百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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駆け出し冒険者の章

51.魔力上昇

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 スナイプ達が二匹のビッグフットと熾烈な戦闘を繰り広げている頃、クローバーの四人はもう少し上へと山道を登っていた。


「うーん、モンスター出て来ないなー」


 もっと頻繁に現れるかと思っていたモンスター(主にビッグフット)だが、ここまで一度も遭遇していない。とは言え、麓から山の中腹まで広がる森はビッグフットの生息域でもあり、彼らのナワバリだ。山を登る余所者が居るのに一匹も遭遇しないなど有り得ない。


「あ、右上の方に居るよ」


 未来のスキル【気配察知】でビッグフットらしき気配を見つける。そしてその言葉通り、少しすると森の中から山道へとビッグフットが現れた。
 既に道端の小石から石刀を作り出していた愛莉は、それを未来に渡す。その横ではサフィーが既に、いつでも魔法を撃ち出せるように手のひらに魔力を込めていた。


「じゃあわたしから行くわよ。どうせ効かないんだろうけど経験値欲しいからね!火球フーバロン!」


 基本的に森の中など、燃え広がる場所での炎系魔法は使用自体がご法度だ。しかしビッグフットが居るのは開かれた山道。ここならいいだろうと放ったサフィーの魔法は、こちらに向かって来ていたビッグフットに直撃する。その瞬間ーーーー


「グォォォーーーーッッ!!!!」


 ビッグフットの全身が炎に包まれ、苦しそうな咆哮を上げる。これには誰よりも、魔法を放ったサフィー自身が一番驚いていた。


「あ、あれ……?結構効いてる……のかしら?」


 レベル15のメリッサの魔法がほとんど効果が無かったのに対して、何故レベル13のサフィーの魔法は効果があるのか。これには様々な要因があった。
 まず、ビッグフットは炎系の魔法に弱い。ビッグフットに限らず、獣系のモンスターは大抵が炎に弱いのだが、そういったモンスターが出没するのは大体が森の中。先にも述べたように森の中での炎系魔法使用はご法度なので、なかなか獣系のモンスターに炎系魔法を撃つ機会が無い。

 そしてもう一つが、サフィーの持つパッシブスキル【魔力上昇】によるものだ。魔力の強さとは魔法の威力に直結する。このスキルを持つサフィーは、元となる魔力に常にが掛かる。つまり、自身のレベルが低くて魔力自体も低いうちは大した補正値にならないが、自身のレベルを上げて元の魔力も強くなれば、その分プラスの補正も大きくなるという、魔道士としては喉から手が出るほど欲しい壊れスキル。
 だがサフィー自身、このスキルの有能性には全く気付いていない。先日スライムを一瞬で燃やし尽くしたのは自分のレベルが上がったからだと思っているが、実はこのスキルによる補正値のおかげだとは夢にも思っていない。
 なかなかレベルの上がらないパッシブスキルは、一つレベルが上がっただけで身体にもたらす恩恵は固有スキルの比ではない。そんな魔力上昇のスキルも、現在はレベルが3まで上がっている。今のサフィーの魔力、つまり魔法の威力はレベル20の魔道士と比べても引けを取らないのだ。


「す、すごいわサフィー……いつの間にかこんなに強くなって」
「へ?……ま、まあね!わたしも結構努力してるからね!」


 リーシャから尊敬の眼差しを向けられて、思わず照れてしまうサフィーだが、内心では物凄く焦っている。


(どうなってるのよ!何でレベル18のモンスターにわたしの魔法がこんなに効果あるのよ!)


 全く身に覚えが無いので、内心で戸惑いながらもリーシャの前なので弱い所は見せまいと虚勢を張る。実力は本当なので虚勢では無いのだが。


「よーっし!次はあたしの番だ……ねっ!!」


 ヒュンという音をその場に残して、目にも止まらない速さでビッグフットに投擲される石刀。それはビッグフットの腹部に命中し、あっさりと身体を貫通した。その瞬間、穿たれた腹部からは血が溢れ出し、その血はまだ身体を燻っているサフィーの炎魔法に焼かれる。


「ゴアァァァァーーーーッ!!」


 苦しそうな声を上げるビッグフット。その光景を、四人は引き攣った表情で見つめる。


「あらぁ……貫通したわね……」
「うん。貫通したね」
「やっぱり……ミクが一番の化物よね……」
「おいおいサフィー、女の子に向かって化物とか言うなし」


 このまま未来の投擲だけでも倒せそうだが、経験値獲得の為にリーシャが雷鳥を召喚する。当初はこの雷鳥の火力頼みだと思っていたのだが、今となっては止めを刺す程度の火力で十分だった。リーシャがその旨を雷鳥に伝える。


「あまりMPが消費しない程度の威力でお願いねライちゃん」
『承知したよ主』


 雷鳥がビッグフットの頭上へと飛び立つ。そしてーーーー


紫電十来シデンジュウライ


 先日ワイルドウルフに放った攻撃よりも大幅に威力を落とした雷鳥の攻撃。しかし今のビッグフットには十分だった。
 紫電に撃たれたビッグフットの身体は、先のサフィーの魔法も相まって完全に焼き付いた。しばらくは苦しそうにもがいていたが、やがてその巨体は地面に倒れ、ピクリとも動かなくなる。その瞬間、四人の頭の中にすっかり聞き慣れた声が響いた。



ーー日下未来のレベルが上がりました。
ーー日下未来のレベルが上がりました。

ーー望月愛莉のレベルが上がりました。
ーー望月愛莉のレベルが上がりました。

ーーリーシャのレベルが上がりました。
ーーリーシャのレベルが上がりました。

ーーサフィーのレベルが上がりました。
ーーサフィーのレベルが上がりました。



 一気にレベルが二つ上がり、レベル15になったクローバーの四人。そんな四人は、焼け焦げて絶命しているビッグフットを見下ろしながら、全員同じ事を考えていた。

 もしかして、いや、もしかしなくても自分達は、自分達が思っている以上に強いのではないだろうかと。
 昨日魔力が枯渇するまで頑張って、ようやくビッグフットを一匹倒して来たレベル15のスナイプのパーティ。それよりはやれる自信はもちろんあったが、まさかこんなにあっさりと倒せてしまうとは思ってもいなかった。しかもリーシャもサフィーもほとんどMPを消費していないし、未来と愛莉のSPも同様だ。
 この分だと、ビッグフットなら何匹でも倒しながら山を登ってゆける。そうすれば、頂上に辿り着く頃にはもっとレベルが上がっているだろう。


「いやー、案外簡単に倒せたね!サフィーの魔法凄かったし!」
「な、何言ってるのよ、わたしよりミクとリーシャの方が凄いでしょ!?」
「うーん……でもミクはともかくとして、サフィーの魔法がこんなに強かったなんて正直思ってなかったのよね~」


 それは愛莉も同感だった。レベル13(現在は15だが)のサフィーの魔法があれほど効果があるのであれば、昨日スナイプのパーティが苦戦した理由が分からない。サフィーと同じ魔道士のメリッサは、サフィーよりもレベルが高かったのだから。
 愛莉は再度サフィーを鑑定眼で覗き見る。そして一つの気になるスキルを見つけ、そのスキルの鑑定を始めた。


『魔力上昇(Lv3):本来の魔力値を元に魔力値をプラス補正する。スキルのレベルが上がると補正値も上昇する』
 
 
(魔力をプラス補正……そっか、これが原因だったんだ)


 ようやく得心のいく愛莉。詳しい補正値は分からないが、このスキルによってサフィーの本来の魔力にプラスの補正値が掛かっている事は理解出来た。それが魔法の威力を底上げしていたのである。


「魔力上昇のスキルのおかげみたいだよ。そのスキルの効果がねーーーー」


 サフィー自身よく知らない【魔力上昇】のスキルについて説明する愛莉。その説明を聞いて未来が首を傾げた。


「んー、つまりサフィーのレベルが上がって魔力が強くなれば、その分だけ補正値も上がっていくって事?」
「うん。その補正値がどれくらいなのか分からないけど、同じレベルの魔道士でもこのスキルの有無で、魔法の威力がかなり変わって来ると思う」
「凄いじゃないサフィー!今まで頑張って来た甲斐があったわね~!」


 自分の事のように喜ぶリーシャだが、逆にサフィーは実感が湧かなかった。自分にそんな凄い能力が備わっていたなど、まるで現実味が無いのだ。


「あ……う、うん」


 四人の中で、自分一人だけが凡人だと思っていた。最近まで攻撃手段の無かったリーシャは、自分だけがお荷物だと言っていたが、そもそもこの世界で召喚士など貴重な存在だ。だからサフィーは常々、攻撃系の召喚獣とさえ契約出来れば、リーシャは誰よりも凄い存在になるのだと確信していた。
 そして実際に召喚獣の攻撃を目の当たりにして、想像を遥かに超えるその火力に目を見張った。

 未来と愛莉の凄い力を目の当たりにする度に、そしてリーシャの召喚獣の力を見せられたあの時から、サフィーの中に焦燥感が生まれた。このままでは自分一人だけ置いていかれる。これから先、皆の足手まといになってしまうと、密かに危機感を覚えていた。
 だがもしも愛莉の言う事が真実ならば、自分にも特別な力が宿っているという事になる。本当にそうだとしたら、三人と肩を並べられるかもしれない。


(わたしに……本当にそんな力が……)


 不意に涙が溢れる。自分にもそんな凄い力があるのだと知って、こんなに嬉しい事は無かった。これで、胸を張って皆の仲間だと言えるかもしれないのだ。


「サ、サフィー!?」
「あ……な、何でも無いわ。さあ、早く先に進みましょ!」


 涙を隠しながら先に進むサフィー。そんなサフィーの背中を見て、三人は顔を見合わせる。だが次の瞬間にはサフィーに向かって駆け出し、サフィーに後ろから抱きついた。


「な、何してるのよあんた達!?」


 口では批難するも、嬉しそうに口元を綻ばせるサフィーだった。




 
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