百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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駆け出し冒険者の章

42.訪問

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 大衆浴場から自分達の部屋へと戻って来た未来と愛莉は、服を脱いで下着姿になる。
 今朝、グリーグの森に出発する前に服は買ったが、とりあえず一着しか買っていない。なので当然、部屋着なんてものは無いのだ。

 どうせ部屋では二人きりだし、誰かが来る事も無い。来たとしてもリーシャとサフィーだけだろうし、別に下着姿を見られた所で何とも思わない。先ほどまで風呂で、下着姿どころかお互い裸をさらけ出していたのだから。
 そんな未来と愛莉だが、未来はベッドの上で胡座をかきながら、じっと愛莉を見つめている。そして愛莉はベッドの上で足を崩して座り(所謂女の座り)、手のひらを上に向けている。その手のひらの上には何も乗っていないが、その手のひらから数センチ上の所ではーーーーーリップクリームがふわふわと浮かんでいた。


「やっぱり何回見ても不思議。完全にハンドパワーだよね!」
「あはは、魔力操作ね」


 何故愛莉がリップクリームを空中に浮かべる事が出来るのか。それは今日最初のワイルドウルフを倒してレベルが上がった時に会得したパッシブスキル【魔力操作】によるもの。
 この魔力操作を鑑定眼で鑑定した所、次のような説明文が出た。


『魔力操作:体内の魔力を使用する事で、物体に干渉する事が出来る』


 何とも分かりづらい説明文だったが、頭のいい愛莉にはピンと来たらしい。しかし魔力について未だに良く分からなかったので、サフィーに訊ねてみた所、魔力は誰の身体にも流れている力で、感覚を研ぎ澄ませば体内で魔力が流れている感覚も分かるのだという。
 魔法とはその魔力を術式に変換した物で、召喚術は魔力を捧げて召喚獣を呼び出す術との事だった。


「つまり愛莉は魔法とも召喚術とも違う魔力の使い方を覚えたって事なんだね」
「うん。まだ何が出来るのか分からないけど、毎日練習してみようと思う」


 実はこのスキルを覚えて、サフィーから魔力についての説明を受けてからは、グリーグの森の移動中などに小さな石や木くずなどで魔力操作の練習をしていた。
 魔力そのものを放出して何かを操作するなど、魔法に長けたサフィーにも出来ないらしいので驚いていた。
 そして愛莉はこのスキルに、自分なりの活路を見出す。このスキルのレベルをもっと上げて、魔力を自由自在に操る事が出来れば色々な事が出来るのでは無いか?


「んー、でも具体的にどんな事が出来るの?」
「例えば、武器を魔力操作で操って遠距離から攻撃するとか出来るんじゃないかな?」


 魔力で武器を自在に操り、離れた所から一方的に攻撃する事が出来る。未来の【投擲】と違う所は、魔力で操作しているので同じ武器を何度でも使えるという点と、一方向からだけではなく、どんな方向からも攻撃出来るという点。
 そして一度投げて終わりの投擲だと、殺傷能力のある鉄製の剣などは勿体なくて投げられないが、魔力操作であれば殺傷能力のある武器を遠慮せずに使える点。投擲ほどの威力が無い分、武器自体の性能で攻撃力を補う事が出来ると愛莉は考えている。


「おお!じゃあ遂に愛莉も戦闘に参加出来るね!」
「まだ先だけどね。今はもっと魔力操作のレベルを上げなくちゃ」


 今日一日で魔力操作のレベルは既に4まで上がった。だが、まだまだ実践では使えないだろう。それにまず、武器が無い。実は今朝訪れた武器屋で、愛莉の思い描いている攻撃方法にうってつけの武器を見かけていた。少し大きいので扱いが難しそうだが、持ち運ぶ分には魔法鞄マジックバッグがあるので問題ない。
 あとはその武器を魔力操作で自在に操る事が出来れば、未来の言うように攻撃に参加する事が出来る。


(それにもし、魔力をの代わりに出来ればもしかして……)


 この世界に火薬があるのかどうか分からないが、あった所で火薬の扱い方など分からない。だが魔力を起爆剤として使う事が出来れば、元の世界に存在した高威力の遠距離武器が完成するかもしれない。
 その為にはまだまだ足りない物も多いが、最終的な目標にしておく分にはいいかもしれないと愛莉は思っていた。

 愛莉がリップクリームをふわふわと浮かべ、更にはリップクリームを空中でくるくると回していると、不意に部屋のドアをノックする音が響いた。
 思わず魔力操作をやめて、未来と顔を見合わせる。こんな時間に一体誰だろうか?いや、先ほど自分達が思ったように、この部屋を訪れる者など、隣の部屋の住人であるリーシャとサフィーしか居ない。
 低い確率で宿屋の女将とその娘(女将の旦那は数年前に死去している)という場合も有り得ない事では無いが、やはり確率は低いだろう。更に言えば、現在この宿屋に泊まっているのは自分達の四人だけなので、その他の誰かという線はほとんど無い。


「はーい、どちら様?」


 とは言え、二人とも下着姿だ。もしもリーシャ達以外の誰かならこのままドアを開ける訳にはいかないので、未来がドアの前で確認する。すると、思った通り聞き覚えのある声が返って来た。


「あ……わたし。サフィーだけど」


 ホッと胸を撫で下ろす未来と愛莉。やはり知り合いの少ない異世界で二人、いきなりの訪問者ともなれば思わず緊張してしまう。ここは治安の良い日本では無いのだから。
 鍵を開け、ドアを半分だけ開けて未来がヒョイと顔だけを外に出す。そこには、少しだけ頬を紅く染めたリーシャとサフィーが、うつむき加減で立っていた。


「やっほー、どうしたの二人とも?」
「あ……夜分遅くにごめんなさいね。少し……二人の話が聞きたいと思って来たのだけど……」


 未来の問いかけに答えるリーシャ。自分からリーシャを誘ったサフィーは、土壇場になって恥ずかしくなったのか、何故か無言のままだった。そんな二人を廊下に残し、未来が一度顔を引っ込める。


「愛莉ーっ、リーシャ達が話したい事があるみたいなんだけど、入って貰ってもいいよねー?」
「うん、いいよー」


 リーシャとサフィーの耳にも、部屋の中の愛莉の声が届く。愛莉の声は何処か落ち着いていて、普段聞いていても耳障りが良い声だった。


「あ、入っていいよ。入ったらドアと鍵閉めてねー」
「あ、はい」
「お……お邪魔します……」


 緊張した面持ちで部屋に入る二人。なぜだか物凄く余所余所しいのだが、未来は気にしない事にした。
 そしてうつむきながら部屋に入った二人は、未来に言われた通りドアを閉めて鍵をかける。そこでようやく部屋の中に視線を送り、視界に映り込んで来た光景に胸の鼓動が激しさを増した。

 二つのベッドは部屋の中央でピッタリとくっついていて、ズレないように互いのベッドの足を紐で縛ってある。
 更に、そのベッドの上で足を崩して座っている愛莉は下着姿。すぐ近くに立つ未来も下着姿だった。そんな二人を見た瞬間、リーシャとサフィーの顔が真っ赤に染まる。
 もしや、まさにこれから行為に及ぶ所だったのではないだろうか?もしそうなら、タイミング的に良かったのか悪かったのか微妙な気持ちになってしまった。


「あ、椅子とか無いからベッドに座ってね!」
「二人共いらっしゃい。部屋着とか持ってないから下着姿だけど気にしないでね」


 それを聞いて、何だそういう事かと納得する。確かに今朝は少し急いでいたので、未来も愛莉も着る物は下着の他には服を一着買っただけ。当然部屋着など買ってないし、服のまま寝るのもどうかと思ったのだろうと察する。


「あ……うん……」
「べ、別に気にしないわ……」


 そう言いつつも、思い切り意識してしまうリーシャとサフィー。何とかベッドに腰掛け、未来と愛莉を交互に見ると、未来はベッドの上で胡座をかき、愛莉は足を崩して座っている。それがとても扇情的に見えて、二人の心臓は早鐘を打っていた。


「それで、話って何?冒険者の事とか?」


 早速未来が話題に切り込む。だがリーシャとサフィーは恥ずかしそうに俯いたまま、未来の問いかけに答えようとしない。
 思わず愛莉と顔を見合わせて、二人で首を傾げる。いきなり訪ねて来たかと思えば、終始無言の二人。それが何故なのかは、未来にも愛莉にも全く心当たりが無かった。

 とは言え、このままでは埒が明かない。もう一度未来が訊ねようとしたその時、サフィーが意を決したように顔を上げた。そして二人の顔を見ながら口を開く。


「ふ、二人って……こ、恋人同士なのよね!?」
「「えっ!?」」


 図星を突かれて思わず驚く未来と愛莉。何故だろう、何故分かったのだろうか。もしかして女の勘だろうか?それとも、そんなに分かりやすい態度を二人の前で取っていたのだろうか。


「えっと……それは……」
「あはは……何で分かったの?」
「み、未来!」


 素直に肯定してしまう未来に対して、思わず大きな声を上げる愛莉。今まで自分達の関係を誰かに知られた事など無かったが、こうして知られてしまうと思っていた以上に恥ずかしい。


「いいじゃん、隠したって意味無いし」
「それは……そうかもだけど……」


 確かに、ここは異世界だ。知られたからと言って、別に困る事は何も無い。それに知られてしまった相手だって、リーシャとサフィー。二人も自分達と同じように、同性が恋人なのだから気持ちだって分かってくれている筈だ。
 

「あのね……昨日の夜……聞こえて来たの……」
「……ん?聞こえたって何が?」
「……ふ、二人の……その……」


 言い淀むリーシャ。どうやらこれ以上は自分の口からは言えないようなので、サフィーが顔を紅く染めながら続きを口にする。


「二人の……エ、エッチな声が……」
「…………………」
「………………え」


 その瞬間二人を襲ったのは、身を焼く程の羞恥心。聞かれていた?あの声を?でも部屋の壁はそれなりに厚かった筈だ。
 いやまて、それは勝手にそう思い込んでいたに過ぎない。それなのに昨夜の自分達は、ラブホテルでしている時さながらの、大きな喘ぎ声を出していた。隣の部屋にリーシャ達が居る事など、完全に失念していたのだ。


「ちょ、やだそれ!チョー恥ずいぃぃーーッ!!」
「うう………うう……」


 顔を耳まで真っ赤に染め、顔の前で手をパタパタしている未来と、頭を抱えてうずくまる愛莉。
 愛莉にとってこれほどの羞恥心を感じたのは生まれて初めてだ。未来は昨日、自分の放尿している所を二人に見られたのが一番の恥ずかしさだったが、これはこれでワースト一位タイの恥ずかしさだ。

 二人が恥ずかしそうにしている姿を見て、リーシャとサフィーは不思議そうな表情を浮かべる。今朝は大丈夫とか平気とか言っていたのに、いざその事を話してみるとこの恥ずかしがりよう。一体どういう事かと思ったが、それは一先ず置いておいて、サフィーが本題に入る。


「ふ、二人にお願いがあるんだけど!」


 そのお願いとは、羞恥で身を焦がしている未来と愛莉を更に仰天させてしまうお願いだった。
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