゃあわたしが反対側に行くね」
相変わらず頬を薄っすらと紅く染めながら、愛莉が巨木の反対側へと移動する。
初めて身体を重ねたのは中学生の時。それから何度となく身体を重ねた未来と愛莉だが、相手の放尿する所など見た事もないし、放尿した後の尿も見た事など無い。お互い相手を愛してやまないが、そんなマニアックな趣味など持ち合わせてはいない。
「愛莉……行ったかな……」
愛莉の姿が巨木の向こう側に隠れたのを確認した未来は、履いているデニムのショートパンツと下着を同時に下ろす。そしてその場にしゃがみこむと、我慢していた欲求を吐き出した。
耳には、自分の尿道から放出される放尿の音が聞こえて来る。こんな青空の下で放尿などした事の無い未来は一抹の不安を覚えつつも、自分の足元に出来上がってゆく水たまりを見て、何とも言えない気持ちになった。
たまにはこういうのも悪く無い。開放感があって、これはこれで有りだなと。強いて言えば、海の中で誰にも気付かれないまま放尿した時のような、そんな謎の開放感だった。
「ふぅ……全部出た……あ、ティッシュ持ってたかな……」
最初からずっと背負っている小型のリュックを器用に胸の前まで持って来る。小袋のファスナーを開けると、ポケットティッシュが一つだけ入っていたので、二枚ほど取って半分に折りたたむ。そしてティッシュでアソコを拭き、ふと(このティッシュどうしよう………?)と考えて、そっと足元に置いた。
「うう……紙だからいつか自然に還るよね?」
自分にそう言い聞かせ、パンツをずり上げる。そしてショートパンツに手を掛けたその時、未来の後ろから女性の声が聞こえて来た。
「あのぉ、ちょっといいかしら……?」
「ば、馬鹿っ!い、今はやめときなさいってリーシャ!」
聞こえて来た声は二人分。一つはおっとりとした緊張感の無い声で、もう一つは何やら焦ったような口調の声。
未来は錆びついたロボットのようにギギギと首を後ろに向ける。そこには居たのは、柔らかい笑顔をたたえた水色の髪の少女と、顔を真っ赤にしてそっぽを向いている紫色のポニーテールの少女。水色の髪の少女が未来に話し掛けて来る。
「あのね、貴女に少し聞きたい事があるのだけど……いいかしら?」
穏やかな表情。同性から見ても美少女だと思えるような少女が、優しい笑顔でこちらを見ている。その隣には別の美少女が居るのだが、そっぽを向いて耳まで真っ赤に染めている。まるで、見てはいけないものを見てしまったかのように。
「う………え………?」
「あ、怖がらないでね。本当に少し聞きたいだけでーーーー」
「い………いつから………そこに……?」
未来が恐る恐る訊ねる。すると、水色の髪の少女は正直に答えた。
「んー、少し前から。あら、でも気にしないでね?生理現象だし仕方ないと思うの。こんな森の中だし、わたしだってしたくなったら同じ事をーーーー」
最後まで聞き終える前に、未来の瞳に涙が溜まってゆく。顔は茹でダコのように真っ赤に染まり、全身がブルブルと震えるそしてーーーーー
「あああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーッッ!!」
っと、盛大に叫んだのだった。
■■■
「うわぁぁぁぁん!愛莉にすら見せた事無いのにぃぃぃーーーーッ!!」
愛莉の胸の中で盛大に泣き叫ぶ未来。つい先ほど、見知らぬ二人の少女に放尿している所を見られてしまい、あまりの羞恥心で泣き出してしまった未来を、愛莉が抱きしめながら頭をぽんぽんと優しく撫でている。
(わ、わたしじゃなくて良かった………)
胸中ではそんな事を考えて胸を撫で下ろしているのだが、それにしても未来が可哀想過ぎる。自分じゃなくて本当に良かったのだが。
「あのぉ……ごめんなさい。まさかそんなに恥ずかしいだなんて………」
「は、恥ずかしいに決まってるでしょリーシャ!女の子がおしっこしてる所を見られたのよ!?」
「うわぁぁぁぁぁん!やっぱり見られてたんだぁぁぁぁーーーーッ!!」
「あ、違っ……わ、わたしはすぐに横を向いたから!ほとんど見てないから!」
「あはは……つまり少しは見たんだ………」
泣き叫ぶ未来、困った顔をしているリーシャと呼ばれた水色の髪の少女、真っ赤な顔をして何やら弁解している紫色のポニーテールの少女、その少女の言い訳に思わず苦笑してしまう愛莉。
何やら収集がつかない事態に陥ってしまったので、愛莉が未来の頭を撫でながら二人の少女に声を掛ける。
「それで……貴女達はどちら様?」
「あ、ごめんなさい。わたしはリーシャっていうの。隣の娘はサフィーよ」
「はあ……リーシャさんと……サフィーさん?」
「呼び捨てでいいわ。そんなに歳も違わないでしょ」
何となくおっとりした雰囲気のリーシャと、何処かツンとしているサフィー。服装を見ると、リーシャは上半身が白いローブ、と言うかケープのような物を纏っており、下半身は白いショートパンツのような服装。サフィーは黒い膝丈のローブを纏っている。二人共、いかにもファンタジーの世界に出て来そうな服装だ。
(コスプレ……じゃないよね。やっぱりここって………)
浮かび上がるステータス、実際に使用出来るスキル、地球には絶対に居ないような巨大な狼、そして目の前に立つ二人の少女。
(やっぱり……ここは異世界なんだ)
VRなどではない、現実の世界。愛莉は自分達が異世界に来てしまったのだという事をようやく受け入れたのだった。
倒れてピクリとも動かなくなったワイルドウルフを見て、二人はヘタヘタとその場に崩れ落ち、そして互いの身体を力いっぱい抱きしめた。
「こ、怖かったよぉ愛莉ぃ~!もう駄目かと思ったよぉぉぉ!!」
「わ、わたしも……怖かったよぉ未来ぅぅぅ!!」
わんわんと泣き出す二人。ずっと恐怖と戦っていた。怖いのを我慢して、何とか生き残る為に必死に頑張ったのだ。そして結果的に、何とか二人で危機を乗り越えた。そんな二人の頭の中に、例の謎の声が響き渡る。
ーー日下未来のレベルが上がりました。
ーー日下未来のレベルが上がりました。
ーー日下未来のレベルが上がりました。
ーー日下未来のレベルが上がりました。
ーー望月愛莉のレベルが上がりました。
ーー望月愛莉のレベルが上がりました。
ーー望月愛莉のレベルが上がりました。
ーー望月愛莉のレベルが上がりました。
ーー望月愛莉が固有スキル【合成】を覚えました。
「うひゃえ!?」
「ひゃう!?」
まだ慣れない未来と愛莉。こんなに一度に何度も声が響いたのも初めてなので、仕方ないと言えば仕方ないのだが。
「何かめっちゃレベル上がったね!強くなったって事?」
「どうなんだろう……あまり変わった感じしないけど」
「そうだ、鑑定してみて!」
なるほど、もしかしたら鑑定でステータスに変化があるかもしれない。そう思い、言われた通り未来を鑑定するべく未来の顔をじっと見つめる愛莉。
「そ……そんなにじっと見られると恥ずかしいよ愛莉……」
「はいはい、今はそういうのいいから」
「ぶぅ~」
愛莉が未来の顔をじっと見つめると、未来の頭の上に文字が浮かび出す。
『日下未来(職業無し:Lv5)
ーー固有スキル:短距離転移、瞬剣(LV6)、投擲(Lv6)、言語認識
ーーパッシブスキル:腕力上昇(Lv2)脚力上昇(Lv3)回避(Lv1)』
「……あれ?いつの間にか投擲と瞬剣のレベルが6になってるけど……そんなに上がったの?」
「え?どっちも一回しか上がってないよ?」
どちらも一回なら、最初はレベル1だったので現在は2の筈だ。しかし今は6まで上がっている。つまりーーーー
「そっか、固有スキルは本人のレベルが上がった時にも同じだけ上がるんだ」
「へえ、そうなんだ。あっちは?なんだっけ………パッションスキル?」
「パッシブスキルだよ。腕力上昇が一つ上がってる」
「ああ、それはさっき狼と戦ってる時に上がったんだー。お陰であの長い石刀を投擲出来たんだよっ」
未来の説明で色々と合点がいく愛莉。それなら腕力上昇が一つ上がっている事も、最初は投擲するの無理と言っていた最初に作った石刀を投擲出来た事も納得出来る。
じゃあ次は自分のステータスを見てみようと思った時、愛莉は突然尿意を催した。ずっと恐怖と緊張の連続だったのがプッツリと解けて、安心したせいだろう。見ると、未来も足をモジモジとさせている。
「あのね愛莉……あたしちょっと……おしっこしたくなっちゃって……」
「あ、うん……実はわたしも………」
お互い顔を見合わせて頬を染める。トイレなどある筈もないこんな場所、当然その辺でするしかない。
「じゃ、じゃあこの木のこっち側とあっち側で別れてしよっか!しゅ、集合は隣の木の下って事で!」
「わ、分かった。じゃあわたしが反対側に行くね」
相変わらず頬を薄っすらと紅く染めながら、愛莉が巨木の反対側へと移動する。
初めて身体を重ねたのは中学生の時。それから何度となく身体を重ねた未来と愛莉だが、相手の放尿する所など見た事もないし、放尿した後の尿も見た事など無い。お互い相手を愛してやまないが、そんなマニアックな趣味など持ち合わせてはいない。
「愛莉……行ったかな……」
愛莉の姿が巨木の向こう側に隠れたのを確認した未来は、履いているデニムのショートパンツと下着を同時に下ろす。そしてその場にしゃがみこむと、我慢していた欲求を吐き出した。
耳には、自分の尿道から放出される放尿の音が聞こえて来る。こんな青空の下で放尿などした事の無い未来は一抹の不安を覚えつつも、自分の足元に出来上がってゆく水たまりを見て、何とも言えない気持ちになった。
たまにはこういうのも悪く無い。開放感があって、これはこれで有りだなと。強いて言えば、海の中で誰にも気付かれないまま放尿した時のような、そんな謎の開放感だった。
「ふぅ……全部出た……あ、ティッシュ持ってたかな……」
最初からずっと背負っている小型のリュックを器用に胸の前まで持って来る。小袋のファスナーを開けると、ポケットティッシュが一つだけ入っていたので、二枚ほど取って半分に折りたたむ。そしてティッシュでアソコを拭き、ふと(このティッシュどうしよう………?)と考えて、そっと足元に置いた。
「うう……紙だからいつか自然に還るよね?」
自分にそう言い聞かせ、パンツをずり上げる。そしてショートパンツに手を掛けたその時、未来の後ろから女性の声が聞こえて来た。
「あのぉ、ちょっといいかしら……?」
「ば、馬鹿っ!い、今はやめときなさいってリーシャ!」
聞こえて来た声は二人分。一つはおっとりとした緊張感の無い声で、もう一つは何やら焦ったような口調の声。
未来は錆びついたロボットのようにギギギと首を後ろに向ける。そこには居たのは、柔らかい笑顔をたたえた水色の髪の少女と、顔を真っ赤にしてそっぽを向いている紫色のポニーテールの少女。水色の髪の少女が未来に話し掛けて来る。
「あのね、貴女に少し聞きたい事があるのだけど……いいかしら?」
穏やかな表情。同性から見ても美少女だと思えるような少女が、優しい笑顔でこちらを見ている。その隣には別の美少女が居るのだが、そっぽを向いて耳まで真っ赤に染めている。まるで、見てはいけないものを見てしまったかのように。
「う………え………?」
「あ、怖がらないでね。本当に少し聞きたいだけでーーーー」
「い………いつから………そこに……?」
未来が恐る恐る訊ねる。すると、水色の髪の少女は正直に答えた。
「んー、少し前から。あら、でも気にしないでね?生理現象だし仕方ないと思うの。こんな森の中だし、わたしだってしたくなったら同じ事をーーーー」
最後まで聞き終える前に、未来の瞳に涙が溜まってゆく。顔は茹でダコのように真っ赤に染まり、全身がブルブルと震えるそしてーーーーー
「あああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーッッ!!」
っと、盛大に叫んだのだった。
■■■
「うわぁぁぁぁん!愛莉にすら見せた事無いのにぃぃぃーーーーッ!!」
愛莉の胸の中で盛大に泣き叫ぶ未来。つい先ほど、見知らぬ二人の少女に放尿している所を見られてしまい、あまりの羞恥心で泣き出してしまった未来を、愛莉が抱きしめながら頭をぽんぽんと優しく撫でている。
(わ、わたしじゃなくて良かった………)
胸中ではそんな事を考えて胸を撫で下ろしているのだが、それにしても未来が可哀想過ぎる。自分じゃなくて本当に良かったのだが。
「あのぉ……ごめんなさい。まさかそんなに恥ずかしいだなんて………」
「は、恥ずかしいに決まってるでしょリーシャ!女の子がおしっこしてる所を見られたのよ!?」
「うわぁぁぁぁぁん!やっぱり見られてたんだぁぁぁぁーーーーッ!!」
「あ、違っ……わ、わたしはすぐに横を向いたから!ほとんど見てないから!」
「あはは……つまり少しは見たんだ………」
泣き叫ぶ未来、困った顔をしているリーシャと呼ばれた水色の髪の少女、真っ赤な顔をして何やら弁解している紫色のポニーテールの少女、その少女の言い訳に思わず苦笑してしまう愛莉。
何やら収集がつかない事態に陥ってしまったので、愛莉が未来の頭を撫でながら二人の少女に声を掛ける。
「それで……貴女達はどちら様?」
「あ、ごめんなさい。わたしはリーシャっていうの。隣の娘はサフィーよ」
「はあ……リーシャさんと……サフィーさん?」
「呼び捨てでいいわ。そんなに歳も違わないでしょ」
何となくおっとりした雰囲気のリーシャと、何処かツンとしているサフィー。服装を見ると、リーシャは上半身が白いローブ、と言うかケープのような物を纏っており、下半身は白いショートパンツのような服装。サフィーは黒い膝丈のローブを纏っている。二人共、いかにもファンタジーの世界に出て来そうな服装だ。
(コスプレ……じゃないよね。やっぱりここって………)
浮かび上がるステータス、実際に使用出来るスキル、地球には絶対に居ないような巨大な狼、そして目の前に立つ二人の少女。
(やっぱり……ここは異世界なんだ)
VRなどではない、現実の世界。愛莉は自分達が異世界に来てしまったのだという事をようやく受け入れたのだった。
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