百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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皇女との邂逅の章

163.皇家と冒険者ギルド

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 全員で一丸となって、死霊王に立ち向かう決意をした五人の美少女。今は全員落ち着きを取り戻し、再びソファーに腰掛けている。


「えっと……度々すみません」
「いや……グランドマスターの私にとっては、これ以上無い話を聞かせて貰った。この話に対する対価として、私からも相当の情報を君たちに提供しなければならない」


 何処か興奮気味のマディアス。常に見せている飄々とした笑顔とは違い、まるで少年のような嘘偽りの一切無い笑顔を浮かべている。


「先ずは君たちが気になっている事から順に話そう。ただ、これから語るほとんどは、所謂トップシークレット。この帝国内でも私を含めて限られたほんの一部の者しか知らない話だ」


 膝に肘をつき、胸の前で手を組み合わせるマディアス。そんなマディアスの言葉を聞き、リーシャとサフィーは戦々恐々としてしまう。
 トップシークレット、この帝国でも限られた者しか知らない話。そんな話を、自分たち如きが聞いてしまっても良いのだろうか、そんな不安が胸に去来する。


「あ、あの……そんな大事な話を……」
「あ、あたし達が……聞いてもいいんですか……?」


 相変わらずこういう場面では腰が引けるリーシャとサフィー。これはもう二人に染み付いた癖みたいなものなので治しようが無い。


「もちろん他言無用が条件だ。でもね……君たちは既にAランク冒険者。そしてあの死霊王に唯一遭遇し、こうして生きて帰って来ている。そんな存在は君たちだけだ」


 改めてそう聞くと、何だか自分が特別な存在に思えて来るが、それもこれも全ては未来と愛莉の存在があってこそだ。
 だが、とりあえず納得するリーシャとサフィー。それがたとえ未来と愛莉の存在あってこそだとしても、今や自分たちも彼女たちと同じパーティなのだ。あまり卑屈になり過ぎても二人に迷惑が掛かってしまう。そう思い、佇まいを整えるとマディアスが納得したように頷いた。


「それでいい。では話そうか、君たちの知りたがっている事を、順を追って」


 五人は膝に手を置き、真剣な表情を浮かべる。ここからは先は、聞いてしまったらきっともう無かった事には出来ない。その覚悟を決めながら、マディアスの声に耳を傾ける。


「オルガノフに聞いている前提で話すよ。まず我々冒険者ギルドは、遥か昔から死霊王を秘密裏に追っている。それは冒険者ギルドという組織が出来てからずっとだ」
「それは……どれくらい昔からなんでしょうか?」


 愛莉がそう訊ねると、マディアスは答えを用意していたように滑らかに答える。


「およそ千ニ百年前からだと聞いている。つまり冒険者ギルドの歴史は千ニ百年の年月があるという事だ」


 誰もが驚愕の表情を浮かべる。千二百年、それは途方も無い年月だ。そんなにも昔から冒険者ギルドは存在していて、そんなにも昔から死霊王を追っていたのだ。


「では何故、冒険者ギルドが死霊王を追っているのか。それはね………皇家の依頼が発端なんだ」
「皇家の……依頼……?」
「そう。でもその話をする前に、君たちには一つ昔話をしなければならない。聞いてくれるかな?」


 全員淀み無く首肯する。今はどんな情報でも欲しいし、知っておかなければならないと全員が感じている。


「時は数千年前、この世界の秩序は二頭の竜と、その竜たちが率いる竜族によって保たれていた。その二頭とは、白き竜と黒き竜。竜族最強の二頭だったと伝えられている」


 五人の首肯を受け取り、マディアスがゆっくりと語り始める。


「だが数千年もの間、この世界を統治していた白き竜と黒き竜にも寿命が近づいていた。永遠にも近い寿命があると言われる竜だが、決してそんな事は無かった。生ある者、必ず寿命はやって来るんだ。そして、黒き竜が後にその命を終わらせるのだが………それは寿命が来たからではなかった」


 ブルリと震えるクローバーの五人。分かる、何故だか分からないがその話の続きが分かる。


「黒き竜は寿命で命を散らしたのではなく………死霊王に殺されたんだ。そしてその魂を死霊王に呪縛されてしまった」


 分かっていた。何となくだがその結末を予想していた。それなのに、身体中が粟立つほどの衝撃に見舞われる。
 

「残された白き竜は怒り、嘆き、絶望した。だが自分も既に高齢、全盛期の半分以下の力しか持たない。もはや自分一人で死霊王を倒す事など出来ない。そんな白き竜が行き着いたのが、当時人間で最強だった青年と血の契約を交す事だった」
「血の………契約?」

 
 思わず前のめりになるサフィー。いや、他の皆もいつの間にか身体が前方に乗り出している。


「そう、寿命の近い白き竜は自分で死霊王を倒す事を諦め、自分の力を人間の青年に譲渡する事を選らんだ。そして人間の青年もまた、その力で死霊王を必ず倒すと約束した。たとえ何代時が過ぎてもいつか必ずと。それが、この帝国を創った初代皇帝だ」
「え………それって……つまり今もその約束がーーーー」
「ああ、継続されている。皇家の者はあの日から約二千年、必ず一代に一人だけ白き竜の力をその身に宿した者が誕生するようになった。死霊王を倒す為の力を宿して」


 絶句だった。誰も次の言葉を発する事が出来なかった。
 二千年、そんな気が遠くなるような年月ーーーーーずっと死霊王を倒す事だけを思って現在まで血を繋いで来た。


「皇家の歴史は長い。白き竜との契約に従って、その力を宿した者は懸命に死霊王を探したみたいだが………残念ながらほとんど発見する事は出来なかった。または発見しても………返り討ちにされたと古い文献には書かれている」


 思わず顔を背ける少女たち。重い、あまりにも話の内容が重すぎる。竜族の悲願、皇家の思いを考えただけで、話の重さ絶望さに胸が押しつぶされそうになる。
 そして改めて思うのは、あの死霊王の残酷さ。存在自体が残酷で劣悪な最凶の存在。何故、あんな者が存在したのか、存在しているのか。


「自分たちだけでは死霊王を倒す事は出来ない。そう判断した当時の皇家は、出来たばかりの冒険者ギルドに協力を要請した。その日から、白き竜の力を宿した皇家の者は冒険者として活動を始める事になった。自分の世継ぎが生まれ、白き竜の力が継承されるまで、死霊王を探し続けた」


 壮絶な話に、誰もが言葉を失う。この帝国を創り、帝国をまとめ上げる皇家の者が、死霊王を倒すという悲観の為に一人の冒険者として活動して来た。


「今となっては、皇家の皇太子が冒険者として活動するというのは世間に知られた話だ。でも何故冒険者として活動するのか、その本当の理由を知っているのは、先ほども言った通りほんの一握りの者たちだけで、一般的には皇家に代々受け継がれた仕来りだと思われている」
「仕来り……それってつまり、現在の皇帝陛下も昔は………」
「そう、白き竜の力を継承して冒険者として活動していた。ちなみに私と皇帝陛下は同じパーティを組んでいたんだ」


 再び絶句する少女たち。目の前のグランドマスターと、現在皇帝がかつて同じパーティで冒険者活動をしていた。それはつまり、マディアスもまた死霊王を追っていたという事である。


「これが冒険者ギルドが長年死霊王を追っている理由だよ。もちろん、ほとんどの冒険者は知らない事実だけどね」


 マディアスの話を聞き終え、ふぅと息をつく少女たち。
 物凄い話だった。まさか冒険者ギルドと皇帝の一族にそんな深い繋がりがあったなど、想像すらしていなかった。そんなマディアスの話を聞いて、誰よりも冷静な愛莉は質問を投げかける。
  

「では、今の皇太子殿下も白き竜の力を継承して冒険者活動をしているって事ですか?」


 何気ない質問だった。今の話からして、誰が聞いてもそう思う疑問、いや確信に近いものだろう。だが、そんな愛莉の質問に当のマディアスは一瞬だけ目を背ける。


「グランドマスター?」
「いや……君の質問は的を射ている。普通はそう思うだろうね。だが……今代の皇太子殿下は……白き竜の力を継承しなかった」
「…………え?」


 一瞬にして執務室が緊張で張り詰める。皇太子が力を継承していない?それはつまり、現皇帝が未だに白き竜の力を?そう思っていた矢先、マディアスは重い口を開いた。


「今代で白き竜の力を継承したのは………第一皇女殿下。リズリット皇女殿下なんだ」


 その言葉は、ゆっくりと皆の耳に吸い込まれていったーーーーー

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