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迷宮挑戦の章
130.みんなきっと
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「それで、買い取り額ってどれくらいだったんですか!?」
前のめりでそう訊ねてくるのは、クローバー馴染みの料理屋の看板娘であるセセラ。
冒険者ギルドを後にしたクローバーの五人は、そのまま宿には帰らずに夕食を食べる為に半月ぶりにセセラの店へと顔を出した。
「あれ!?皆さん!」
事前に一ヶ月は帰って来ないと聞いていたので、未来達が顔を出した時には心底驚いていたセセラ。五人が食事をしている間もセセラはテーブルに同席し、迷宮での話などを土産話として聞いていたのだが、そこから話は今日の冒険者ギルドでの話題へと移行した。
商売人の娘であるセセラは、もちろん皆から語られる冒険者としての話も大好きなのだが、やはり血が騒ぐのか五人がどれくらい稼いだのかが気になる。
「えっと……これぐらい……」
サフィーが指を四本立てる。それを見たセセラは目をキラキラさせて声を上げた。
「凄い!金貨四枚!?」
だが、それはセセラの勘違いである。実際はーーーーー
「えーと、金貨は金貨なのだけど………」
「大金貨……だったりして………」
「…………え?」
大金貨。一枚で金貨十枚分の価値がある。日本円にすると、大金貨一枚でおよそ一千万円。つまり今回の迷宮探索でクローバーが稼いだ金額は四千万円。一人金貨八枚分、日本円で言うと一人頭八百万円稼いだ事になる。
「はぁ…………」
あまりの金額にさすがのセセラもピンと来ないらしく、何やら指を使ってモソモソと計算している。ギルドで金額を提示された時には、リーシャとサフィーも今のセセラと同じような反応だった。
「ひ、一人金貨……八枚!!?」
ようやく金額の凄さに気づいたセセラが卒倒しかける。しかしその後は凄いを連発し、瞳が爛々と輝いていた。
「もう大金持ちじゃないですか!」
「確かに!うちって貧乏だったから、お母さんがこれ知ったら喜ぶんだけどなー」
「わ、わたしとサフィーもよ……もの凄い田舎で、お金よりは獲った獲物で暮らしていたんですもの」
「そ、そうね。だから未だに全然実感が湧かないんだけど………」
そもそも何故これほどの金額になったのか。内訳で見ると、純度の低いシルバーボーン数十個で金貨二枚、スケルトンの魔石数十個で大銀貨五枚ほど。
金額が跳ね上がったのはストーンガーディアンの魔石と、リザードスケルトンのシルバーボーンと魔石。これがそれぞれ数十個ずつで、大金貨二枚。そしてリザードジェネラルの魔石二個と最高純度のシルバーボーンで更に大金貨一枚と金貨二枚、リザードキングの魔石一個で金貨五枚の価値があったらしい。
と言うのも、リザードスケルトンにしてもリザードジェネラルにしても、そしてリザードキングにしても冒険者ギルドでは未登録の新種モンスターだった。つまり、リザードキングの魔石は世界中探してもクローバーが持ち帰った一つしか無く、その付加価値が付いて金貨五枚なのだという。
「はぁ……新種のモンスターって儲かるのね……」
「あはは……新種で五ツ星中位ランクだもん……相当珍しいと思うよサフィーちゃん」
エストの補足に何となく納得するサフィー。確かに五ツ星モンスター自体が、この辺りではまず見ない高ランクのモンスター。そんな高ランクモンスターの新種ともなれば、確かに珍しいだろう。
「ありがとうございました!また来てくださいねーーッ」
食事を終え、セセラの店を後にするクローバーの五人。次に向かう場所はもちろん決まっていた。
「いらっしゃ………ってアレ!?みんなもう帰って来たん!?」
「こんばんわファナさん!」
ファナが受付をする大衆浴場である。相変わらず一人も客が居らず、ファナが暇そうな空気を出していたのが入った瞬間何となく分かる。
「お疲れお疲れ!辛気臭い迷宮で心も身体も疲れたし汚れたよね!?スッキリとリフレッシュしてってね!」
実は迷宮内でも愛莉の錬金術とリーシャの精霊術のお陰で、地下七層以降は毎日風呂に入ってはいたクローバーの五人。
とは言え、迷宮の地下深い場所で入るのと街の大衆浴場で入るのとでは、心に感じる余裕が段違いだ。
「はぁ……やっぱりお風呂は最高ね……」
湯に浸かるなり、サフィーが気持ち良さそうな声を出す。もちろん全員きちんと身体を洗った後に湯に入ったのは言うまでもない。
「よく言うよー、初日にあたしと愛莉が誘った時はお金がもったいないからって断ったのに」
「あ、あの時は本当に毎日の暮らしで精一杯だったからよ!」
「ふふ、そう考えるとお金の心配をしなくていいのって幸せな事よね~」
「うん。って言っても流石に金貨八枚は使い道が思いつかないけど」
愛莉や未来にしてみれば、高校二年生の女子がいきなり八百万もの大金を手に入れたという事だ。当然だが使い道など思いつかないので、きっとほぼ全額貯金に回すだろう。
「無理に使う必要なんて無いじゃない。いつどうなるか分からないんだから、必要な時まで取っておけばいいんだわ」
流石は倹約家のサフィーの意見、皆は感心したようにサフィーに視線を送る。
「な、何よ……?」
「いやー、流石はサフィーだと思って」
「うん。なかなか出来ない考え方だよね」
「べ、別に大した事じゃ………」
「わ、わたし感動した!わたしもサフィーちゃんを見習わなくちゃ!!」
中でも、特にエストがサフィーの言葉に感銘を受けたらしく、キラキラとした瞳でサフィーを見つめている。
「ちょ……エストまで……」
「ううん、わたしね……迷宮に居る時からずっと考えていた事があるの……」
そう言って一呼吸置くエスト。皆は何事だろうと首を傾げながら、エストの次の言葉を待つ。
「わたし……みんなと同じ宿屋さんに引っ越そうかと思っているの」
「え?」
「ん?」
「あら~」
「へ?」
エストのその発言は少なからず皆に驚きをもたらした。だって自分達が泊まっている宿屋と言えば、綺麗に掃除はされてはいるがお世辞にも立派とは言えない、宿泊料が月に銀貨一枚の小さな宿屋だ。
今までの言動から、エストがかなり良いところのお嬢様なのは全員何となく察しが付いている。そんなエストが、あの小さな宿屋での生活など出来るのだろうか。
「わたし……実家を出る時はお父様から結構な額を持たされて……それで結構高い宿屋に泊まっていたの。でも冒険者になって、お金を稼ぐのって凄く大変なんだって知って……でも引っ越しの踏ん切りが中々つかなくて……」
つまりは引っ越すきっかけが欲しかったという事だ。そして今がそのきっかけとしては最良の場面であるとエストは考えた。
「あはは!あたしは大歓迎だよ!」
「わたしも。エストさえ良ければおいでよ」
「うふふ、これで大好きなエストといつでも一緒に居られるわね~サフィー」
「な、何であたしなのよ!?みんなもでしょ!?」
もちろん!と、頷く未来、愛莉、リーシャ。これで正真正銘、クローバーの五人はいつでも一緒に居られる。その事実がエストにとっても、そして未来達にとっても嬉しかった。
「にしし!これでエストも毎日エッチ出来るね!」
「え!?あ、あの、そ、それは…………」
一気に顔が真っ赤に染まるエスト。俯いてモジモジとしている。
「しなくてもいいの?」
「ふえ!?そ、そういう事じゃなくて……あの……」
「やっぱりしたいのよね~?」
「うう………」
ここぞとばかりにエストを弄り倒す未来、愛莉、リーシャの三人。そんな三人のテンションに着いてゆけず、何故かエストと一緒に恥ずかしそうにしているサフィー。全くタイプの違う二人なのに、ことエッチな事に対しては似た者同士なのかもしれない。
大衆浴場を後にし、宿屋へと戻る五人。別れ際に未来達がエストをギュッと抱きしめると、エストはそれだけで幸せな気持ちでいっぱいになった。早速明日にでも四人の泊まる宿屋へ引っ越すと約束し、自分の宿屋へと戻ってゆく。
未来達はエストが見えなくなるまで見送り、やがて自分達の宿屋へ。ようやく帰って来た我が家、部屋は女将が毎日掃除をしてくれていたので、綺麗な状態だった。
「んじゃおやすみ!って言ってもエッチするんだろうけど」
「なっ……そ、そっちこそするんでしょ!?」
「もち!」
そんな会話をしながら、それぞれの部屋へと戻る。そこでようやく未来と愛莉は二人きりになり、ふぅっと一息つきながらベットに並んで腰掛けた。
実に半月以上ぶりの二人だけの時間。それだけで幸せが込み上げて来る二人だが、今回の迷宮探索では色々と見えて来た事もある。
「いやぁ、今回は大変だったね。でも無事に終わって良かった」
「うん。結構危ない場面が何回もあったもんね」
「あはは……愛莉に何回も助けられちゃったね……ありがとう愛莉」
「わたしも未来に助けられたよ。未来が居なかったら、地下一層で引き返してたから」
「ああ、あの巨大………」
「言わないで!」
ビシッと、未来の唇に自分の指を充てがう愛莉。そのまま二人はクスクスと小さく笑った。
「あの死霊王……あたしと愛莉がこの世界に呼ばれたのって、あいつを倒す為だよね」
「そう思う。アルテナっていうのがどんな存在なのか……今はまだはっきりしないけど、死霊王の口ぶりだとそのアルテナに呼ばれたみたいだねわたし達」
「んー……やっぱり神様か何かかなー?死霊王とは昔から因縁ありそうな感じだよね」
おそらく、そのアルテナという存在にも、あの死霊王は手に余る存在なのだろう。自分では倒す事が出来ないから、異世界から倒せそうな者をこの世界に転移させた。
そう考えると辻褄が合うのだが、それならば何故自分達なのだろうとも思う。こんな何処にでも居る女子高生を転移させるぐらいなら、もっと強くて適任な者が無数に居ただろうに。
「愛莉の考えてること当ててあげよっか?」
「いい。未来の思ってるので合ってるから」
「あたしはさ、あたしと愛莉で良かったって思う。だってあの時……もしもこの世界に呼ばれなかったら、きっと二人とも焼け死んでたもん」
ラブホテルの火災に巻き込まれた二人は、そのまま意識を手放した。どう都合良く考えても、あの状況から命が助かったとは思えない。だが現在こうして生きているのは、この世界に転移したからだ。
「そっか……うん、そうだよね」
「そうだよー」
本来なら失う筈だった命を救われた。その目的が死霊王を倒す事なのだとしたら、当然それに報いなければならない。そしてその時こそ、元の世界に帰る時だ。
「みんなにも正直に話さないとね」
「うん。完全に巻き込む形になるもん」
きっと、二人だけの力ではどんなに強くなっても死霊王には勝てない。あの化物を倒すには、みんなの助けが必要なのだ。
「みんな何て言うかな……協力してくれるかな……」
「それは……話してみないと分からないけど……でもきっとーーーー」
協力してくれる、何となくそんな気がした。だって、ここまでずっと互いに命を預けあって来たのだ。苦楽を共にして来たのだ。
そんな事を考えながらも、いつの間にか唇を重ねている未来と愛莉。今はあれこれ考えるよりも、久しぶりの二人だけの時間を満喫したい。そろそろお互い限界だった。
「未来」
「ん……」
「愛してる」
「うん。あたしも」
大冒険の後の暫しの休息。二人は夜が更けるまで、身体の隅々まで重ね合わせたのだったーーーーー
※長かった迷宮挑戦の章、これにて終わりです。いやはや、戦闘シーン多くて大変でしたが、どうでしたでしょうか?次章からは新しい登場人物が何人か登場しますので、どうぞお楽しみに~
前のめりでそう訊ねてくるのは、クローバー馴染みの料理屋の看板娘であるセセラ。
冒険者ギルドを後にしたクローバーの五人は、そのまま宿には帰らずに夕食を食べる為に半月ぶりにセセラの店へと顔を出した。
「あれ!?皆さん!」
事前に一ヶ月は帰って来ないと聞いていたので、未来達が顔を出した時には心底驚いていたセセラ。五人が食事をしている間もセセラはテーブルに同席し、迷宮での話などを土産話として聞いていたのだが、そこから話は今日の冒険者ギルドでの話題へと移行した。
商売人の娘であるセセラは、もちろん皆から語られる冒険者としての話も大好きなのだが、やはり血が騒ぐのか五人がどれくらい稼いだのかが気になる。
「えっと……これぐらい……」
サフィーが指を四本立てる。それを見たセセラは目をキラキラさせて声を上げた。
「凄い!金貨四枚!?」
だが、それはセセラの勘違いである。実際はーーーーー
「えーと、金貨は金貨なのだけど………」
「大金貨……だったりして………」
「…………え?」
大金貨。一枚で金貨十枚分の価値がある。日本円にすると、大金貨一枚でおよそ一千万円。つまり今回の迷宮探索でクローバーが稼いだ金額は四千万円。一人金貨八枚分、日本円で言うと一人頭八百万円稼いだ事になる。
「はぁ…………」
あまりの金額にさすがのセセラもピンと来ないらしく、何やら指を使ってモソモソと計算している。ギルドで金額を提示された時には、リーシャとサフィーも今のセセラと同じような反応だった。
「ひ、一人金貨……八枚!!?」
ようやく金額の凄さに気づいたセセラが卒倒しかける。しかしその後は凄いを連発し、瞳が爛々と輝いていた。
「もう大金持ちじゃないですか!」
「確かに!うちって貧乏だったから、お母さんがこれ知ったら喜ぶんだけどなー」
「わ、わたしとサフィーもよ……もの凄い田舎で、お金よりは獲った獲物で暮らしていたんですもの」
「そ、そうね。だから未だに全然実感が湧かないんだけど………」
そもそも何故これほどの金額になったのか。内訳で見ると、純度の低いシルバーボーン数十個で金貨二枚、スケルトンの魔石数十個で大銀貨五枚ほど。
金額が跳ね上がったのはストーンガーディアンの魔石と、リザードスケルトンのシルバーボーンと魔石。これがそれぞれ数十個ずつで、大金貨二枚。そしてリザードジェネラルの魔石二個と最高純度のシルバーボーンで更に大金貨一枚と金貨二枚、リザードキングの魔石一個で金貨五枚の価値があったらしい。
と言うのも、リザードスケルトンにしてもリザードジェネラルにしても、そしてリザードキングにしても冒険者ギルドでは未登録の新種モンスターだった。つまり、リザードキングの魔石は世界中探してもクローバーが持ち帰った一つしか無く、その付加価値が付いて金貨五枚なのだという。
「はぁ……新種のモンスターって儲かるのね……」
「あはは……新種で五ツ星中位ランクだもん……相当珍しいと思うよサフィーちゃん」
エストの補足に何となく納得するサフィー。確かに五ツ星モンスター自体が、この辺りではまず見ない高ランクのモンスター。そんな高ランクモンスターの新種ともなれば、確かに珍しいだろう。
「ありがとうございました!また来てくださいねーーッ」
食事を終え、セセラの店を後にするクローバーの五人。次に向かう場所はもちろん決まっていた。
「いらっしゃ………ってアレ!?みんなもう帰って来たん!?」
「こんばんわファナさん!」
ファナが受付をする大衆浴場である。相変わらず一人も客が居らず、ファナが暇そうな空気を出していたのが入った瞬間何となく分かる。
「お疲れお疲れ!辛気臭い迷宮で心も身体も疲れたし汚れたよね!?スッキリとリフレッシュしてってね!」
実は迷宮内でも愛莉の錬金術とリーシャの精霊術のお陰で、地下七層以降は毎日風呂に入ってはいたクローバーの五人。
とは言え、迷宮の地下深い場所で入るのと街の大衆浴場で入るのとでは、心に感じる余裕が段違いだ。
「はぁ……やっぱりお風呂は最高ね……」
湯に浸かるなり、サフィーが気持ち良さそうな声を出す。もちろん全員きちんと身体を洗った後に湯に入ったのは言うまでもない。
「よく言うよー、初日にあたしと愛莉が誘った時はお金がもったいないからって断ったのに」
「あ、あの時は本当に毎日の暮らしで精一杯だったからよ!」
「ふふ、そう考えるとお金の心配をしなくていいのって幸せな事よね~」
「うん。って言っても流石に金貨八枚は使い道が思いつかないけど」
愛莉や未来にしてみれば、高校二年生の女子がいきなり八百万もの大金を手に入れたという事だ。当然だが使い道など思いつかないので、きっとほぼ全額貯金に回すだろう。
「無理に使う必要なんて無いじゃない。いつどうなるか分からないんだから、必要な時まで取っておけばいいんだわ」
流石は倹約家のサフィーの意見、皆は感心したようにサフィーに視線を送る。
「な、何よ……?」
「いやー、流石はサフィーだと思って」
「うん。なかなか出来ない考え方だよね」
「べ、別に大した事じゃ………」
「わ、わたし感動した!わたしもサフィーちゃんを見習わなくちゃ!!」
中でも、特にエストがサフィーの言葉に感銘を受けたらしく、キラキラとした瞳でサフィーを見つめている。
「ちょ……エストまで……」
「ううん、わたしね……迷宮に居る時からずっと考えていた事があるの……」
そう言って一呼吸置くエスト。皆は何事だろうと首を傾げながら、エストの次の言葉を待つ。
「わたし……みんなと同じ宿屋さんに引っ越そうかと思っているの」
「え?」
「ん?」
「あら~」
「へ?」
エストのその発言は少なからず皆に驚きをもたらした。だって自分達が泊まっている宿屋と言えば、綺麗に掃除はされてはいるがお世辞にも立派とは言えない、宿泊料が月に銀貨一枚の小さな宿屋だ。
今までの言動から、エストがかなり良いところのお嬢様なのは全員何となく察しが付いている。そんなエストが、あの小さな宿屋での生活など出来るのだろうか。
「わたし……実家を出る時はお父様から結構な額を持たされて……それで結構高い宿屋に泊まっていたの。でも冒険者になって、お金を稼ぐのって凄く大変なんだって知って……でも引っ越しの踏ん切りが中々つかなくて……」
つまりは引っ越すきっかけが欲しかったという事だ。そして今がそのきっかけとしては最良の場面であるとエストは考えた。
「あはは!あたしは大歓迎だよ!」
「わたしも。エストさえ良ければおいでよ」
「うふふ、これで大好きなエストといつでも一緒に居られるわね~サフィー」
「な、何であたしなのよ!?みんなもでしょ!?」
もちろん!と、頷く未来、愛莉、リーシャ。これで正真正銘、クローバーの五人はいつでも一緒に居られる。その事実がエストにとっても、そして未来達にとっても嬉しかった。
「にしし!これでエストも毎日エッチ出来るね!」
「え!?あ、あの、そ、それは…………」
一気に顔が真っ赤に染まるエスト。俯いてモジモジとしている。
「しなくてもいいの?」
「ふえ!?そ、そういう事じゃなくて……あの……」
「やっぱりしたいのよね~?」
「うう………」
ここぞとばかりにエストを弄り倒す未来、愛莉、リーシャの三人。そんな三人のテンションに着いてゆけず、何故かエストと一緒に恥ずかしそうにしているサフィー。全くタイプの違う二人なのに、ことエッチな事に対しては似た者同士なのかもしれない。
大衆浴場を後にし、宿屋へと戻る五人。別れ際に未来達がエストをギュッと抱きしめると、エストはそれだけで幸せな気持ちでいっぱいになった。早速明日にでも四人の泊まる宿屋へ引っ越すと約束し、自分の宿屋へと戻ってゆく。
未来達はエストが見えなくなるまで見送り、やがて自分達の宿屋へ。ようやく帰って来た我が家、部屋は女将が毎日掃除をしてくれていたので、綺麗な状態だった。
「んじゃおやすみ!って言ってもエッチするんだろうけど」
「なっ……そ、そっちこそするんでしょ!?」
「もち!」
そんな会話をしながら、それぞれの部屋へと戻る。そこでようやく未来と愛莉は二人きりになり、ふぅっと一息つきながらベットに並んで腰掛けた。
実に半月以上ぶりの二人だけの時間。それだけで幸せが込み上げて来る二人だが、今回の迷宮探索では色々と見えて来た事もある。
「いやぁ、今回は大変だったね。でも無事に終わって良かった」
「うん。結構危ない場面が何回もあったもんね」
「あはは……愛莉に何回も助けられちゃったね……ありがとう愛莉」
「わたしも未来に助けられたよ。未来が居なかったら、地下一層で引き返してたから」
「ああ、あの巨大………」
「言わないで!」
ビシッと、未来の唇に自分の指を充てがう愛莉。そのまま二人はクスクスと小さく笑った。
「あの死霊王……あたしと愛莉がこの世界に呼ばれたのって、あいつを倒す為だよね」
「そう思う。アルテナっていうのがどんな存在なのか……今はまだはっきりしないけど、死霊王の口ぶりだとそのアルテナに呼ばれたみたいだねわたし達」
「んー……やっぱり神様か何かかなー?死霊王とは昔から因縁ありそうな感じだよね」
おそらく、そのアルテナという存在にも、あの死霊王は手に余る存在なのだろう。自分では倒す事が出来ないから、異世界から倒せそうな者をこの世界に転移させた。
そう考えると辻褄が合うのだが、それならば何故自分達なのだろうとも思う。こんな何処にでも居る女子高生を転移させるぐらいなら、もっと強くて適任な者が無数に居ただろうに。
「愛莉の考えてること当ててあげよっか?」
「いい。未来の思ってるので合ってるから」
「あたしはさ、あたしと愛莉で良かったって思う。だってあの時……もしもこの世界に呼ばれなかったら、きっと二人とも焼け死んでたもん」
ラブホテルの火災に巻き込まれた二人は、そのまま意識を手放した。どう都合良く考えても、あの状況から命が助かったとは思えない。だが現在こうして生きているのは、この世界に転移したからだ。
「そっか……うん、そうだよね」
「そうだよー」
本来なら失う筈だった命を救われた。その目的が死霊王を倒す事なのだとしたら、当然それに報いなければならない。そしてその時こそ、元の世界に帰る時だ。
「みんなにも正直に話さないとね」
「うん。完全に巻き込む形になるもん」
きっと、二人だけの力ではどんなに強くなっても死霊王には勝てない。あの化物を倒すには、みんなの助けが必要なのだ。
「みんな何て言うかな……協力してくれるかな……」
「それは……話してみないと分からないけど……でもきっとーーーー」
協力してくれる、何となくそんな気がした。だって、ここまでずっと互いに命を預けあって来たのだ。苦楽を共にして来たのだ。
そんな事を考えながらも、いつの間にか唇を重ねている未来と愛莉。今はあれこれ考えるよりも、久しぶりの二人だけの時間を満喫したい。そろそろお互い限界だった。
「未来」
「ん……」
「愛してる」
「うん。あたしも」
大冒険の後の暫しの休息。二人は夜が更けるまで、身体の隅々まで重ね合わせたのだったーーーーー
※長かった迷宮挑戦の章、これにて終わりです。いやはや、戦闘シーン多くて大変でしたが、どうでしたでしょうか?次章からは新しい登場人物が何人か登場しますので、どうぞお楽しみに~
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