百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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迷宮挑戦の章

123.切り札

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 思えば、この迷宮はリーシャにとっては鬼門だったのかもしれない。

 狭い迷宮内、攻撃の手数が二つしか無いリーシャにとって、その一つが封じられた状態で始まった迷宮探索。


(この狭さだと……ライちゃんは呼び出せないわね~………)


 迷宮内を一目見るなり、リーシャの中で結論づいたのは風鼬キュウのみで戦おうという思いだった。
 
 迷宮と言えども、中には天井が高く広い迷宮なども世の中には存在するかもしれない。しかし少なくともこのガルズバール迷宮はそうではない。空を飛んで上から攻撃する雷鳥ライを呼び出すには、あまりにも各階の天井が低すぎるのだ。


「飛翔斬!」
「月閃刃!」
炎槍フラムランス!」
氷縛グラスライア!」


 目の前では、仲間達がリザードキングと死闘を繰り広げている。それなのに、自分には何も出来ない歯がゆさに、リーシャは天を見上げた。


(そう言えば……ここって他の階よりも天井が高いわ………)


 地下十二層、地下九層から始まる地下宮殿の最深部、最奥の玉座の間。突然見えない力で玉座の間に引きずり込まれたかと思った瞬間、いきなりリザードジェネラルとの戦闘が発生した。
 更には自身の召喚獣である風鼬キュウをリザードジェネラルに倒され、そのショックもあって部屋の中を見回す余裕など無かった。
 

(此処なら……もしかしたら)


 だからこそ改めて天井を見上げてみると、随分と高い。部屋の広さも十分にあり、此処ならではないだろうか?


 ふと視線を元に戻すと、皆が懸命に戦っている。だが、未だにリザードキングに致命傷は与えられていない。未来の飛翔斬が命中しても、愛莉の月閃刃で身体を抉られても、サフィーの魔法が炸裂しても、リザードキングの身体はすぐに再生してしまう。
 その再生速度は先に見たリザードジェネラルの比ではなく、ほんの僅かな時間で再生してしまう。


「はぁはぁ……しつっこいわね!」
「サフィー冷静に……はぁはぁ……MP残量に気をつけて………」
「アイリちゃんも……MP平気……?」
「はぁはぁ……実は結構ヤバい……」


 長い時間、魔力操作での月閃刃を繰り出している愛莉だが、元々のMP総量がサフィーやエストほど多くないので、既にそのMPは尽きかけている。
 とは言え、誰か一人でも攻撃の手を緩めれば、あのリザードキングはその隙を突いて一気に攻撃に転じるだろう。一度でも防戦に回ってしまえば、また攻撃に転じるのが難しくなる。なので攻撃を中断してマジックポーションを飲む事も出来ないでいた。


「くっ……嫌になるわねほんと……」


 もはや誰の顔を見てもその表情には一切の余裕も無い。攻撃の主導を握っているのに、ジワジワと追い詰められているのはこちらなのだと、誰もが理解しているのだ。

 いつも太陽のように明るい未来も、常に表情を変えない冷静な愛莉も、誰に対しても強気で勝気なサフィーも、穏やかな笑顔で皆に安らぎをくれるエストも、今は焦りの表情が色濃く出ている。このままではジリ貧、誰かのMP、SPが尽きた時こそ、死へのカウントダウンが始まる。
 だからこそ、迷っている暇など無かった。全員無事に帰るには、勝たなければならないと先ほど自分で言ったのだから。

 腕を上げ、手のひらに魔力を込める美少女召喚士。宙には召喚の魔法陣である召喚陣が現れる。


「来て………ライちゃん!」


 召喚陣が輝き出すと、召喚陣を通って孔雀のような美しい鳥が空中へと羽ばたく。それはギリギリ天井にぶつかる手前で止まり、優雅に弧を描きながらリーシャのすぐ頭上へと降りて来た。


『お呼びかな我が主よ。なかなかどうして窮屈な場所のようだが』


 リーシャの召喚獣『雷鳥ライ』が無事に召喚された瞬間だった。



■■■



「ライちゃん……」
『んん、悲しそうな『聖気』だね。ああ、風鼬の事は知っているよ。随分と悔しがっていたからね』


 同じ主を共にする雷鳥は、現在の風鼬の状態も知っている。もちろん召喚獣に仲間意識などは無く、ただ知っているだけ。なので自分には関係無いし、別に風鼬を労る気持ちも無い。だがーーーーー


「ライちゃん…………助けて…………」


 主にそうされた召喚獣は、当たり前のようにその命令に従う。それはいつの時代であろうとも、何一つ変わらない。自分で選んだ主の命令であれば、全身全霊を尽くすのが召喚獣だ。当然、風鼬もそうしたのだから。


『了解した主よ。目標はあのスケルトンだね』


 スーッと、羽を広げたと思ったら音も無く飛び立つ雷鳥。そのまま天井付近まで飛行すると、目標であるリザードキングを眼下に見据えた。そしてーーーー


『さて、私の力が及ぶ相手だといいのだけど』


 ビリビリと、紫色の羽が帯電してゆく。それは孔雀のような綺麗な羽模様を更に幻想的にさせるが、そのタイミングで雷鳥の周りに黄色い光が集まって来る。


『これは……精霊?まさか精霊が私に力を貸すと?』


 中精霊と契約したリーシャと、そのリーシャが使役する召喚獣。先の風鼬キュウ同様、今度は雷の『中精霊』が、リーシャの召喚獣である雷鳥に力を貸す。


『なるほど、私の主は召喚士であると同時に精霊術士だったのだね。納得した』


 ビリビリと発生していた紫雷が、更に勢いを増してゆく。もはや雷鳥の身体が見えなくなるほどの、紫色の電流が雷鳥の身体を包み込んでいた。


「す、凄ごそうねあれ!」
「うん……物凄いマナを感じる」


 リザードキングに攻撃を仕掛けながらも、リーシャの召喚した雷鳥に視線を送るサフィーとエスト。
 随分と距離が離れているのに、見ているだけでこちらが黒焦げにされそうな雷を纏っている雷鳥。あれは、自分達の知る雷鳥では無い。


『さて、主たっての願いだ。私も本気で行くとしよう』


 ふわっと、美しい羽を羽ばたかせた雷鳥はリザードキングの頭上へと至る。未来、愛莉、サフィー、エストの攻撃を受けながらも依然として五体満足なリザードマンの王は、突如として現れた脅威に向かって双眸を真っ赤に光らせる。

 これは捨て置けない。コレが何かは分からないが、今すぐに消し去っておかなければならない。そう判断したリザードキングは、既に穂先の失った鉄の棒を雷鳥に向かって投擲する。
 それは空を切り裂き、真っ直ぐに雷鳥へと向かう。未来達の攻撃よりも、突然現れた紫色の鳥を脅威だと認定したのだ。


『乱雷』


 だが、雷鳥の放った紫電によって、リザードキングが放った鉄の棒は軌道を大きく変える。それは雷鳥の身体を大きく外れながら頭上へと飛び、ついには天井に突き刺さった。
 とは言え、武器を失ったからといってリザードキングの戦意は何一つ変わらない。目の前のアレは脅威だ。早く消さなければならない存在だと。
 右腕を上げ、手のひらから一瞬で魔法を撃ち出す。それは黒い氷の様な魔法で、凄まじい勢いで雷鳥に迫るがーーーーー


『宵雷陣』


 雷鳥の周りに張り巡らされた雷の防御壁によって、水蒸気と化す。尚も魔法を撃ち続けるリザードキングだが、それは一発として雷鳥には届かない。


『そろそろこちらから行くよ』


 紫色の雷鳥の羽が眩い紫光を発すると同時に、雷の中精霊のマナで増幅した紫電を、リザードキング目掛けて全力で放つ。


紫電千雷シデンセンライ


 その瞬間、無数の紫電がリザードキングに降り注ぐ。それは轟音を響かせ、玉座の間全体が紫一色に染まった。


「うわぁぁぁーーーーッ!!」
「きゃあぁぁぁーーーーッ!!」


 誰も目を開ける事も出来ずに、思わず両手で耳を塞ぐ。雷鳥の放った紫電千雷の衝撃で地面が揺れ、空気がビリビリと震える。


 やがて無数の紫電が終わり、濛々と立ち込める粉塵の中でクローバーの五人が見たものはーーーーー


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